国家秘密法案参考人質疑 
【議事録】 2013年12月3日 参議院安全保障特別委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 お三方、ありがとうございました。
 まず、日比野参考人に伺います。
 これまで、核持込み密約あるいは沖縄返還密約など、日米安保をめぐって国の在り方にかかわる重要な問題が政府によって長い間国民に秘密にされてきました。今もこの状態は継続しております。こうした秘密に挑み、国民に真実を明らかにするのは、これまでもこれからもジャーナリストの重要な社会的使命だと思います。先月二十一日、当委員会に出席された元毎日新聞の記者西山太吉さんの意見陳述からもそのことを痛感した次第であります。
 そこで、日比野参考人、この法案でそのジャーナリストの社会的使命が果たせなくなるのではないかと私は危惧しますが、いかがでしょうか。

日比野敏陽新聞労連委員長 西山太吉さんのおっしゃっていることは、この法案ができたら、やはりますます取材の萎縮、そして情報源の萎縮が激しくなり、情報公開、もう既にある情報公開法も空文になってしまう、そのような状況になるというふうにおっしゃっておりますが、取材現場としても同じように、使命を果たそうと思っても果たせなくなることは明らかであると思います。
 日本では、戦後一貫して、情報を取得することについては、つまり探知、アクセスすることについては処罰がなかったというふうに解釈しておりますが、これが初めてこの法案によって探知罪をつくるわけですから、これまでできたあらゆる報道、私たちの先輩によって行われてきた掘り起こし的な取材活動が政府の恣意的なその運用によってできなくなるという可能性は相当程度あるというふうに思います。

山下よしき 続いて、日比野参考人に伺いますが、先ほど、法案二十二条で報道、取材の自由について配慮しなければならないと書かれたので、政府はこれで報道、取材が過剰に規制されることはないと言うが、日比野参考人は、私にはそうは思えないと、こう述べられました。
 この点を更に詳しく伺いたいんですが、特に、この法案が成立すれば、取材相手、公務員その他の方が萎縮して取材に応じなくなるのは確実だとおっしゃったんですが、この辺りも含めて、少し御心配な点を述べていただければと思います。

日比野新聞労連委員長 少し重なるかもしれませんが、私たちの取材というのは、先ほど小野先生にも申し上げましたけど、社会的かつ歴史的に重要であるということで相手を説得して取材をすると。だまして、ある種ごまかして情報を得るということはあり得ません。私、最初に述べましたけど、情報は自動販売機に知る権利を入れたら出てくるものではないので、人対人の、ある種人間対人間の泥臭い営みだと思っています。
 その相手が、最初からもうこの法律によって同じ土俵にも上がらないということになるのは確実ですから、そもそも取材ができなくなる。取材に応じたとしても、いや、それ以上はもうしゃべれません、こういったことが日本全国各地で起きることは確実ではないかなというふうに懸念しております。

山下よしき ありがとうございました。
 続いて、江藤参考人に伺います。
 まず、少しちょっと大きな視点で、この法案は国民主権あるいは基本的人権始め日本国憲法の根本原則を踏みにじるものではないかと私は考えるんですが、この点での江藤参考人の御意見、伺いたいと思います。

○参考人(江藤洋一君) 私も全く同意見でございまして、日本国憲法の下では国会が国権の最高機関とされておりますが、この法案を見ますと、その国会の上に行政が乗っていると、こういうふうに思えてなりません。先ほどの法案十条一項の規定もそうでございますが、行政が何をやっているかということに対するチェック機能が、国会がそれをチェックする機能が働いていないというところがやはり一番大きいのだろうというふうに思います。
 加えて、憲法上のいわゆる基本的人権、知る権利を侵害すると。知る権利って、先ほど瀬谷参考人も言いましたけれども、俺は十分だという考え方もあって、十分分かっているよと、それはいろんな人がいますけれども、これは権利ですから、最大限いったらどこまでのものが得られるかという視点から考えなければいけないという意味でいいますと、秘密が多くなるということは、この知る権利の範囲がだんだんだんだん狭まっているということを意味します。それはやはり民主主義社会にとって健全ではないという意味で危険性を感じるところでございます。

山下よしき 続いて、江藤参考人に伺います。
 特定秘密を取り扱う公務員あるいは民間人に対する適性評価について、政府は本人が同意しているから人権侵害に当たらないというふうに述べておりますけれども、この点、いかがでしょうか。

○参考人(江藤洋一君) 私ども仕事でよくあるんですけれども、あなたはそれを知っていますかと聞かれたときに、守秘義務がございますから、知っているとも知っていないとも答えられませんと、こういうふうに答えるわけでございます。
 全く同じことで、本人が同意しているからいいといったら、じゃ、拒否したら一体そのことがどういう影響を持つのかということについての配慮がないように思います。拒否したら、それだけで、いや、おまえは話せないことがいろいろあるんだねという評価につながるのだとしたら、あるいは、それは非公式なものであったとしてもそういう可能性があるんだとしたら、それは同意があるというだけでは済まされない問題があるんだろうというふうに思います。

山下よしき 続けて、江藤参考人に伺います。
 同じく適性評価についてですが、昨日、政府は、行政機関からの照会を受けた病院には過去の通院歴などを回答する法的義務があると見解を示しました。これでは医師と患者の信頼関係が成り立たないなど様々な問題が発生すると思いますが、この点についての、照会を受けた様々な機関がそれに応じる法的義務がある、回答しなければならない、この点についての御意見を伺いたいと思います。

○参考人(江藤洋一君) それは、専門職とその依頼者の関係あるいは患者さんとの関係でよく生じることでございまして、お医者さんと患者さん、私ども弁護士と依頼者、あるいはサイコセラピストあるいは臨床心理士とそこに通ってきている方と、そういう関係というのはやはり保護されなければならないというふうに思います。
 私どもの常識で考えた場合には、それはその患者さんがうんと言った場合にのみ出せるわけで、そうでない場合は、ノーと言った場合、あるいは分からない場合には、それは出すべきではないというふうに考えます。

山下よしき そういう常識的な判断が通用するのかなと思っていたら、昨日の答弁はそうではない、法的義務があるんだと、安全保障に資するかどうかにかかわる問題だというふうに言われますと、そういう常識の判断が作用しない危険性があるということを私は感じた次第ですが、その点、いかがでしょうか。

○参考人(江藤洋一君) つまり、そうやって悪法というのはだんだんだんだん広がっていって市民の生活を苦しめることになると、こういうことなんだろうと思います。

山下よしき 続いて、江藤参考人に伺います。
 秘密の指定期間が六十年に延長されたわけですが、しかも、過去の秘密にはこれは遡及されないということであります。また、六十年の例外もあるということでありまして、これでは永久秘密になるのではないかと危惧があるんですが、この点の御見解はいかがでしょうか。

○参考人(江藤洋一君) 私も全くそう考えておりまして、先ほど申し上げた点もその点でございます。その六十年のチェックすら利かない幾つかの項目を見ましたけれども、私は暗号はやむを得ないんではないかと先ほど申し上げましたけれども、六十年前の暗号なんてほとんど子供だましのような内容かもしれないし、そんなことを本当に守る必要があるのかなという疑問があるわけでございます。
 やはり、先ほどの質問にもございましたけれども、六十年たったときというのは、一つのもう歴史的時間という感じがいたします。それでもなお明かせないものって本当にあるのかなと、私にはちょっと想像の範囲を超えておりますが。

山下よしき ちょっと日比野参考人にも、これにかかわって、先ほどの核密約、沖縄返還密約などを果敢に取材されたジャーナリストの方はたくさんいらっしゃいますが、そういう方々が、その取材対象者である例えば元外務次官などに接触する際に、どうしてもその外務次官の方も、現役のときには秘密を秘匿しなければならないという作用が働いたとしても、退職されてから、自分がもういよいよ人生の最後の段階に掛かったときに、これは、国民にこの情報は提供して国民の判断を仰ぐ必要があるんではないか、そういうお考えで真実語られた方も少なくありません。
 それが、この六十年というふうになりますと、もう寿命との関係でそういうことができなくなるんじゃないかということも危惧されるんです。そういう点でのこの六十年問題について、これまでそういう取材をされてきたジャーナリストの立場から見解があれば伺いたいと思います。

日比野新聞労連委員長 私たちの先輩の皆さんが、特に核密約を含めて歴史の検証を行ってきておられると思います。もちろん取材対象者の方も、最後に、こう言ってはなんですが、もうそろそろ随分な年になったからということでお話になりたいと、それは悔いを残さないとか、いろいろな思いがあると思います。そういったものが歴史をつくっているわけでありますから、ジャーナリズムは、やはり歴史を記し、検証していくという役割が第一義であると思いますから、六十年、それ以上ということになると、もう何もそれができなくなるということです。
 アメリカでも、これもまた情報公開ではよく引き合いに出されることですけれども、アメリカでは原則二十五年ということで、つまりそれは二十五年で歴史だということの解釈だと思うんですね。そういったことを前提にして、国民の側、有権者の側が、政策そして政治を検証していく、これが、どのような党が政権に就こうと、それは関係なく検証されていくことがしかるべきであるというふうに思います。

山下よしき 再び江藤参考人に伺いますが、秘密の範囲が恣意的に拡大されるとの批判に対し、第三者機関をつくってチェックするということが今言われているんです、検討されようとしておりますが、この点についていかがでしょうか。

江藤洋一日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部本部長 ですから、第三者機関の一番の問題点はその第三者性にあるということでございます。我々はなぜ裁判官の判断に従うか、公正な裁判所とは何かということをよく言われるんですけれども、それは構成が、裁判所の構成が公正なものでなければいけない。つまり、当事者と一定の関係にある人はその裁判所から排除される、排除される第三者だからこそその判断は手続的に公正なものだと、こういうふうに認められる。それは常識的な見方だろうと思います。
 同じように、それが適否を判断するときに、それに利害関係のある人が判断に加わったのでは妥当な判断には至らないというふうに思います。ですから、首相はいかに第三者的に振る舞うとおっしゃられても、私も日々総理の一日というのを拝見していますけれども、それはそんな、時間的にも多分難しいし、立場的にも難しいんだろうというふうに思います。

山下よしき 最後に、江藤参考人に、法案が国会で審議され始めてからまだ一か月もたっておりません。これだけの短期間にこれだけ反対世論が高まってきていることについて、御意見を伺いたいと思います。

江藤本部長 それは、根底に国民がこの問題に対する不安感を持っているんだろうと思います。確かにそれは漠とした不安だろうと思いますが、その実態が分からないからこそますます不安になっているという現実があるように思います。
 私ども、二年前からこの問題を指摘させていただきました。開示を求めましたが、その法案の中身は全て黒塗りでございました。おっしゃるように、やっと一か月足らずの間にこうなったわけですが、その前にこの法案の概要について意見募集が行われました。それも僅か二週間ということでございます。その七割、八割が反対意見であったと伺っております。ならば、そのパブコメの内容を分析してそれを国民に知らしめるというその手続があってもよかったと思うんですが、それも全く行われませんでした。なぜこのようにやみくもに急ぐのかということについて、国民の多くが疑問に思っているところではないかというふうに思います。

山下よしき ありがとうございました。