地域経済の冷え込み、破綻のツケが自治体財政を圧迫。儲かったのはゼネコンだけ 民活プロジェクトの破たん 
1995年10月24日 商工委員会

山下よしき 大阪のアジア太平洋トレードセンター、ATCについて聞きます。
 なぜATCかといいますと、先ほどの答弁にもあったとおり、全国で唯一総合保税地域の指定を受けた、いわば全国で最も条件の整った施設、民活法、FAZ法の典型施設だからであります。
 ATCの総事業費は1500億円、資本金221億円のうち3分の1を大阪市が出資している第三セクターです。大阪市のパンフレットによりますとATCは、「アジア・太平洋地域をはじめ、世界の商品を取り扱う世界最大規模の国際卸売センター。わが国初の総合保税地域の指定を受け、輸入の促進に貢献、世界市場と直結できる国際卸売マートです。」とあります。
 地元なので、先日改めて現状を調査しましたが、本当に驚きました。ATCの中核施設というのは国際卸売マートです。この国際卸売マートは、当初四百店の出店を見込んで建設されましたけれども、昨年4月のオープン時には164店、4割しか埋まらなかったんです。1年たったことしの3月までに新たな出店が二十ありましたけれども、逆に退席が25あったために入居率はいまだ4割のままであります。地上12階建ての巨大な建物の6階から8階までは入居がいまだにゼロで、閉鎖された状況であります。ほかの階もテナントはがらがらで歯抜け状態。廊下を歩きましたけれども、空っぽのテナントルームからその窓を通じて外の景色がよく見える、こういう現状なんです。
 案内してくれたATCの総務部長さん、大阪市から出向された方ですが、こうおっしゃっています。全国から注目されて随分見学に来るが、率直に言って苦戦している。いろいろ努力しているがテナントが埋まるめどはない。そういう中を案内いただいたわけですから、私は本当に気の毒になりました。結局、初年度決算では55億円赤字が出ております。
 そこで、大阪市はこの10月からATCの中で新規事業を開始しています。敷金6億円、テナント料2億円、内装5億円、計13億円の予算をかけて輸入住宅促進センターを開設いたしました。まさにタコが足を食う式の身内入居、事実上の大阪市による赤字補てんです。
 入居した各テナントの方々がどうなっているか。先月、衣料品やかばんの輸入卸売業者の方々
が賃貸料を下げよと裁判所に調停を申請しました。理由は、ATCがテナント入居率を引き上げようとせず、集客の努力も怠っているために、経営改善のめどが立たないというものであります。入居した業者の経営も大変で、こうしたトラブルが起こっているわけです。
 地域の商店街や小売市場はどうかと申しますと、今大阪市の経済局などが音頭をとって、商店街や小売市場がATCで輸入品を仕入れて自分の店で販売する海外直送びっくり市というのを計画しているんですが、しかし地元の小売店主の皆さんからは、この不況で自分の店の商品も売れぬのに何でやという反発の声も出ているわけです。
 そこで、お尋ねしますけれども、1986年、当時の渡辺美智雄通産大臣は民活法の提案理由の中で、「このような施設の整備は、現下の内需拡大の要請にこたえ、地域経済社会の活性化を図る上でも極めて重要であります。」と言っています。地域経済の活性化を図るはずだった民活施設、しかも典型的施設がなぜこんな状況になっているのか、見解を求めます。

広瀬勝貞(通商産業省貿易局長) 大阪のATCにつきまして幾つか数字を挙げてお話がございました。
 初めに入居率の件でございますけれども、御承知のとおり、これは平成6年4月に開業をしたものでございます。既に158社の企業が入居されておるわけでございまして、4割しか入っていないということでございますけれども、むしろ私どもは既にして4割も入っておるか、これからもどんどん入ってもらえるんじゃないかというふうに期待をしているところでございます。
 それから、決算につきましてお話がございました。平成6年開業、平成6年度55億円の赤字というお話でございました。これはもう委員御承知のとおりでございますけれども、およそこういう大きなプロジェクトで行います場合に、単年度で黒字に転換するというのは大体5年ぐらいたったときからということでございまして、開業早々その年に55億円の赤字だったということが大きな問題かということにはやや議論があるのではないかというふうに思います。
 いずれにしましても、もう少し順調にいったらそれはそれにこしたことがないわけでございますけれども、幾つか理由がございます。
 一つは、大阪市の分析でございますけれども、大阪の都心どここを20分で結ぶはずだった大阪の地下鉄中央線延伸というのが平成7年度末で行われるはずだったわけですけれども、これが9年度末までに延期されたということ。それから、不況が長引いておるというようなことが理由として挙げられると思います。この交通事情も今後おいおい整備されていくと思いますし、それから大阪市自身が輸入住宅や輸入部材の関係事業をここでやるというようなことも言われておりまして、今後、引き続き入居率は改善していくのではないかというふうに考えておる次第でございます。

山下よしき 最初から黒字は無理だというふうにおっしゃるわけですけれども、これは本当に重大だというふうに思うわけです。
 それから、大阪市の説明が地下鉄の延伸が大きな影響になっているということだったわけですが、もともと地下鉄の延伸は平成7年度末の予定だったわけですから、開業時には地下鉄は延びてなかったはずですので、それも理由にするというのはおかしいというふうに思うわけです。
 そもそも民活法というのは、主務大臣が特定施設ごとに基本指針を定める、そしてみずから定めた基本指針に基づいて事業者が提出した整備計画を認定する仕組みになっている。つまり、一つ一つのプロジェクトはすべて大臣が認定したものであります。責任があると思うんですね。しかも、大臣に認定された事業者は各種の助成措置が受けられることになります。
 ATCが民活法に基づいて受けた民活補助金、日本開発銀行等の特利融資、それからNTTの無利子融資の額がそれぞれ幾らになるのか教えてください。

牧野力(通商産業省産業政策局長) 端的にお答え申し上げますと、民活の補助金が19億円、これは交付をいたしております。それから融資でございますが、NTT無利子融資及び開銀融資を含めましてこれは450億円の融資の推薦を開銀に対して行ったところでございます。実行がどうなったかということは私ども知り得る立場にございません、開銀とATCとのいわば個別の関係でございますが、私どもとしては450億円の融資の推薦を行っております。

山下よしき 今お答えにあったとおり、民活補助金が19億円、大阪市も同程度負担をされているはずですから、莫大な額であります。それ以外に税制上の特例措置もあります。
 いずれにしても、国民や市民の税金がこうして使われているわけで、それだけ注ぎながら事業が初年度赤字になって破綻をしている。ATC一つでこれだけですから大変なことだというふうに思うわけです。ほかにも大阪市にはWTC、大阪府にはりんくうゲートタワービルなど、いずれもうまくいっていないプロジェクトがあるわけです。これらが自治体の財政を圧迫しているということも見なければならないというふうに思います。
 大阪府の府債は86年から88年度おおむね1兆3000億円だったのが95年度には2兆5020億円に、約2倍に膨れ上がりました。大阪市の市債は88年度8969億円だったのが95年度1兆3717億円、1・5倍に膨れ上がっています。
 こうした中で、大阪市の95年度予算案に対して、マスコミからも従来の大規模プロジェクトを大胆に見直すなどの発想の転換が求められているなどの声が上がっています。また、工業統計の数値を見ても、御承知のとおり近畿、大阪の経済というのが全国よりも落ち込みが激しいというのは数字にもあらわれているとおりです。この点でも、総額40兆円にも上るビッグプロジェクトがメジロ押しの近畿だが地元経済への波及効果はいま一つのようだ、本来ならこうしたプロジェクトが近畿経済を活性化させ経済指標も上向くはずなのに現実は逆、などの指摘があります。
 民活プロジェクトが地域経済の活性化を招くどころか冷え込みを招いている。破綻のツケが自治体に回され財政を圧迫し、住民の福祉の向上や安全な町づくりを進める支障になっている。結局もうかったのは工事を請け負ったゼネコンだけ。こういうやり方に対する真剣な自己検討と転換が必要ではないかと思うんです。大臣の御見解を伺いたいと思います。

橋本龍太郎通商産業大臣 昨年、私自身ATCで開催されました第1回のアジア・太平洋国際貿易見本市に出席をさせていただきました。このとき、十八の国と地域からなりますAPECの中、十六の国と地域から二百六十の会社あるいは機関が見本市に参加されて、商談の成功件数は私どもが把握をいたしているだけでも3,618件を数えました。私は、ATCは一つの例でありますけれども、数多くの意義の深いプロジェクトを推進してこられておりまして、国際経済交流の促進に寄与するといったFAZ法及び民活法の法目的に十分寄与してこられたことは間違いないものだと思っております。
 たまたま入居率の問題が先ほど委員から提起をされておりましたが、北海道のインポートマート、これは今100%と聞いておりますし、神戸のFAZ地域で震災のあった後におきましても73・8%、あるいは長崎空港のFAZ施設の場合に97・9%といった数字も報告をされておるわけでありまして、私は、FAZ法、民活法、それぞれの中において、このATCを含めましてそれぞれに役割を果たしてくれておると考えております。

山下よしき うまくいっている、テナントの入居が進んでいる例をお挙げになりましたけれども、本当に全国で唯一総合保税地域に指定されているそういう施設がこういう状況になっているという、この点でのしっかりとした責任を認識する必要があるというふうに思うわけです。
 時間が来ましたので、最後に繊維産業法案について一言だけお伺いをします。
 繊維産業の川上から川下までを情報ネットワークで結んで、需要に応じた生産、流通、販売のシステムをつくることを目指した前回法改正以降の施策というのは、繊維政策の一つの方向とも言えると思います。政府はこの施策に、中小零細企業が非常に多い今の日本の繊維産業の実態を踏まえて、圧倒的多数の繊維関連中小企業が参加できるようにするために具体的にどんな配慮をされているのかあるいはしようとしているのか、お答え願います。

中野正孝(通商産業省生活産業局長) 先ほども御議論ございましたが、繊維工業約十二万社ございますが、この中でいわゆる大企業というカテゴリーに分類されるのはわずか百六十社でございます。99・9%中小企業でございまして、私どもも、この繊維の構造改善、情報化は中小企業の振興、支援そのものだ、こういう認識を持っておるわけでございます。
 先ほど大臣からもお答えございましたけれども、今回の情報化支援事業におきましては、中小企業の方、従業員の方でもコンピューターというものを意識しないで業務に使える、こういうような易しいソフトや取り扱いの簡単なハードウエア、こういうことの開発を目指しておりまして、予算の一部でも中小零細の方にこれを無償で貸与いたしまして使っていただく、問題を指摘していただく、こういうような仕組みで開発を進めたいと思っておりますし、あわせて県とも連携いたしまして、あるいは財団法人の活動もございます、もろもろの活動を通じまして情報化の人材というようなことの涵養ということも意識しながらきめ細かく進めてまいりたいと思っております。

山下よしき 終わります。