首相問責決議案への賛成討論 
2018年12月7日 参議院本会議

 私は、日本共産党を代表して、安倍首相問責決議案に賛成の立場から討論を行います。

 賛成理由の第1は、安倍首相の国会を愚弄する暴走が余りに目に余るからであります。

 今参議院で起こっている、重要法案が審議が極めて不十分なまま次々強行されようとしている事態の震源地は、全て安倍首相にあります。

 技能実習生の失踪者調査によって、日本では外国人労働者を人間として受け入れる体制が整っていないことが浮き彫りとなりました。国民の六割から八割も今国会で法案を成立させる必要がないと言っています。にもかかわらず入管法改定の来年4月施行を急ぐのは総理の御意向だと法務省担当者が与党議員に説明していたということが、有田議員の法務委員長解任決議案の趣旨説明でも明らかにされました。

 参議院の審議は衆議院を超えたと言いますが、法案の衆議院通過自体、首相の外遊日程に合わせた強行だと与党も言明してきたではありませんか。政府が国会の最重要法案と位置付ける法案を首相の外遊日程に合わせて強行するなど、戦後の国会の歴史でもかつてなかったことであります。

 国民の生存権に関わる水道法改定案も、国民生活と経済に深刻な影響を与える日欧EPA、SPAも、70年ぶりの漁業法改定案も、全て不十分な審議のまま、日程ありきで強行されようとしています。

 漁業法改定案をめぐる農水委員長解任決議案の討論で紙議員が沿岸漁業者の苦しみを紹介し、こうした人たちを置き去りにしてはならないと切々と訴えたとき、議場はやじ一つなく静かに聞き入りました。委員会で採決が強行された後、共感した自民党のベテラン農水議員から紙議員は握手を求められたと聞きました。ならば、なぜ審議を打ち切るのか、なぜ声を上げないのか。国会の行政監視機能、法案審査機能は、与党、野党を問わず、国民から負託された最も重い責務ではありませんか。この間の与党諸君の態度は、これこそ国会議員としての職務放棄と言わなければなりません。

 同時に、こうした態度を与党に取らせているのが、それを率いる安倍首相であることは論をまちません。衆参両院で3分の2の議席を持っているから何をやっても許される、国会よりも自分の方が上だと言わんばかりの首相の姿勢は、極めて重大だと言わなければなりません。

 第2に、安倍首相の民意無視の強権政治の暴走がとどまるところを知らないからであります。

 その典型が、沖縄に対する民意を無視した野蛮極まりない強権であります。

 9月30日に行われた沖縄県知事選挙で、辺野古新基地建設反対を掲げたオール沖縄の玉城デニー氏が、安倍政権が総ぐるみで支援した相手候補に8万票の大差を付けて圧勝いたしました。本来なら、参りました、辺野古は諦めますとなるのが当たり前ではありませんか。ところが、安倍首相は、口では県民の気持ちに寄り添うと言いながら、行政不服審査法を悪用して、沖縄県の埋立承認撤回の執行停止を決定したのであります。その後、埋立工事が再開され、今まさに土砂が投入されようとしています。言語道断の暴挙と言わなければなりません。

 そもそも、行政不服審査制度は、行政機関によって、国民、すなわち私人の権利が侵害されたときにそれを救済するための制度であります。国が用いることはできないと法律に明記しているのであります。政府は、沖縄防衛局は一般私人として不服審査を申し立てたと言いますが、一般私人が米軍基地を造ることなどできるはずないではありませんか。こんな理屈は安倍政権の中でしか通用しません。民主主義も地方自治も法治主義も破壊する無法な決定は、直ちに取り下げるべきであります。

 沖縄の揺るがぬ民意を尊重し、辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時閉鎖、撤去を掲げ米国と交渉することこそ日本の首相のやるべきことであるにもかかわらず、一顧だにしない首相の責任は極めて重いと言わなければなりません。

 安倍政権の経済政策、アベノミクスの破綻は明らかであります。

 アベノミクスが日本社会にもたらしたものは、深刻な貧困と格差の拡大です。にもかかわらず、首相は、来年10月から消費税を10%に増税すると宣言しました。所得の低い人ほど負担が重くのしかかる弱い者いじめの消費税を今10%に増税すれば、格差がますます拡大し、消費は更に冷え込み、景気が悪くなることは火を見るよりも明らかであります。

 消費の落ち込み対策と称する飲食料品の税率の軽減ならぬ据置きや、ポイント還元、プレミアム付き商品券などは一時的な対策にもならず、むしろ混乱をもたらすと、国民の6割もが反対しています。後で返すくらいなら、初めから上げなければいいではありませんか。

 来年10月からの消費税10%への増税も、安倍首相も、共にお引き取りいただかなければなりません。

 森友、加計問題に対する首相の無責任な態度も看過できません。

 首相は、私や妻が関与していたら総理も国会議員も辞めるとか、丁寧に説明するなどと繰り返し述べてきました。ところが、安倍首相や昭恵夫人が関与していたことを示す数々の事実が明らかとなっても首相はただ逃げるばかりで、国民も国会も、丁寧に説明されたことなど、この2年間一度もありません。

 それどころか、先月の予算委員会で辰巳議員に、森友学園小学校建設予定地の国有地を8億円値引きする根拠となった試掘報告書が、写真を使い回すなど、でたらめだったとの新たな事実を突き付けられた際、総理は答弁に立つことすらしませんでした。説明できないなら、総理も国会議員も辞めていただくのが当然ではありませんか。

 第3に、安倍首相の憲法9条改定に向けた暴走が常軌を逸しているからであります。

 首相は、自衛隊高級幹部会同、自衛隊観閲式での訓示で、9条改憲の決意をとうとうと語りました。政治的中立を厳格に守るべき実力組織を前に、その最高指揮官が改憲の号令を掛ける。自衛隊の最悪の政治利用であり、閣僚に憲法尊重擁護義務を課した憲法99条違反であることは明らかであります。

 臨時国会冒頭の首相の所信表明にも驚きました。憲法審査会で政党が具体的な改正案を示せ、国会議員の責任を果たそう。これは、行政府の長が立法府の審議の在り方に事実上の号令を掛けるものであります。国会への重大な介入、干渉であり、憲法の三権分立をじゅうりんする暴論にほかなりません。

 総理は、三権分立の観点から問題があるとの指摘は当たらないと繰り返しますが、総理は、私は立法府の長だと3回も言いました。1回ならまだしも、2回ならまだあるかもしれないが、3回も言ったら、本気でそう信じているとしか思えないではありませんか。行政府と立法府の区別も付かない首相が三権分立の観点から問題ないなどと言っても、全く説得力がありません。憲法を知らない、憲法を守らない首相に、憲法を語る資格は全くありません。

 総理がこれほどまでに改憲に固執するのは、歴史に名を刻みたいという個人的野望とともに、安保法制、戦争法を強行したものの、どっこいまだ9条2項が生きているからであります。

 戦力保持を禁止した9条2項によって、武力行使を目的にした海外派兵や集団的自衛権の全面行使はできません。そこで、憲法に自衛隊を明記して9条2項を死文化させよう、海外での無制限な武力行使に道を開こう、これが首相の9条改憲の狙いにほかなりません。

 しかし、朝鮮半島では非核化と平和に向けた激動が起こっています。対話による問題の平和的解決という憲法9条が指し示した方向に北東アジアの情勢が動いているときに、9条を壊し、戦争する国づくりに走るほど愚かなことはありません。この1点だけでも、安倍首相には一刻も早く辞めてもらわなければなりません。

 以上、安倍政権の暴走はどれも問責に値します。

 同時に、暴走はあらゆる分野で破綻しております。国民多数の世論に逆らい、数を頼んで悪法を強行する政治は、必ず主権者国民の厳しい審判を受けるでしょう。

 日本共産党は、来る参議院選挙で市民と野党の共闘を発展させ、安倍政権を一刻も早く退陣させるために奮闘する決意を表明し、賛成討論といたします。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。