参院総務委参考人質疑 
2017年5月30日 参院総務委員会

山下よしき 4人の参考人の先生方、ありがとうございました。
 共産党の山下芳生です。
 最初に、先ほど森参考人から、この議会の議決による債権放棄について、首長からもそれから議会からもそういう提案が出るとは思われないと、もしそんなことをすれば次の選挙で落ちるんだという御意見がありまして、なるほどそういう面はあるだろうなというふうに思ったんですが、その御発言中に阿部先生がうずうずされておりましたので、ちょっと阿部先生に聞きたいと思うんですが。
 住民訴訟の豊富な御経験をお持ちの阿部参考人からすると、先ほどの意見陳述の中で、このままでは市長側は違法行為をしても議会の多数を味方に付けている限り安心だと、そういうふうにおっしゃいました。そう断言できる背景などがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

阿部泰隆(神戸大学名誉教授) いや、背景というか、責任負わされて何とか免れたいと思えば、何か方法はないかと考える。そして、元々地方公共団体の議会による権利放棄というのは考えられていなかったんですよ。だから、正確に覚えていませんが、平成10年頃からあちこちで始まって、それは物すごい知恵者がいたんですね。自治体の債権放棄というのは原則として禁止ですから、市民には資力がないなんという場合しか免除されませんから、普通はその債権放棄は考えていなかったんだけど、知恵者がいて、あっ、地方自治法の96条1項10号に議会の議決権があると考えてやり出したら、それが広がっちゃって。ウルトラCだったんですね。
 そういうふうに法の抜け穴みたいなものを見付けてくるというのが頭のいい人のやることで、だから、今回だって権利放棄議決について直接に禁止する規定を置かなければ、大抵の場合は、森市長さんの言われるように、俺の債務免除してくれなんということは言わないだろうけれども、中に知恵者がいて、やっぱりこれは規定ないんだからやってみようと、それで仮に裁判で負けたって5年後、10年後だと、その間ずっと住民訴訟の費用は税金持ちだと、その間俺が死んじゃったら多分勘弁してくれるしというので、とにかく引き延ばすということをやると。それで、うまくいったら勝つかもしれない、負けても何の損もしないということでやるわけです。
 住民訴訟は、平成14年の改正は、被告の市長が負けても弁護士費用は全部税金負担ということにしているので、最高裁まで勝つ可能性ゼロでも頑張るわけですよ。だから、あれはとんでもない改悪だというのは僕の方の言い分なんですが、取りあえずそれを前提にすれば、権利放棄議決、普通考えたらやらないだろうけれどもと思う善意の市長さんばかりじゃなくて、たまに仲間の議員さんと一緒になって何とか乗り切ろうと。
 じゃ、選挙で落ちるかといったら、選挙の争点ってたくさんありますから、何か一つぐらいまずいことがあったって選挙の争点になりません。そんなことで選挙は落ちるわけないですから、選挙できちんとやるからいいんだなんという議論ではなくて、違法行為は司法で判断する、違法行為でなければ選挙で判断すると、こういう仕分をしなきゃいけないんで、これ、違法行為だったら、やっぱり司法で判断されたらそれは責任を負っていただくと。
 だから、今回、余計なことの論争出ないように、権利放棄議決については正当な理由がある場合を除きできないという条文をちゃんと入れれば、そこの解釈問題になるけれども、ずっと論争が減りますと。なぜこの修正案に応じていただけないんですかと。これは法律を作るイロハのイ、常道なんですよ。ということです。

山下よしき 続いて、もう一問、阿部参考人にしたいんですけれども。
 先ほどの陳述の中で、その市長側は安心だということに続けて、住民側はどうせ権利放棄されると思うと住民訴訟を提起する意欲が減退しますと、これ非常に重要な御指摘だと思っておりますが、この辺りもう少しお聞かせいただければ有り難いです。

阿部名誉教授 住民訴訟を起こすのは物すごい負担です。役所は全部資料を持っています。住民側はいろいろ集めなきゃいけない。情報公開制度でかなりできるようになりましたが、情報公開で取れないのもありますし、とにかく無資力ですから大変苦労する。
 それでやって、それで弁護士もとにかくお金もらえぬ、手弁当でやって、しかも違法、過失、損害まで証明しなきゃいけない。違法を証明したら役立つはずなんだけれども、勝ちにはならない。それで、勝ったと思ったら権利放棄議決だなんて言われて、その次に、弁護士はそれでもただ働きでじゃ事務所は潰れます。それで、弁護士報酬はその次にもう1回訴訟やってやっと取れるんだけれども、そこでも役所は抵抗します。ところが、役所側の弁護士は最初から毎回毎回もらっています。そういうことだから、弁護士も引き受ける人は余りいない。住民だって、ただでずっと苦労している。そして、長く掛かると、もう最初の住民運動の熱意が消えちゃうものですから、もうやめたと言って住民が抜けていっちゃうんですね。で、最後まで続かない。だから、こういうもの早く片付けると。
 あと、問題が、政治問題も絡んでいるし、違法行為を早くやめないといけないですから、それを5年や10年掛かっちゃ駄目です。だから、さっと片付くような制度にしなきゃいけないから、論点はなるべくなくすと。
 違法行為はやめさせるという基本の基本から出発してくださいとお願いしているわけです。

山下よしき 中山参考人に質問したいと思います。
 先ほど、過大な人口減少予測、必要以上のコンパクト化、市民生活の破壊なんかと、そういうことが悪循環になるということを指摘されておりましたけれども、非常に新鮮な問題提起として聞かせていただきました。先生が悪循環だとお感じになっている具体例がもしありましたら、もう実名を、自治体名を言う必要はないと思うんですけれども、お聞かせいただきたいことと、そういう悪循環がもうどの程度広がっているというふうに御認識なのか、お聞かせいただければと思います。

中山徹(奈良女子大学研究院教授) 残念ながら、そういう事態、かなり広がっているんじゃないかなと思います。特に典型的なのは公共施設等総合管理計画ですけれども、公共施設の今見直しが進んでいまして、元々、公共施設等総合管理計画というのはインフラ長寿命化計画の自治体版でスタートしています。政府が元々考えていたのはインフラの長寿命化をどう図るかということだったんですけれども、実際、自治体レベルで取り組んでいるのは、公共施設の残念ながら統廃合計画になっているところが大半です。
 公共施設でも、その中で特に今大きなターゲットになっているのが子供に関する施設でして、具体的には、保育所とか幼稚園の統廃合、小学校の統廃合というのはかなり起こっています。それも、人口ビジョンできちっと考えればそんなに大幅に子供が減らないところでも、社人研の予測値を使いますと大幅に人口が減ってしまうということで、保育所や幼稚園、小学校の統合を進めるという傾向が出てきています。
 ところが、そういう社人研の予測値に基づいて統廃合を進めてしまいますと、かなりの学校や幼稚園が減ってしまう。で、我々町づくりやっている者から見ると、学校や幼稚園で重要なのはまず使いやすさなんですけれども、統廃合をすることによって地域から学校や幼稚園がなくなってしまうと、今度は非常に住みにくい地域に変わっていくと思います。ですから、必要以上の統廃合を進めることでその地域から学校や幼稚園がなくなると、今度その地域には住みにくくなる、そうしたら便利なところに引っ越そうかということで悪循環が起こり出すのではないかなと思います。
 ですから、今そういう公共施設の統廃合とかコンパクトでいいますと、むしろ周辺部、そういったところで過大なそういうコンパクト化や統廃合を進めることによってむしろ住みにくい地域が広がり、ますます周辺部の衰退に加速が掛かるという、残念ながらそういうことが想定できるのではないかなと思います。

山下よしき 続いて中山参考人に伺いますが、そういうやり方に対して、先生は最後のところで、地域資源を生かした地域経済の活性化が大事であって、その際、市民、事業者、行政など様々な主体の連携が重要となりますと、その要に座るのが行政なんだというふうにおっしゃいましたけれども、なぜ要が行政なのか。それから、その行政が要に座って地域の資源を生かした活性化が実現しているような好例がもしありましたら御紹介いただけますでしょうか。

中山教授 この間、政府でも地方創生でいろいろと事例を挙げていますけれども、その中でやっぱり大きくたくさん挙げられているところは、どちらかというと平成の大合併のときに余り合併せずに頑張ろうかと考えた自治体がかなり取り上げられているかと思います。特に中山間地域で事例として取り上げられているところは、大きな市町村に合併して周辺部になったところではなくて小さな自治体を維持しているところ、そういったところが事例としてはたくさん政府でも説明されているのではないかなと思います。
 そういった事例を見ていますと、全てとは申しませんけれども、大半のところは、村役場とか町役場が中心に座ってその地域の住民や事業者と一緒になって、地域の活性化をどう進めるか、それを真剣に考えているところが、やはりこの間、政府のいろんな先進的な事例でも取り上げられているのではないかなと思います。
 やはり、行政が存在している、行政があるということは、議員さんがおられるわけだし、首長もおられるわけなんですね。そこで一定の予算が当然入ってきて、それを地域のためにどう使うかというのを非常に小さい単位で考えられる。そこにやっぱり行政があるかないかというところが非常に大きなポイントでして、この間、中山間地域で地方創生に頑張っている自治体というのは、小さいけれども頑張っている、その中心に行政が座っている。やっぱり行政が座ることで市民や事業者のいろんな連携が広がっていく。やっぱりそういうところをきっちり見ることが重要じゃないかなと、そのように考えています。

山下よしき 森参考人に伺います。
 先ほどのお話の中で、2キロ圏内に、歩いて行けるところに職員が4人いて、フェース・ツー・フェースで市民に対応されていると。非常にこれすばらしいなと思ったんですけれども、これは基本的ですけど、職員さんがそういう2キロ圏内にいるところがあるということですか。

森雅志(富山市長) 79か所ありまして、平均すると4人いるというところで、少ないところは1人のところもあれば2人のところもありますが、専ら定年になった後の職員の再雇用です。
 再雇用は、希望する再雇用は100%再雇用していますので、そういう形で経験値を生かしていくということはやっぱり市民にとっても大変プラスになりますし、安心感も生まれますし、独り暮らしの高齢者も、極端に言うと小学校の校区よりも狭いですね、2キロ圏内というのは、十分歩いて行ける距離ですので、これが安心につながっていくだろうというふうに思いますので、コンパクトシティー政策と言っていますけれども、腕力で住み方を凝集させようとしているのではなくて、これ以上の拡散を防ぐということが第一義的な目的です。
 それをしっかりやりながら、周辺部や縁周部にいる方のシビルミニマムはきちっと守っていかなきゃなりませんので、やっぱり市役所の出先、市立公民館、出先の図書館、さらに地域包括支援センター、そういったことをちゃんと配置していくことは大事だというふうに思って頑張っております。

山下よしき もう一問、森参考人に伺いますが、そのフェース・ツー・フェースというのが非常に大事だと思うんですが、先ほど中山参考人から、独立行政法人化を窓口業務でも可能にしようというのが今度の法改正の一つの趣旨なんですが、そうしますと、フェース・ツー・フェースで様々な要求が住民から寄せられる。それは単に定型的業務というふうに仕分していますけれども、それにとどまらない様々な、そこから先につなげていかなければならない要求があると思うんですね。それが遮断されるというのは非常にまずいんじゃないかと私は思うんですが、フェース・ツー・フェースが大事だという先ほどの御発言の中に、その点の御見解、いかがでしょうか。

森市長 私自身は、今申し上げたような基本的な考え方でこれからもやっていくことが大事だと思います。
 しかし、全国の、特に小さな町村の中には、現時点において既に国から要求されるデータですとかあるいは事務、どんどん増えていくことが対応できないと言っているところがたくさんあるわけです。したがって、そういうところなどにおいて、さっき言いましたように給与計算を共同でやるとか、できる業務はやっぱりあるんだろうと思いますので、その限りにおいてそういう法人に委託するということの意味はあるんだろうというふうに思います。ですから、自治体ごとに対応は異なっていくだろうと思います。
 それで、さっき言いましたが、私は、現業は一定程度民間委託や民営化ということをやっていますが、窓口は今言いましたような姿勢でこれからもやっていきたいというふうに思います。

山下よしき ありがとうございました。終わります。