最低基準を引き上げ、保育士の専門性を磨き、子どもの命と発達を保障することこそ政治の責任 
2016年4月28日 参議院内閣委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 3月、4月と、東京、大阪の認可外保育施設で死亡事故が連続いたしました。厚労省、それぞれの事故の概要を簡潔に説明してください。

吉本明子厚労大臣官房審議官 東京都と大阪市の保育施設におきまして死亡事故が起こったことは誠に残念だというふうに考えております。
 この2件は、認可外保育施設におきまして、いずれも午睡中に起きたというふうに報告を受けているところでございます。東京都の死亡事故につきましては、発見時、顔は横向きでうつ伏せ寝の状態であったと、また、大阪市の死亡事故につきましては、発見時の状況は不明だというふうに報告を受けているところでございます。

山下よしき 4月12日、NHKが、うつ伏せ寝の一歳児、企業設置の保育施設で死亡と、東京の死亡事故を詳しく報道いたしました。
 亡くなった男の子の母親は、育児休業を終え、仕事に復帰する今年3月に向けて自宅近くにある六か所の認可保育所に申し込みましたけれども、全て入れませんでした。仕方なく、勤務先の会社が契約する東京都中央区の認可外保育施設キッズスクウェア日本橋室町に子どもを預けることを決めたといいます。七つの企業が共同で従業員のために設けた事業所内保育施設、これがキッズスクウェア日本橋室町であります。母親はただ一人の子どもを失い、毎日遺影に向かって話しかけているそうで、骨つぼを抱くと本当に小さくて軽くて、いなくなったんだと感じますが、まだとても受け止められませんと話しておられました。
 加藤大臣、安心して子どもを託したはずの保育施設で子どもが亡くなる、こんなことはあってはならないと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。

加藤勝信内閣府大臣 こうした事故で子どもさんを亡くされた方がた、特に御両親の心痛を思うと言葉もないということでございます。
 教育・保育施設等は、まず第一に子どもたちが安心して過ごすことができる、あるいは保育所でいえば安心して預けていただける、そういう環境でなければならない、事故で子どもの命が奪われることはあってはならない、こういうふうに考えておりまして、そうした事故が二度と起きないようにしっかりと対処していくというのは当然の責務だというふうに思います。

山下よしき 厚生労働省に伺いますが、東京の事案はうつ伏せ寝の状態だったということがはっきりしております。うつ伏せ寝について国としてどのような指導を行ってきましたか。

吉本審議官 うつ伏せ寝につきましては、保育所における保育の内容等について厚生労働省が定めました保育所保育指針、この解説におきまして、うつ伏せ寝にして放置することは避けなくてはならないこと、また、うつ伏せにする際には子どものそばを離れないようにし、離れる場合にはあおむけにするか他の保育士等が見守るようにすることとしているところでございます。あわせまして、認可外の保育施設指導監督基準におきましても、乳児を寝かせる場合にはあおむけに寝かせることとされており、うつ伏せ寝に関しては注意喚起をしているところでございます。
 また、さらに、本年の3月に重大事故の予防、事故発生時の対応に関するガイドラインを作成したところでございまして、その中におきましては、医学的な理由で医師からうつ伏せ寝が勧められている場合以外は、乳児の顔が見えるあおむけに寝かせることが重要であること、何よりも一人にしないこと、寝かせ方に配慮を行うこと、安全な睡眠環境を整えることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことにつながることについて定めて、施設、事業者等に対して周知を行っているところでございます。

山下よしき 周知を行っているということでしたが、残念ながらそうなっていないんですね。
 東京の事故について、私たちは母親から直接話を伺いました。母親は、東京以外の首都圏から子どもと一緒に電車に乗って都心のキッズスクウェアに子どもを預けていました。2月中旬から慣らし保育を始めたわけですが、一か月もたたない3月11日午後二時過ぎにお迎えに行ったところ、息子の状態が良くないと言われて駆け寄ると、顔の形や色も変わり、目はうつろだったと言います。誰も救命救急の蘇生措置をしておらず、母親本人自身が人工呼吸をしましたが、その後、救急車で運ばれた病院で死亡が確認されたということであります。
 母親がキッズスクウェアの職員にその日の子どもの様子を聞いたところ、10時45分に昼食を食べた後、11時25分頃からうつ伏せで寝かし付けが行われ、11時45分には眠ったとされています。寝付きが良くないということで、ほかの子どもが寝ている午睡室とは別の部屋で一人で寝かされていたと言います。寝かし付けた職員は保育士の資格を持たない非常勤の職員で、1月に1日程度しかこの施設には来ない、たまたま事故の当日と前日に臨時的に来ていた方であります。園長からうつ伏せで背中をさするようにとこの非常勤の1か月に1、2回しか来ない人が指示されて、こういうことになった。また、この方は、寝かし付けた後、子どもが一人で寝ている部屋の窓の掃除などをしたそうですが、掃除中は子どもが寝ている方向とは別の方向に向いて作業していて子どもを見てはいなかった。掃除が終了した後、別の作業をするために子どものいる部屋を離れた。作業中は子どもが見えない場所で作業が行われていたということであります。
 異変に気付くまでの2時間半近くの間、ほかの職員も含め、顔や呼吸を確認する等はされておりません。そして、14時過ぎに、起きてこないので見に行った職員が名前を呼んだけれども反応がなく、手は冷たくなっていたと。人工呼吸などの蘇生努力をしたのは、たまたま早めにお迎えに来た母親だったということであります。これが母親から直接私どもが聞いた事実関係であります。
 その上で三点、厚労省に聞きます。
 一つは、国の保育指針では、乳幼児のうつ伏せ寝は窒息などの突然死の危険性があるとして避けなければならないと明記されております。事情があってうつ伏せ寝にする場合は、職員がそばに付いて呼吸の確認をするよう求められています。それから、うつ伏せ寝でなくても睡眠中は小まめにチェックすることになっておりますし、東京都は睡眠中十分ごとに状況をチェックして、それを表に記入することとしております。ところが、こうしたことがキッズスクウェアでは全く守られていなかった、これはなぜか。これが一点です。それから二つ目、無資格者が1人で寝かし付けに当たり、他に有資格者はいないということは許されるのか。それから三点目、職員がいない部屋で子どもが1人で寝かされるということは許されるのか。
 以上、お答えください。

吉本審議官 お答え申し上げます。
 まず、一点目でございますけれども、今ほども御説明ございましたように、指針等におきましては、一定の期間、乳児の観察をきめ細かくするといったことを定めているところでございまして、今回の事案につきましては、その一定の時間における乳児の観察がきちんとなされていなかったといった報告を受けているところでございます。そういう意味では、私どもが示している基準を踏まえた適切な対応がなされていなかったのではないかというふうに考えられるところでございます。
 また、寝かし付けを行うことにつきましてですが、これは保育士資格を有するかそうでないかを問わず、今ほど申し上げましたその保育指針等を踏まえて適切に行われるべきだというふうに考えているところでございます。
 そしてまた、子どものそばを離れる場合につきましては、きちんと他の保育士等がきめ細かくチェックをするといったことについてもガイドラインで記載しているところでございまして、そうしたことがきめ細かくなされていなかったというふうに考えられるところでございます。

山下よしき なぜそんなことになったのかということはお答えがありませんでした、守られていなかったんだろうということでありましたが。
 キッズスクウェアの運営主体は株式会社アルファコーポレーション。都内に、認可保育所、認証保育所、認可外保育施設合わせて12か所運営しています。驚いたのは、代表の坂本秀美氏が内閣府の子ども・子育て会議のメンバーでもあるということであります。
 加藤大臣に伺いますが、こうした企業が経営する保育施設で、国や都の基準や指針が守られず子どもの命が失われたことをどうお考えでしょうか。

加藤大臣 坂本秀美さんは、平成27年4月9日より子ども・子育て会議の専門委員に御就任をいただいているところでございます。
 先ほど申し上げましたように、こうした保育所でのこうした事故、特に死亡事故というのは、預けた親御さんにとっても本当に思い、余るところがあるというふうに思います。
 現在、子ども・子育て会議の委員を選定するに当たりましては、全国保育サービス協会から御推薦をいただくという形でこの方にお願いをしたという経緯がございますので、現在、全国保育サービス協会において対応を御検討いただいているというのが今の状況でございます。

山下よしき どこであれ、あってはならないんですがね。ましてや、この子ども・子育て会議のメンバーだった方の企業で起こっちゃったということですよね。重く受け止める必要があります。
 アルファコーポレーションのホームページを見ますと、キッズスクウェアは、保育所、託児所のコーナーで紹介されております。この日本橋室町のキッズスクウェアの園長と言われている人はまだ若く、26、7歳だったと思いますが、通信教育で資格を取っておられて、本人も、入社まで保育経験ゼロで教科書の知識しかなかったとホームページで自己紹介されています。その方が入社後1年3か月で園長となられたわけです。預かっている子どもの数は、ゼロ歳児4人、一歳児11人、二歳児4人、三歳児2人、四歳児1人の合計22人。それに対して、このマネジメントもしているこの園長さんと、それから保育士の有資格者がほかに3人いらっしゃいますが、この3人の保育経験は4年、1年、1年であります。極めて短いわけですね。あとは資格を持たない方が非常勤で2人。そのうちの1人は、先ほど言ったように、月に1回来るか来ないかという方であります。
 これでも認可外の指導基準は満たしていると、一応、ということになっているんです。なっているんですけれども、私はこの事例を見ると、子どもの発達を保障するために必要とされている専門的知識を持つ有資格者、それと保育現場での経験、これが圧倒的に不足している、その中で今回の死亡事故が発生していると。これはやはり因果関係、認めざるを得ないんではないかなと感じました。
 加藤大臣、こうした認可外保育施設の実態、放置していいんでしょうか、改善の必要を感じませんか。

加藤大臣 認可外保育所の指導監督基準の御議論だというふうに思いますけれども、認可外保育施設における保育をしっかり確保するという観点から様々な議論、検討を経て今の基準というものが定められているというふうに承知をしております。
 ただ、いずれにしても子どもを預かる施設であります。保育士の資格があろうとなかろうと安全確保に最優先で取り組んでいただく、そして保育の質をしっかりと確保するように努めていただくということは当然のことだというふうに思いますし、また、そうした形で運営が行われていくように我々としてもしっかりと対応させていただきたいと思います。

山下よしき 今、加藤大臣、保育士の資格があろうとなかろうと安全にはしっかり取り組む必要があるとお答えになりましたが、果たしてその認識でいいのかということであります。
 資料に、厚労省がこの間の保育施設での死亡事故件数をまとめたものを配付いたしました。平成16年から平成27年まで毎年十数人、保育施設で子どもが亡くなっております。これは一人でもあってはならないことですが、起こり続けております。認可と認可外を比べますと、預かっている子どもの数は圧倒的に認可の方が多いです。240万人です、認可は。認可外は約20万人です。にもかかわらず、死亡事故件数は認可外の方が多いということが分かります。平成27年で見ますと、認可が2件、認可外が10件であります。
 先日、当委員会の参考人質疑で京都華頂大学の藤井伸生教授が、認可外と認可で死亡事故の比率は子ども一人当たりに直すと認可外が60倍高いと告発をされ、その大きな違いは、保育士の有資格者の比率が認可外は認可の3分の1でよいとされていることがあると指摘をされました。ここはやはり無視できないんじゃないか。
 有資格者であれ無資格者であれ安全に配慮しなければならないと大臣おっしゃいますが、やはり有資格者は、子どもの成長、発達、危険性、リスクについてもしっかり専門的知識を、もう2年間保育専門学院で訓練受けて、教育受けて、実習もして身に付けておられます。そういう方がやはり3分の1でいいんだというふうになっている認可外でこういうことが起こっているのではないかというのが、これは藤井教授の御指摘ですが、加藤大臣、この御指摘、これは真剣に受け止める必要があるのではないでしょうか。

加藤大臣 当該保育園でこの3分の1に対して幾らだったか、済みません、ちょっと私は承知していないのであれですけれども、いずれにしろ、3分の1は上回っているんだろうというふうに思います。
 したがって、何といいますか、3分の1云々という議論ではなくて、やはり、むしろ先ほど申し上げた保育士の方であろうとなかろうと、そうした仕事に従事をされるということであれば、やはりしっかりとしたそうした点における配慮がなされるように対応していくということがまず一番に大事なんではないかと。そして、そういうことによって、こうした痛ましい事故が二度と起きないように対応していく必要があるんだろうと思います。

山下よしき 極めて残念な御答弁ですよ。いいんでしょうか。
 今、私、具体的に子どもが亡くなったことの経過と事例をお話ししました。保育の経験が資格者であっても4年とか、あるいは1年数か月で園長になった方で担われていた。そして、その園長がうつ伏せ寝で寝かしなさいという指示をして、全く月に1、2回しか来ない非常勤の方がそのとおりやって、目を離して亡くなったんですよ。この教訓を生かしてこそ政治じゃないですか。この教訓を生かすのが国会じゃないですか。私は、今の答弁、極めて残念だということを申し上げたいと思います。
 保育士は子守役じゃありません。子どもの成長と発達を保障する専門性が求められる仕事であります。保育士の配置基準、この資格を逆に緩めようとしているのが先ほど御質問があった今の政府の緊急対策ですから、あるいはまた、この4月からも、朝と夕方は最低2人の保育士のうち1人は資格外でもいいというふうにまたこれも緩められておりますから、これは逆行だということを指摘しておきたいと思います。
 それから、認可施設でも死亡事故はゼロではありません。先ほどの表を見ていただいたら分かるように、毎年数件起こっております。これもゆゆしき問題だと言わなければなりません。
 私は最近、株式会社が運営している認可保育所で働いていた保育士の皆さんから話を伺いました。ちょっと生の声、紹介したいと思います。
 Aさん。ある株式会社経営の認可保育所、この保育所は、ゼロ歳児から五歳児まで約70人見ている保育所ですが、Aさんは二歳児8名を2人で見ていました。2人ですから、1人当たり3人の基準は満たしているんですが、この子どもさんのうち1人はダウン症で歩けない。ですから、加配がされずに実質このダウン症の子どもさんを1人が掛かり切りで見ることになって、7人の二歳児を1人で見ることになっていたということであります。
 2時間残業が初めからシフトに組まれていると。要するに人が足らないと。毎日本部から手伝いにヘルパー、アシストが来ると。子どもたちは、ですから落ち着かないと。保護者からも苦情が毎日のように来て、保育士が足らないのではないかと親から見ても分かると。
 ですから、4月、5月でもうせっかく入った職員が辞めていくと。この方も辞めたそうですが、同期のうち6人辞めちゃって、残っているのは1人、2人しかいないと。職員会議もできない、引継ぎもできない、持ち上がりの先生もいない。要するに、担任だった先生がみんな辞めちゃうので、その担任の子どもたちがどんな状況だったのかを次に担任する人が聞くことができないということが起こっている。あるいは、一歳と二歳の子どもを合同にしないと職員が不足して保育できないということで狭い部屋で一緒にやっているけれども、やっぱり発達段階が違うので大変危ないということでありました。
 この方は、ここで仕事をしても自分のためにならないということで辞められたそうですが、この企業が毎年都内で2園から3園、新しい保育所をどんどん増やしているということでありました。
 それから、別のBさん。別の株式会社経営で122名の子どもを預かっているマンモス認可園ですが、4月1日の最初から十時間労働で、初日から残業してくれということになって驚いたそうですけれども、職員の入れ替わりがここでも激しくて、園長が大変怖い方だそうで、プラス激務で精神的に参って突然次の日から来なくなる保育士が相次ぐと。信頼できる主任さんと思っていた人も突然来なくなったということで、辞める職員が多いとその分しわ寄せが当然残っている方に来ます。しかし、月の残業は5時間までとしか認められない。もう行事、生活発表とか運動会とかありますし、見た目を気にする園長さんだったようで非常に飾り付けに凝られたようで、これも残業の要因になっていたそうですが、五時間で切るなんというのは労働基準法違反だと言わなければなりません。職員が入れ替わって子どもが落ち着かずに、怒ってばかり自分もいるので、そういう毎日の自分に嫌になってきたと。
 この方は三歳児を持っていたそうですけれども、三歳児の中にお1人障害を持った子がいて、遠足に連れていってあげたいなと思っていたんだけれども、上の方とおっしゃっていましたけれども、本部の方から連れていくなと、もし何かあったら困るからということで、連れていくことができなかった。しかし、その上の方、本部の人というのはその子どもの実態を見ているわけじゃない。保育士の専門的な目で見て、ちゃんとサポートすれば遠足にだって行けるはずだと思っていたのに、それが認められずに、それを親に言うときのつらさ、親はそれを聞かされたときに泣いていたということで、この方もこのままだと子どもが嫌いになるということで辞められたということであります。
 私も聞きながら、これ全部認可園ですから基準満たしているわけですが、しかしこういうことが起こっている。大臣、こういう株式会社経営の認可園における実態、どう感想をお持ちでしょうか。

加藤大臣 今の御指摘のあった園においては、今のお話を聞くと、特に残業もしっかり払われていないというのは、これはもう論外だろうというふうに思いますし、また、そうした状況が、かえって残っておられる保育士の方がたに更に過重な労働になり、ストレスになり、まさに悪い循環になってしまっていると。そのことは、働く方のみならず、そこに預けられておられる子どもさんにとっても決してプラスにはなっていないんだろうなと、こういうふうには受け止めさせていただきました。
 ただ、株式会社がやっている保育園が全部がそうだというのは、必ずしもそうも言い難いんだろうと思います。それぞれの園で、誰が主体でやっていようが、今のような事態がないようにしていかなければならない。
 また、制度としてどうしても保育士の方の定着という問題がいろいろ御議論されるわけでありますけれども、今御議論させていただいた処遇改善に加えて、やはり様々な形で安心して働き得る環境、これをしっかりつくっていくということは我々としては取り組んでいかなければならないと、こう思っております。

山下よしき 今大事なことを大臣おっしゃったと思います。要するに、保育士の待遇が悪くなることは子どもにしわ寄せになっていくという問題であります。こういう保育施設が私は急増しているというふうに話を伺って感じました。
 株式会社が経営する認可保育施設は、平成19年、108でした。それが平成27年、928へ800増えております。同じ時期に社会福祉法人だとか公立保育所だとか、全部合わせた保育施設が2万2848から2万3537へ700増えていますから、同じ時期に八百、株式会社の経営する認可保育所が増えているというのはかなりの増え方というか、物すごい増え方なんですね。東京都の認証保育所がそれとは別にありますが、670のうち460、7割が株式会社経営になっている。ですから、株式会社の保育施設がどんどん増えているということだと思います。
 私も、株式会社経営の保育施設が全て悪いとは思いません。しかし、利益第一主義で、子どもの安全、成長と発達や保育士の働きがいは二の次、三の次にされている施設が増えていることはゆゆしき問題だと思います。
 そこで一つ提案がありますが、事業所に対して保育士の定着率を公表させるということが大事ではないかと。これは、赤ちゃんの急死を考える会の活動を支えている寺町東子さん、弁護士、社会福祉士の方ですが、4月3日に提案された安全を切り捨てない待機児解消策の中にこの提案をされております。保育士の定着率を向上させる工夫を各事業者に競わせることを誘引する目的で、法人ごと、園ごとの保育士定着率を、全体、1―2年目、3―5年目、6―10年目、10年目超などの区分で公表させてくださいということであります。
 私は、これはなるほどなと思いました。私も話伺っていて、大体もう子どもにしわ寄せが行っているような株式会社方式の保育園で共通しているのは、保育士がどんどん辞めていって定着しないということであります。ですから、全部株式会社が悪いとは言いません。しかし、保育士が何年ぐらい勤めている人が何人ぐらいいるんだろうかということを公表することによって、社会的に、こういう定着がなく子どもにしわ寄せが行っているもうけ第一主義に走っているような保育所は社会から監視され、子どもが預けられにくくなるということで淘汰されていくということをやってはどうかというのがずっと子どもの急死を一緒に考えてきた弁護士さんからの提案ですが、これ検討の余地あると思うんですが、大臣、いかがですか。

加藤大臣 保育所について保護者がまず適切に選択できるというその状況をつくっていく、また保育所の努力が保護者から適切に評価されているようにしていく、これ大変重要だというふうに思います。
 子ども・子育て支援法においても、保育所等が提供する保育に関する情報を都道府県知事に報告をする。その情報の中には、施設等において、保育、教育に従事する従業者に関する事項として、従業者の勤務形態、労働時間、従業者1人当たりの小学校就学前子どもの数等、あるいは、従業者の教育、保育の業務に従事した経験年数などが含まれておりまして、報告を受けた都道府県知事は当該情報を公表するという仕組みになっております。先ほど定着率というお話がありましたが、今、経験年数というのはそういった形で公表事項の一つになっております。
 ただ、残念ながら、全ての本来は都道府県で公表することになっているんですが、制度がスタートしたのが昨年度からということで、まだ十分にそうした入力が行われていないということもありましてまだ一部にとどまっておりますけれども、まずは全ての都道府県においてこれは公表しなきゃならないと書いてありますから、しっかり公表が行われるように取り組んでいきたい。そういったことを通じて、やはり外からしっかりとその実態が見えるようにしていくということは、保育所においてしっかりとした経営が行われていくための一つの手段だろうと、こういうふうに思います。

山下よしき 経験年数も大事なんですけれども、幾ら経験がある人が来ても定着しないというのは問題なんです。その点の公表をという御提案ですが、検討する必要はありませんか。

加藤大臣 今は、これまでの様々な議論を通じてそういった内容について今申し上げたようなことについて公表させていただき、それをまず公表していこうという仕組みをまず動かしていくという状況であります。それをまずしっかりやる中で、その上でどういった情報が更に必要なのかどうかも含めて議論をしていかなければいけないと思います。

山下よしき 極めて消極的だなと言わざるを得ません。もう命が奪われている。現場に寄り添った方がたからの専門的な御提案なんですね。これ真剣に受け止めるべきだと私は思いました。
 死亡事故の検証を国がしっかり責任を持って直接行うことだということもありますが、もうそれは時間がありませんので割愛したいと思います。
 最後に、やはりこの亡くなった子どものお母さんから、昨日、遺族の気持ちをお伝えさせていただきますということでメールいただきましたので、紹介して終わりたいと思います。
 企業主導型保育は、営利事業である性質上、利益を出してこそ成り立つのであり、利益を出すために必要となる効率性は保育の質の担保と正反対だと思います。子育てをする母親に余裕がないと子どもに対して寛容に愛情を注ぐことができないように、まして複数の子どもを一手に見なければいけない保育士たちは、余裕がなければ、愛情を注ぐことは言うに及ばず、最低限のこと、すなわち、けがを予防したり、窒息しないように食事をさせたり、安全に昼寝をさせることすらできません。幾ら規則や指針を作り安全を掲げても、子どもは泣き、動き回り、触れ合いを求めるもので、現場の保育士たちが余裕を持って保育に当たれなければ実効性に乏しく、実効性の乏しいものを保育士たちに課すのは酷です。そして、犠牲になるのは、しゃべれない、自由に動けない子どもたちです。どうか子どもを犠牲にしないでくださいと、こう述べられていました。
 最低基準の緩和による詰め込みではなくて、私は、むしろ最低基準を引き上げる、そして保育士の専門性を磨き、子どもの命と発達を保障することこそ政治の責任だということを申し上げて、質問を終わります。

保育士のみなさんが、もっとその能力を生かし意欲を生かすためには 
2016年4月21日 参議院内閣委員会 参考人質疑

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 3人の参考人の皆様、ありがとうございました。
 大日向先生が保育専門学院の先生をされていた頃から、夢を持って保育士を希望しながらなかなかそれが続かないという実態、今も余り変わらないということで、大変残念なという御意見が出されまして、私も自分の子どもは3人とも保育所でお世話になりました、育休明けあるいは産休明けからつながって、当然共働き家庭にとって非常に仕事をする上でなくてはならないのが保育所であると同時に、子どもの成長、発達にとっても非常に大きな関わりをしていただいたと思っております。
 生活発表会というのが年に1回ありますけれども、やはりそこに行きますと、自分の子どもだけ見るんじゃなくて、ゼロ歳児から五歳児までずっと連続して演技や発表を見ることができることによって、自分の子どもが幼い頃は、例えばゼロ、一歳のときにはカスタネットをたたくぐらいだった子どもが、もっと大きなお兄ちゃんになったらすばらしい演技をして、「島ひきおに」で大人を泣かせたり、そういうすばらしい子どもというのは能力、発達する力を持っているんだなと思いましたし、運動会も、やっぱりゼロ、一歳、年少と年長、こんなにも運動能力が発達するのかということを親として非常に感動的に学ぶ場でもありました。
 それから、先ほど大日向参考人が、障害を持つ子どもさんたち、ハンディキャップを持っている子どもさんたちへの関わりということもちょっと触れられましたけれども、やはり保育所というのは、そういう子どもさんがいるときに、その動きを見ながらそういう心配があるんじゃないかということを早期に発見して親御さんに適切に伝えて、早期のそういう環境をつくればいろいろまた発達が保障されていくということなんかを見出し、アシストする場所でもあるというふうに感じていました。また、そういう子どもさんがいることが他の健常な子どもさんと親にとってもむしろプラスになるんだという環境をつくっていってくださっていたと思っています。そういう点でいうと、保育士の皆さんは、単に子どもを預かっているというんじゃなくて、子どもの成長と発達に非常に積極的に関わり、成長と発達を保障してくれる専門家集団というふうに私は思っております。
 ところが、その人たちが長く働くことができない、非常に評価が低い。先ほど大日向参考人は賃金だけではないんだというふうにおっしゃっていましたけれども、どうすればそういうせっかくの専門家である保育士のみなさんがもっとその能力を生かし意欲を生かすことができるのか、お感じのことがあれば、大日向参考人、それから同じく藤井参考人にも、同じような関わり方をされていると思いますので、伺いたいと思います。

大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長、NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事) 御質問ありがとうございます。
 今先生のお話伺って、従来、保育に欠けると用語で使っていたことがどんなに間違っていたかということを感じました。子どもは親が働いているから保育に欠けて、それで保育園で暮らすのではなくて、子どもは集団でいろんな方の目に触れ、手に守られて育つ権利があるんだということでございますよね。そういうことをサポートする保育者の方が長く働いていただける環境の整備は、先ほども申しましたように、いろんな面からサポートしていくことが必要だと思っています。
 一つは、もちろん給与の改善です。それからもう一つは、研修あるいはその職場の中で若い方ばかりではなくいろんな年齢構成の方がいらしてお互いに切磋琢磨できるようなこと、そしてもう一つ、私はNPO活動をしておりますので特にそう思うんですが、保育所は保育士だけで構成されるのではなく、そこに地域の方もどんどん入っていけるような仕組みが必要かと思います。
 私がしておりますのは子育てひろばで、保育園ではないんですが、一時預かりもやっております。そこに中高年の子育て家族支援者さんがたくさん入ってくださって、2年前からは団塊世代の男性も入ってくださって、もう雰囲気ががらっと変わってきて、もう親も子も生き生きとするし、何より保育を担当しているスタッフがいろんな方に学ばせていただいて保育に携わる喜びもまた経験できるということですから、多重にいろんな観点からこの問題は取り組んでいただきたいと思います。
 一つ本当に感謝なんですが、30年以上、それ以前は保母と言われて、保育は、子育ては、介護もそうだと思いますが、女性がやるものだから低くていいんだ、専門職でなくていいんだみたいな考え方があったんですが、今回、残念なことではあります、待機児対策がなかなか厳しい、でも、それをきっかけに保育の専門性、あるいは今申し上げたような地域の方々がみんなで関わる大切さを改めて考える機会になったことは大変有り難いことでございます。

藤井伸生(京都華頂大学現代家政学部教授) 保育士ができるだけ長く勤めていけるような条件をということですけれども、かなりこれは課題が大きいなといいますか、難しいなということも思っていまして、例えば特に短大を卒業する学生なんかはもう結婚まででいいとか腰掛けでいいという感覚が物すごく広がってしまっています、残念ながら。多分そういうふうに扱われてきたからそうなっているんだろうと思うんですけれども、そこを変えて、キャリアを積んでより質の高い保育をしていくんだというふうに切り替えていくのには、本当に大きな抜本的な対策を打たないと変わらないんじゃないかなということを強く思っています。
 具体的に、賃金の話も出ておりますけれども、やはりこの賃金も大きいと思います。例えば京都市では、公民格差是正ということで、公務員に匹敵するような待遇ができるように京都市単独で40億のお金を出して民間の保育園の職員の待遇をしております。このことがある一定成果も上がり、京都市では、ちょっと今日データを持ち合わせていませんけれども、民間園でありながらも長年勤務されている方はいらっしゃっています。
 こういうことから見ても待遇はとても大きいと思いますし、それから、先ほども述べましたけれども、保育所の保育時間が非常に長くなっているんですね。朝七時から夜7時、八時まで、12時間、13時間、それを8時間で働いていくわけですけれども、30分刻みのシフト勤務です。早出があったり遅出があったり、労働者ってやはり決まった時間に働く方が非常にリズムはいいわけですよね。それが早出、遅出があるというのはとても厳しい。そして、御存じのように、保育所というのは360、まあそこまで言いませんけれども、日祝以外のところは開いているわけですから、そういうところでも勤務があります。
 そしてさらに、先ほど私は保育士の配置基準のことを言いましたけれども、やはりそこで子どもにしっかり向き合えない、理想的な保育ができない、丁寧に向き合いたいけれどもできない、こういうことも含めて様々な矛盾が保育所にもう山積してしまった。ここを一つひとつ剥がしていくということをやっていかなければいけないという、非常にこの20数年間、20数年というか、児童福祉法ができて以来の50年にわたる長年の積み残しが今の問題をつくっており、そこを抜本的に変えるという作業は本当に真剣になってやらないとそう簡単には変わらない、そんな思いもしておりますし、是非そこに問題意識を持っていただいて、一つでも二つでもより良い方向にし、やはり保育という仕事というものに、やはり保育の仕事の良さというのは子どもの成長に寄り添えるということが保育士さんとても充実感感じるわけですけれども、それが体を壊さずにやれるようにしていけたらということを願っております。
 以上です。

山下よしき ありがとうございました。
 実は私の妻も保育士をしておりまして、保育専門学院を卒業して保育の現場に入って、本当にやりがいと生きがいを持って関わってきて、民間の保育園に入っていたわけですが、結婚したらみんな辞めていくと。私の妻は初めて、結婚して辞めずに、子どもができたらみんな辞めていく、子どもがすぐできて辞めずに、労働組合をつくって頑張れるようになったんですが、やっぱり多くの民間の保育所の経営者の皆さんは、経済的、財政的な問題から、できればもう継続年数の短い保育士さんをたくさん使った方が経営的に楽になるという面もあるのでしょう。しかし、それが社会でそれでいいのかということをやはり政治が考えて、子どもにとってそれが非常にマイナス、もったいないことになっているということも受け止めなければならないなと今思いながら聞いておりました。ありがとうございました。
 それから、大日向参考人と藤井参考人にもう一問聞きたいと思うんですが、保育所をつくる必要があると同時に、即効性に疑問があるので、大日向参考人は、既存の施設を活用する、幼稚園の認定こども園化が大事ではないかということをおっしゃいました。緊急対策として私それはあると思うんですが、そのことをそれでずっとこの今の待機児童問題を解決する根本対策にする点で問題はないんだろうかということを少しお聞かせいただきたいんです。
 例えば、保育所に子どもを預けている親はやはり朝から夕方あるいは夜まで、幼稚園の場合は例えば午前中だけとか、子どもの施設にいる時間が違うわけで、その子どもたちが同じ施設でいることによって子どもにどんな影響があるんだろうか、保育者にとってどういう影響があるんだろうか、その辺りは少し今問題あるのではないかと思うんですが、両参考人からお聞かせいただきたいと思います。

大日向参考人 ありがとうございます。
 私は、幼稚園の認定こども園化を待機児対策の対症療法、一時的な対症療法とはむしろ考えておりません。むしろ根本的にそれは理想的なことだというふうに考えております。
 先ほども申しましたとおり、新システムのときに、全ての保育園が3年以内、幼稚園もできるだけ早く幼保一体型の施設になってほしいということを提案いたしました。そこには、子どもの発達を考えるときに、学校教育法で位置付けられた幼児教育と保育を一体で受ける権利が子どもにあるわけです。ですから、親が働いていらっしゃるいないにかかわらず、コアタイムは幼児教育と保育を一体で受けられる時間帯にする、一方、朝早い時間あるいは夕方の時間はこれは保育の時間というふうにすることで全ての親が一つの施設に関わることもできます。今の現状ですと、働いていると保育所、専業主婦の方は幼稚園と、地域の中でも分断されてしまっているという問題があります。
 それから、もう一つ先生がお尋ねくださいました、子どもにどう影響を与えるかと。既に幼保一体の認定こども園をやっていらっしゃる施設を幾つか私も見学をさせていただきました。余り問題はないということですね。子どもはコアタイムは一緒に楽しく遊ぶ、そして朝と夕方の時間帯はそれはそれで、自分のお母さんお父さんは働いているんだからということで、また別の楽しい保育を心掛けるということで子どもは順応しているというような報告もいただいております。

藤井参考人 認定こども園化の問題ですけれども、私自身も幼稚園と保育園を一体化することが絶対駄目だとまでは思っていないんですけれども、非常に疑問に思いますことは、新制度におきまして、認定こども園、これ2006年からできている制度ですけれども、児童福祉法におきまして、児童福祉法の24条2項に位置付いて認定こども園ができているわけですね。で、保育所は24条1項です。この違いが何か。24条1項というのは、市町村の保育実施義務というのが24条1項です。この市町村の保育実施義務というところに位置付けて認定こども園があるならばまだよいんですけれども、24条2項に位置付けられていると。24条2項というのは、一般的に言うと、利用者と園との直接契約の仕組み、市町村の責任で実施しない仕組みということになっているんですね。この法的な根拠が非常に甚だ疑問に思うところです。
 やはり市町村責任が曖昧になっていくということは、そもそもの認定こども園の整備が果たして今後できるんであろうか。今幼稚園が空いてきているから取りあえずそこを認定こども園化するぐらいであって、認定こども園というものを通して必要な保育に、担っていく責務が国や自治体にこの法律上から構成されているのだろうかということも非常に疑問に思っています。そういう意味で、24条1項の国や市町村の責任の下、認定こども園化するということであればまだとても理解しやすいと思うんですけれども、そこが分かれているというこの紛れもない事実、ここはやはり大きな問題を持っていると思います。
 そして、認定こども園のコア時間のところで、うまくいっているというお話もございましたけれども、やはり国が示すところですと、幼稚園の利用者的なお子さんたちは四時間程度、保育園関係は八時間ないし11時間そこで過ごすということになっていまして、この仕組みをどうやってするかということの苦労は現場にたくさんあると思います。午前中、保育園であれば散歩を重視していたものがそれが十分できないとか、昼寝のことをどういうふうにリズムをつくっていくのかとか様々あって、やはりこれほどの大きな時間の差は問題、やはりもっとこの時間を、差を縮めていくようなことをしていくなどの努力をしているところもあるみたいですけれども、そういうものもとても大事じゃないかなと思っております。
 済みません、ちょっと十分にしゃべり切れませんが、以上です。

山下よしき ありがとうございました。

離島の産業振興と交通・輸送費の低廉化について 
2016年4月19日 参議院内閣委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 初めに、私からも九州地方の地震で犠牲となった方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。
 さて、本法案は、離島の中でも自然的、社会的条件の厳しい外海離島の振興を主眼とし、離島住民、離島自治体の強い要望でもある離島航路の整備強化に資するものとして賛成をいたします。
 先週末、私の事務所のスタッフが九州の西にある長崎県五島列島南西部の自治体、五島市を訪ねまして、地域振興の取組、国への要望などを伺ってきました。
 五島市は、長崎港から約100キロ、フェリーで約3時間、高速船でも約1時間半掛かる福江島を中心に、11の有人島と52の無人島で構成されている離島自治体であります。2004年に1市5町が合併して五島市となり、現在、約2万世帯、4万人が暮らしておられます。島には美しいツバキが自生し、古くは遣唐使が往来するなど大陸文化との交流拠点でもありました。また、遠洋漁業や捕鯨の一大拠点として栄えた時期もありました。
 現在は、人口減少、高齢化が進む中で、五島市は雇用を生む島づくりを掲げ、地場産業の育成、五島ブランド、特産品の振興に取り組んでおられます。ツバキ油、あるいはマグロ養殖、タカナやブロッコリーなどの野菜、五島牛などに力を入れておられました。また、古くからのキリスト教の潜伏信者たちが建てた教会群遺跡で世界遺産の登録を目指すなど、観光の振興、交流人口の拡大にも取り組んでおられます。
 しかし、離島ですから、やはり本土にはない困難が伴います。長崎と福江島を結ぶフェリーは往復約5000円、高速船だと往復1万円、長崎から飛行機で五島空港まで行きますと往復2万円かかると聞きました。その福江島から更に11の離島に行くには、また船を乗り継いで行かなければなりません。
 提案者に伺いますが、離島住民から出されている離島航路あるいは離島航空路の維持や運賃の低廉化の要望についてどうお考えになるのか、また、どの程度の運賃の低廉化が必要とお考えなのか、お答えください。

鷲尾英一郎衆議院議員 お答え申し上げます。
 昨年の6月、全国離島振興協議会におきまして、離島航路・航空路支援の抜本拡充を求める特別決議がされたと承知しております。提出者といたしましても、離島航路、航空路の維持及び運賃等の低廉化について極めて重要な問題であると認識いたしております。
 委員御承知のとおり、離島が他の地域に比べまして大変厳しい状況にある大きな要因の一つが、海で隔絶をされているということで交通に要する費用が大きくなるということと考えており、離島、とりわけ国境離島の地域社会を維持するためには離島航路、航空路の運賃等の低廉化が極めて重要な施策であると認識をいたしております。
 そこで、本法案の第12条におきまして国内一般旅客定期航路事業等に係る運賃等の低廉化について、第13条におきまして国内定期航空運送事業に係る運賃の低廉化について、それぞれ特別の配慮をするものとし、重点的に実施すべきこととしております。
 提出者といたしましては、航路、航空路の運賃等の負担につきまして可能な限り低廉化することを期待をいたしているところでございますけれども、施策の詳細な中身及び制度設計につきましては、今後、内閣総理大臣が基本方針を定めた上で、政府及び都道府県において本法案の趣旨を踏まえて適切に検討されるものと考えております。
 以上です。

山下よしき 重要性の御認識はよく分かりました。どの程度かというのは今後政府が基本方針を定めるなどということですが、私、一つだけちょっと議論しておきたいのは、離島自治体や離島の議会の関係者からは、フェリーや高速船はせめてJR料金並みにしてほしい、それから飛行機はせめて新幹線並みの料金にしてほしいという要望が出されております。この声、私はそれ聞いて、新幹線並みの料金だってまだ高いじゃないのと思いましたけれども、今はそれ以上飛行機に乗れば掛かるということですね。
 せめてこのぐらいにしてほしいという声について、提案者の皆さん、どうお考えでしょうか。

鷲尾衆院議員 私も選挙区内に離島を抱えておりまして、そのような声が強いということはもう本当に承知をいたしておりまして、これはもう予算が確保されればされるほどその住民の皆さんの御要望に近づくのかなというふうに思ってございますが、何分これは財政の制約もこれあり、今後政府で検討されることをひとえにお願いする次第でありまして、提出者としても、先生のお気持ち重々承知しております。住民の皆さんの御要望に沿った形で制度が運用されることを期待をしたいと思います。

山下よしき もう離島では、人の往来、物資の運搬コストが高い、どうしても食品始め生活必需品、あるいは様々な商売のための仕入れや販売、これ費用が割高になってまいりますので、私のスタッフが聞いたところ、農業、漁業、建設、製造、観光、あらゆる分野で移動、運搬のコストが大きなハンディになっていると。島に暮らし続ける、島で営みを続ける限りせめて本土と同じ土俵にしてもらえればという声が痛切に出ておりますので、国交省中心になるんでしょうか、しっかり受け止めていただきたいと思っております。
 さて、五島市内の島々の人口は、1955年、昭和30年に比べて約56%も減ったと聞いております。毎年、高校卒業生約300人のうち九割以上が進学や就職のために島を出てしまう、人口減と高齢化が急速に進んでおり、現在、高齢化率は33%と聞きました。
 特に深刻とされているのが漁業従事者の急激な減少であります。五島市の就業者数は現在1万7千人で、2000年と比べて約16%減少しておりますが、とりわけ漁業従事者は37.5%減少し、4割近く減っちゃったということですね。じゃ、一次産業全部そうかといいますと、農業従事者を見ますと7.3%の減少にとどまっておりますから、漁業の従事者の減少というのは大変深刻な問題になっております。
 提案者に伺いますが、離島において若者の雇用の場を確保することは非常に重要な課題、特に一次産業、とりわけ漁業の就業者を増やす取組の意義についてどうお考えでしょうか。

中野洋昌衆議院議員 お答え申し上げます。
 漁業への就業者を増やす取組の意義ということでお尋ねがございました。特定有人国境離島地域に係る地域社会が維持をされるためには、有人国境離島地域の住民の雇用の機会が確保され、経済的に自立をした生活が可能でなければならない。そのためには、雇用を創出する事業の存在というものが不可欠でございます。
 そこで、本法案の第15条におきまして、雇用機会の拡充を図るため、事業の事業規模若しくは事業活動の拡大又は事業の開始に要する費用の負担の軽減をする、また職業訓練の実施を講ずる、このようにされておりまして、こうした施策を通じて御指摘のございました漁業を含めた就業者の増加というものが期待をされる、このように考えております。
 漁業は、特定有人国境離島地域における重要な産業であります。また、我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に重要な役割を果たしていると言えます。このような重要性を有する漁業に若い就業者を始め離島住民の雇用の場を確保することは、漁業従事者の多い特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持、ひいては有人国境離島地域が有する我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に関する活動の拠点の機能の維持にとっても極めて重要な意義を有している、このように考えております。

山下よしき そこで農水省に伺いますが、農水省の支援事業に農業への新規就業者支援があります。農業研修時に最大2年間、その後、認定新規就農者給付金が最長5年間、合わせて7年間、年間150万円までの給付金制度があります。
 しかし、漁業の方を見ますと、新規就業支援に漁業学校等に通うなどの就業準備支援が最大2年間、その後、就業・定着支援として雇用型、幹部養成型、独立型とあるんですが、それぞれ期間が1年か3年なんですね。農業に比べて短いんです。
 島の一次産業の後継者は地域の宝、提案者からも先ほどそういうお話がありましたけれども、農業と同様に漁業も支援期間をもう少し延長する必要があると思うんですが、水産庁、いかがですか。

水田正和(水産庁漁政部長) お答えいたします。
 漁業が将来にわたって持続的な発展を図っていくためには、若い世代を中心とした意欲のある新規就業者を確保していくことが重要であるというふうに考えております。このため、漁業への就業希望者が経験ゼロからでも円滑に就業できるよう、新規漁業就業者総合支援事業として就業の段階に応じた支援というものを実施をしているところでございます。
 具体的に申し上げますと、漁業への就業に向けて漁業学校などで学ぶ若者に対する就業準備資金の給付でございますが、これは年間150万円、最長2年間ということでございます。それから、新規漁業就業者の漁業現場での実地による長期研修ということで最長3年間ということでございまして、合わせまして最長5年間の支援というものを実施をしているところでございます。
 先生御指摘のとおり、農業との支援期間の差異はあるわけでございますけれども、漁業の場合には、安全な操業のために、例えば十分な船の操縦技術とか、こういったものを実地で習得していく必要があるというふうに考えておりまして、こういった農業との違いを踏まえまして、限られた財源の中で研修に重点化した支援というものを行っているところでございます。
 この研修を受けた後に独立して安定的な漁業を営むことが可能となるように十分な研修を行ってまいりたいというふうに考えているところでございまして、今後とも、こうした対策を継続的に実施し、新規就業者の確保、定着に努めてまいりたいと考えております。

山下よしき 要望がありましたし、それから漁業の就業者が激減しているという実態を踏まえての提案ですので、より真剣な検討を求めておきたいと思います。
 島で生産された特産品を島の外に販売する取組が様々な産業で努力されておりますが、先ほど言ったように、輸送コストが高いことが大きなハードルになっているわけですが、そこで国交省に伺いますが、離島輸送コスト支援事業、戦略産品の移出に係る輸送費支援というものがありますが、簡潔に説明いただけますか。

舘逸志(国交大臣官房審議官) お答え申し上げます。
 ただいま御質問のございました輸送費支援でございますけれども、離島活性化交付金がございまして、現行の改正離島振興法の施行に合わせまして平成25年度に創設されたものでございまして、これは定住促進、それから交流促進、安全安心向上の三つの事業が柱となっております。このうち、定住促進事業として島の特産品を戦略産品として位置付け、その移出及び原材料の移入のための海上輸送費の支援を行っているところでございます。
 離島活性化交付金の活用は離島と本土との格差是正等に資するものであり、今後とも適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

山下よしき というものがあるんですが、その戦略産品の輸送コスト支援の品目が4品目に限られていると聞きました。なぜ4品目に限っているんですか。

舘審議官 御質問のございました輸送支援の対象品目でございますが、これは元々、平成25年度、制度創設時、交付金の予算規模もございまして、それに鑑みまして、地元の御要望を伺いながら、対象品目が当初は3品目でございました。その後、地元から対象品目の拡充について強い御要望をいただきまして、関係省庁と協議した結果、平成25年度補正予算により四品目へと拡充したところでございます。さらに、平成26年度補正予算より、戦略産品一品目につき原材料費等一品の移入に係る輸送海上費の支援の対象としております。そういうことで、制度の充実には意を用いておるところでございます。
 このように、離島の海上輸送費支援についてはこれまでも最大限努力しておるところでございまして、今後とも地元からの御意見、御要望を十分伺いながら、更なる拡充に取り組んでまいりたいと考えております。

山下よしき 更なる拡充ということがありましたが、五島市の商工業者の方は、なぜ4品目に限定するのかとやはり強い声が出ているんですね。輸送コスト支援の拡充を求める要望書が出されております。
 こういう一生懸命取り組んでおられる方に聞きますと、何社かが集まっていろいろ取組されているんですけれども、メンバーの本土企業向けの出荷額が2年前のデータで約20億3500万円あったと、非常に大きな産業になっているわけですが、合わせれば。で、島の雇用も生み出されているわけですね。
 縫製工場を経営するある社長さんの話を伺いました。技術力があっても価格競争で仕事が取れないんだと。運送費、経費の高いところになぜ発注するのかということに、どうしても本土の企業から言われてしまうと。この社長さんは、ショーツやインナー製品、下着を有名メーカーに納めているわけですが、身に着けるものですから高い縫製技術、品質管理が求められております。少ないロットの注文や全国からこういうものは作れるかという特注の問合せも少なくないんですが、こういうことにしっかりと応えることによってこの会社を維持してきたわけですね。ただ、離島がゆえに仕入れに、あるいは出荷に係る割高のコストが足かせになっておりまして、本土なら一箱当たり7、800円の運送費も、島では1200円というふうに聞きました。
 この社長さんは、我が社には34人の従業員がいる、去年、高校卒業生も雇い入れた、島に働く場所がなければみんな島を出ていってしまう、人が減ればどんどん島に住めなくなる、国の支援で輸送コスト支援があるのなら、雇用創出のためにも対象を広げてほしい、本土の企業と同じ土俵で勝負させてくれるだけでいいと訴えられました。これはもう時間もありませんから、聞いておいていただいたらいいんですけれども。
 五島市の場合、今言われたような方々は全部品目から外れているわけですね。輸送コストの支援対象となる戦略産品として五島市は、野菜、芋類、二つ目に牛、豚の運送費、三番目に鮮魚類、四番目に家畜、養殖用飼料などを指定しておられますが、非常に有名な五島うどん、ツバキ油が練り込まれた風味のある五島うどん、これはいろんな新聞なんかでも全国紙に載っていますよね、これは残念ながらその支援対象になっておりません。あるいは、かんころ餅、これも有名ですけれども、なっておりません。
 せっかく特産品があって、全国にもニーズがあるのに、4品目に限られているがゆえにこの輸送コスト支援が受けられないということになっているわけですね。これやはり早急に離島の振興というのであれば拡充すべきではないかと思いますが、もう一度どうぞ。

舘官房審議官 先生御指摘のように、戦略産品の輸送コスト支援は大変重要なものと考えております。
 今、長崎県、御指摘のございました五島市で魚介類を中心にこの4品目、いっぱいいっぱい使っていただいております。その現状をよく踏まえまして、地元の御要望も踏まえまして取り組んでまいりたいと考えております。

山下よしき 高校生のアンケート、昨年、市内高校生、五島市ですけれども、930人、40%が高校卒業後は島外に住むと答える一方で、52%の高校生が将来的には五島市に戻りたいと回答されております。五島に良い仕事があれば戻りたい、結婚や出産のときに戻りたい、定年後あるいは親の介護が必要になったら戻りたいなど、地元への意識はやはり高いと言わなければならない。そういう点では、雇用の場、それを維持するための輸送コストの低減策の拡充、しっかりと進めていただきたいと思います。
 もう時間が来ましたので、最後にTPPに関して、平成25年の3月、長崎県五島市議会でTPP交渉参加表明に強く抗議し撤回を求める意見書が可決されております。五島市長が議会で答弁いたしました。TPPによる影響額、農業では、平成18年の農業生産額、出荷額56億6千万円のうち、米、牛肉、豚肉、大麦、小麦、茶等で28億7400万円が減少する試算結果が出たと。漁業では、特にアジ、サバ、イワシ、イカ、カツオ・マグロ類、五島などでは影響が大きく、43億円影響があるんではないかと言われております。
 もう答えは要りませんが、離島の振興というんであれば、それを根本から打撃を与えるような、産業に打撃を与えるようなTPPの承認、急ぐべきではないということを申し上げて、質問を終わります。

アメリカと一緒になってサイバー空間における先制攻撃までやるような軍事優先のやり方は極めて危険–サイバーセキュリティ法案審議 
2016年4月14日 参議院内閣委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 サイバーセキュリティ基本法に基づいて、サイバーセキュリティ本部が国家安全保障会議の意見を聴いて昨年9月公表、作成したサイバーセキュリティ戦略、ここには外国政府機関との情報共有を含む情報収集、情報分析機能の強化を図るとあります。その必要性について、サイバー攻撃とそれに対する抑止の特徴との関係で説明をしていただけますか。

遠藤利明国務大臣 サイバー空間を取り巻くリスクが深刻化する中で、国境を越えた自由な情報の流通を可能とするサイバー空間の便益を享受するとともに、国家の安全保障、危機管理上の課題でもあるサイバー攻撃に迅速かつ的確に対応するためには、諸外国等と効果的に連携することが必要と認識をしております。
 政府としましては、管理や規制を過度に行うことなく、開放性や相互運用性を確保することにより、情報の自由な流通が確保された安全で信頼できるサイバー空間を構築することを基本方針として関係国との国際連携に取り組んでおります。こうした認識の下で、昨年9月にも閣議決定されましたサイバーセキュリティ戦略においても、多様な主体との国際的な連携により、サイバーセキュリティーの確保及びサイバー空間におけるグローバル規模の情報の自由な流通の確保に向け取り組むこととしております。
 今後とも、サイバーセキュリティ戦略に基づき、関係各国との連携を積極的に深めるとともに、多国間の議論にも積極的に貢献してまいりたいと考えております。

山下よしき 今基本的な認識、遠藤大臣に述べていただきましたけれども、ここでは遠藤大臣とそもそもサイバー空間の特徴について少し議論したいと思うんですが、一つはアクターの多様性ということが言われます。どの相手が攻撃してくるか分からない。非国家主体も高度な能力を保有している。軍事力を持つ必要はないんですね。高い能力を持つ個人でもサイバー攻撃はできる。
 それから二つ目に、隠匿性、ボーダーレス性ということが言われております。攻撃者の特定が極めて困難です。国家の関与もなかなか決着が付きません。米中韓でもこれはもう論争になっております。アメリカへの攻撃は中国から発信されているじゃないかとアメリカが言っても、いや、それは経由しているだけであって中国も被害者なんだとか、いやいや、確実に中国から攻撃が発信されているじゃないかと、こう指摘しても、それは政府とは無関係だと、こういうふうに言われるわけですね。
 このアクターの多様性、隠匿性、ボーダーレス性、これが特徴だということについて、大臣の御見解、どうでしょうか。

遠藤大臣 今委員御指摘のように、その発信がどこからなされたか、この追及はなかなか難しいと認識をしております。それだけに、なおさら国際間の協調が必要だと思っております。

山下よしき それからもう一つ、サイバー空間に関する規範はいまだ形成途上であるということも大事だと思っております。サイバー攻撃に対して自衛権を行使することの合法性、あるいは自国内のアクターによるサイバー活動に対する国家責任等について、コンセンサスは今存在しておりません。その国の中のある個人がサイバー攻撃を行ったとしても、政府の責任とは言い切れないという現状にあります。
 要するに、サイバー空間における規範、まだ確立されていない、途上である、この点いかがでしょうか。

遠藤大臣 今御指摘のように、規範についてまだ正確にこれだということになっていないと思いますが、そうしたことを国際間においていろいろ議論をしている最中だと認識をしております。

山下よしき そうなんです、途上なんですね。
 さらにもう一つ、サイバー攻撃に対する防御について、報復の信憑性ということも言われております。
 どういうことかといいますと、どこまで攻撃されればレッドラインとして反撃できるのか、この設定がなかなか難しい。報復能力の証明、つまり、これぐらい攻撃されたら報復する能力を有していますよということをどのように伝えるか、どの相手に伝えるか、これもなかなか難しい。それから、通常戦力による報復というのが許されるのか、非国家主体に対する報復などが一体できるのかどうか、困難ではないか。
 こういう報復の信憑性ということも問題になっておりますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

遠藤大臣 委員御指摘のように、技術が進めば進むほど特定化は難しいと、それだけになおさら国際間の情報の共有、連携が必要だと思っております。

山下よしき そこで、じゃ、その国際間の連携なんですが、安倍政権が策定した国家安全保障戦略には米国とのサイバー防衛協力の推進がうたわれております。それから、昨年4月の新日米ガイドラインにはサイバー空間に関する協力という項目が初めて設けられました。
 遠藤大臣、なぜこの分野で米国との協力が必要なんでしょうか。

遠藤大臣 米国は日米安全保障体制を基軸にあらゆるレベルで緊密に連携する我が国の同盟国であり、サイバー分野においても様々なチャンネルにおける緊密な情報共有と連携を図る必要があります。
 これまで両政府間においては、平成25年5月、平成26年4月、平成27年の7月の3回にわたり日米サイバー対話を実施してきており、日米双方のサイバーセキュリティー関係省庁が参加する形で、双方の政策動向、情勢認識等につき協議を実施しております。

山下よしき もう既に日米サイバー対話というものが3回行われたということであります、今御報告があったとおりですが。
 では、米国のサイバー戦略とは一体どういうものかについて伺いたいと思います。
 2011年11月、国防省サイバー空間政策報告書は、拒否的抑止、これは何とか攻撃されないようにする抑止とともに、懲罰的抑止、報復型の抑止ですね、これについても言及しております。それから、通常兵力を用いた報復も選択肢とするというふうにあります。
 この懲罰的抑止、通常兵力を用いた報復とは一体どういうことでしょうか。

水嶋光一外務大臣官房審議官 お答え申し上げます。
 米国のサイバー戦略につきましては、米国はサイバーセキュリティーに対する脅威を、国家として直面する最も深刻な国家安全保障、公共の安全及び経済的課題の一つと認識しているものと承知をしてございます。
 その上で、今御指摘のございました国防省によります2011年11月のサイバー空間政策報告書でございますけれども、ここにおきましては、サイバー空間におけます抑止について、ほかの領域と同様に、攻撃者の目的達成を拒否するとともに、必要に応じて攻撃者にコストを課すとの考え方に基づくものであるというふうに述べられているものと承知をしてございます。
 また、加えまして、その報告書におきましては、サイバー空間での一定の活動、これは武力の行使を構成し得るものであり、また、合法的な自衛権を発動し得るものであるという旨述べているものだと承知をしてございます。

山下よしき サイバー攻撃に対して武力行使もやりますよということをアメリカはそういう戦略でもうはっきりうたっているわけですね。
 それから、2012年10月11日、パネッタ国防長官の演説で、サイバー攻撃による大規模な被害が差し迫っている場合にはサイバー空間で先制攻撃を行う可能性に言及しています。サイバー空間での先制攻撃を行うとはどういう意味でしょうか。

水嶋審議官 御指摘の、2012年11月、パネッタ国防長官の講演でございますが、この中では、国防省といたしましてはサイバー攻撃の抑止に取り組んでいると言った上で、米国が攻撃者を特定できて、また米国の強力な防御によって攻撃が失敗するというふうに承知していれば米国が攻撃される可能性は低くなるというふうに述べていると理解をしてございます。
 ただ、その中で、また仮に米国に重大かつ物理的な破壊をもたらして、又は米国市民を殺害するサイバー攻撃の切迫した脅威を察知した場合には、米国は、大統領が指示した際には、国家を守るために攻撃者に対して措置をとる選択肢を持たなければならないと、そういうふうに述べられていると承知してございます。

山下よしき 先制攻撃戦略、サイバー空間における戦略、取っているということですね。察知したら先制攻撃すると、相手を殺傷することも含めてですね。これは、イラクに対する、大量破壊兵器を持っていると察知したはずだったけれども、それは間違いだったということを想起させられるものであります。
 2012年、オバマ大統領は、大統領政策指令20、米国のサイバー作戦政策に署名をしていまして、そこでは重大な帰結(人命の喪失等を含む)をもたらす作戦ということが言われておりますが、こういうことも言われているわけですね。先ほど述べられたとおりです、殺傷ということも含めて、サイバー攻撃、先制攻撃も戦略として取られている。
 それから、ニューヨーク・タイムズが、2013年2月3日、オバマ政権が検討中とされるサイバー作戦に関する交戦規則の内容を報道しております。先制攻撃を命じる権限を大統領に付与、そういう中身の交戦規則があると言われておりますが、こういう交戦規則あるんですか。

水嶋審議官 今御質問にございました新聞報道、それから交戦規則でございますが、米国政府としましてはこれは対外的に明らかにしたものだとは我々承知しておりませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

山下よしき アメリカと緊密に協力する、サイバー攻撃に対する対処をと言いながら、アメリカのこの戦略の交戦規則について承知しない。余りにもこれは無責任だと言わなければなりません。
 遠藤大臣、安倍政権の下で、昨年の安保法制の審議の中でも安倍総理はサイバー攻撃に対する日米同盟の強化ということを答弁されています。それから、中谷防衛大臣もこう言っております。武力攻撃の一環として行われたサイバー攻撃に対して武力を行使して対応することも法理としては考えられる。
 遠藤大臣に伺いますが、政府はサイバー攻撃に対して武力を行使して対応するという立場ですか。

若宮健嗣防衛副大臣 今質疑をなされている中で、やはり様々な見解がもうお示しをされているかと思います。また、山下委員の御質問でも、また御自身の意見でも出されておられますけれども、現在、確かに高度化、巧妙化するサイバー攻撃の態様を実際踏まえますと、今後、サイバー攻撃によって極めて深刻な被害が発生する可能性というのはこれは否定できないのはもう委員も御承知のところだと思っております。
 このサイバー攻撃への対応というのは、我が国にとりましても安全保障に関わります重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。また、今日、弾道ミサイルや航空機等による武力攻撃が行われる場合には、もちろんその一環としてこれは同時にサイバー攻撃ということが行われる可能性というのも想定をしておかなければいけないのではないかなというふうにも考えているところでございます。
 その上で、私ども政府といたしましては、従来、サイバー攻撃が武力攻撃の一環として行われた場合、自衛権を発動して対処することが法理としては可能であるというふうには御説明申し上げているところではございますけれども、現在、これまでにはサイバー攻撃に対しまして自衛権が行使された事例というのはございませんでして、サイバー攻撃に対します自衛権行使の在り方につきましては、委員も御指摘でございましたが、国際的にも様々な議論が行われている段階でございます。このため、現実の問題といたしましては、サイバー攻撃に対します自衛権の行使の在り方につきましては、国際的な議論を見据えながら更に検討を進めてまいりたいと、このように考えているところでございます。

山下よしき 要するに、まだ決めていないけれども法理としてはあり得るという立場なんですね、ずっと。これは非常に、この方向でいいのかということを私は危惧するわけですね。
 実際に日米間では共同演習の中でサイバー攻撃に対する訓練も行われております。防衛省に伺いますが、これまで2013年から毎年やっていますけれども、どのような訓練が行われましたか、報告してください。

笠原俊彦防衛大臣官房審議官 お答えいたします。
 議員御指摘のとおり、2013年から2015年、日本で実施をされた日米共同方面隊指揮所演習というのがございますが、そちらにおきまして、各種事態における実効的な対処能力の向上を図る一環として、自衛隊と米軍に対してサイバー攻撃が行われたという状況を想定をいたしました対処要領及び連携要領について演練を行ったところでございます。

山下よしき もう漠としかお答えにならないんですが、具体的にどういう訓練をやったのかと聞いても、これは答えられないんですよ。──あっ、どうぞ。

笠原審議官 失礼いたしました。
 訓練の内容でございますけれども、不審メールを受信した際に受信者である情報システム使用者が行うべき対処要領や、原因究明、被害拡大防止のために情報システム担当部署が行う対処要領の確認などを実施しているところであります。また、サイバー攻撃による被害拡大を防止するためには日米の連携が重要でありますことから、その連携要領についても確認をしたところでございます。
 以上です。

山下よしき 要領が確認されたということであって、どういう具体的な話がされているのかということについては幾ら聞いても答えが返ってこないということで、国民からは見えないところで、サイバー攻撃に対する対処という下で訓練が日米間で毎年やられているということなんです。その米国は、サイバー攻撃に対して先制攻撃、通常兵力による攻撃、これもいとわないという戦略を持っているわけですから、それに対して、今防衛副大臣が答弁されたように、サイバー攻撃に対する武力の行使についてはしっかりと拒否するという立場ではないわけですね。そういう方向に行っていいのかということを私は本当に危惧します。
 これは、アメリカや日本がサイバー攻撃、確かにいろんなインフラ、電力だとか工場だとか、そういうものに対するサイバー攻撃は大変な被害を与えますから、それに対して防御すること、備えることは必要でしょう。しかし、備えることによって、先制攻撃する、通常兵器による攻撃まで検討する、また備えるということでやりますと、これはアメリカや日本がそういうふうに備えれば、恐らく他の国々あるいは勢力、個人かもしれません、そういう勢力もそういう方向に備えざるを得ないと思うんですよね。お互いにサイバー空間のリスクを高め合う方向で、サイバーセキュリティーといいながらリスクが高まるという心配が当然起こってくると思うんですが、その点、遠藤大臣、いかがですか。

遠藤大臣 備えあれば憂いなしという言葉がありますが、それぞれの国がそれぞれの対応をしておりますので、国としてしっかり取り組まなきゃならないと考えております。

山下よしき いや、私が聞いたのは、それぞれの国がしっかりやると相手の国もしっかりやる、そうすると非常に高いリスクが相互に高まり合うということになるんじゃないかと。要するに、米ソ間で核兵器がどんどんどんどん増えていくような、あるいはテロに対する報復としてテロが一層拡散するような、そういう悪循環になる危険がこの分野でももう生まれているんじゃないかということを私は危惧するわけですね。
 国連の情報セキュリティーに関する政策専門家会合、GGEがサイバー空間における信頼醸成措置、CBMについて検討していますが、どのように述べていますか。

水嶋審議官 今御指摘ございました国連のサイバー政府専門家会合、GGEと申しますが、これは2004年以来今まで4回の会期で開催をされてございます。
 こちらでは、責任ある国家の行動規範、また信頼醸成措置、それから国際協力、能力構築支援、それからICTの利用に関する国際法の適用などの国際安全保障の文脈におけます情報通信技術の進歩に関します幅広い議題について議論が行われてきております。最近では、2015年7月に最終的な報告書が公表されているところでございます。
 このうち今お尋ねございました信頼醸成措置につきましては、この信頼醸成措置が国際の平和及び安全を強化するんだという前提の下で、各政府におきましてコンタクトポイントを特定をするとか、あるいは二国間、多国間の協議メカニズムを構築するとか、あるいは透明性を向上する努力を続けるとか、あるいは学術研究機関の間での交流を促進する、あるいはICTを用いた犯罪・テロ対策協力を進める等についての提言が行われていると承知してございます。

山下よしき 非常に重要な指摘だと私は思いました。
 遠藤大臣、防御という名の下での先制攻撃まで一つのブロックが高めるという方向をお互いに各国がやり始めますとリスクが高まる。そうじゃなくて、信頼醸成をやる必要があるというこの国連の専門家会合の指摘、非常に重要だし、日本もその立場でどういうルールが必要なのか。今、世界の実態踏まえた積極的なこういう信頼醸成についての関与必要だと思いますが、いかがですか。

神本美恵子内閣委員長 遠藤大臣、時間ですので、簡潔にお願いします。

遠藤大臣 はい。
 信頼醸成は極めて大事だと認識をしております。

山下よしき そういう方向で努力せずに、アメリカと一緒になってサイバー空間における先制攻撃までやるような軍事優先のやり方は極めて危険だということを申し上げて、終わります。

成年後見制度 意思決定支援制度を 
【議事録】 2016年4月5日 参議院内閣委員会質疑

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 2000年に改正された成年後見制度は、判断能力の不十分な高齢者や障害者の虐待や財産的被害からの救済や予防などで一定の役割を果たしてきたと思います。
 資料の1枚目に成年後見制度の概要、これは法務省のパンフレットから抜粋いたしましたけれども、付けております。
 制度は三類型されておりまして、後見、保佐、補助であります。後見というのは判断能力が欠けているのが通常の状態の方、それから保佐というのは判断能力が著しく不十分な方、補助は判断能力が不十分な方でありまして、どうやってこれを分類するのかといいますと、本人や親族が家庭裁判所に申立てをして、審判でこの類型が区分されるというふうに承知をしております。
 先ほどからの答弁にあったように、この三類型の中で最も多い、大宗を占めるのは、85%を占めるのが後見でありまして、この後見人には、ここにあるように、財産に関する全ての法律行為に関しての代理権が与えられるということになっているわけであります。こういう制度が一定の役割を果たしているということは私も認めるわけですが、もう15年たって様々な問題が発生している、改善されるべき問題が生まれていると指摘せざるを得ません。
 昨年の10月に、日弁連人権擁護大会のシンポジウムで成年後見制度から意思決定支援制度へと題したディスカッションが行われました。そこでも様々な問題点が紹介されております。私もそれ学びまして、私なりに問題点三点あるんじゃないかと、こう理解いたしました。
 一つは、被後見人とされた方の財産が毀損される、本人の意思に反してですね。例えば、紹介された事例では、被後見人の所有する土地を被後見人の意思に反して売却してしまったという事例が紹介されておりました。財産が本人の意思に反して処分されるということが起こっております。
 それから、二つ目のパターンとして、本人がこれまで築いてきた人と人との関わり、あるいはその地域で住むこと、そういう人間関係だとか地域で住む権利が残念ながら後見人によって遮断されたり奪われたりということも起こっております。例えば、親と住み慣れた自宅で生活してきた精神障害者の方が、同居の親が亡くなったために離れて暮らしていた兄が成年後見人となったところ、本人が理解できないまま施設入所契約をして自宅での生活を断念させられてしまい、すっかり元気をなくしてしまったなどなど、これはもうたくさん起こっていると承知しております。
 それから、三つ目のパターンは、先ほど相原理事からもお話があった仕事を奪われちゃうという例ですね。市役所で仕事をしていた方が、保佐人が付いたことで公務員の欠格事由とされて解雇されたということも、これも日弁連のシンポジウムでも実際に紹介された事例としてあります。
 こうして、本来いろいろ意思決定が十分できない方々を支援するはずのこの制度が、本人の意思に反して財産が毀損されたり、人と人との関わりや居住の意思が損なわれたり、それから職を奪われたりということが残念ながら起こっていると。提案者に伺いますが、こういう問題が起こっていることについてどう認識されていますか。

大口善徳衆議院議員 今先生の御指摘のようなある意味では副作用的なことが行われている、やっぱり自己決定権が十分尊重されているとは言い難い事案もあるということはそのとおりだと私も思います。
 提案者としては、やっぱり成年後見制度の利用を促進するに当たり、成年被後見人等の自発的意思を尊重することが重要であると考えておりまして、今回のこの法案においても、基本理念の内容として、成年被後見人等が成年被後見人等でない者と等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思の決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人の自発的意思が尊重されるべきことということ、これは3条の1項で書かせていただいています。
 民法の858条、本人の意思を尊重し、その身上に配慮する義務を負っているわけでありますけれども、それを怠っている例もあるということでございまして、この点につきましては、しっかり本当に本人の意思を尊重するということを徹底していくためにどうすべきか、あるいは不正行為をいかに防止していくのかということも、これからこの法案において、利用促進会議や利用促進委員会の御意見もお伺いしながら進めていくということになると考えております。

山下よしき 資料の2枚目に、先ほど紹介した日弁連の人権擁護大会のシンポジウムで配付された、東田直樹さん、自閉症をお持ちの方ですが、その方の「尋ねてほしい。 見た目の行動から決めつけないで」という詩でしょうか、を載せておきました。ちょっと後段を紹介します。
 いちばん嫌なのが、わからないからといって、見た目の行動だけで気持ちまで決めつけられることです。答えられなくても、尋ねてくれたらいいのにと、思います。そうしてもらえれば、その人が僕を大切に思ってくれていると伝わるからです。僕について話をしているにもかかわらず、まるで僕がその場にいないかのような態度をされると傷つきます。自分は、その辺の石ころみたいな存在なのだろうか。ただ、周りの人の意見だけで動かされ、すべてが決められていく。自分の意思をみんなのように伝えられない僕は、なんて無力なのだろう。小さい頃、何度こんなふうに思ったことでしょう。
 気持ちを伝えられないということは、心がないことではありません。周りの人がさせたがっていることが、本人のやりたがっていることだとは限らないのです。そのことを忘れないでください。
 大変、実際こういうお立場の方がどんな気持ちでいらっしゃるのか、痛切に伝わってまいりました。この気持ちを大事にした制度の運用であり、制度そのものにしていく必要が私はあると思いました。
 そこで、提案者に伺いますが、先ほど紹介したような、こういう本人の意に反するような事例がこの成年後見現行制度の下で起こっているのはなぜか、どこに原因があるかと御認識でしょうか。

大口衆院議員 山下委員にお答えを申し上げます。
 この成年被後見人等の自己決定権が十分尊重されていないと見られる対応が行われる根本的な原因の一つとして、成年被後見人の自己決定権に対する社会や一般の成年後見人等の理解の不足が考えられるところではないかと思います。そして、私ども、この法の11条の2号で、いまだに200以上こういう欠格条項がある、権利制限の条項があるということもやはりそうした認識の表れではないかなと思います。そういう点で、本当に成年被後見人の自己決定権というものをもっともっと社会が、また成年後見人等も、一生懸命やっている方は大変だと思いますが、一部理解不足の方がいらっしゃると、こういうことをどう防いでいくかということだと思っております。
 提案者として、成年被後見人等の自己決定権が尊重されるように成年後見制度が運用されるようにしていきたいと。そういう点で、本法案では、3条の1項で基本理念として成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきことを、また、11条の8号では、基本方針として成年後見人等又はその候補者に対する研修の機会の確保を掲げております。
 実は、これはそれこそ消費者相談をやっておられる方のアンケートを取りましても、要するに、裁判所がきちっと点検とか審査をする、問題があったらそれをきちっと研修をしていくというようなこともやられるのは本当に一桁なんですね、パーセントにすると。やはりそういうことも含めて、しっかりこの11条の8号でやっていかなきゃいけないと思います。
 また、成年後見制度の利用に占める後見の比重が大き過ぎるというふうに考えます。ですから、成年後見人が成年被後見人の意思決定を代行する後見ではなく、意思決定を本人が行う保佐や及び補助、あるいはどの事務を委託するかを本人に選択権がある任意後見の利用の比重を大きくしていくことが本人の自発的意思を尊重する実務の傾向を醸成するために重要であると、こういうふうに考えております。
 また、障害者福祉の分野におきましては、社会保障審議会の障害者部会の平成27年12月14日の報告において、意思決定支援の定義や意義、標準的なプロセス、留意点を取りまとめた意思決定支援ガイドライン(仮称)を作成し、事業者や成年後見の担い手を含めた関係者で共有し、普及を図るべきであると、こう述べられています。この意思決定支援ガイドラインの案というものを、策定に向けた調査研究も進んでいます。
 福祉の分野で意思決定支援の普及や質の向上に向けた取組を進める方向で動いており、本法案も、成年被後見人等の意思決定支援と自発的意思の尊重について定める中、今後とも、成年被後見人等の自己決定権の尊重のための取組が進められるようにしていかなければならないと、こう考えます。

山下よしき 今、大口さんは、社会一般あるいは後見人の理解が足らないんじゃないかという御回答でしたけど、私、その点もあるんですが、もっとより根本的には、この現行の成年後見制度の体系、構造そのものにこういう問題を生じさせる原因があると、そういろいろな事例を聞いて理解いたしました。
 先ほどの法務省のパンフレットにもあるように、この制度の85%は後見人で担われています。保佐とか補助は少ないというんですが、そちらの方にもっと行ってもらったらいいという御趣旨の御答弁でしたけど、問題は、この後見人という概念が、果たしてこういう概念がいいのかどうかということにしっかり切り込む必要があるんじゃないかなと思うんですよね。
 すなわち、もうこの後見類型では、判断能力について自己の財産を管理、処分できないと判断されるその方は、後見人には包括代理権、全ての法律行為に代理・代行権限が与えられる。しかも、その人の能力の状態が回復したと診断されない限り権限は死ぬまで継続される、もうずっと固定化されるんですね。要するに、判断能力がもう一切ないという、それを固定的に判断される類型になっている。そして、後見人には包括的な広範囲な代理権が付与されるということから、本人の意思がしっかり確認されないまま意思に反する代理、代行がされちゃうということになっているんじゃないかと思うんですね。
 日弁連が昨年10月2日に、このシンポジウムを踏まえて総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言というものを出しておられます。
 その中で現行の成年後見制度の改革として問題点を述べているんですが、その文章をちょっと紹介しますと、その人の意思決定能力を支援することにより本人の意思決定を導くことは義務付けられておらず、権限行使に当たって本人意思の尊重をどの程度図るかについては後見人等の広範な裁量に委ねられている、利用件数の大半を占める成年後見類型は、判断能力につき自己の財産を管理、処分することができないと診断されると、個々の行為について必要な支援がなされれば自ら意思決定が可能なものがあるかについて個別に考慮することなく、その人につき成年後見が開始され、その人の法律行為全てにつき包括的に代理・代行権限及び同意権、取消し権が付与されることになっていると。
 こういう全てもうできないであろうということを一律に決めちゃって、もう包括的に全面的に権限を移行されてしまう、そういう類型をつくっちゃっていいのか、つくっちゃっていることがこういう本人の自己決定権が尊重されない一つの大きな要因になっていると日本弁護士連合会は指摘をされております。続けて、開始決定の審判の効力に期間制限がないこと、定期的な審査の機会が与えられていないこと、死ぬまでそうなっちゃっているということも指摘されているんですね。
 これは、非常に大きなやっぱり構造的問題から起因していると私は理解したんですけど、提案者はいかがですか。

大口衆院議員 先生がおっしゃること、また日弁連の議論ということも聞いております。
 今回の法案は、まず、これは障害者団体の方からも、当面今のことを放置していいのかということで、できる限り障害者権利条約の精神を生かした形でその運用をしっかり改善していく、あるいは権利制限とか資格制限、こういうものはもう法改正をしていく、そういう形で成年後見制度を権利制限に転用するというようなことはこれは良くないということからも11条の2号を規定させていただいているところでございます。
 そういうことから、この後見と、それから保佐と補助、この割合を本当にしっかり考えていかなきゃいけない。そういうこともあって、私どもはこの11条の1号でこういう形で書かさせていただいているところでございます。
 抜本的なお話については、じゃ、その支援付きの意思決定制度というのは具体的にどういうものなのかとかいうことがまだはっきりしていません。ただ、本当に今、それこそ十八万、19人の方が成年後見を利用されています。だから、そういう現実もありますし、そしてまた、実は、これはこういう制度によって裁判所がチェックするということももっとしっかりやっていかなきゃいけないわけでありますけれども、ただ、そういう目があるわけですね、第三者の目が。ところが、そういう成年後見が利用されていないがために、実際に虐待され、そして財産を毀損されている方もこれは相当多いわけであります。そういうことも含めて考えていかなきゃならないと、こういうふうに考えます。

山下よしき 虐待だとか財産侵害についてはこの制度が一定の役割を果たしていると私は認めた上で、その上でこういう問題が起こっていることについてどう切り込んでいくかという、私は、それに構造的な、この制度自身の構造問題があると、日弁連もそれを指摘しているんだから、ここはやっぱり踏み込まないと。そこを、残念ながら、今御答弁聞いても、そこに踏み込まないまま単に現行制度の利用促進という今回の法律の立て付けになっているというふうに思わざるを得ないわけです。
 そこで、どういう、じゃ、あるべき制度に進んでいったらいいのか。私は、そのガイドラインとしては、やはり障害者の権利に関する条約、資料の3枚目にお付けしておりますけれども、その第12条に、法律の前にひとしく認められる権利として、もう具体的に大事なガイドライン、指針が、指針というか基本的な理念ですね、書かれてあります。
 第12条の1項、締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。これは、知的発達障害者等も意思決定の権利主体であるとしていることであります。
 第2項、締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。これは、すなわち知的発達障害者等、生活の全側面で意思に応じた行為能力がある、自分で自分のことを決める能力があるというふうに権利条約は認めているということです。
 第3項、締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。すなわち、国に知的発達障害者等への意思決定支援の体制をつくることを求めていると。
 その上で、第4項は、濫用の防止ということがありまして、法的能力の行使に関する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること。ちゃんと障害を持つ方が自分で選ぶことができることを尊重すること。そして、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用されること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象となること。日弁連が先ほど指摘した現行制度の問題点は、既に障害者権利条約で濫用の防止として指摘されていることがやはり日本の現行制度については当たっているということだと思うんですね。
 大臣、来ていただいておりますが、この法律が成立した暁には加藤さんがこの現行成年後見制度の担当大臣となられますので、この今私紹介した障害者権利条約第12条で述べられていることをしっかり念頭に置いてこの制度の所管担当大臣になっていただくことが大事だと思いますが、いかがですか。

加藤勝信国務大臣 成年後見制度、そしてこの法案が成立をいたしましたら、この法案に関しては私のところで対応させていただくということになるわけであります。
 今提案者からもお話がありましたように、本提案というのは、急速に高齢化が進み認知症の方が増える、そうした中で成年後見制度が十分利用されていないという、そういう状況にあるとの認識の下で提案がされていると。
 他方で、この利用推進に当たりましては、今御指摘もありましたように、成年被後見人の方の意思が尊重されるということも踏まえて対応するということでございますので、そこをしっかり踏まえながら私どもとしてこの法律の施行を進めさせていただきたいと、こう思っております。

山下よしき 最後に、資料の4枚目に付けてあるんですが、実は、世界ではもう進んだ実践が広がっております。日本自閉症協会の「成年後見制度の見直しを進めるよう提案します」という冊子の中に紹介されている2005年に成立されたイギリスの意思決定能力法の内容であります。非常に重要なことが書かれてあります。
 (1)意思決定の能力は固定されたものではなく、事柄によって異なる(家の売買契約はできなくても、服を選ぶことはできるように)。
 (2)意思決定の能力は、その時の環境や気分によっても変化する。落ち着いた環境で、信頼できる人と一緒であれば、意思決定の能力は高まる。
 (3)意思決定の能力は、経験を通して発達する。
 (4)意思決定支援を尽くしても意思決定できないこと、できない時にのみ、支援者の「代行決定」が認められる。
 (5)代行決定は、その人の「最善の利益」となるように行う。本人への制約は最小限にすべきである。
 これは、2005年にこういう理念に基づいた制度ができまして、実際にこの専門的な知見を持っている方々が法的に整備されて、この代行・代理権を行使する際には、その方が本人と意思を確認する際のアシストをされるということにもなっていると聞きました。日弁連のシンポジウムでもこの制度の調査の報告がされております。
 日弁連さんが意思決定とは何かということをまとめておられます。意思決定の支援とは、その人が意思決定することができないという判断をする前に、本人と信頼関係を築いている身近にある支援者や家族等が本人に寄り添い、本人が自分で意思決定ができるように必要な情報をその人の特性に応じて提供し、選択とその結果を見通せるような工夫された説明や体験の機会をつくる等を通じて本人が意思決定することが可能となるように、様々な合理的配慮を尽くす実践の総体であると、そういうふうに意思決定ができることを引き出す支援があってこそ意思決定の支援なんだということなんですね。
 こういうことを、もう非常に大事な観点ですが、加藤大臣、是非、そういう障害者権利条約、そして日弁連、世界の到達、しっかり踏まえて所管されることを期待したいと思いますが、もう一度その点を。

神本美恵子内閣委員長 時間ですので、答弁簡潔に。

加藤大臣 はい。
 今御指摘の点もかなりこの法案の中にも盛り込まれているように私は感じさせていただきながら聞かせていただきました。
 いずれにしましても、この法案、そしてここでの議論、それを踏まえながら適正に執行するように努めて、同時に、この法案の趣旨にしっかりと沿った形で執行できるように進めていきたいと思っております。

山下よしき 終わります。

山下よしき 私は、日本共産党を代表して、成年後見制度の利用の促進に関する法律案及び成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 現行の成年後見制度は、2000年、それまでの禁治産制度がもたらす社会的偏見を払拭し、硬直的制度から、本人の意思が尊重され、弾力的な運用を可能にすることを期待して導入されました。その下で、消費者被害に遭ったり親族等からの虐待を受けていた認知症高齢者などが成年後見人を付けることで被害から救済されるなど、同制度は判断能力が不十分な人を保護する上で一定の役割を果たしてきました。
 一方、2006年に障害者権利条約が国連で採択され、2014年に日本も批准しました。同条約は、障害者は法律の前に人として認められる権利を有し、適切な支援があれば生活のあらゆる面で意思決定が可能であり、そのための支援を行うことを求めています。禁治産制度の枠組みをそのまま継承し、成年被後見人等を制限行為能力者と位置付け、成年後見人等による代理権行使等を幅広く認める日本の成年後見制度は同条約に抵触する疑いがあるとの批判が、法曹界、学者、関係団体などから共通して指摘されています。
 こうした制度の根本的な問題と相まって、被後見人の意思に反する様々な代行が後見人によって行われたり、後見人による被後見人の財産の着服、横領問題が起こったりしているのです。今日では、代行決定型の制度ではなく、当事者の意思決定について、生活の様々な場面において、事柄に応じ、身近な家族や福祉、医療従事者など様々な立場の者から自ら意思決定するために必要な支援を受けることができる制度を整備すること、代理権等の行使は包括的ではなく事柄ごとに行うことなど、成年後見制度の根本的転換を求める声が強まっています。
 ところが、本法案は、こうした制度の根幹には手を付けず、現行制度の枠組みを維持した下での利用促進をうたうものとなっており、賛成できません。
 医療同意、死亡後の代理などの後見人の権限拡大についても、障害者団体などから懸念、反対の意見が出されており、慎重な検討が求められています。
 今必要なことは、現行成年後見制度の制度上、運用上の問題を総点検することであり、国際的な流れとなっている意思決定支援制度の整備と、それと整合的な成年後見制度となるような制度の根本的見直しを行うことであることを強調し、反対討論とします。