原発を永遠に使い続ける エネルギー基本計画批判 
【議事録】2014年6月12日 参議院内閣委員会質問

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 山本大臣に質問したいと思います。
 1956年、原子力基本法、原子力委員会設置法が制定され、それ以来、原子力委員会は常に我が国の原子力政策行政の中核にあって、原発推進政策を担ってきたと思います。原発は安全だ、放射性物質が大量に放出されるような深刻な事故は起きないといったいわゆる原発安全神話を作り上げてきた組織の一つだと思います。
 今回、組織を見直すというのであれば、まずこの原発安全神話の醸成に深く関わってきたことへの反省が求められると思いますが、その点、大臣の認識、いかがでしょうか。

○山本一太内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 東京電力福島第一原子力発電所の事故は過酷事故への対応策が欠如していたことを露呈しておりまして、いわゆる安全神話に陥ってしまったというふうに理解をしております。
 政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を防ぐことができなかったということを真摯に反省をし、事故の原因等を踏まえ、このような事故の再発の防止のための努力を続けていかなければいけない、そう考えております。

○山下よしき 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、いわゆる国会事故調の委員長、黒川清さんは、想定できたはずの事故がなぜ起こったのか、その根本的な原因は日本が高度経済成長を遂げた頃にまで遡る、政界、官界、財界が一体となり、国策として共通の目標に向かって進む中、複雑に絡まった規制のとりこが生まれたと、先ほど水野委員の御質問にも絡んでくるようなことが指摘されております。
 その上で、こう国会事故調の報告書は述べております。「当委員会は、本事故の根源的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が「逆転関係」となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊」が起きた点に求められると認識する。何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなく明らかに「人災」である。」。
 要するに、規制する立場とされる立場の逆転関係ということが根本的原因だという指摘なんですが、これ、原子力行政に関わる際に非常に大事な観点だと思いますが、この教訓についてどのように今回生かされるんでしょうか。

○山本大臣 原子力委員会の見直しですけれども、一昨年、秘密会議という批判を受けました。こうした不適切な委員会の運営、それから、委員から御指摘のありました東京電力福島第一原子力発電所事故等による原子力をめぐる環境の変化等を踏まえて、内閣官房に設置された有識者会議において抜本的な見直しが行われました。
 その結果、中立性を確保しつつ、平和利用の確保とか放射性廃棄物の処理処分等に関する機能に重点化するとともに、今後は原子力利用の推進を担うのではなく、原子力に関する諸課題の管理、運営の視点から活動することが指摘をされました。
 こうした指摘も踏まえて、今回の法改正では、所掌事務の廃止、縮小等を行うとともに、法改正後の原子力委員会においても、企画、審議、決定のプロセスについて中立性等を確保するために、定めたルールにのっとり厳正な運営を行い、しっかりと役割を果たせるように努力をしてまいりたいと思います。

○山下よしき ちょっと私の質問に正面から答えていただけてないんですが、要するに、規制する側とされる側が逆転していたという問題なんですね。
 この国会事故調の報告書は、「規制当局は原子力の安全に対する監視・監督機能を果たせなかった。専門性の欠如等の理由から規制当局が事業者の虜となり、規制の先送りや事業者の自主対応を許すことで、事業者の利益を図り、同時に自らは直接的責任を回避してきた。規制当局の、推進官庁、事業者からの独立性は形骸化しており、その能力においても専門性においても、また安全への徹底的なこだわりという点においても、国民の安全を守るには程遠いレベルだった。」と、極めて厳しい指摘がされております。
 要するに、専門性も責任感も欠如していたと、もう全部規制されるはずの側の電力会社等に委ねられていたと。こういうことをもう2度とこれ、原子力行政に携わる場合、この組織を改編する場合、この問題を深く生かさなければならないと思うんですが、その点の言及が余りなかったんですが、いかがでしょうか。

○山本大臣 今委員が御指摘された様々な点も踏まえて、ここは私の所掌ではありませんが、原子力規制委員会も設立をされたというふうに思っておりますので、過去の様々な反省を踏まえてしっかりと原子力委員会も運営をしていかなければいけないと、こう思っております。

○山下よしき 次に、衆議院の審議で山本大臣は、原子力委員会は、エネルギー基本計画と整合性を取りつつ、エネルギーに関する原子力利用などの基本的考え方を策定していくという答弁をされました。
 安倍内閣が4月に閣議決定されたエネルギー基本計画というのは、原発を重要なベースロード電源と位置付けて、要するに、今後も一定割合は必ず原発を使い続けるということを示すものになっておりますし、「もんじゅ」を始め核燃料サイクルの推進も明記をしております。事実上の原発永久化宣言というものになっている。
 私は、これは、今回の福島第一原発の事故を踏まえてこういう基本計画が閣議決定されたこと自体とんでもないと思いますが、本法案によって立ち上げる新しい原子力委員会がエネルギー基本計画推進のための組織ということになるんでしょうか。

○山本大臣 委員御存じのとおり、原子力政策を含む全体のエネルギー政策については、法律に基づいてエネルギー基本計画が閣議決定されることになっています。エネルギーに関する原子力政策についても、これは同計画において示されるものだというふうに考えています。
 原子力委員会においては、エネルギー基本計画の内容は踏まえつつ、平和利用の確保、放射性廃棄物の処理処分等といった重要な政策課題を中心に、関係各省における施策の実施状況を聴取し、必要に応じて今後の取組等に関する考え方を示すことで具体的な施策の進捗を促す役割を担っていると、こう考えております。

○山下よしき エネルギー基本計画を踏まえつつとおっしゃいました。それから、整合性を取りつつというのも答弁としてあったんですが、私は、今回、福島第一原発事故の教訓を踏まえて抜本的に組織を見直すというんであれば、やっぱりこういう原発回帰の政策ではなくて、原子力委員会を本当にそこから根本的にその存立を見直す必要があると思うんですよ。
 今回は、残念ながら、既にやめている仕事、他組織に移って形骸化しているものを整理、廃止するだけで、有識者会議が新委員会は政権や大臣からの独立性に配慮すべきだとされた部分については見直されていないと思います。その最たるものが、大臣が繰り返しているエネルギー基本計画との整合性、それを踏まえてということにあると思うんですが。
 福島第一原発事故を目の当たりにして、多くの国民が原発ゼロの社会を求めております。これは世論調査を取ってもはっきりしていると思うんですね。例えば時事通信の5月の世論調査を見ますと、国内の原発をどうするべきかとの問いに、徐々に減らし、将来的にはなくすべきだが49.3%、それから、なるべく早くなくすべきだが24.7%、直ちになくすべきだが10.3%、合わせて84.3%の方が原発ゼロを志向されております。
 こうした世論を無視していいのかと、原発ゼロ社会を望む8割超の国民の声に逆行する原発永久化宣言をしたエネルギー基本計画との整合性を取るような原子力委員会にすべきではないと思いますが、いかがですか。

○山本大臣 先ほども申し上げましたが、原子力政策を含む全体のエネルギー政策、これは法律に基づいてエネルギー基本計画が閣議決定されるということになっております。この閣議決定されるエネルギー基本計画と全く整合性のない、例えば基本的考え方を示せるかということについて言うと、それは難しいというふうに考えております。

○山下よしき ということは、やはりこの福島第一原発事故を踏まえて国民がゼロを望んでいるということと残念ながら違う方向で今度の新組織を立ち上げようとしているにもかかわらず、そういう性格の原子力委員会にならざるを得ないということなんですよ。
 そこで、エネルギー基本計画での原発の位置付けについて山本大臣に基本的認識を伺いたいんですが、原発をベースロード電源としている、この意味について御説明いただきたいと思います。

○山本大臣 エネルギー基本計画におけるこのベースロード電源というのは、発電あるいは運転コストが低廉で安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源と、このように位置付けられております。

○山下よしき 運転コストが低廉というんですが、何でそういうことが言えるのか、どこからそういう説明になるんですか。

○山本大臣 これは、エネルギー基本計画を策定する中で様々な議論をした結果、そういう結論になったということでございます。

○山下よしき 要するに、事故対応費用を非常に低く見積もっているということがあるんですね。キロワット時当たり8.9円という数字がこのベースになっていると思います。しかし、それは2011年の古い数字で、福島の事故対応費用が約5.8兆円と見込まれていた当時の額であります。しかし、もう既にどんどんどんどん増えておりまして、もう11兆円とか13兆円を超えていると、また、これからももっと増えるであろうということが言われております。ですから、そういうことをちゃんと含めれば、原発が低廉などということは言えるはずがない。世界では、少なくとも先進国では、原発というのは高コストで経済性が低いということは常識になっております。
 世界の原発の政策、エネルギー政策に詳しい富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員が週刊東洋経済でこう述べておられますが、イギリスでは原発に対してキロワット時当たり15.7円の売電収入保証制度を導入したと。日本のこの8.9円と比べてみて倍ぐらいになるわけですが、これ1ポンド170円換算ですが、しかも、35年間の売電収入保証制度を導入しております。陸上の風力よりも価格が高く、保証期間は2倍以上長い。これ、原発はハイリスク・ハイリターンだから、そこまで保証しないと事業者は原発を運転してくれないと政府が認めたという指摘であります。
 実際に、民主党政権時代にコスト等検証委員会が設置されて、原発は下限値としてキロワット時当たり8.9円だということになっているんですが、そのときも事故対応費用が増えれば更に高くなるというふうになっておりました。
 ところが、今回のエネルギー基本計画の策定時においては、そういうことがきちっと議論されていない。計画案を審議する基本政策分科会で、委員としてもっとそういう真のコストについて議論すべきだ、検討すべきだと問題提起された京都大学植田和弘教授は、議論が深まらずに終わったのは非常に残念だというふうに話しておられます。
 既にこの8.9円の試算についてはもうその根拠が、事故対応費用がもう倍近くに膨らんでいるわけですから、これは非常に低廉だということの元々の根拠が崩れております。原発の真のコストが政府試算の8.9円の2倍近い17円になる可能性は、日本経済研究センターも指摘されております。
 イギリスだって日本だって、いろいろ試算してみればこんな安いことはないということになっているので、運転コストが低廉だというのは、これ、いつまでもそんなこと言ってたら現実から乖離する、世界の流れからも乖離する、そういう認識ありませんか。

○山本大臣 コストについては、今委員がおっしゃったように、様々な分析やいろんな考え方があると思います。これは政府内で様々な要素を総合的に検討し、与党内でも議論をし、安倍内閣の判断として低廉で安定的に発電することができるベースロード電源ということで位置付けたと、こういうことでございます。

○山下よしき だから、その根拠を示してほしいと言っているんですが、示さずにそう位置付けたとしか答えがない。もう基本的な問題ですから、そこは本当にそれでベースロード電源にしていいのかと、この福島の事故を踏まえてもですね。
 それから、優れた安定供給性ということがありましたけれども、これはどういうことですか。

○山本大臣 そのままだと思います。安定性があるという意味だと思います。

○山下よしき 基本的なことですから、もう少しちゃんと根拠を述べていただきたいのですが。
 先ほど昼夜問わずとおっしゃいましたけれども、しかし、今、日本にある全ての原発が稼働してないわけですね。安全性に問題があるからですよ。一旦トラブルがあって止まれば、これは安全確認、非常に時間が掛かるのが原発でありまして、3・11以前も、実は故障や地震で度々停止してきたのが日本の原発であります。定期点検も13か月に一度やらなければならないわけで、日本の原発の稼働率というのは、地震大国ということもあったわけですが、約7割です、海外の原発は約8割、決して安定供給できているわけではありません。現に今全部止まっております。
 これは、エネルギー経済研究所、永富悠さんなどによる原子力発電所の設備利用率及び原因別停止時間の各国比較を見ましても、日本の原発の設備利用率は、1995年79.4%から2009年64.7%というふうに下がっております。
 これは、決して安定供給性などということは言えないんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○山本大臣 何度も同じ答弁で恐縮ですが、安倍内閣として政府内そして与党内、いろいろと議論をした結果、私たちはこういう結論に達したと、安定的に発電することができて昼夜を問わず継続的に稼働できる電源、ベースロード電源というふうに位置付けたと、こういうことでございます。

○山下よしき 本当に今の原発事故と今の現状を踏まえているのかなと言わざるを得ませんが。
 私が原発事故で一番現場に行って教訓にしなければならないと思ったのは、やっぱり福島の今を見よということなんですよ。
 参議院の復興特で、私もメンバーでしたけれども、原発事故後一年半たったときに、2012年10月ですが、原発サイトの中に入りました。御存じのとおり、Jヴィレッジから福島第一原発まで大型バスで向かってまた帰ってきたわけですが、20キロ離れているJヴィレッジから福島第一原発までの間の光景というのは、もう本当に今でも変わらないですが異様な光景でありました。20キロ圏内の楢葉町は避難指示解除準備区域に当時なっておりましたけれども、より原発に近い富岡町、大熊町は警戒区域のままでありました。
 バスが走った国道6号線の両側には田んぼが広がっておりました。実りの秋でしたけれども、稲穂がこうべを垂れているようなシーンは一つもありませんでした。背の高い雑草、セイタカアワダチソウで一面覆い尽くされておりました。交差点という交差点は全部黄色の信号が点滅しておりました。結局、人が一人も住めていない、ですから信号はそういう状況に放置されているわけであります。
 要するに、30分ぐらいバスノンストップで走りましたけど、それぐらいの広い範囲、しかも当時で1年半、現在もう3年3か月たっているにもかかわらず、たった1回の過酷事故が起これば、これだけの長期にわたり、これだけの広範囲にわたって作物を作ることもできなければ人が住むこともできない状況がずっと続いちゃう、こんな事故というのは原発事故以外にありません。原発事故にはほかの事故にはない異質の危険があるというふうに、本当にそこに行ってそのことの意味をまざまざと感じたことを覚えておりますけれども。
 山本大臣、その異質の危険、要するに、事故を幾ら起こさないように努力したとしても、今の人類の到達点、科学技術によって事故を絶対に起こさない原発を造ることは不可能です、今。だったら、1回でも事故を起こしたらこんなことになる原発と、私たち人類社会、人間社会との共存はできるのかということが今問われていると思うんですが、そういうことをしっかり考えるのが私は原子力政策全体を本当に考える上で一番の、福島の今を見よということを原点にしなければならないと思うんですが、そういう観点、異質の危険があるという点について大臣の認識を伺いたいと思います。

○山本大臣 山下委員とは、エネルギー政策、ベースロード電源の考え方等々、相当考え方違う点はあると思いますけれども、やはり福島原発事故の教訓を忘れてはならないというところについては共通認識を持っておりますし、これをしっかり踏まえた上でエネルギー政策を考えていかなければいけないというふうに考えております。
 いずれにせよ、新たな原子力委員会が発足をすれば、過去の教訓もしっかりと踏まえた上で原子力の平和利用等についてしっかりと原子力委員会が機能を果たしていけるように、担当大臣として全力を尽くしてまいりたいと思います。

○山下よしき 本当に教訓を踏まえるんだったら、原発を永久に運転し続ける、核燃サイクルまで明記する、こんなエネルギー基本計画自身が問われなければならないと私は思うんですね。
 それから、再生可能エネルギーについてもエネルギー基本計画については述べているんですけれども、私は、原発をベースロード電源にしてしまうことで、再生可能エネルギーの普及への取組が後景に追いやられるということについても、これは非常に重大な問題だと思っております。
 2013年環境省の委託調査、2050年の再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書というものがありますが、ここで再生可能エネルギーの導入見込みの推計がされております。低位のケースで2030年に2,173億キロワットアワー、これはエネルギー基本計画で欄外に示された目標20%と同水準でありますが、同時に、この環境省の調査では、高位のケースとして2030年の再生可能エネルギーの発電量3,227億キロワットアワー、低位ケースの1.5倍なんですね。環境省が再生可能エネルギーのポテンシャル調査を行って、最大限顕在化させることを目指して施策を強化する場合を想定したら、そのぐらいはすぐできるということが一方で試算がありました。
 ところが、エネルギー基本計画はそうではない低位の方を欄外で書くようになっております。具体的に、その保証というのは極めて心もとない状況ですが、なぜそうなっているか。やはり、原発をベースロード電源、再生可能エネルギーというのはそうではない極めて不安定なエネルギーなんだという位置付けをするから、本気で再生可能エネルギーの普及開発というものに力が入らないという位置付けになっている。
 だから、私は、ベースロード電源を、あの事故を踏まえても、原発に頼るということが、本来この事故から脱却して新しいエネルギーに向かうべき、再生可能エネルギーの開発普及を抑えるという計画そのものにもなっているというふうに思うんですが、この点、いかがでしょう。

○山本大臣 エネルギー基本計画の表現についての細かい議論をするつもりはありませんけれども、原発をベースロード電源として位置付けるということと再生可能エネルギーを導入するということは矛盾をしていないというふうに私たちは考えております。
 更に一言言えば、私も科学技術イノベーション担当大臣ですけれども、やはり科学技術イノベーションの可能性というものもしっかりと踏まえていかなければいけないというふうに考えております。

○山下よしき そういう、幾ら聞いても、私は、福島原発事故の教訓というものを、本当に国民の世論というものを踏まえたら、原発を永久的に使い続けるという基本計画というのはあり得ないと思っております。それを土台にした今度の原子力委員会というものの改編というのもやはり根本から見直すべきだというふうに思います。
 次回以降、また具体的に、特に今度は住民の避難の問題について議論させていただきたいと思います。
 今日は以上で終わります。ありがとうございました。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。