NHK問題、経営委員長が東電社外取締役、職員制度(給与)問題 
【議事録】 2013年3月27日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 昨年の5月、數土文夫前NHK経営委員長が、東京電力の社外取締役を経営委員長のまま兼職しようとしたところ、国民視聴者から大きな批判を受けて、結局、経営委員長も経営委員も辞任することとなりました。批判の中心は、NHKの経営トップである経営委員長と原発事故の取材対象である東京電力の社外取締役との兼職は報道の中立性の観点から問題だというものだったと思います。
 そこで、浜田経営委員長に確認いたします。報道の中立性から見て、NHK経営委員長と東電社外取締役との兼職は成り立ち得ないとの認識はありますか。

浜田健一郎NHK経営委員長 非常勤の経営委員会委員は、放送法31条の3に該当するもの以外の兼職は認められております。また、放送法32条では、経営委員は個別の放送番組の編集その他NHKの業務を執行できないと定められております。会長以下の執行部とそれを監督する経営委員会の役割は明快に分かれておりますので、経営委員のNHK以外での役職がNHKの報道や番組に影響することはないと考えております。
 前経営委員長の件に関しましては、様々な御意見がありましたことは承知しておりますけれども、最終的には御本人が熟慮の上判断されたことであるというふうに思っておりますので、私の意見は差し控えさせていただきたいというふうに思います。

山下よしき 私の意見は差し控えるでは済まないんですよ。公共放送の使命、報道の姿勢が問われる問題なんですよ、これは。
 言論・報道機関であるべきNHKの最高議決機関のトップが、未曽有の被害を与え続けている福島第1原発事故の直接の原因者であり、賠償問題、再稼働問題、電力供給や電気料金の値上げ問題など、今国民にとって最も厳しく批判と監視の対象となっている東電の社外取締役を兼職するというのは、これは公共放送の自主自律を危うくする、取材対象からの独立も、それから報道の中立性も保てなくする。私は、NHKにとってまさに自殺行為だと、こう思いますが、そういう認識全くないんですか。何の問題もないというのが浜田委員長のお考えですか。

浜田経営委員長 NHKの職員は、1人1人がジャーナリストとしての自覚を持って、視聴者、国民にとってより良い番組を制作することに取り組んでいると理解をしております。

山下よしき 答えになっていないですよ。
 浜田新経営委員長は、NHKの経営トップが、取材対象あるいは権力の監視、国民からちゃんと監視されなければならない、その代表者として、公共放送機関として、公共放送として東電をしっかり見てほしいと視聴者は思っているんですよ。その経営のトップが東電の社外取締役になったら矛先鈍るじゃないかと思うのが当たり前ですよ。それを1人1人のNHKの職員はちゃんとやっていますと。職員はやっているかもしれないけど、経営トップがそういうことでいいんですかって言っているんですよ。それでいいんですか。

浜田経営委員長 先ほども申し上げましたけれども、私は外から参った者なんですけれども、NHKのガバナンスの組織はきちっと分けられて機能しているというふうに思っております。

山下よしき 大変残念な答弁ですね、これは。
 それで、私も、NHKの番組、ここで何度も評価してまいりましたよ。例えば、ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」、これは、原発事故から放出された放射性物質が、目に見えないけれども、どれぐらい拡散しているのかということを科学の目で、そして丹念に追って検証したものですよ。たくさんの賞を受賞していますね。
 しかし、こういう番組を作るスタッフが、その取材対象たる東電に経営委員長が行ったとしたら、これは幾ら、今、浜田委員長が、いや、自主自律で頑張りますと言ったって、人間ですからそんなことはやっぱり矛先鈍ると。だから視聴者から批判が起こったんですよ。それを木で鼻をくくったように、そんなことはないですと言っていたら、私は浜田さん自身の経営委員長としての資格が問われてくると思いますよ。
 NHKの放送ガイドライン見てください。一ページ目に「NHKは放送の自主・自律を堅持する。」と書いてありますから、改めてこういうものを肝に銘じていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次に、今や、働く人の所得が減り続けてきたことがデフレ不況の原因であり、非正規雇用を拡大してきたことが所得低下の大きな原因であること、そして所得を増やすことが日本経済の好循環を取り戻す鍵であること、これは立場を超えて共通の認識になってきていると思います。
 2月12日、安倍総理は、私ども日本共産党の国会での提案も踏まえて、経済三団体のトップと会談をし、賃上げの要請をされました。その後、一部の大企業の正社員に限られてはおりますけれども、賃上げの動きが起こったことは、労働者、国民の世論と運動の大きな成果だと思っております。
 ところが、先ほど来議論になっております、2月12日、NHKが労働組合に提案した給与制度の改革についてという文書を見て私は驚きました。賃金カーブを抑制し賃金を圧縮します、基本賃金の10%を目安におおむね5年で引き下げることを見込んでいますと、こうありますね。
 今、みんなでデフレから抜け出すために賃上げをということを総理先頭にやっているときに、10%の基本賃金の引下げ、これはデフレ不況からの脱却に水を掛けることになりませんか。

松本正之NHK会長 お答えします。
 元々、NHKの賃金、これは、例えば採用ということを考えますと、マスコミ業ですから、マスコミとの間の採用競争になるんですね。そういう中で耐えられるかどうかと、こういうのが一つあります。それからもう一つ、NHKは受信料で成り立っております公共企業です。したがって、そういう要素もあります。
 そういう中で、NHKの賃金のレベルをどういうところに位置付けるかと。1番、何というんですか、目先にあるものは、やはり採用のときに、内定しても流れちゃうという、在京の民放に流れちゃうというようなこともありますので、やっぱりNHKの公共性、それからNHKで仕事をしたいというある意味のブランド性と、それからそういう賃金と併せて、民放と、あるいは新聞と対抗できるような人材の確保が必要だと、こういうふうに思っております。
 そういう意味合いでNHKの賃金を見てみると、やっぱり制度として、もう少し公共放送の役割を果たすために、人材育成も含めてきちっと整理した方がいいと、こういう観点で制度の改正もやる必要があると、そういうような必要性から今回の制度改正を行うと、こういうことであります。
 この改正が成り立つと、多分、NHKの中には採用が大変凸凹していますので、そこのところの山というのも崩さないといけないのですけど、そういうものに対する賃金カーブとしての整理とか、あるいはトータルとしての賃金レベルが対抗できる位置に位置付けられるとか、あるいは努力する人は報いられる、それから報いた人を評価する、評価する管理者を管理者としてちゃんと試験をやると、そういうような形の中でNHKの全体を活力化する、活力をもっと上げていくと、そういうことを考えてやっております。

山下よしき 成果主義、活力の問題は後でやりますけど、私が問いたいのは、基本賃金10%引き下げるということになっているんですね、結果として。それで、在京民放各社、大手新聞社と比較して、決してNHKの賃金は高くないということ。それから、私、資料をいただいて、やっぱりこれは特殊な状況にあるなと思ったのは、残業代が非常に多いですね。月平均16万円残業代が支払われていると。やっぱり長時間労働、クリエーティブな仕事ですから、そういう面もあるんでしょう。
 それから私が1番言いたいのは、やはり労働者の賃金が、これ15年前と比べてずうっと下がり続けている。これは先進国の中で日本だけなんですよ。これが1番問題になっているときに、この下がり続けた低い労働者の賃金と比べて、あそこは高い、ここは高い、だからもっと引き下げよという、引下げ競争をあおるような議論というのは私は間違いだと思います。今やるべきは、労働者、国民、みんな団結して、どこの企業、どこの職場、どの労働者であったって、賃金が上がることはお互いに喜ぶ、賃金が下がることはお互いに怒ると。そうやってデフレ不況から抜け出すことが求められているときに、こういう一律に10%を下げますよというようなことをやっていいのかということを問題提起しておきたいと思います。
 それからもう一つ、時間があと残り僅かなんで、賃金10%引下げとともに、成果主義賃金の導入が示されているわけですが、成果主義賃金の害悪というのは既にかなりのところで明らかにされております。
 よく言われていることですけれども、一つは、成果や目標達成度の評価に対して、職員の納得が得られずに不満が高まるということ。二つ目に、評価を上げようとするために、評価されやすい仕事には力が入るが、評価されにくい仕事は軽視されるということ。三つ目に、目標をあらかじめ低く設定するということ。四つ目に、職場で競争相手の成果を低めるような行動を誘発し、組織としての生産性向上に逆効果を与える。
 例えば、やっても評価されない、残業代が多くなるということで、上司や先輩が後輩の指導もしなくなる例もあるなどなどがよく言われることでありますが、こうした成果主義賃金制度が公共放送を担うNHKの職場に持ち込まれたら、私は、放送の質の低下が起きる危険性があるのではないかと思いますが、松本会長、いかがでしょうか。

松本会長 今のような話は、一般的には言われているところがあることは存じております。
 しかし、NHKの給与体系とかそういうものを見ますと、やはり年功序列的な、硬直的な要素が多いと、こういうふうに思います。したがって、それを普通の形にすると、こういうことを考えております。普通の形にするだけでは足りませんので、さらにそこにみんなが意欲を持てるような、質のいい番組を作れば評価されるとか、そういうようなことをきちっとやっていくということが公共放送全体としての信頼のあるサービスを提供することにつながると、こういうふうに考えます。したがって、そういうようなことを踏まえてこの制度改革をやるということであります。
 それから、トータルの賃金レベルは先ほど申し上げたようなことなので、そういうところを踏まえてきちっと位置付けるということが大事だと思います。その後、経済がいろいろ動くということになれば、それはそのときにまたいろんな状況を見て考えていくと、こういうことになりますけれども、取りあえず、昨年のこの国会での附帯決議、あるいは大臣からの御意見等もあって、説明責任というものをきちっと果たすということをやる必要があるというふうに考えております。

山下よしき もう一つ、地域職員制度の新設というものがありますが、これは地域職員制度の項目を見ますと、地域水準を意識した給与としますとあるんですが、これは端的に聞きますけれども、これは賃下げするということですか。

松本会長 先ほどの話にありましたように、NHKの職員は、昨年もそうですけど、ほとんど大卒で、しかも大卒の東京採用という感じの採用の仕方をしております。しかし、やはり地域の放送のサービスとかあるいは地域に根差した職員とか、そういうものを、全国でネットを張るわけですので、そういうことが必要なのではないか。そうすると、その結果として地場賃金というものの反映もできると、こういうこともありますので、この制度を取り入れて、そしてそれを運用してみようと、こういうことであります。

山下よしき 結局、採用の段階で全国職員と地域職員に分けて、これは給与などの処遇に格差を設けるということになりかねないと。同じNHKの放送業務を担っているにもかかわらず、意識の差が生まれる、地域性の高い放送番組や業務を軽んじる、そういう意識が生まれてしまうんじゃないかという心配を持っております。
 もう時間参りましたので、そういうマイナスの面がある、そして、自由かつチームが力を合わせる職場の気風を損なうことになりかねない成果主義賃金あるいは地域職員制度の導入は、私は許されるべきではないと、そういうことを申し上げて、終わります。