消防無線のデジタル化問題、消防組織の広域化は自主的判断で 
【議事録】 2013年5月30日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 私からも消防救急無線のデジタル化について質問します。
 これまで10年以上デジタル化を呼びかけてきたにもかかわらず、全国770消防本部中、整備済みあるいは着手済みは半分にも届いておりません。期限まであと3年。デジタル化整備には一から始めると3年掛かるところもあると聞きましたが、残り457の消防本部には大変な課題になっていると思います。デジタル化が進まない最大の理由は、やはり整備費用が高額であること、財政難の市町村や小さい消防本部ほど頭を抱えております。
 そこで、確認ですが、総務大臣の権限で決めた期限が来たらアナログの消防救急無線の免許を市町村消防から取り上げる、そういうことになるんでしょうか。

新藤義孝総務大臣 このアナログ方式の消防救急無線の使用期限、これは平成28年5月31日までを有効期間とする無線局の免許を付与しております。したがって、平成28年6月1日において同免許は失効することになるわけであります。取り上げるわけではありません。
 なお、消防救急無線のデジタル化は、これは移行期限までに実現をしたいということでこれまでも進めてまいりました。消防本部を対象に実施している消防救急無線のデジタル方式への整備計画、これによれば、移行期限である平成28年5月31日までに全ての団体で整備が終了する予定と、このように我々は把握をしておるわけであります。
 それから、消防救急無線のデジタル化整備を進める上で全国の消防本部が抱える課題につきましては、消防本部からの御要望を踏まえまして、技術的、財政的な面から個別相談を行うアドバイザーの派遣など、きめ細かな対応を実施しておりますし、これからも努めてまいりたいというふうに思います。
 滞りなくデジタル方式への完全移行が各消防本部において行われるように、我々も最大限取り組んでまいりたいと存じます。

山下よしき 取り上げるんじゃなくて失効ということなんですけれども、まあ、なくなっちゃうわけですよね。
 消防救急無線の高度化というのは、必ずしも現場から急いでやってほしいと出されたものではありません。電波の周波数を節約するために国の施策で進められているものですから、これはアナログ無線の更新時期あるいは市町村の実情を踏まえて期限を延長するなど、無理なくデジタル化していけるように私はするべきだと思います。それでも期限までにというのであれば、やはりこれは国や周波数を引っ越した跡地を利用する事業者の負担によって思い切った財政支援を取るなど、市町村が無理なくやっていけるようにしていくべきだと、このことを強く求めておきたいと思います。
 次に、消防の広域化について質問します。
 まず、確認したいんですが、これまでも繰り返し答弁されてきたことですが、消防の広域化、すなわち消防本部を統廃合するかしないかは市町村の自主的な判断で行われるものであって、国の基本指針や都道府県の推進計画に拘束されるものではないと考えますが、いかがでしょうか。

新藤大臣 市町村の消防の広域化につきましては、住民サービスの向上、これらを目的といたしまして、消防組織法及び市町村の消防の広域化に関する基本方針等に基づいて推進しているところでございます。消防組織法及び市町村の消防の広域化に関する基本方針にもあるように、もとより消防の広域化は市町村の自主的判断で行われるものであります。
 今後とも自主的な市町村の消防の広域化、これを推進してまいりたいと、このように思っておりますし、期待しております。

山下よしき 自主的判断で市町村が行うべきものだということですが、もう一遍、念のために確認しますが、市町村が広域化を行わなかったとしても、そのことにより不利益な扱いを受けることとなるものではないと、こういう理解でよろしいですね。

新藤大臣 これは、消防組織法に基づいて市町村の責任の下に行われるのが消防活動であります。ですから、広域化を行うか否かにかかわらず、これは地方交付税等による財政支援措置など、市町村が適切に消防事務を担うことができるように、これは私どもも適切に対処してまいりたいと考えております。

山下よしき 戦後、日本国憲法の下で我が国の消防は、戦前の国家消防から市町村による自治体消防を原則とすることと変わりました。地域住民に最も身近な市町村が市民の生命、財産、安心と安全を守る、国と都道府県の役割は、そうした自治体消防の活動と消防力の強化を支援していくことにあると考えます。
 そこで、消防の広域化と消防救急デジタル無線の共同整備との関係について質問します。
 御存じのとおり、消防救急無線のデジタル化整備は、一つの団体で単独で整備していくよりも複数の消防本部で共同整備していく方が費用面で効率的だとして、共同整備が推奨されております。ところが、現在、あたかもデジタル化の共同整備をしたいなら県の決めた消防広域化計画に合意しないと駄目かのような動き、期限があるデジタル化をてこにして消防の広域化を進めようとする動きがあります。
 具体的な例として、奈良県の話を紹介したいと思います。
 奈良県では、県下39市町村、13団体ある消防組織を一つの消防本部に統合しようとする広域化計画を決めておりました。ところが、県の広域化計画ではコストの削減にはなるけれども消防力が低下する、市民の安全、安心にかかわるなどとして、奈良市と生駒市は消防の広域化に参加しないことを決めて、協議会からも脱退をいたしました。奈良県は、奈良市と生駒市を除く残り11消防組織を一つにする広域化計画を引き続き提案しておりますが、その中身を見ますと、11の消防本部を一本化することで、本部の要員が156人、通信員が54人、合計210人浮かせることができると。この浮かせた210人をより現場に近いところに全員増強するのかと思ったら、増強に回すのは147人で、残り63人は人員削減して約4億円の費用削減を図るという計画でありました。
 そこで、一つ確認なんですけれども、私、不思議なんですけれども、現在よりも消防職員の総数は減るんです。しかし、減るんだけれども、充足率は現在の奈良県全体の63%からアップするというんですね。なぜ充足率が総数が減ってもアップするのか、どんなマジックがあるのか、御説明いただけますでしょうか。

市橋保彦消防庁次長 消防の広域化によりまして、消防力の整備指針上の職員の充足率、これは一般的に上がる場合もあれば変わらない場合もあるというふうに認識しております。消防の広域化によりまして、それによる総務部門等の職員を現場に配置するというようなところで、今まで不足していた部分が充足されていくというようなことで上がっていくということもあり得るというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、私ども、消防の広域化というのは現場対応力の強化というふうなものを一つの目的として行っているものでございまして、国民の安全、安心を守るという観点から消防の広域化、推進することによりまして消防力の充実というふうなものに努めてまいりたいと考えております。

山下よしき 今、御説明ありましたかね。私は、消防力の整備指針を見ますと、例えば5万人規模の自治体の場合、4台の消防ポンプ自動車の保有が必要になる、30万人以上では14台必要になると。ですから、5万人規模の自治体が六つで30万人規模の地域では6掛ける4台で24台の消防自動車が必要なんですが、これが広域化で30万人規模の新たな消防本部を結成した途端、14台で基準を満たせることになると、こういうことにもなるわけですね。これだけを一律に言うわけではありません。こういうことがあると。
 それから、本部から現場に移行できるということも次長おっしゃいましたけれども、実際は今でも充足率、職員数足らないので、消防本部の職員もいつでも出動できるように消防服を着て本部の仕事をしているところもありますから、だから、本部から現場へといっても、元々現場の仕事もしているということもありますので、これだけで強化ということにもならない。
 それから、広域化せずとも、消防署所間の連携というのは協定などを結んでやられている場合が多いですから。そういうことなんですね。それなのに、広域化すれば災害への対応能力が強化されるとして、今でも足りない消防職員を実数で減らされるということが、この基準からいうと起こってきているんですね。
 私はそのことについて今議論するつもりはありません。問題は、ですから、消防の広域化で逆に消防力が低下するんじゃないかという懸念も当然出されてしかるべきであって、市町村が、消防救急体制はどうあるべきか、どうやって協力して市民の安全、安心を守るのかよく議論をして、消防の広域化の是非をあらゆる分野から検討して、市町村が自主的に判断して決めていくことが大事だと思っております。
 私たちも一律に広域化反対という立場じゃありません。よくメリット、デメリットを検討して慎重に判断して決めるべきだと思うんですが、にもかかわらず、お金が掛かって市町村の悩みの種になっているデジタル化問題を持ち込んで消防の広域化のてこにする、市町村の冷静な判断を阻害する状況になっているのではないかと心配する声が奈良の市町村の一部の首長さんから上がっているんですね。
 そこで、大臣に確認しますが、消防救急無線のデジタル化整備のために財政支援を受けるには消防の広域化が条件になるんでしょうか。

新藤大臣 消防救急無線のデジタル化に対する財政支援としては、これまでも、緊急消防援助隊設備整備費補助金、それから地方財政措置として緊急防災・減災事業、防災対策事業という対象として整備を推進してきたところでございます。消防の広域化を行ったかどうかにかかわらず、これらの財政支援は受けることが可能だったわけであります。しかしながら、緊急消防援助隊設備整備費補助金については、今回、消防の広域化を行う消防本部に対して限られた予算の中での優先的な措置をしていると、こういうことがございます。
 また、今回の電波法の改正による財政支援においても、消防の広域化は要件とはしない考えでございます。

山下よしき 基本的に広域化を要件としないということであります。
 ところが、奈良県では、議長会の研修会などにおいて、消防広域化協議会の事務局から消防救急無線のデジタル化と消防の広域化は同一次元と考えているとの説明がされて、混乱が生じております。ある市の消防指令課長さんは、これらの通信ニーズに的確に対応するためにはデジタル方式の活用が不可欠だが、デジタル化は電波の有効利用と高度化のため国の施策で更新するもので、消防の広域化とは別の問題だと述べておられますし、ある町長さんは、広域化とデジタル化は別物であって、デジタル化を広域協議会にお願いしたからといって必ず広域化に賛同しなければならないという性格のものではない、どうも今回のデジタル化で広域化を誘導しようとしているのではないかと心配しているという声も出ております。
 そこで、私は、消防の広域化と消防無線のデジタル化は別物という、この市の消防指令課長さんや町長さんの認識は極めて正確だと思いますが、大臣の見解、改めて確認したいと思います。

新藤大臣 消防救急無線のデジタル化、これは通信基盤の強化のため推進しております。一方で、消防の広域化については、これは消防体制の確立、消防力の拡充のために推進していると。
 この二つの政策は互いに独立した政策でございます。しかし、共に消防体制の強化を目的としておりまして、できる限り双方とも速やかに進めることは望ましいと、このようには考えております。そして、広域化を行う消防本部がデジタル化に円滑に対応できるように、当該消防本部がデジタル化を行う場合には所要の経費に対する補助金を優先配分することとして財政措置も充実させていると、こういうこともあります。
 今後とも、消防救急無線のデジタル化と消防の広域化、これは二つの独立した重要政策でありますが、これをできる限り円滑に移行するように、円滑に進むように取り組んでまいりたいと、このように考えております。

山下よしき 基本は別物であって、市町村の自主的判断だということですね。市町村が両方やろうと思えばやれるんだということですけれども、国がそういうことを推奨しようとしている意向は分かりましたけど、市町村がやっぱり自分のところでそれで安全、安心が確保できるのかどうかをまず判断するというのが原則だということだと思います。それは大臣もうなずいておられますので確認ができると思いますが、期限の決まっているデジタル化をてこにして首長さんや消防組合の議会、町議会の意向をないがしろにして広域化を押し付けようとしている、そんなことは許してはならないと思いますので、大臣としても注視されることを要望して、終わります。