平壌宣言明記は重要—日朝合意文書で指摘 
【議事録】2014年6月13日 参議院北朝鮮による拉致等に関する特別委員会質問

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 まず、今回の日朝政府間協議と合意の評価について伺います。
 我が党は志位委員長の談話で、これは拉致問題などを解決する上で重要な前進の一歩である、我が党は、北朝鮮が合意を確実に実行するよう強く求めるとともに、日朝双方の行動により、拉致被害者の帰国の実現を始め、日朝平壌宣言で合意された諸懸案が前進することを願うものであると述べました。
 そこで、岸田外務大臣、古屋拉致問題担当大臣は今回の合意についてどのように評価されているか、伺いたいと思います。

○岸田文雄外務大臣 今回の日朝政府間協議の結果、全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施すること、これが約束をされました。そして、北朝鮮側が、全ての機関を対象とした調査を行うことができる特別の権限を有する特別調査委員会を立ち上げること、さらには、この調査の過程において日本人の生存が発見された場合には、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、必要な措置をとる、こういったものを文書でしっかり確認した次第であります。
 こうした日朝双方がとるべき行動措置について文書の形で明確にお互いの意思を確認をできた意義は大きいと思っていますし、これは大きな一歩であると認識をしております。
 是非、今後とも、この調査、我が国の主権の及ばない地域において行われる調査が実効性をしっかりと確保できるということをしっかりと担保しなければいけません。そして、具体的な結果を得るべく全力で取り組んでいきたいと考えています。

○古屋圭司国務大臣 安倍政権は、安倍総理御自身が強い決意の下、この拉致問題解決をするというこの姿勢、一貫しています。
 いろんな取組してきました。そして、今回はこういう形で合意をしたと。総理もいつも言っているように、チャンスがあればしっかりそれを捉えて前進をすると、このまずスタートラインに立ったということだと思います。これからまさしく胸突き8丁の交渉が始まります。私も全力で頑張ってまいりたいと思いますが、まずは、この調査委員会、どんなのが立ち上がるか、組織とか人とか、こういうものをしっかりまず見極めるということですね。
 やっぱり、ここまである意味では北朝鮮が合意をせざるを得なかった背景は3つあると思いますよ。一つは、やっぱり政権が安定している、厳しいスタンスを取る議員が内閣総理大臣であるということ。2つ目、国際社会の圧力。3つ目、やはり金正恩という若い指導者に替わっていると。こういったものが背景にあると思いますが、しっかり私ども、政府を挙げて、それを是非オールジャパンで、この問題解決に向けて、全ての拉致被害者の帰国に向けて全力を尽くしたいと思います。

○山下よしき 日朝合意文書の冒頭に「日朝平壌宣言に則って、」とされているのが重要だと思います。拉致問題と併せて、核、ミサイル、植民地支配の清算などを包括的に解決するという平壌宣言の立場で進めることが鍵だと考えますが、外務大臣の認識、いかがでしょうか。

○岸田外務大臣 政府の基本的な方針ですが、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイル、こうした諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、国交正常化を図るべく努力をしていく、こうした方針につきましては一貫しており、全く変わっておりません。
 そして、今回のこの合意文書の冒頭に「日朝平壌宣言に則って、」というものを明記し、これを日朝双方においてしっかりと確認をしたということであります。是非、こうした確認した基本的なこの方針に基づいて、しっかりと結果を出すべく努力をしていきたいと考えております。

○山下よしき 次に、拉致問題の包括的で全面的な調査について伺います。
 今回の日朝合意文書では、北朝鮮側は、過去北朝鮮側が拉致問題に関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価し、従来の立場はあるもののとして、調査を包括的、全面的に実施し、全ての問題を解決する意思を表明したとあります。
 伊原局長に伺いますが、この努力を日本側が認めたことを評価し、それから、従来の立場はあるもののという意味について説明いただけますか。

○伊原純一外務省アジア大洋州局長 今委員御指摘の部分は、非常に重要な合意文の箇所でございます。北朝鮮は、事あるごとに拉致問題は解決済みだという立場を今まで表明して、したがって、これ以上やることはないとか、やるべきことは全部やったとか、そういう立場を取っていた。ここを改めさせて、日本側がこれまでも求めてきたような全面的な調査に踏み切らせる、そのためのやり取りの中で今委員御指摘の文章は作られたということでございます。
 したがって、従来の立場はあるもののという、ここでの従来の立場というのは、拉致問題は解決済みとしてきたこれまでの立場はあるもののという意味でございますし、そこにある意味持っていくために、私ども、これまでの北朝鮮のやってきた調査の結果を受け入れたり評価したりしたことはありませんが、北朝鮮は北朝鮮として努力をしたということをある意味でアクノリッジ、英語で言いますと、するということで、彼らが従来の立場はあるものの、全面的な調査をするということを受け入れたと、そういうことでございます。

○山下よしき 次に、特別調査委員会の設置について伺います。
 日朝合意文書では、北朝鮮側は「特別の権限(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限。)が付与された特別調査委員会を立ち上げることとした。」とありますが、外務大臣、これはどういう意味でしょうか。

○岸田外務大臣 過去の調査におきましては、特殊機関の存在がこの拉致問題の真相究明に大きな障害になってきた、こういった経緯があったと認識をしております。こうした経緯を踏まえまして、御指摘の特別な権限という部分ですが、北朝鮮側が特殊機関も含めた全ての機関を対象とした調査を行うことが必要であるという観点から、こうした権限が付与された特別委員会を立ち上げる、こういった合意に至った次第であります。
 今申し上げましたような経緯を念頭に、是非この特別調査委員会に実効性を与えるためにこういった文言を加え、双方で一致したという次第であります。

○山下よしき 今の御答弁にも関することですが、北朝鮮は10年前にも、政府から必要な権限を与えられた調査委員会を立ち上げて、特殊機関を含む関係機関も調査対象にした再調査を行ったわけですが、伊原局長、どういう結果になりましたでしょうか。

○井原局長 当時のいわゆる白紙に戻しての再調査というものについて、日本政府としての評価は、北朝鮮側の結論というのは客観的に立証されておらず、我が方としては全く受け入れられないというものであったわけです。また、前回の調査は、北朝鮮側は、特殊機関が関与した事案であるとして満足な回答を行わなかったり、あるいは特殊機関の関係者であるので面会は実現できないなど、特殊機関の存在が真相究明にとって大きな障害になっているということが我が方の評価としても明らかになっております。
 したがって、今回全面的調査をするに当たっては、私どもとしてはこの点が非常に重要である。すなわち、今回の特別調査委員会というのは、こうした特殊機関についてもしっかり調査ができる権限を与えられたものであることが重要であるということで、今回は文書にこの点を明記させたということでございます。

○山下よしき もう一度確認的に聞きますが、前回調査では、先ほど外務大臣から御答弁あったように、北朝鮮の特殊機関の存在が真相解明にとって大きな障害となっていることが明らかとなったと日本側の報告書ではされております。
 2点確認したいんですが、特殊機関は今も存在しているのか。それから2つ目、全ての機関を対象とした調査を行うこと、当然この中に特殊機関も調査対象に含まれているのか。いかがでしょうか。

○井原局長 北朝鮮のそのいわゆる特殊機関について、これまで北朝鮮側からその具体的な内容について説明を受けているわけではございません。
 ただ、今回私どもから何度も強調したのは、全面的な調査というのは、やはり全ての機関、その全ての機関の中には、特殊機関も含まれるこの全ての機関を対象とした調査でなければならないということを主張し、その結果として今回のような合意文に至ったということでございますので、この全ての機関の中には当然に特殊機関も含まれているというふうに考えております。

○山下よしき 非常に大事なポイントだと思うんですが。
 私たち日本共産党は、拉致問題の真相解明と解決のためには、北朝鮮側の交渉当事者並びに調査の責任者については、拉致問題の全容を知っており、問題の解決に責任を負うことができ、その権限を持った人物が当たらなければならない、こう考えております。要するに、きちんとした権限を持った人物が調査の責任者であり、日本側との交渉の当事者でなければならないと考えておりますが、外務大臣、この点の御認識いかがですか。

○岸田外務大臣 これから開始されます調査の実効性をしっかりと担保する上においても、御指摘の点は大変重要なポイントであると認識をしております。
 まず、調査が開始される前に、北朝鮮側から特別調査委員会の組織、構成、責任者、これが明らかにされ、我が国に通報されるとされています。これをしっかりと確認し、見極めた上で、我が国の対応も進めていきたいと考えております。

○山下よしき 残り時間で核問題について伺います。
 今回の日朝政府間協議で、日本側からは、北朝鮮による核・ミサイル開発及び地域・朝鮮半島の緊張を高めるような挑発行動について、北朝鮮の自制を求め、日朝平壌宣言や関連国連安保理決議、6者会合共同声明等を遵守するよう求めたとされておりますが、伊原局長、相手側の反応はどうだったんでしょうか。

○井原局長 今委員御指摘のようなその日本の立場については、今回の協議の際も明確に北朝鮮側に我が方の立場を伝え、それから申入れを行いましたが、こういう外交上のやり取りですので、北朝鮮側の発言の一つ一つを具体的に御紹介することは差し控えたいと思いますが、北朝鮮側からは、核・ミサイル開発を含む安全保障問題に関する北朝鮮の従来の立場を繰り返していたということでございます。

○山下よしき G7の首脳宣言でも、我々は北朝鮮の核及び弾道ミサイル開発の継続を強く非難するという文言が入っております。そして、2005年9月の6者会合共同声明の下での約束を完全に遵守するよう要請する。もちろん、国連安保理決議の下での義務ということも入っております。
 外務大臣、こういう立場、非常に大事だと思いますが、いかがでしょうか。

○岸田外務大臣 我が国としましても、日朝平壌宣言にのっとって拉致、核、ミサイル、諸懸案を包括的に解決していく、こういった方針で取り組んでおります。
 そして、特にこのミサイル、核につきましては、御指摘のように様々な国際場裏におきまして問題が指摘をされ、そして取組が確認をされております。
 また、拉致問題につきましては我が国が主体的に取り組まなければならない大変重要な課題だと認識をしております。
 いずれにしましても、米国、韓国を始めとする関係国としっかり連携をしながら、こうした諸懸案を包括的に解決するべく、我が国としても全力で取り組んでいきたいと存じます。そして、その大きな一歩が今回のこの日朝政府間協議の合意でなければならないと考えています。全力で取り組んでいきたいと考えます。

○山下よしき 終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。