○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
お三方ありがとうございます。
梶川参考人、土居参考人は、いずれも独法改革に関する有識者懇談会あるいは行革推進会議の独法改革分科会委員あるいは委員長代理をされておられます。
そこで、まず梶川参考人に伺いますが、有識者懇談会の中間報告では、主務大臣による目標設定、業績評価、期間終了時の点検に際して、科学的知見や国際的水準に即して適切な助言を行う仕組みが必要だとされております。法案では、各省の研究開発に関わる審議会を充てる、あるいは外部から点検する仕組みとして総務省の下に評価制度委員会を置くとしておりますが、いずれも学識経験者と規定されているだけで、いささか心もとないと感じざるを得ません。
そこで、梶川参考人は、この審議会や評価委員会の委員に求められる資質、どのようなものが必要か、あるいは中立性についてどのようにお考えか、御意見伺いたいと思います。
○梶川融参考人(太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員) 今の報告書の科学的知見等は、特に研究開発法人を念頭にした文脈だと思います。そういう意味では、当然、提供するサービスというか科学的な研究開発の内容というのを理解をし、それが国際的な水準としてどうかという判断をされるわけですから、これはその分野の専門家というのがどうしても必要になられるのではないかと思っております。
ただ、もちろん、そういったある意味ではそれは先ほど私が申し上げた成果指標のテーマなんでございますけれども、やはり私自身もそういう部分では知見のないまま研究をしている法人の評価委員などをさせていただいたんですが、やはりそういう意味では、その成果と、逆にそれを生み出すためのコストと申しましょうか経済的な資源の投入、これを両者をバランスをして国民的に説明をしていくということは非常に重要なことだと思います。成果だけで説明をすれば、それは投入量が無尽蔵にあって成果が上がればいいというお話になります。
その辺は、やっぱり評価としてのバランスを私は失すると思いますので、そういう意味では、両方の見地で審議会で議論をされ、評価をされる委員会で審議をされるという、そういう意味では組織的な投入される経済的な資源等を御理解した上で、成果を評価される委員の先生と両者でその投入資源が果たしてその成果に見合っていると国民が思えるかという観点の評価に資する専門家が集まられることが望ましいというふうに私は思います。
○山下よしき ありがとうございました。
土居参考人に伺います。
有識者懇談会の報告でも、各法人の職員が誇りを持って職務を遂行し、職員の自発性、創意工夫を通じて経済成長や国民生活の向上に最大限貢献できるようにすることが望まれる、あるいは主務大臣は、目標案又はその変更案を作成する際に、法人と十分意思疎通を図るということが述べられております。
ところが、法案には具体的に今述べられたようなことが見えないということで懸念をしているわけですが、そこで、懇談会の報告でなぜそのようなことが指摘されたのか、御認識伺いたいと思います。
○土居丈朗参考人(慶應義塾大学経済学部教授) 私は、先ほど御説明させていただいた資料の中でも信賞必罰という言葉を用いましたけれども、これはいきなりダイレクトに独法制度の中にこの言葉を用いますと、かなりきつい言葉というふうに受け止められるんですが、やはり今まで評価があり、評価委員会でいろいろと議論があるわけですけれども、ややもすると、押しなべて高評価だけれども、特段大きく褒められているわけでもないと、それでいて国民からは、独法は何か余分な仕事をやっているんじゃないか、余分なお金をためているんじゃないかというふうに思われているような独法も中にはあった、誤解もひょっとしたらあるかもしれない、こういうことなので、より厳しいガバナンスを求めるという反面、それが認められたならばむしろもっとやりがいを持って働けるような、そういう組織に生まれ変わってほしいと、こういうふうな思いであります。
私自身も、その会合の中でそういう旨の発言をしておりまして、私個人の思い入れということであれば、なかなかこれは法律に書き込むというものではなくて、運用の結果としてそういう誇りを職員の方々も持っていただける、つまり一生懸命頑張れば褒められるということがあるんだということですね。それが今までは、曖昧な中に褒め過ぎるとお手盛りだというふうに言われてしまうということだから、余り褒め過ぎないようにしようというところでとどまっていたのかなと。その代わり、褒められるということは、反面うまくできなければ叱られるというのもありますよということのめり張りがあって初めて、褒められるということはお手盛りではないというふうに認められるものなのかなというふうに思いまして、そういうようなことを申し上げたというところであります。
○山下よしき ありがとうございました。
続いて、土居参考人に伺いますが、目標期間の終了時の見直しについてですが、現行では、先ほど平井参考人から指摘もあったとおり、全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるとしていたものが、今度、法案では、業務の廃止若しくは移管又は組織の廃止その他の措置としてありまして、まず改廃ありきではないかという懸念が職員、現場の方々の間に相当広がっていると聞いております。
私は、まず改廃ありきというようなことであってはならないと思うんですが、有識者会議、懇談会の中でもそういう議論がされていたのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○土居参考人 御質問ありがとうございます。
私は、廃止は、行政の在り方として、必要である業務が時代遅れになってしまったというような場合には当然廃止というようなことはあるんだろうと思います。ただ、雇用問題とかそういうことがありますから、直ちに本当に廃止にできるかどうかというのはまたもう一段の検討が必要だと思いますが。
例えば、ちょっと話がそれますけれども、かつて、銀行はなかなか潰れないということだったのでどうも不良債権をたくさんこしらえて、結局は行政が救済してくれるだろうというふうに甘えた経営をしていた時期があるということに経済学の中でも議論があって、本来は廃止になってほしくないけれども、怠れば廃止だという起こってほしくない選択肢を明示しておかないと怠慢な行動を取ってしまうかもしれないと。いずれ救済されるんだから、別に厳しく業務を見直さなくてもやっていけるだろうというふうに思われては、さすがにそもそも規律付けを与えるという観点からするとよろしくないのではないかと。廃止を望んでいるわけではないけれども、廃止というオプションが全くないということになると規律が緩んでしまうかもしれないという、そういうような思いも私自身としてはあります。
○山下よしき ありがとうございました。
平井参考人に伺います。
法案では、統廃合によって大量の解雇、整理解雇を想定していると私にも思われます。その一方で、雇用の継承については何の担保もないということなんですが、職場がいつなくなるかもしれない、雇用がどうなるか分からないということが前提になると、そもそも優秀な人材が集まってこない、モチベーションも下がって一人一人最大限のパフォーマンスをすることはできないのではないかということが懸念されます。
実際に雇用問題が生じる以前に公共サービスの質の低下が起こりかねないと思うんですが、いかがでしょうか。
○平井哲史参考人(東京法律事務所弁護士) 御質問ありがとうございます。
委員おっしゃる点は、一般的可能性として、これは独立行政法人に限らず、例えば株式会社などがこの先どうなっていくか分からないといったときには当然起きてくることでございます。
ただ、この独立行政法人において私重視する必要があると思っておりますのは、行政サービスを安定的にかつ継続的に国民に提供する役割を担っている部署でございまして、ここが簡単に改廃ということになってしまったのでは、先ほど意見の中でも申し上げましたように、やはり行政サービスの停滞ということが起こりかねないというふうに思いますし、また、いつこれが起きるかも分からないというような状態に置かれたのでは、もうここの独立行政法人に居続けるのは難しい、より安定的なところに移ろうと思われる方も出てくるであろうというふうに推測をされます。
ただ、これは実際にその現場になってみないと、どれほどのインパクトのある事象が起きてくるのかというのは予測しかねるところがございますので、一般的な可能性としてしか申し上げられないんですけれども、委員御指摘の点は確かにあろうかと思います。
もう一つ、委員御指摘の点以外にも、実は今回の通則法の中で職員の給与に関する規定がございます。この中で、国家公務員と比較をする、それから一般の会社などと比較をするというようなことが書かれているんですけれども、独立行政法人というのは、その運営に係る経費についてほぼ自主財源でやっているところと運営交付金に相当程度依拠しているところ、いろいろ千差万別ございまして、そこを十把一からげにして、国家公務員に準ずるようなことをするであるとか、あるいは民間の株式会社の水準に合わせるだとか、そういうことを考えて決めていくということをやるのは余り適切ではないのかなというふうに思うんですね。
そういうところに評価制度というものが入って、そして職員の給与等待遇に関しましても評価の結果増減が出てくる。しかも、その増減が個々の職員の評価によって大きな振幅が出てくるということになってくれば、これはやはりモチベーションの低下ということにもつながりかねないところがあるのかなというふうに思っておりますので、運用に当たっては十分に職員の士気を低めないように御努力いただきたいなというふうに思っております。
○山下よしき 続いて、平井参考人に雇用問題について2点質問したいと思います。
一つは、今回、法案では、離職を余儀なくされる者について就職あっせん規制から外すという仕組みが盛り込まれようとしておりますが、それで労働者の雇用は保護されることになるのか、これが一点。もう一点は、政府は雇用の継承について個別独法に委ねる、主務大臣の責任において対応するという説明をされていますが、それで果たして十分なのか。この二点について御意見を伺いたいと思います。
○平井参考人 まず最初に、離職を余儀なくされる場合の手当ての話でございますけれども、委員御指摘のように、離職を余儀なくされる場合についてどういう手当てをするかということがほとんどなくて、あっせんということは想定されておられるようでありますけれども、役職員のうち一部の人ですね、一部といっても相当程度ということになりましょうが、その方々についてはあっせんすらも禁止ということになっております。あっせんということでいくと、紹介をしますよというだけでありますから、雇用が承継される保障があるわけではございません。
過去の例で見ますと、国鉄分割・民営化の際に、新法人について、国鉄から離職された方々が新規採用ということでやられました。この枠組みでいきますと、雇用が承継されることが前提ではなく、新規採用と同列ですから、採用の自由というものが持ち出されます。この結果何が起こったかというのは委員の先生方御承知のとおりでございまして、組合員差別ということが行われました。これは最高裁まで行って不当労働行為だということで断罪され、損害賠償責任が発生するという事態になっています。こういうことはやはり避けるべきだろうなというふうに思っております。
同じことが社会保険庁の解体の際にも起こりました。今現在、裁判まで行っておりますけれども、新規採用という枠組みでやってしまいますと、採用の自由を盾に不当な行為が行われかねないということがございます。
国の都合で、政策的な都合で独立行政法人の改廃をして、業務につきましては別の法人に引き継いでいくということをやるのであれば、行政の継続性という観点からいけば、やはりその業務に係る職員については雇用も承継するというルールをきちんと明文で定める方が安定的だろうと思います。
同じ発想に立ちまして、労働契約承継法が作られていることを御指摘しておきたいと思います。
二点目でございますけれども、主務大臣の対応でいいのではないかというお考えもありましょう。ただ、これは恐らく、衆議院の段階におきまして個別法で改廃を決める際に検討をされるものだという御議論がございましたけれども、このことを指しておられるのかなというふうに思い意見を述べさせていただきますけれども、その個別法の改廃の際に決めるということでも構わないのかもしれません。しかし、一般的なルールとして、業務の改廃に伴いまして独立行政法人の一部あるいは全部を廃止をして、事業を別のところに持っていくという場合、事業そのものをやめるというのであれば、職員の雇用保障も難しいという面も出てくるかもしれませんけれども、移管という場合におきましては業務は続くわけですから、その職員の雇用承継についてもやはりきちんとルール化をしていくと。それは個別法ごとに決めていくというふうになりますと、あるケースにおきましては国鉄分割・民営化や社会保険庁の場合のようになり、あるケースにおきましては雇用承継がされるということになり、これは平等性を欠くということになってきますから、やはりここの点は通則法において定めておくべきなんだろうなというふうに考えております。
○山下よしき 終わります。