現場の声示し 暴走ただす 
【議事録】2015年2月18日 参議院本会議質問

 私は、日本共産党を代表して、総理に質問します。

参議院本会議で質問する日本共産党山下よしき書記局長・参議院議員
参議院本会議で質問する日本共産党山下よしき書記局長・参議院議員

 今年の1月17日は、6,434人が犠牲となった阪神・淡路大震災から20年目の日でした。当時、住宅を失った被災者が復興への道を歩み始める上で最大の障害となったのが、私有財産制の国では個人の財産は自己責任が原則という立場をかたくなに取り続け、住宅再建のためには1円も出さないとした政府の姿勢でした。しかし、被災者が中心となって粘り強い共同と闘いが取り組まれ、一歩一歩それが政治を動かし、被災者生活再建支援法を実現させ、ついに国の制度として全壊世帯に300万円支給するところまで前進しました。

 この制度は、運動の発端となった阪神・淡路の被災者には適用されませんでしたが、後に発生した東日本大震災の被災者の大きな支えとして働いています。人々の切実な願いに応え、絶望を希望に変え、より良い社会へと進歩させていく、私は、ここにこそ政治の役割があると思います。

 こうした視点に立って安倍政権の基本姿勢と政策を見るとき、そこにどんな希望を見出すことができるでしょうか。

 まず、東日本大震災と福島原発事故の被災者に対する対応です。

 東日本大震災の被災地では、4度目の厳しい冬のさなか、いまだ23万人にも及ぶ人々が避難生活を強いられています。長期化する仮設住宅の暮らしで、心身共に疲弊の限界に達しています。住宅の再建確保はもはや一刻の猶予もできません。災害公営住宅の建設を急ぐとともに、被災者生活再建支援金を少なくとも500万円に引き上げ、被災者の住宅再建に対する支援を強化すべきです。あわせて、仮設住宅の生活環境を抜本的に改善すること、極度に疲弊した被災者の医療費の窓口負担をなくすことを求めます。

 総理は、福島の復興なくして日本の再生なしと言います。しかし、政府が福島でやっていることは何か。福島第一原発事故による営業に関わる損害賠償について、事故から5年となる来年2月で打ち切ろうしています。県商工会連合会会長は、到底納得できる内容ではない、怒りを覚えると述べています。

 さらに、政府は、南相馬市における特定避難勧奨地点を解除しました。町には戻れないのに、慰謝料だけが打ち切られると住民は途方に暮れています。総理、これがあなたの言う福島の復興なのですか。

 現地の新聞、福島民報は、福島の復興なくして日本の再生なしとする安倍晋3首相は賠償の無期限延長を指示すべきだと主張しています。当然です。総理、加害者である国と東電が賠償と除染の責任を果たし切ることは、福島の復興への大前提ではありませんか。答弁を求めます。

 政府は、鹿児島県川内原発、福井県高浜原発を皮切りに、全国の原発を再稼働させようとしています。しかし、福島第一原発の事故はいまだ収束しておらず、事故原因も明らかになっていません。県民の多くはふるさとに帰れず、苦しみ続けています。加えて、再稼働の前提となる新規制基準には、過酷事故に対する住民の安全確保も、複数の原発が同時に事故を起こした場合の対策も考慮されていません。これで原発を再稼働するなど絶対に許されません。総理の見解を求めます。

 国民の多数は再稼働に強く反対しています。この声に真摯に耳を傾け、原発ゼロの政治決断を行い、再生可能エネルギーへの抜本的転換を図る、これこそ3・11を経験した日本が進むべき道ではありませんか。

 国民の暮らしはどうでしょうか。

 総理はこの間、アベノミクス、この道しかないと繰り返しています。しかし、厚生労働省の調査でも、働く人の実質賃金は18か月連続で減り続けています。アベノミクスの下で実質賃金は減り続けた、これが紛れもない現実です。総理はこの現実を率直に認めるべきではありませんか。

 こうした状況の下で、安倍内閣が国民に示したメニューは一体何か。

 第1は、働き方のルールの改悪です。

 政府は、どんなに長時間働いても残業代を払わないで済ませる残業代ゼロ法案とともに、労働者派遣法改悪法案を提出しようとしています。

 総理は、派遣先企業への直接雇用の依頼など正社員化への取組を派遣元に義務付けますと述べました。しかし、正社員化への取組を義務付けるべきは、派遣元ではなくて、実際に派遣労働者が働いている派遣先大企業ではありませんか。

 現行法には、派遣先企業に対し、同じ仕事での派遣受入れは原則1年、最大3年という期間制限を課し、期間を超える場合には直接雇用を義務付けるとの規定があるのです。それでも大企業はその義務を果たさず、派遣労働者を直接雇用することを拒否したり、直接雇用しても短期間で雇い止めしたりしてきました。こうした実態を踏まえるなら、派遣先大企業の雇用責任を明確にすることこそ必要ではありませんか。

 ところが、今回の労働者派遣法改悪法案は、この期間制限を撤廃し、3年ごとに派遣労働者を入れ替えさえすれば、同じ仕事で無制限に派遣労働者を使い続けることができるようにしています。総理、これでは、正社員から派遣への大量の置き換えが起こるのではありませんか。正社員化どころか、正社員ゼロ社会になるのではありませんか。

 正社員として働くことを希望しながら、ずっと派遣の働き方を強いられているある派遣労働者は、この法案を絶望国家法案と呼びました。総理はこの声にどう応えますか。これらの法案の提出は断念すべきではありませんか。お答えください。

 第2は、社会保障の大改悪です。

 来年度予算案で政府は、社会保障費の自然増を抑制するとしています。特に重大なのは、介護報酬の2・27%引下げという過去最大規模の削減です。今、介護の現場は深刻な人手不足にあえぎ、それが介護難民増大の一因ともなっています。

 先日、北海道で、「すまん、母さん」と書き置きして、認知症の妻を夫が殺害するという事件が起こりました。警察庁によれば、過去5年間で介護、看病疲れによる殺人、自殺は1741件、年平均348件に上ります。毎日のようにこうした痛ましい事件が日本のどこかで起きているのです。総理、異常だと思いませんか。介護報酬の引下げはこの事態に一層拍車を掛けるのではありませんか。

 今政府がやるべきは、介護を必要とする全ての人が安心して介護を受けられるよう体制を整備することです。その鍵となる介護職員の待遇を改善することです。政府は介護職員に対して処遇改善加算をすると言いますが、事業者への報酬全体を大幅に引き下げてどうして職員の処遇が改善できるのですか。

 一方で、総理は、法人実効税率を2・5%引き下げると言いました。深刻な介護現場に対する報酬を減らし、大もうけしている大企業に大減税する。総理、政治の根本がゆがんでいるのではありませんか。

 そして第3に、消費税の10%への引上げです。

 16日に発表されたGDP速報によれば、昨年1年間の家計消費はマイナス1・3%、この20年で最大の落ち込みとなりました。一番の原因は、4月に消費税を8%に増税したことにあります。

 日本共産党は、消費税増税ではなく、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革、大企業の内部留保を活用して国民の所得を増やす経済改革、この2つの改革で財源をつくり、税収を増やすことを提案しています。国民の懐を直撃し、暮らしと経済を一層行き詰まらせる消費税10%への増税はきっぱり中止すべきです。

 以上のように、総理がこの道しかないと言い続けているこの道とは、結局、雇用ルールの破壊であり、社会保障の切捨てであり、消費税の再増税にほかなりません。この道のどこに希望があるのでしょうか。

 1月8日発表された日銀の生活意識に関するアンケート調査の結果を見ると、1年後、景気は悪くなると悲観する人が調査のたびに増え、今では37・8%にもなりました。逆に、良くなると答えた人は減り続け、1年前の半分以下、僅か7・3%にすぎません。国民の多くは、総理のこの道に希望を見出すことができないのです。総理、この結果をどう受け止めますか。

 今求められているのは、この道の方向を転換することです。大企業応援から国民の暮らし第1に切り替えて、一つ、人間らしく働ける雇用のルールをつくること、2つ、社会保障を切捨てから充実へと転換すること、3つ、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制に改革すること、ここにこそ政治の役割があり、そうしてこそ希望ある道が見えてくるのです。総理の見解を求めます。

 農業問題について質問します。

 総理は、農協改革を戦後以来の大改革の冒頭に挙げました。しかし、この改革は現場の声や必要性から出発したものではありません。TPP反対の中心となってきたJA全中、農協を潰そうと考えたのではありませんか。農協の改革は、協同組合にふさわしく自主的に行うべきであります。

 安倍政権の下で、農村は空前の米価暴落に襲われ、円安による生産費の高騰も加わって、未曽有の危機に直面しています。政府が力を入れる大規模経営の農家からも、所得倍増どころか赤字倍増だと悲鳴が上がっています。米価暴落への緊急対策こそ実施すべきではありませんか。

 TPP交渉が重要な局面を迎えています。全国の農家は、交渉内容を何も知らされず、不安を募らせています。日米合意に向け、日本側は米など重要5項目について譲歩案を検討していると報道されていますが、これは事実ですか。アメリカ型の市場原理主義を国際ルールとして押し付け、農業や食品安全、医療など広範な分野で日本の経済主権を脅かすTPP交渉から直ちに撤退することを強く求めます。

 総理は、総選挙で示された国民の意思に全身全霊を傾け、その負託に応えていくと述べました。ならば伺います。沖縄県民の意思にはどう応えるのですか。昨年1年間に、沖縄県民は、名護市長選、沖縄県知事選、総選挙と、民主主義の最も基本的で大切な手続を通して、辺野古への新基地建設ノー、基地のない平和な沖縄をという意思を疑いようもなく明白に示しました。

 ところが政府は、新基地建設のための予算を昨年度と比べて80倍に増やし、建設を強行しています。既に辺野古の海は、投げ込まれた巨大なコンクリートブロックによって貴重なサンゴ礁が破壊され始めています。

 造られようとしている新基地は、滑走路を2本持ち、強襲揚陸艦も接岸できる巨大な軍港、広大な弾薬搭載エリアなどを備えた最新鋭の巨大基地であり、その耐用年数は200年とされています。こんなものが造られるなら、沖縄は半永久的に基地の島であり続けなければなりません。これほど県民の意思を踏みにじる暴挙があるでしょうか。

 総理に求められているのは、普天間基地の無条件撤去、辺野古への新基地建設中止を決断し、それこそ全身全霊を傾けアメリカと交渉することではありませんか。答弁を求めます。

 今年は、第2次世界大戦が終結して70年の歴史的節目の年です。この年が日本とアジア諸国との和解と友好に向かう新たな一歩となることを、アジアを始め世界の多くの人々と大多数の日本国民が願っています。そのためには何が必要か。

 私は、政府が、村山談話の核心的内容である植民地支配と侵略への痛切な反省の態度を堅持すること、日本軍慰安婦問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことが大切だと考えますが、いかがですか。

 戦後70年間、日本が戦争によって1人の外国人も殺さず、1人の戦死者も出さなかったのは、日本国憲法、特に戦争を放棄した第9条があったからだと思います。

 ところが総理は、この世界の宝ともいうべき憲法9条の解釈を勝手に変更し、集団的自衛権行使容認を柱とした法案の準備に入っています。それは、この間の国会論戦で明らかになったように、アフガン戦争、イラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こした際に、自衛隊が戦闘地域まで行って軍事支援する、すなわち、海外で戦争する国づくりにほかなりません。戦後の日本の歩みを否定する安保法制の整備は絶対にやめるべきです。

 今年はまた、広島、長崎の被爆70年の年であり、5年ぶりに核不拡散条約、NPT再検討会議が開催される年でもあります。核兵器のない世界の実現は国民的悲願であり、人類生存の緊急課題です。筆舌に尽くし難い核兵器の惨禍を体験した国として、日本は核兵器廃絶を目指す世界の先頭に立たなければなりません。

 核兵器を全面的に禁止し廃絶する条約の交渉開始を求める国は、国連加盟国の3分の2を超えました。核兵器の非人道性を告発し、その廃絶を訴える共同声明には155か国が賛同しました。ところが、日本政府はかたくなに核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連総会決議に棄権の態度を取り続けています。総理、被爆国として余りにも恥ずかしい態度ではないでしょうか。この条約の交渉開始を強く訴えることこそ、被爆国としての国際的な責務ではありませんか。

 私は冒頭、政治の役割は、国民に希望を示し、より良い社会へと進歩させることだと述べました。しかし、安倍政権からは、国民への希望あるメッセージは伝わってきません。日本共産党は、国民多数の願いと逆行する安倍政権の暴走と正面から対決し、抜本的な対案、希望ある道を示し、国民とともに新しい政治を起こすために全力で奮闘することを述べて、質問を終わります。(拍手)

2015021702本会議

 安倍首相の答弁

 山下芳生議員にお答えをいたします。

 政権の基本姿勢についてお尋ねがありました。

 今日よりも明日はきっと良くなる、そう信じることができる社会、誰にでも何度でもチャンスがあり、みんなが夢に向かって進んでいける社会、それこそが安倍政権が目指す社会であります。

 政治の役割は、意欲ある誰もが頑張ることができる環境をつくる、そして、頑張った人たちが報われる真っ当な社会をつくり上げることであります。その根本は自立の精神であります。自助自立を第一としながら、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人には援助の手を差し伸べていく、これが私たちの基本的な考え方であります。

 さらに、子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。子供の貧困は真っ当な社会の根幹に関わる問題であり、教育再生に全力で取り組んでまいります。

 日本は今、東日本大震災からの復興、デフレからの脱却など、幾つもの困難な課題に直面しています。しかし、くじけてはいけません。私たち1人1人が、自ら立って、前を向き、未来は明るいと信じて前進することが次の時代の日本を切り開く大きな力になるものと確信しております。

 東日本大震災の被災者の住宅再建に対する支援等についてお尋ねがありました。

 被災者の仮設住宅での生活が長期化する中で、災害公営住宅の建設の加速化、仮設住宅の補修、補強、被災者の方々の心身のケアなどにしっかり取り組んでまいります。また、国民健康保険制度等においては、被災地の市町村の判断で医療費の窓口負担を減免した場合には、一定の要件の下、その10分の8以内を国が財政支援する措置を講じているところです。なお、被災者生活再建支援制度の拡充については、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して慎重に検討すべきものと考えます。

 福島の復興についてお尋ねがありました。

 今後の営業損害の賠償については、東京電力が資源エネルギー庁とともに検討を進めていると承知しております。地元の関係する方々の御意見をよくお聞きして、被害者に寄り添った対応を行うことが重要であると考えます。

 昨年末に解除された南相馬市の特定避難勧奨地点の住民の方々への損害賠償については、原子力賠償紛争審査会が定めた中間指針に基づき、解除された後も3か月の間賠償が続くこととなっています。

 また、除染については、引き続き財政的、技術的支援を行い、政府として責任を果たしてまいります。

 原発再稼働についてお尋ねがありました。

 原子力政策の推進に当たっては、福島第一原発事故を片時も忘れず、事故を真摯に反省し、いかなる事情よりも安全性を最優先させることとしております。

 こうしたことを踏まえ、原子力規制委員会が策定した新規制基準においては、福島事故の教訓を十分に踏まえ、1複数の原子炉において過酷事故が同時に発生した場合にも、一つ一つの原子炉ごとに対処できる十分な対策を要求しています。この新規制基準に適合すると認めた原発については、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。あわせて、避難計画を含め緊急時の対応については、地域の自治体と連携して実効性ある取組を進めてまいります。

 同時に、徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの最大限の導入などを進めつつ、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。他方で、燃料輸入増、電力料金の上昇、温室効果ガスの排出量増加を踏まえれば、国民生活や産業活動を守り、責任あるエネルギー政策を実現するためには、原発ゼロというわけにはいきません。

 実質賃金についてお尋ねがありました。

 三本の矢の政策により景気が回復し、雇用が増加する過程において、パートで短時間働く人が増えたため、確かに1人当たりの平均賃金が下がっているという現象があります。ただし、賃金、所得の動向については、雇用者の所得の合計である総雇用者所得で見ることが重要です。

 名目については、2013年4月以降、前年比で21か月連続プラスが続き、実質で見ても、消費税率引上げの影響を除いて見れば、2014年6月以降、7か月連続プラスで推移しています。

 今後とも、三本の矢の政策を前に進め、賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続けることにより、景気回復の実感を全国津々浦々にまで届けてまいります。

 労働者派遣法改正案についてお尋ねがありました。

 派遣労働者のキャリア形成については、雇用契約の当事者である派遣会社が一義的な責任を負うべきものと考えております。提出を予定している労働者派遣法改正案では、この派遣会社の責任を強化し、派遣期間が満了した場合には、正社員になったり別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務付けることとしているものです。

 また、法案においては、派遣先事業所での継続的な派遣労働者の受入れについて、3年という期間制限を課した上で、延長する場合には過半数組合等からの意見聴取を義務付けるとともに、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援していくこととしており、正社員から派遣への置き換えを進めるものではありません。

 介護報酬改定についてお尋ねがありました。

 高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるようにするためには、要介護の方はもちろん、その介護を行う方もしっかり支えることが必要と考えています。

 このため、今回の改定では、全体として事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図るとともに、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、1人当たり月額12000円相当の処遇改善を実現するための加算を設けることとし、また、質の高いサービスや小規模な地域密着型サービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとしています。

 また、平成27年度からは、都道府県に設置した基金に約700億円を充て、介護施設等の整備や介護人材の確保に向けた取組を一層推進することとしており、これらにより、介護を行う方を支えるとともに、介護職員の処遇改善を着実に実施してまいります。

 介護報酬改定と法人税改革についてお尋ねがありました。

 今回の介護報酬改定では、全体として事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図るとともに、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、1人当たり月額12,000円相当の処遇改善を実現するための加算を設けることとしたものです。

 また、今回の法人税改革は、法人税を成長志向型の構造に変え、より積極的な賃上げへの取組や下請企業の価格転嫁といった取組を促すものであり、大企業に単なる減税を行うものではありません。

 消費税率引上げについてのお尋ねがありました。

 3本の矢の政策により、経済の好循環は確実に生まれ始めています。他方、昨年4月の消費税率引上げが個人消費に影響を及ぼしたのも事実であり、アベノミクスの成功を確かなものとするため、10%への引上げを18か月延期することといたしました。社会保障を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、我が国の信認を確保するため、平成29年4月の10%への引上げについては確実に実施します。

 なお、社会保障制度の財源としては、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していること、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、消費税がふさわしいと考えております。

 景気の国民の実感についてお尋ねがありました。

 さきの総選挙において、私たちはこの道しかないと訴えてまいりました。そして、再び連立与党で3分の2を上回る議席をいただけたことは、引き続きこの道を真っすぐに進んでいけと、国民の皆様から力強く背中を押していただけたものと考えております。

 昨年4月の消費税率引上げ等の影響で、景気の回復の実感が地方に暮らす方々や中小・小規模事業者の方々に届いていないのも事実であります。ただ、足下では、街角の景況感が多くの地域で改善し、先行きは全ての地域で改善するなど、景気回復の0しも見られます。

 今般成立した26年度補正予算を迅速かつ着実に実行し、また、賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続けていくことにより、景気回復の実感を全国津々浦々に届けてまいります。

 日本が進むべき道についてお尋ねがありました。

 政府が進めている労働時間制度や労働者派遣制度の見直しは、あらゆる人がワーク・ライフ・バランスを確保しながら、それぞれのライフスタイルや希望に応じて、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を目指すものであります。

 また、急速に少子高齢化が進む中、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡すとともに、子育て支援などの充実策を講じていく改革を進めているところです。その財源としては、繰り返しになりますが、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことなどから、消費税がふさわしいと考えております。

 農協改革についてお尋ねがありました。

 我が国の農業の活性化は待ったなしであり、安倍内閣では、農政全般にわたって抜本的な改革に取り組んできたところです。さらに今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協改革を行います。意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化や海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにします。したがって、農協潰しという御指摘は全く当たりません。

 米価対策についてお尋ねがありました。

 26年産米の価格下落については、収入減少の影響を緩和するナラシ対策に加え、ナラシ対策に加入していなかった方にも国として減収の一部を補填するとともに、米の直接支払交付金の早期支払など、米農家の当面の資金繰りを支援してきたところです。

 さらに、26年度補正予算において、機械の共同利用など、稲作の生産コストの低減を図る取組などを緊急的に支援することとしております。今後とも、意欲ある稲作農業の担い手が活躍できる環境を整備してまいります。

 TPP交渉についてのお尋ねがありました。

 日米協議については、いまだ多くの課題が残っており、何ら確定しているものはありません。現在、まさに着地点を探っているところであります。アジア太平洋地域の成長を日本に取り込む潜在力を持つTPPは、成長戦略の主要な柱の一つであります。交渉は最終局面にあり、交渉からの脱退について言及することは不適切と考えます。いずれにせよ、守るべきは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求していく考えであります。

 普天間の辺野古移設と沖縄における選挙結果についてお尋ねがありました。

 沖縄における選挙の結果については、いずれも真摯に受け止めたいと思います。最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということであります。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると考えています。

 辺野古の移設は、米軍の抑止力の維持と普天間の危険性除去を考え合わせたとき、唯一の解決策であります。この考え方に変わりはありません。一日も早い普天間の全面返還を必ずや実現する、そのために、引き続き、現行の日米合意に従い、沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら移設を進めてまいります。

 辺野古移設は最新鋭の巨大基地建設であるとのお尋ねがありました。

 辺野古の埋立面積は普天間飛行場の3分の1以下であり、滑走路も大幅に短縮されます。滑走路が2本になるのは、地元の要望を踏まえ、離陸、着陸のいずれの飛行経路も海上になるようV字形に配置するためです。これにより騒音も大幅に軽減されます。

 岸壁の整備については、滑走路の短縮により、故障した航空機を搬出する輸送機が着陸できなくなるため、代わりに運搬船が接岸できるようにするものであります。強襲揚陸艦の運用を前提とするものでは全くありません。また、現在の弾薬の保管、搭載に係る機能の移設に当たっては、辺野古にある既存の弾薬庫を活用しつつ、効率的に整備します。

 普天間の有する3つの機能のうち、辺野古に移るのはオスプレイなどの運用機能のみです。空中給油機は既に全機、山口県岩国基地へ移しました。緊急時の航空機受入れ機能も本土へ移します。また、オスプレイについては県外訓練等を着実に進めています。負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えておらず、最新鋭の巨大基地建設との御指摘は全く当たりません。

 普天間飛行場の1日も早い返還こそが地元の皆様の願いだと思います。引き続き、沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら全力で取り組んでまいります。

 歴史認識及び慰安婦問題についてのお尋ねがありました。

 安倍政権としては、戦後50年の村山談話、戦後60年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。

 慰安婦問題については、これまで累次の機会に申し上げてきたとおり、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛みます。この点についての思いは、私も歴代総理と変わりません。同時に、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えております。

 これまでの歴史の中では多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきました。21世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく考えであります。

 安全保障法制の整備についてお尋ねがありました。

 我が国は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んでまいりました。これは、時代の変化に対応しながら、憲法が掲げる平和主義の理念の下で最善を尽くし、自衛隊の創設、日米安保条約の改定、そして国連PKOへの参加など、国際社会の変化と向き合い、果敢に行動してきた先人たちの努力の結果であると思います。

 昨年7月の閣議決定は、国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が許されるという、従来の憲法解釈の基本的な考え方を変えるものではありません。日本国憲法の基本理念である平和主義は今後とも守り抜いていきます。平和国家としての歩みは、より確固たるものにしなければならない、このことは閣議決定にはっきりと明記しています。

 御指摘の、戦闘地域まで行って軍事支援するとの御趣旨は定かではありませんが、先般の閣議決定においては、今後、我が国が行う支援活動は、現に戦闘行為を行っている現場では実施しないこととしています。海外で戦争する国づくりにほかならないとの御指摘は全く当たりません。

 政府としては、閣議決定で示された基本方針の下、切れ目のない安全保障法制の整備を進めてまいります。

 核兵器のない世界についてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて国際社会の取組を主導してまいります。他方で、核兵器禁止のための国際約束を作成することについては、現時点で核兵器国を含む多くの国が受け入れておらず、直ちに交渉を開始することができる状況にはないものと認識しています。

 このような国際社会の厳しい現実を踏まえ、政府としては、現実的かつ実践的な取組を通じ、唯一の戦争被爆国としての国際的な責務を果たしてまいります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。