私は、日本共産党を代表して、内閣委員長水岡俊一君解任決議案に断固反対する討論を行います。
反対理由の第一は、政府の提出した法律案を始め、付託された案件を慎重に審議することは委員会の最も重要な使命であり、その点で水岡委員長には一点の瑕疵もないからであります。
提案者が問題にする国家戦略特区法案は、衆議院では、三日間の質疑と参考人質疑、総理出席の審議など二十二時間以上を充てているのに対し、参議院の内閣委員会では、まだたった一回、五時間程度しか審議できておりません。
審議が十分にできていない最大の原因は何か。そもそも、五十三日間しかない今臨時国会であるにもかかわらず、政府が内閣委員会に関連する重要法案を多数提出したことにあります。
こうした中でも、各会派の代表が充実した審議のためによく協議するように頻繁に促すなど、民主的ルールにのっとった委員会運営を進めていた水岡委員長を解任することは、国民生活に重大な影響を及ぼす政府提出法案を多数の横暴で成立させようとするものであり、断じて認めることはできません。
この間、政府・与党は、国家戦略特区法案を重要法案と位置付けながら、一方で、本来内閣委員会で審議すべきが筋である国家安全保障会議設置法案と特定秘密保護法案を強行するために特別委員会を設置し、内閣委員会と並行して特別委員会の開会をごり押ししてきました。衆参のNSC特別委員会の開催を理由として、与党は、特区担当大臣の新藤大臣の特別委員会への出席を優先しようとしたり、あるいは、内閣委員会の所管大臣である森まさこ大臣、菅官房長官などの内閣委員会への出席を拒むなどしてきました。
加えて、安全保障会議設置法案の採決強行や、秘密保護法案の衆議院での強行採決、参議院での審議入りと、与党による乱暴極まる運営の中、内閣委員会での十分な審議を確保するための理事間の協議を調えることが困難になったのであり、その責任を水岡委員長に一方的に課すことは余りにも理不尽と言わなければなりません。むしろ、強引な運営を進めてきた政府・与党、自民党国対の内閣委員会軽視にこそその責任が問われているのであります。
反対理由の第二は、戦略特区法案が国民にとって極めて重大な影響を与える内容であり、反対の立場の会派だけでなく、賛成の会派にとっても慎重な検討が不可欠であるにもかかわらず、委員長解任でその委員会の任務を放棄し、多数の横暴で押し通そうとしているからであります。
戦略特区法案は、戦略特区での様々な分野における規制緩和を、国家の意思として、地域指定も含めて上から一方的に国民に押し付け、全国区に広げるものであり、規制緩和のメニューを次々と加えていくためのシステムを創設するものです。まず規制緩和ありきで、国民の中に一層の格差と貧困を進めるものにほかなりません。
とりわけ、戦略特区計画を議論する戦略特区諮問会議について、総理、官房長官などとともに民間有識者を起用するとしていますが、その民間有識者として、小渕、小泉両内閣の主要閣僚を歴任し、雇用の規制緩和を推進し、非正規雇用労働者を急増させた上に、政治家、大臣を引いた後は、その雇用の規制緩和で大もうけした人材派遣会社最大手パソナ会長に収まっている竹中平蔵氏を起用しようとしていることは到底認めることはできません。
私は、竹中平蔵氏の諮問会議への起用について、十一月二十二日の本会議質問で、利害関係者を入れるべきではないと厳しく追及しました。自民党の皆さんを含めて大きな拍手が返ってきたことを覚えております。
ところが、甘利経済再生担当大臣は、翌十一月二十三日、慶応大学での講演会で、戦略特区諮問会議に竹中平蔵氏を起用することを公言したのであります。参議院での法案審議が始まったばかりであり、特区諮問会議も設置されていないにもかかわらず、また担当大臣でないにもかかわらず、この発言は国会と国民を余りにも軽視したものであります。
十一月二十六日の内閣委員会で、当然のことながら、この甘利発言をめぐって激論となり、自民党理事の対応能力不足により理事会が混乱したところを水岡委員長が交通整理を行い、委員会を予定どおりに開催することができ、委員会の中で甘利大臣より陳謝の発言を行うことになりました。しかし、甘利大臣は、竹中氏起用を発言した事実は認めた上で、誤解を与えたことを陳謝するとしたもので、そもそも、人材派遣会社会長の肩書を持ち、解雇特区を提唱してきた使用者側代表、この国に貧困と格差を拡大させた張本人を再び経済政策の重要会議のメンバーとすることの問題点を根本的に認めるものではありませんでした。
このような看過できない問題を持つ法案を政府・与党の都合で不十分な審議のまま強行することは断じて許されません。
先ほど、提案者は、民主党以外の全ての会派が共同して提出した委員会開会要求書と説明しましたが、それは事実と異なります。理事の一人である私にも、自民党筆頭理事より共同提案のお誘いを受けましたが、委員会を開催しようにも、その条件である理事協議が先ほど述べた政府・与党の横暴によって調わない下で、いたずらに委員長に開会要求書を提出しても事態を打開することはできないのではないですかと、理を尽くしてお断りをした次第であります。事実に基づく討論、とりわけ院の役員の解任を要求するような重大な討論については、なおさら正確な討論がなされなければなりません。
党利党略ではなく、数の横暴で進めるのではなく、徹底した審議のルールを貫くことこそ参議院の存在意義であります。そのルールを踏みにじり、自分の意のままにならない委員長は多数を頼みに首にする、そんなノンルールの参議院にすることなどあってはなりません。
以上をもって、内閣委員長水岡俊一君解任決議案に対する反対討論といたします。