研究者の雇用を守れ 産総研の雇い止め追及 
2016年5月10日 参議院内閣委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 私は、科学技術イノベーションに重要なのは、何よりも研究者の自由な発想と知的好奇心に基づいた基礎研究を充実させること、そして萌芽的研究成果、いわゆるシーズをたくさん生み出す環境を整えることだと考えますが、島尻大臣の認識を伺いたいと思います。

島尻安伊子内閣府科学技術担当大臣 今委員御指摘のとおりだというふうに私も思っておりまして、研究者の自由な発想と知的好奇心に基づく基礎研究は、人類の新たな知の資産を創出するとともに、世界共通の課題を克服する鍵であって、その推進は科学技術イノベーションの基盤となるものと認識をしております。このため、この4月からスタートいたしました第5期の科学技術基本計画におきましても、研究者が腰を据えて研究に取り組める環境を整備すること、あるいは長期的な観点で成果の創出を見守るということが重要であるということに留意した上で基礎研究の推進を図ることとしております。
 今後とも、中長期的な視点から知の基盤の強化を図るために、優れた基礎研究の推進にも努めていきたいというふうに考えております。

山下よしき 認識は一緒なんですが、そこで大臣に専門家集団からの2つの警告を紹介したいと思います。
 一つは、文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会が昨年1月にまとめた学術研究に関する総合的な推進方策についての最終報告書であります。そこでは、最近ではイノベーションによる経済的価値の創造の側面が非常に強調されている、いわゆる出口指向の研究に焦点が当たりがちであるが、そのような出口は有限であり、学術的価値の創造基盤を欠けば早晩枯渇してしまう、基盤となる学術研究を維持強化することが必要であると。
 もう一つは、日本学術会議が昨年2月に発表した提言であります。政府は、第4期科学技術基本計画によって競争的資金の一層の充実を図ってきた、しかし、運営費交付金や科研費を削り、基礎研究が担保されない状態で大型プロジェクトの競争的資金を偏重するのは、成功する見込みのある研究に研究者が拘泥し、萌芽的研究の芽を摘むことにつながる危険があると。
 この2つ、非常に重要な指摘だと思いますが、大臣、この2つの警告、どう受け止めますか。

島尻大臣 いわゆる基礎研究というのは、いつブレークスルーするか分からないという中で、先ほども申し上げましたように、やはり見守るということも必要だと思いますし、研究者が腰を据えてきちっと研究を進められる、そういう環境をつくっていくことは極めて重要だというふうに思っております。
 他方、いわゆる時間的に、あるいは早く社会実装として世の中に出して、経済的なものの礎として早くいわゆるフィードバックといいますか、それを求められるということも実は科学技術には十分あるものだと私も認識をしておりまして、そのバランスといいますか、特に基礎研究をやっていらっしゃる方々からすると、ややもすると御自分たちのその研究の先行きが不安だというふうなお訴えになっていくということも十分認識をしておりまして、私としては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、やはり基礎研究も大事ですし、あるいは早く社会実装して我々社会のいろいろ取り組まなければならない課題のソリュージョンとして実行するということも大事だというふうに思っておりますので、バランスということはしっかりと取っていきたいというふうに考えています。

山下よしき バランスが崩れているんじゃないかという指摘なんですね。
 それで、学術会議のこの提言の中には、日本はこれまでアジア地域では突出した数のノーベル賞受賞者を輩出し、国際社会において独創的で質の高い研究成果の創造により存在感と尊敬を確立してきたと、これそのとおりだと思いますね。重要なことは、基礎研究に従事する研究者が対象への強い知的好奇心を原動力として最善を尽くせる環境であるというふうに述べておられます。そのとおりだと思います。
 思い出しますが、あの緑色に光るクラゲを海に出かけて家族ぐるみで採取する、そして、そのことによって、なぜ緑色に光るのか、その物質は何なのかということに、知的好奇心ですよね、別にそれが何になるかということから始まったんじゃないんです、その知的好奇心で研究したことが、この物質を突き止めて、それが医学の発展に非常に貢献したということでノーベル化学賞を受賞された、そういうことだと思います。
 政府はこの間、研究機関が人件費や基礎研究活動を賄っていくための運営費交付金などの基礎的経費を、毎年機械的に、毎年1%あるいは毎年3%減らし続けてきました。これでは、基礎的研究に従事する研究者が最善を尽くす環境をじわりじわりと干上がらせていると言わざるを得ません。これをやめて基礎的経費を回復させなければ日本の科学技術を発展させる基盤が駄目になると、もう答弁求めませんけれども、警告しておきたいと思います。
 今日は、別の角度から、ノーベル賞受賞者の山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長も問題提起している研究補助者、研究技術者の問題について質問したいと思います。
 いわゆる研究支援者の役割の重要性、その人材育成の重要性について、島尻大臣の認識を伺いたいと思います。

島尻大臣 科学技術イノベーションを推進するに当たっては、これらを担う多様な人材の育成と活躍促進が求められておりまして、研究者はもとより、研究補助者やそれから研究施設整備等を支える技術支援者など、研究者の活動を支える人材の役割は極めて重要であるというふうに認識をしております。
 しかしながら、大学と産業界などの間における人材の質的あるいは量的ミスマッチが生じているということもございまして、こうした職に就く人材は不足をしております。また、各人の持つ能力というものが社会の急速な変化に必ずしも対応できていないというふうに承知をしております。このため、第5期の科学技術基本計画におきましては、こうした人材育成の重要性を踏まえまして、各人の持つ高度な専門性を生かしつつ、適材適所で能力を発揮できる環境をつくり出すということを掲げております。
 今後とも、我が国の科学技術イノベーション力を、持続的にこれを確保していくために、研究補助者や技術支援者など多様な人材の育成と活躍の促進に向けまして、関係省庁と連携してしっかり取り組んでいきたいと考えています。

山下よしき 元々日本では、研究者に対してこの研究支援者の数が非常に少ないということが言われております。山中教授も、iPS細胞の樹立というのは一人でできたわけではないということを繰り返しおっしゃっています。山中教授の研究ビジョンの下に、大学院生や技術者が一生懸命実験を繰り返してくれた。それから、技術員がネズミの世話もしてくれて、そしてiPS細胞を作る上で欠かせなかった様々な材料も作ってくれた、そうやって研究活動を支えてくれたと。山中教授は、何10年も掛かるかもしれない、僕が研究している間にはできないんじゃないかと思っていたところ、みんなの頑張りでできてしまったのがiPS細胞です、私だけでなくこの人たちのおかげでiPS細胞ができたというふうに述べておられます。そのとおりだと思います。
 また、山中教授は、研究所所長として一番重視しているのは、研究支援者の雇用をどうやって少しでも安定させるか。400人を超える教職員がいますが、大学の正規職員など安定した雇用の方は一割に満たず、9割以上が有期雇用と派遣職員で、これがなかなか変えられていない。このことの改善が国にお願いしたいことの一番なんだということを山中教授は繰り返しメッセージを発しておられます。
 島尻大臣、この山中教授のお願い、どう受け止めますか。

島尻大臣 御指摘のとおりだと思っております。
 なので、基礎研究をやはりしっかりと研究者が進めていっていただく、腰を据えた研究を進めていっていただく環境づくりという中には、やはりそういった支援者、支援研究員とか、いろいろな本当に多くの方の支援があって一つの成功事例が出ていくんだろうというふうに私も考えておりますので、そういう意味で、その基礎研究あるいは研究者が腰を据えて研究できる環境をつくる中にそういったことはしっかりと今後も考えていきたいというふうに思います。

山下よしき そこで、今回の法案で、世界最高水準の研究開発成果の創出が期待される法人とされている産業技術総合研究所、いわゆる産総研での研究支援者がどういう実態にあるかについて質問したいと思います。
 まず経産省に聞きますが、産総研での研究者の数、それから研究支援者の数、そして研究支援者の雇用の形態とその比率、どうなっていますか。

星野岳穂経済産業大臣官房審議官 お答え申し上げます。
 産業技術総合研究所におきます研究者の数でございますが、平成28年、本年の1月1日現在で2631名。そのうち、常勤の職員が2258名、ポスドクや招聘研究員であります、いわゆる非常勤職員、契約職員でございますが、が373名となっております。
 一方、御指摘の研究支援者でありますテクニカルスタッフとしての人員は1573名でございまして、その全ては非常勤職員、契約職員となってございます。

山下よしき 今答弁あったとおり、産総研の研究支援者、産総研ではテクニカルスタッフと呼ばれているそうですが、1573人全て非常勤の有期契約職員であります。
 産総研の研究職員から伺った話ですが、このテクニカルスタッフやそれから事務職員が有期雇用やあるいは派遣会社からの派遣で経験が蓄積されず、したがって十分な仕事を任せられず、書類申請や物品購入手続なども研究者自らが行うことが必要になって、その結果、研究員の多忙化、研究時間の減少を引き起こしているということを聞きました。島尻大臣、これゆゆしき事態だと思いませんか。

島尻大臣 今のこの数についてはこのとおりなんだろうというふうに思っておりますが、先ほども申し上げましたとおり、やはり様々な方々の支援というか、研究補助者あるいは技術支援者など様々な人材の役割は重要であるというふうに改めて感じております。

山下よしき 残念ながらそうなっていないんですね、産総研では。
 さらに重大なのは、この産総研ではテクニカルスタッフを契約期限が来たら必ず雇い止めにして再雇用を禁止しております。仕事があっても、プロジェクト研究が継続しても、契約期限が来たら雇い止めにするルールを作っております。
 資料2枚目に、産総研の平成27年度以降の契約職員の雇用に係る説明会での配付資料を添付しております。ここにある第2号職員というのは研究支援者、テクニカルスタッフのことで、第3号職員というのは事務職のアシスタントのことであります。いずれも有期の契約職員です。
 既に改定された労働契約法及び研究開発力強化法が施行されておりまして、有期労働契約で働く労働者の雇い止めの濫用を防ぎ、雇用の安定を図るために、無期労働契約への転換ルールというものが設けられました。
 厚労省に伺いますが、研究支援者の有期雇用契約に関する労働契約法、研究開発力強化法の無期転換ルールの部分について簡潔に説明してください。

山越敬一厚生労働省労働基準局長 労働契約法第16条の無期転換ルールでございますが、これは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、雇用の安定を図ることを目的としているものでございまして、同一の使用者との間で有期労働契約が通算で5年、研究開発法人等の研究者等につきましては研究開発強化法の特例により10年を超えて繰り返し更新された場合には、労働者の申込みによりまして無期労働契約に転換するというものでございます。

山下よしき そういうルールがあるんです、雇用の安定のために。
 ところが、支援研究者を含む研究者に対する、その10年を超えると無期労働契約に転換できることになったルールを無視するかのように、この資料2枚目の下の方の赤い波線、同一者の再雇用の原則禁止、平成27年度以降に産総研との契約が終了した者について再雇用できない、わざわざ書いてあります。要するに、産総研では27年度以降、最長10年の有期雇用契約が終了したら、無期転換の権利が生じないように、その前に再雇用を禁止して雇い止めにするという運用を行っているわけであります。
 資料3枚目にも更に使われた資料を、QアンドAを添付しておりますが、左側の①、②の矢印のところを見ていただきたいんですが、クーリングというのがあるんですが、質問に、一つのプロジェクト期間で契約職員を雇用していた場合、当該プロジェクト終了後に新たなプロジェクトが開始したとしても、同一者を雇用することはできないのかと。回答、不可である、クーリング期間を挟んで再雇用するという手段はあるにはあると。
 このクーリング期間というのは、これはもう脱法的な手法なんですが、6か月間の雇用期間の空白のことをいうんですが、この6か月の空白がありますと無期転換への通算期間がリセットされると。これ設ければもう10年たっていても10年じゃないとみなされるということでして、この②のところ、例えばユニットAで5年雇われていた2号職員、研究支援者、テクニカルスタッフのことですが、ユニットBの公募へ応募した場合、ユニットBはその者を雇用できないのかと。回答、雇用することはできない、雇う場合はクーリング期間を設ける必要があると。あくまでも無期雇用への転換ルールを適用されない形にして、だったらいいですよというふうにしているんですね。これは雇用の安定を図るという法の趣旨をゆがめていると言わざるを得ません。
 こんなことを、経産省、許していいんですか。

星野剛士産業経済大臣政務官 お答えいたします。
 研究者が優れた研究を行うためには、高い技能を有する熟練の研究支援人材の確保、育成は重要だというふうに考えております。
 産総研では、平成27年度から、第4期中長期目標期間の開始に際しまして、第3期から働いているテクニカルスタッフとも改めて契約を締結をし直しております。このうち約1000名は本人が希望すれば無期雇用職員への転換が可能でありまして、産総研におけるテクニカルスタッフ業務の中で経験が必要とされる業務を担う者として期待をされております。
 他方、研究所においては外部資金等の活用などによります期間や目的が限りがある研究開発も存在をいたしまして、第4期から新たに雇う契約社員につきましては、今後、こうした期間や目的が限られた業務等を中心に担ってもらうことを想定して、有期雇用としております。
 再雇用を認めない方針としておりますけれども、組織全体で見ますと、熟練した技能を持っている、任期制約のない数多くのテクニカルスタッフを確保できるよう努めてまいっております。限られた予算という制約がある中で、無期労働契約に転換する契約社員が過度に増大することは望ましくないものの、産総研にとって真に必要なテクニカルスタッフが産総研から離れることも同様に望ましくないと考えております。
 テクニカルスタッフの雇用の在り方につきましては、産総研にとって重要な検討課題であると考えておりまして、経済産業省としても今後産総研としっかりと意見交換をしてまいりたいと、このように考えております。

山下よしき もう産総研の研究者からも、このやり方は研究支援者の使い捨てだという声が上がっております。実際に、産総研のテクニカルスタッフAさん、昨年、平成27年度いっぱいで雇用更新の上限期間が来るので、他の部署で働こうと希望したところ、断られて雇い止めにされております。産総研では、せっかく法定化された無期転換権が発生しないようにこういうルールを作っていると。
 私は、今いろいろおっしゃいましたけど、新たにこれは、技術を支える、研究を支えるテクニカルスタッフの方で、ずっと続けてほしい、また続けていただきたい、能力がある方であっても、これから雇う方についてはもうこの道が閉ざされるということになるわけで、これは先ほど大臣がおっしゃった、島尻さんがおっしゃった趣旨にも反するやり方ですから。
 大臣、これ是非経産省と相談して、こういうやり方はもうやめさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

島尻大臣 今経産省から御答弁あったとおり、頑張っていただくということでもございますし、各機関における個別の運用については、法改正の趣旨等を踏まえまして、まずは当該機関やその所管官庁で適切に対応いただくということが重要だと考えています。

山下よしき 研究支援者の雇用の安定をという山中教授を始め現場からの切実な声に逆行するような産総研のやり方を放置しておいて、私は、世界最高水準の研究開発成果の創出を期待するなどというのは政府として恥ずかしいと言わなければなりません。
 最後、もう時間が参りましたが一つだけ、科学技術の軍事利用について伺いたいと思います。
 資料に入る前に防衛省に聞きますが、安全保障技術研究推進制度、それから防衛省が行っている大学や国立研究開発法人との技術協力の目的について、それぞれ説明してください。

野間俊人防衛装備庁技術戦略部長 お答えいたします。
 近年、科学技術の著しい発展を背景にいたしまして、防衛技術と民生技術のボーダーレス化が進展しております。こうした防衛技術を取り巻く環境を踏まえれば、防衛装備品の効果的、効率的な研究開発を行う上では、防衛にも応用可能な先進的な民生技術、いわゆるデュアルユース技術を積極的に活用することが重要であると考えております。
 このため、大学、独立行政法人の研究機関や企業等における独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成することを目的に、防衛省が外部の研究機関等に対して広く研究課題の提案を募り研究を委託する安全保障技術研究推進制度を平成27年度に創設いたしました。防衛省としては、本制度を通じて外部の優れた先進技術を効果的、効率的に取り込み、将来の防衛省における装備品の研究開発に活用したいと考えております。
 なお、本制度は、将来の防衛省の研究開発に資することを期待しているものでございますが、基礎的な技術分野における研究を対象としておりまして、装備品そのものの研究を委託するものではございません。
 なお、先ほど申し上げましたように、防衛装備品の効果的、効率的な研究開発を行う上で、防衛にも応用可能ないわゆるデュアルユース技術を積極的に活用することが重要であると考えておりまして、そのため防衛省としては、防衛用途にも応用可能な技術分野を対象として、優れた技術を有する国立研究開発法人や大学といった研究機関との研究協力を実施しております。なお、こうした研究協力は、お互いに研究機能を補完する意義を認識した上で、お互いの技術研究に対するスタンスを理解、尊重しつつ自発的な意思に基づいて行われているものであり、今後ともこうした考えの下に研究協力を行う所存でございます。

山下よしき 資料5枚目に、今の防衛省の安全保障技術研究推進制度の平成27年度新規採択課題一覧を載せておきました。これ見ていただきますと、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構、それから海洋研究開発機構など国立研究開発法人も入っているんですね。それから、その次のページに研究協力の一覧、ここにも国立研究開発機構が組み込まれております。こういう形で、基礎研究を、運営費交付金がどんどん削られる中で、基盤が脆弱にされる一方で、こういうやり方で防衛研究、軍事利用に科学技術が動員されつつあるということは、非常にこれは警告を発しなければならないと思っております。
 もう時間が参りましたのでこれはもう今日はやめますけれども、戦後、科学者たちが、科学技術は軍事には転用しない、利用させない、平和目的のために私たちは研究をするんだということを繰り返し決議されておりますが、それと違う方向が、こういう実態が広がっているということについて警鐘を発して、質問を終わります。