独立行政法人統廃合の際の雇用継承は政府の責任で 
【議事録】2014年6月5日 参議院内閣委員会質問

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 現行法では、独法の目標期間終了時までの見直しについて、独立行政法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方その他組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるとしておりましたが、法案では、業務の廃止若しくは移管又は組織の廃止その他所要の措置を講ずるとなっております。
 業務の廃止、移管、組織の廃止を明文化した理由は何でしょうか。

○稲田朋美国務大臣 今回、改正法の35条でございますが、引き続き、中期目標期間の終了に際して主務大臣が組織及び業務の全般にわたる見直しを行い必要な措置を講ずるというふうにいたしております。これまでも組織の在り方を検討するということとしておりましたが、今回の法改正では、組織の在り方の検討においては、最初から組織が存続を所与のものとせず、主務大臣による厳しい見直しを促すため、組織の存続の必要性を検証すべきことを明示することといたしたものでございます。
  〔委員長退席、理事芝博一君着席〕
 また、これまで見直しの結果に基づき所要の措置を講ずると規定をしていたところですが、これについても主務大臣による厳しい措置を促すため、所要の措置の具体的内容として、これまでも当然にあり得るものとして想定をいたしておりました業務の廃止若しくは移管又は組織の廃止という措置を確認的に明示することといたした次第でございます。

○山下よしき 確認的にと言いますけれども、明示したというところに今改定の本質、狙いが示されていると思わざるを得ません。
 しかも、主務大臣が廃止、移管を決断できなければ、総理大臣が任命する独法評価制度委員会が主務大臣に勧告を行う、同時にその勧告についての報告を求める。さらに、総理大臣に、内閣法に基づいた措置、つまり閣議決定などが行われるように意見具申を行うという強烈な権限を与えられた評価委員会を導入するということになっているわけですが、これはなぜそういう制度をつくるんですか。

○稲田大臣 今回の改正では、中期目標期間の終了時の主務大臣による見直しがいわゆるお手盛りにならないように、独法評価制度委員会が主務大臣の見直し内容を第3者的にチェックすることといたしておりまして、委員会は主務大臣に対して意見を述べ、更に勧告することができるというふうにいたしております。
 この場合、政策の実現に責任を持ち、その法人の事務事業を推進する立場の主務大臣の視点、そして第3者的な立場からチェックを行う委員会の視点はおのずと異なることから、事務、業務の存廃等に関する見解が対立する事態も想定がされます。こういった場合では、委員会が勧告を行ってもこれは直接の法的拘束力はなく、主務大臣が勧告内容に応じないこともあり得ることから、内閣総理大臣の指揮監督権の発動を促すため、委員会は内閣総理大臣に意見具申することができるようにしたところでございます。

○山下よしき 私は、主務大臣の評価をお手盛りというふうに評価すること自体が間違いだと思いますよ。
 有識者懇談会では、主務大臣は目標案、その変更案を作成する際に法人と十分に意思疎通を図ると。これはお手盛りじゃないんですよ。その法人が今どんな役割を果たしているか、職員がどんなモチベーションでどんな仕事をしているかを、ちゃんと現場の声を意思疎通を図って知るというのが主務大臣の一番大事な責任なんですよ。それをお手盛りといって逆に切り捨てるという評価をすること自体が私は間違いと思う。
 それから、そういう意思疎通をしながら評価をした主務大臣の判断を超えてこの第3者機関が判断するわけですが、要するに、主務大臣がどう考えようとこの委員会の判断が大きな影響を与える仕組みになっているわけですが、そうなるとこの委員会の人選、極めて重要だと思うんですが、どうするんですか。

○讃岐建総務大臣官房審議官 お答えいたします。
 独立行政法人制度委員会は、国家行政組織法第8条による合議制の機関、国家行政組織法8条には、国の行政機関は、学識経験を有する者の合議により処理することが適当な事務をつかさどるための合議制の機関を置くことができるとされているところでございまして、独法制度評価委員会も同条に定める合議制の機関でありますことから、その委員の人選に当たっても同条の趣旨にのっとって行うべきものと考えております。

○山下よしき 一般的にはそうなんですけど、さっき言ったように、主務大臣が現場側と十分意思疎通をしてその業務の継続性が必要だという判断をしたにもかかわらず、いや廃止せよということを勧告できるのがこの第3者機関なんですね。しかも、全ての府省に係る独法をそういう判断していくわけですよ。
  〔理事芝博一君退席、委員長着席〕
 そんな視野が広くかつ専門性が深い、そういう学識経験者はいるんですか、そんなことできるんですか。

○讃岐審議官 この評価制度委員会の委員の任命につきましては、審議会の運営に関する指針というものが平成11年に定められておりまして、その指針においては、委員の任命に当たっては、当該審議会の設置の趣旨、目的に照らして、委員により代表される意見、学識、経験等が公正かつ均衡の取れた構成になるように留意するものというふうにされてございますので、その趣旨をよく踏まえて人選をするということを考えております。

○山下よしき 一般的に言ったらそうなるんですけど、具体的に、100ある独法一つ一つを、直接担当する主務大臣が継続の必要性ありと認めても、いや廃止だというような判断をする権限なんですよ。しかし、そんなことができる人がいるのかと。さっき上月理事が実際はこんな分厚いドキュメントを見せられてとても判断できないよというのを全ての独法に対してやる責任が負わされることになるんです。
 そうすると、私は、現実的には、やっぱり総理が任命する、その任命権者の意図に即した判断をする人が集められるということになりかねない、初めに組織の廃止、業務の廃止ありきということになりかねない、それを強烈に推進するための第3者機関になりかねないと、そう思わざるを得ません。
 そこで、そうなりますと、私は独法に関する統廃合に伴う雇用問題というのは非常に大きな影響が及ぼされると思っております。既に基本方針では、現在の独法100を87にするということが決められております。もう既にそのうちの2つは廃止されました。今後、19の法人を8法人に統合するということになるわけですが、しかし、この19法人に今勤めている常勤職員は約2万人に上ります。この2万人の雇用や身分に関わる問題がこれから出てくるわけであります。その可能性があるわけですね。ですから、これは今決まって推進されようとしているところだけですから、今後、独法の統廃合ということになりますと、そういう万単位の雇用問題が生じる、そういう大問題であります。
 そこで、この法改定で組織の廃止についての規定を仕組みも含めてさっき言ったように強化する一方で、その結果生まれる職員の雇用問題についてはどんな対応がされようとしているのかについて質問をしたいと思いますが、法案50条で離職を余儀なくされていることが見込まれる者については密接関連法人への就職あっせん規制の対象にしないとしております。
 まず、この離職を余儀なくされることが見込まれる者とは一体具体的にどういう人のことか、お答えください。

○稲田大臣 50条の4項の第4号及び5号において離職を余儀なくされる者とは、職員本人の意思に反して自らが所属する法人の職員としての地位を失うことを意味しております。

○山下よしき 要するに意思に反してですから、これは独法の業務や組織の廃止ということに当たるんだと思うんですね。そういうことをもう前提にしてこれはそういうことを規定しているということですが、その点について少し細かく聞いていきたいんですが、その離職を余儀なくされる見込みのある者に対しての密接関連法人への就職あっせん規制の対象としないという場合の者の中に非正規、非常勤の方々は入るんでしょうか。

○稲田大臣 4号及び5号いずれも、非正規職員や非常勤の職員はそもそも密接関連法人等への再就職あっせんの規制の対象外でありまして、あっせんは可能でございます。

○山下よしき あっせんというのはどういうことでしょうか。例えば、100人、組織の廃止に伴って元の職場が奪われるということになった場合に、100人中100人ともきちっとあっせんする、再就職に責任を負うということでしょうか。

○長屋聡内閣官房行政改革推進本部事務局次長 お答え申し上げます。
 50条の4の第2項の中では第4号と第5号と書き分けてございます。この場合、第4号の場合でございますけれども、その法人の毎年度の業績評価の結果に基づきまして法人の業務の縮小又は内部組織の合理化が行われる場合で、対象となる者は役員や管理職員を除いて一般職員を対象にするということで、あっせん規制の適用除外とすると。それから、5号におきましては、法人の組織、業務の見直しによって政令で定める人数以上の人員削減が行われる場合、これから政令を定めることになりますけれども、これは中期目標終了時の見直しの際でございますけれども、これにつきましては再就職支援が必要な全ての役職員を対象にということで4号、5号で書き分けて、このような対象となるものでございます。

○山下よしき 聞いていることに答えていただきたいんですが、あっせんというのは全員きちっと再就職させるということを意味しているんですか。

○長屋次長 お答え申し上げます。
 ここの点につきましては、衆議院段階の附帯決議でも、雇用の安定に配慮するということで附帯決議をいただき、また閣議決定の中でもそのような趣旨のことが書かれておりますので、そういった趣旨に基づきながら、それぞれの場合に応じて当局において対応していくということになろうかと思います。

○山下よしき 極めて心もとない御答弁ですが。
 さらに、あっせんを受けられる密接関連法人というのはどういう企業のことなんでしょうか。

○長屋次長 お答え申し上げます。
 これにつきましては、政令で具体的に定めることになっておりますけれども、資本関係、取引関係等が一定程度生じているものということで、具体的に施行までの間で政令で定められることになります。

○山下よしき 企業の規模の大小というのはどんなふうになるんでしょうか。

○長屋次長 その辺りもこれから政令の立案作業の中で明らかになっていくものと思われます。

○山下よしき 私、その点で心配するのは、密接関連法人の中に中小の企業も入ってくる場合があると思うんですね、そういう取引先が。その場合に、独法廃止に伴う職員のあっせんということを迫られた場合に、断れない中小企業が出てくると思うんですよ。そうするとその玉突きで、その企業で働いていた職員、労働者が玉突きで職を失うということだって、この間いろいろあったんですね。そういうことを考えると、この独法の廃止というのは非常に大きな影響を社会に与えるということもしっかり考えて、初めに廃止ありきの仕組みを強烈に進めるようなことは、私はこれはやるべきじゃないというふうに感じております。
 ちょっと角度を変えて聞きたいと思いますが、独法には各省庁から役員への相当の出向者が出ております。役員に占める各省庁からの出向者の人数と割合、どうなっているでしょうか。

○長屋次長 お答え申し上げます。
 国から独法の役員としていわゆる役員出向している者でございますが、平成25年10月1日現在でございます、総人数は142人。全独法の常勤役員数、これは483ポストございますけれども、この割合は29.4%。常勤、非常勤の役員も含めた全体の役員ポスト637に対する割合は22.3%になります。
 以上でございます。

○山下よしき 役員に占める府庁の出向者、私、約3割だというふうに認識しております。
 それから、一般職員の中への省庁からの出向者は何人でしょうか。

○長屋次長 お答え申し上げます。
 御要請もいただきながら、今回、平成26年4月1日現在ということで調査いたしました結果でございますが、総人数は3,488人、全独法の常勤職員数に対する割合が2.1%となっております。

○山下よしき 役員の3割が中央省庁からの出向者。それから、独法ごとに見ても、一般職員で見ても、例えば国際協力機構には9省庁から37人、新エネルギー・産業技術総合開発機構には経産省から53人など57人、自動車事故対策機構には108人、駐留軍等労働者労務管理機構には職員289人中、防衛省からの出向者が124人などなど、ばらつきはありますけれども、中央省庁の出向者が独法で課長あるいは部長などをしている、財務省からもそれぞれ送られているという実態が広くあります。
 独法の業務の関係上、省庁との連携が必要なものももちろんあるでしょう。国交省、厚生労働省など、その知見の蓄積が独法でも求められるものもあるでしょう。しかし、そういう業務の目標や評価がそういう中央省庁からの幹部職員、出向組が中心になって作られ、縛られているという面は多いわけですね。だから、これは先ほどの議論にもありましたけど、独法の自律性、自主性というのは一体どうなっているんだと、名ばかり独法ではないかという実態があるわけです。そういうことだったら、もう国民の生活の安全、安心の質の確保が必要だからそうしているんだというんだったら、これはもう省庁の執行機関に戻せばいいのではないかということさえ私は考えるべきだと思いますが、逆に特殊法人だったところなんかは、天下り的な出向によって、その業務に精通しているプロパーの職員がなかなか幹部になれないという実態もあると聞いております。
 そういうことを前提にして、今日お聞きしたいのは、独立行政法人の事業、組織の廃止、移管が行われる際に、省庁からの役員や幹部職員などへの出向者の身分は一体どうなるのかというのをまずお聞きします。

○稲田大臣 国から独法に現役出向中の者については、当該法人の廃止、統合がある場合には、国に復帰し独法での経験を政策の企画立案等の業務に活用すること、組織統合先や業務の移管先の法人の役職員として業務に従事することなどが考えられますけれども、個々の事案に即して、法人と出向元の府省との相談の結果により対応が決定をされるというふうに考えております。

○山下よしき 今答弁あったように、中央省庁からの出向者は当然雇用は継承されるわけですね。一般的には、出向先がなくなっても籍は出向元の中央省庁にあるわけですから、当然の原則であって、もしそれがやられなければこれ大変な問題になるわけですが、しかし、省庁からの出向者は職員であっても役員であっても雇用は継承されるのに、片や独法で働いている一般職員の方々、プロパーの方々は、逆に出向者をたくさん受け入れて、その人件費を出して、その役員の指示に基づいて仕事をしてきたにもかかわらず、若い職員の雇用保障は何ら約束されないというのは、同じ独法で働いている職員同士の中に溝をつくるんじゃないかと。役員はともかく、一般の若い職員を常に将来どうなるか分からないという不安の中で働き続けさせるのかと、こういう格差、差別は、私は不合理ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○稲田大臣 出向者についても当然に国の復帰等が決められているわけではなく、個々の事案に即して、法人と出向者の府省との相談の結果により対応が決定をされるというふうに考えております。
 なお、昨年末の基本方針の閣議決定において、改革を推進するに当たっては、独立行政法人で現在働いている職員の士気の向上や雇用の安定にも配慮する旨を盛り込んでいるところでございまして、職員を雇用する独法やその所管府省においては、この閣議決定の趣旨を十分に踏まえて対応することが必要になろうかというふうに考えております。

○山下よしき 本省からの出向者の身分も分からないみたいなことは重大ですよ。そんなことは絶対にあってはならないんです。
 今聞いているのは、独法のプロパー職員の方々について聞いているんですが、今大臣は個別に各独法でそこはちゃんと配慮すべきだと言われましたけれども、私は、この通則法改定案において大量の解雇も想定されているわけです、離職を余儀なくされる者と。にもかかわらず、雇用の維持、権利義務の継承などを保障する規定が何らこの法案に設けられていない。あっせんという名前が入っているだけでありまして、これでは極めてバランスを欠くというふうに言わざるを得ません。
 参考人質疑の中でも、離職を余儀なくされる場合に備えてあっせんについて定めておきながら、雇用の継承について定めていないというのは、法の立て方としては不完全だという趣旨の御発言もありました。組織変動の態様として吸収合併や会社分割に類似するものでありますので、これは会社分割に係る商法や労働契約承継法というものがありますけれども、吸収合併や会社分割の例に倣って、この独法の改廃についても雇用の継承を通則法の中に定めておくのが当然ではないかという専門家の御指摘ですが、大臣、いかがでしょうか。

○稲田大臣 独法通則法は法人の業務運営に普遍的に適用される共通基盤ルールを規定するものでございます。個々の法人の職員の採用、身分承継等の人事管理は、各法人ごとに個別法等において、個々の法人の業務の特性、組織、業務改変等に係る個別具体の事情などを踏まえ、必要事項を定めるべきものだというふうに考えております。その際、法人の組織、業務の改廃等に伴う職員の雇用の取扱いについては、雇用者である各法人において、労働法規や判例、いわゆる整理解雇の4要件などに基づいて適切に対応すべきものだというふうに考えております。
 また、過去、独法の統廃合などの大きな組織見直しが行われた際には、当該法人の置かれた状況を十分に勘案した上、必要な場合には法人間の身分承継など、職員の雇用に関する法的措置がなされているところでございます。このため、通則法に雇用の安定に関する事項は盛り込んでおりませんが、職員の雇用の確保の重要性に鑑み、昨年末の改革の基本方針の閣議決定において雇用の安定への配慮を盛り込んだところでございます。今後、組織見直しが行われる場合にはこれらを踏まえて適切な対応がなされるべきものというふうに考えております。

○山下よしき 個別に対応するということですが、実際、2011年廃止された雇用・能力開発機構については、事業の大半は移管されたわけですけれども、雇用については法律で担保をこれは実際にされずに、一旦全員解雇、希望者の中から移管先に採用というやり方が取られました。また別の、万博の法人の場合も、地方に移管する際に改めて採用試験ということがやられて、解雇された労働者もいるわけですね。
 やっぱり、これは今度の通則法で独法の廃止ということが強力に推進される危険性があることを定めながら、それを個別法でその雇用については任せるというのでは極めてバランスに欠くと、そういうものを認めるわけにはいかない、引き続きこれは審議する必要があるということを申し上げて、終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。