山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
3人の参考人の皆様、ありがとうございました。
大日向先生が保育専門学院の先生をされていた頃から、夢を持って保育士を希望しながらなかなかそれが続かないという実態、今も余り変わらないということで、大変残念なという御意見が出されまして、私も自分の子どもは3人とも保育所でお世話になりました、育休明けあるいは産休明けからつながって、当然共働き家庭にとって非常に仕事をする上でなくてはならないのが保育所であると同時に、子どもの成長、発達にとっても非常に大きな関わりをしていただいたと思っております。
生活発表会というのが年に1回ありますけれども、やはりそこに行きますと、自分の子どもだけ見るんじゃなくて、ゼロ歳児から五歳児までずっと連続して演技や発表を見ることができることによって、自分の子どもが幼い頃は、例えばゼロ、一歳のときにはカスタネットをたたくぐらいだった子どもが、もっと大きなお兄ちゃんになったらすばらしい演技をして、「島ひきおに」で大人を泣かせたり、そういうすばらしい子どもというのは能力、発達する力を持っているんだなと思いましたし、運動会も、やっぱりゼロ、一歳、年少と年長、こんなにも運動能力が発達するのかということを親として非常に感動的に学ぶ場でもありました。
それから、先ほど大日向参考人が、障害を持つ子どもさんたち、ハンディキャップを持っている子どもさんたちへの関わりということもちょっと触れられましたけれども、やはり保育所というのは、そういう子どもさんがいるときに、その動きを見ながらそういう心配があるんじゃないかということを早期に発見して親御さんに適切に伝えて、早期のそういう環境をつくればいろいろまた発達が保障されていくということなんかを見出し、アシストする場所でもあるというふうに感じていました。また、そういう子どもさんがいることが他の健常な子どもさんと親にとってもむしろプラスになるんだという環境をつくっていってくださっていたと思っています。そういう点でいうと、保育士の皆さんは、単に子どもを預かっているというんじゃなくて、子どもの成長と発達に非常に積極的に関わり、成長と発達を保障してくれる専門家集団というふうに私は思っております。
ところが、その人たちが長く働くことができない、非常に評価が低い。先ほど大日向参考人は賃金だけではないんだというふうにおっしゃっていましたけれども、どうすればそういうせっかくの専門家である保育士のみなさんがもっとその能力を生かし意欲を生かすことができるのか、お感じのことがあれば、大日向参考人、それから同じく藤井参考人にも、同じような関わり方をされていると思いますので、伺いたいと思います。
大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長、NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事) 御質問ありがとうございます。
今先生のお話伺って、従来、保育に欠けると用語で使っていたことがどんなに間違っていたかということを感じました。子どもは親が働いているから保育に欠けて、それで保育園で暮らすのではなくて、子どもは集団でいろんな方の目に触れ、手に守られて育つ権利があるんだということでございますよね。そういうことをサポートする保育者の方が長く働いていただける環境の整備は、先ほども申しましたように、いろんな面からサポートしていくことが必要だと思っています。
一つは、もちろん給与の改善です。それからもう一つは、研修あるいはその職場の中で若い方ばかりではなくいろんな年齢構成の方がいらしてお互いに切磋琢磨できるようなこと、そしてもう一つ、私はNPO活動をしておりますので特にそう思うんですが、保育所は保育士だけで構成されるのではなく、そこに地域の方もどんどん入っていけるような仕組みが必要かと思います。
私がしておりますのは子育てひろばで、保育園ではないんですが、一時預かりもやっております。そこに中高年の子育て家族支援者さんがたくさん入ってくださって、2年前からは団塊世代の男性も入ってくださって、もう雰囲気ががらっと変わってきて、もう親も子も生き生きとするし、何より保育を担当しているスタッフがいろんな方に学ばせていただいて保育に携わる喜びもまた経験できるということですから、多重にいろんな観点からこの問題は取り組んでいただきたいと思います。
一つ本当に感謝なんですが、30年以上、それ以前は保母と言われて、保育は、子育ては、介護もそうだと思いますが、女性がやるものだから低くていいんだ、専門職でなくていいんだみたいな考え方があったんですが、今回、残念なことではあります、待機児対策がなかなか厳しい、でも、それをきっかけに保育の専門性、あるいは今申し上げたような地域の方々がみんなで関わる大切さを改めて考える機会になったことは大変有り難いことでございます。
藤井伸生(京都華頂大学現代家政学部教授) 保育士ができるだけ長く勤めていけるような条件をということですけれども、かなりこれは課題が大きいなといいますか、難しいなということも思っていまして、例えば特に短大を卒業する学生なんかはもう結婚まででいいとか腰掛けでいいという感覚が物すごく広がってしまっています、残念ながら。多分そういうふうに扱われてきたからそうなっているんだろうと思うんですけれども、そこを変えて、キャリアを積んでより質の高い保育をしていくんだというふうに切り替えていくのには、本当に大きな抜本的な対策を打たないと変わらないんじゃないかなということを強く思っています。
具体的に、賃金の話も出ておりますけれども、やはりこの賃金も大きいと思います。例えば京都市では、公民格差是正ということで、公務員に匹敵するような待遇ができるように京都市単独で40億のお金を出して民間の保育園の職員の待遇をしております。このことがある一定成果も上がり、京都市では、ちょっと今日データを持ち合わせていませんけれども、民間園でありながらも長年勤務されている方はいらっしゃっています。
こういうことから見ても待遇はとても大きいと思いますし、それから、先ほども述べましたけれども、保育所の保育時間が非常に長くなっているんですね。朝七時から夜7時、八時まで、12時間、13時間、それを8時間で働いていくわけですけれども、30分刻みのシフト勤務です。早出があったり遅出があったり、労働者ってやはり決まった時間に働く方が非常にリズムはいいわけですよね。それが早出、遅出があるというのはとても厳しい。そして、御存じのように、保育所というのは360、まあそこまで言いませんけれども、日祝以外のところは開いているわけですから、そういうところでも勤務があります。
そしてさらに、先ほど私は保育士の配置基準のことを言いましたけれども、やはりそこで子どもにしっかり向き合えない、理想的な保育ができない、丁寧に向き合いたいけれどもできない、こういうことも含めて様々な矛盾が保育所にもう山積してしまった。ここを一つひとつ剥がしていくということをやっていかなければいけないという、非常にこの20数年間、20数年というか、児童福祉法ができて以来の50年にわたる長年の積み残しが今の問題をつくっており、そこを抜本的に変えるという作業は本当に真剣になってやらないとそう簡単には変わらない、そんな思いもしておりますし、是非そこに問題意識を持っていただいて、一つでも二つでもより良い方向にし、やはり保育という仕事というものに、やはり保育の仕事の良さというのは子どもの成長に寄り添えるということが保育士さんとても充実感感じるわけですけれども、それが体を壊さずにやれるようにしていけたらということを願っております。
以上です。
山下よしき ありがとうございました。
実は私の妻も保育士をしておりまして、保育専門学院を卒業して保育の現場に入って、本当にやりがいと生きがいを持って関わってきて、民間の保育園に入っていたわけですが、結婚したらみんな辞めていくと。私の妻は初めて、結婚して辞めずに、子どもができたらみんな辞めていく、子どもがすぐできて辞めずに、労働組合をつくって頑張れるようになったんですが、やっぱり多くの民間の保育所の経営者の皆さんは、経済的、財政的な問題から、できればもう継続年数の短い保育士さんをたくさん使った方が経営的に楽になるという面もあるのでしょう。しかし、それが社会でそれでいいのかということをやはり政治が考えて、子どもにとってそれが非常にマイナス、もったいないことになっているということも受け止めなければならないなと今思いながら聞いておりました。ありがとうございました。
それから、大日向参考人と藤井参考人にもう一問聞きたいと思うんですが、保育所をつくる必要があると同時に、即効性に疑問があるので、大日向参考人は、既存の施設を活用する、幼稚園の認定こども園化が大事ではないかということをおっしゃいました。緊急対策として私それはあると思うんですが、そのことをそれでずっとこの今の待機児童問題を解決する根本対策にする点で問題はないんだろうかということを少しお聞かせいただきたいんです。
例えば、保育所に子どもを預けている親はやはり朝から夕方あるいは夜まで、幼稚園の場合は例えば午前中だけとか、子どもの施設にいる時間が違うわけで、その子どもたちが同じ施設でいることによって子どもにどんな影響があるんだろうか、保育者にとってどういう影響があるんだろうか、その辺りは少し今問題あるのではないかと思うんですが、両参考人からお聞かせいただきたいと思います。
大日向参考人 ありがとうございます。
私は、幼稚園の認定こども園化を待機児対策の対症療法、一時的な対症療法とはむしろ考えておりません。むしろ根本的にそれは理想的なことだというふうに考えております。
先ほども申しましたとおり、新システムのときに、全ての保育園が3年以内、幼稚園もできるだけ早く幼保一体型の施設になってほしいということを提案いたしました。そこには、子どもの発達を考えるときに、学校教育法で位置付けられた幼児教育と保育を一体で受ける権利が子どもにあるわけです。ですから、親が働いていらっしゃるいないにかかわらず、コアタイムは幼児教育と保育を一体で受けられる時間帯にする、一方、朝早い時間あるいは夕方の時間はこれは保育の時間というふうにすることで全ての親が一つの施設に関わることもできます。今の現状ですと、働いていると保育所、専業主婦の方は幼稚園と、地域の中でも分断されてしまっているという問題があります。
それから、もう一つ先生がお尋ねくださいました、子どもにどう影響を与えるかと。既に幼保一体の認定こども園をやっていらっしゃる施設を幾つか私も見学をさせていただきました。余り問題はないということですね。子どもはコアタイムは一緒に楽しく遊ぶ、そして朝と夕方の時間帯はそれはそれで、自分のお母さんお父さんは働いているんだからということで、また別の楽しい保育を心掛けるということで子どもは順応しているというような報告もいただいております。
藤井参考人 認定こども園化の問題ですけれども、私自身も幼稚園と保育園を一体化することが絶対駄目だとまでは思っていないんですけれども、非常に疑問に思いますことは、新制度におきまして、認定こども園、これ2006年からできている制度ですけれども、児童福祉法におきまして、児童福祉法の24条2項に位置付いて認定こども園ができているわけですね。で、保育所は24条1項です。この違いが何か。24条1項というのは、市町村の保育実施義務というのが24条1項です。この市町村の保育実施義務というところに位置付けて認定こども園があるならばまだよいんですけれども、24条2項に位置付けられていると。24条2項というのは、一般的に言うと、利用者と園との直接契約の仕組み、市町村の責任で実施しない仕組みということになっているんですね。この法的な根拠が非常に甚だ疑問に思うところです。
やはり市町村責任が曖昧になっていくということは、そもそもの認定こども園の整備が果たして今後できるんであろうか。今幼稚園が空いてきているから取りあえずそこを認定こども園化するぐらいであって、認定こども園というものを通して必要な保育に、担っていく責務が国や自治体にこの法律上から構成されているのだろうかということも非常に疑問に思っています。そういう意味で、24条1項の国や市町村の責任の下、認定こども園化するということであればまだとても理解しやすいと思うんですけれども、そこが分かれているというこの紛れもない事実、ここはやはり大きな問題を持っていると思います。
そして、認定こども園のコア時間のところで、うまくいっているというお話もございましたけれども、やはり国が示すところですと、幼稚園の利用者的なお子さんたちは四時間程度、保育園関係は八時間ないし11時間そこで過ごすということになっていまして、この仕組みをどうやってするかということの苦労は現場にたくさんあると思います。午前中、保育園であれば散歩を重視していたものがそれが十分できないとか、昼寝のことをどういうふうにリズムをつくっていくのかとか様々あって、やはりこれほどの大きな時間の差は問題、やはりもっとこの時間を、差を縮めていくようなことをしていくなどの努力をしているところもあるみたいですけれども、そういうものもとても大事じゃないかなと思っております。
済みません、ちょっと十分にしゃべり切れませんが、以上です。
山下よしき ありがとうございました。