水道事業 世界は“再公営化” 大阪市の民営化計画を批判 
2016年11月22日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 今日は、水道事業の民営化について質問をいたします。

 政府の経済財政運営と改革の基本方針2016、いわゆる骨太の方針では、水道のコンセッション方式、公共施設の運営権を民間事業者に付与する制度を推進するとされております。また、厚生労働省の2016年度水道事業に係る施策の概要でも、官民連携の推進としてコンセッション方式導入に向けた調査、計画作成の支援を挙げています。さらに、水道事業者と民間事業者との連携、マッチング促進を目的とした水道分野における官民連携推進協議会も、2016年度、4回開催予定されており、既に3回開催され、国内の企業だけではなくて外資系の企業もそこに参加をしております。

 そこで伺いますが、水道事業民営化は安倍政権の既定路線なんでしょうか。

馬場成志厚生労働大臣政務官 お答えします。

 御指摘のコンセッション方式については、利用人口の本格的な減少の中で安定的な経営を確保し、効率的な整備、管理を実施するために、本年6月に閣議決定された日本再興戦略2016や経済財政運営と改革の基本方針2016などにおいて水道分野におけるコンセッション方式の導入促進が盛り込まれているところでありますが、この方針に基づいて着実に進めてまいる所存でございます。

山下よしき コンセッション方式、私はもうこれ民営化そのものだと思っておりますが、それを進めたいということでありました。

 そこでもう一つ聞きますが、じゃ、水道事業というのは一体どういう事業かということですが、水道事業は、憲法25条に基づく国民の生存権、国民の命に関わるサービスであることは論をまちません。

 国連総会においても、2010年7月、水と衛生設備に対する人権に関する宣言が採択されまして、生活と全ての人権の10分な享受のために欠かすことのできない人権として、安全で清浄な飲料水と衛生に対する権利を宣言するとうたわれております。また、水循環基本法第3条2項では、水が国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものであることに鑑み、水については、その適正な利用が行われるとともに、全ての国民がその恵沢を将来にわたって享受できることが確保されなければならないとあります。

 水は基本的人権であり公共財だ、非常に重要な視点だと思いますが、厚生労働省も同じ認識でしょうか。

馬場大臣政務官 お答えします。

 水道法は、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的としております。先生御指摘のとおり、将来にわたり安全で衛生的な水を低廉に供給し続けることは非常に重要なことだと認識しております。

 厚生労働省では、現在、厚生科学審議会生活環境水道部会の水道事業の維持・向上に関する専門委員会において水道事業の持続性確保等に向けた議論を行っており、まさに本日の午後もこの専門委員会において取りまとめに向けた議論を行っていただくこととしております。

 今後、専門委員会の取りまとめを踏まえ、制度的な対応も含め、引き続き清浄にして豊富低廉な水の供給を将来にわたって確保できるよう取り組んでまいりたいと存じます。

山下よしき 今、政務官も非常に重要な認識と、同様の見解を述べられましたが、問題は民営化で果たしてこれらが守られるのかどうかだと思います。

 世界では、1990年代から水道事業の民営化が進みましたが、様々な問題が生じて、2000年以降、再公営化される事例が相次いでおります。厚生労働省、2000年から2015年までの間に再公営化した水道事業の事例は幾つありますか。

橋本泰宏功労大臣官房審議官 お答え申し上げます。

 私どもの方で網羅的に把握しているわけではございませんが、世界銀行が行いました調査によれば、1992年から2007年の間に、発展途上国等、発展途上国とそれから東西冷戦後の旧社会主義諸国の方から市場経済に移行することになった国、これを合わせてでございますが、こういった発展途上国等におきまして合計約2億500万人が水道の官民連携事業による給水を受けております。そのうちの、2007年時点で見ますと、約4分の1に当たる約4500万人が再公営化された水道事業による供水を受けているものと承知いたしております。

山下よしき 私も国立国会図書館で調べてもらいましたけれども、最新のデータによりますと、2000年から2015年にかけて水道事業が再公営化された事例、件数ですけれども、235件あるというふうに分かりました。かなりの数が、一旦民営化したけれども、いろいろ問題が起こって再公営化されたということであります。

 それでは、各国各都市で民営化が失敗した原因は何か、厚労省、分析どうされていますか。

橋本審議官 平成26年に私どもの方で新水道ビジョン推進支援に伴う調査業務というのを行っております。この中で海外における事例をいろいろ分析しているわけでございますが、その中では三つほど分析をいたしております。

 一つは、監督機関の位置付けの不明確さや能力不足により、問題発生の未然防止ですとかあるいは発生後の調整を行うことができなかったということ、それから二つ目といたしまして、民間事業者の事業計画の実現可能性が低いにもかかわらず、その妥当性の確認が不10分であったこと、それから三つ目といたしまして、水道料金改定の調整方法が明確でなかったことなどから水道料金の高騰が起こり、水道利用者の不信感につながったこと、こういったことが再公営化に至った原因というふうに挙げられておるところでございます。

 こういった事例を踏まえて考えますと、我が国において水道事業へのコンセッション方式の導入を行う際には、一つには監査やモニタリング体制の充実、二つには民間事業者の事業計画の妥当性の確認、三つ目には料金設定等契約条件とその調整メカニズムの明確化と、こういったことが重要になってくるものと考えておるところでございます。

山下よしき 今、2007年までの事例の上で教訓をお述べになられたと思いますが、私が申し上げたのは、2000年から2015年までいろいろ調べました。それで、資料を手元にお配りしておりますが、ここに水道事業の民営化が失敗し再び公営化した代表例を紹介しております。

 まず、19世紀から水道サービスの民間委託が実施されており、民営化のお手本と言われていたフランスのパリ市の再公営化の例であります。パリ市では、1984年、水道施設の運営権を民間事業者に付与する公設民営方式の契約が世界的水メジャーであるヴェオリア社とスエズ社との間で締結されました。しかし、25年間の契約期間の中で水道料金が2.25倍に高騰した。また、財務の不透明さ、説明責任の欠如に対しても市民の批判が高まって、2010年に再公営化が実施されております。再公営化した初年度に効率化に成功して、水道料金の8%引下げが実現しております。

 それから、アメリカのアトランタ市では、1998年12月、スエズ社の子会社と公設民営方式の契約を締結しましたが、僅か4年後の2003年1月、再び市の直営に戻っております。その主な原因となったのは、配水管損傷による配水阻害、泥水の地上噴出、水道水への異物混入や汚濁の継続的発生、それらに対する対応の遅滞の続出でありました。

 それから、ドイツのベルリン市でも、1999年、ここは第3セクター方式による運営を導入しましたが、民間企業に出資を求めるに当たって8%の株主資本利益率、ROEを保証するという密約、要するに8%の利益保証の密約を結んだこともありまして設備投資の大幅な不足と料金の高騰を招いて、市民の激しい批判が巻き起こり、2013年、再公営化されました。

 これは代表的な例ですが、こういうよく似た例が世界でたくさん起こっております。世界では、1990年代、水道事業の民営化が進みましたけれども、料金の高騰、水質の悪化、財務の不透明さなど問題が続出して、多くの都市で再公営化が図られた。

 厚労政務官に伺いますが、基本的人権であり公共財である水を全ての人々が享受できるようにしなければならない水道事業では、公営で責任を持って実施する、これが今やもう世界の流れだと考えますが、政務官の御認識伺いたいと思います。

馬場大臣政務官 御指摘ありがとうございます。

 今、先ほど審議官もお答えしたところでありますけれども、我が国において今後導入を行う際には、まだこれからのことでありますけれども、国や自治体がしっかりと監査やモニタリングの充実をしていくと、あるいは民間事業者の事業計画の妥当性をしっかりと確認していく、また、料金設定等契約条件とその調整メカニズムの明確化については、実施方針はこれは地方議会でもしっかりと審議してもらわなきゃいかぬというようなことが出てくるわけであります。

 今例に挙げられたフランス・パリ、アトランタ、またベルリンの事例についてもその辺りが一番大きなところではないかなというふうに思っておるところでありますが、そういった中で、引き続き官民連携事業による給水を受けている例も多くあると承知しております、世界各国でですね。

 政府としては、水道事業の安定的な経営を確保し効率的な整備、管理を実施するために、水道事業及び水道用水供給事業においてコンセッション方式が現実的な選択肢となり得るよう、日本再興戦略2016等に水道へのコンセッション方式の導入促進を盛り込むとともに、法制的な対応を含め、その具体策の検討を進めているところであります。

 検討に当たっては、今御指摘いただいた部分もしっかりと教訓にしながら、官民の権利義務関係の明確化、適切なモニタリング体制や水質の安全性の確保を含め、事業の安定性、安全性、持続性の確保に十分留意してまいりたいと存じます。

山下よしき 水道の民営化のお手本と言われていたんですよ、フランスでは。そこでこういうことが起こっちゃっているんですよ。うまくいっているところもあるというお答えでしたけれども、お手本でこういう破綻が起こったんです。

 それから、ヴェオリア、それからスエズ、これは世界1位、2位の水企業、水メジャーですよ。そこが各国各地でこういう問題を起こしているんですよ。ですから、これは非常に深刻な問題が起こっている。そう認識されませんか。

橋本審議官 まさに、御指摘いただきましたようにいろんな問題が生じていることは事実でございますので、私どもとしては、そういったものに10分学びながら、我が国に合った形で導入を検討していきたいというふうに考えておるところでございます。

山下よしき 私は、学んだらこれはもう民営化になじまないという結論を出すべきだと思いますよ。たまたまじゃないんですよ。やはり利潤追求を最大目的とする民間企業に基本的人権とか公共財である水を扱わせるのはなじまない、そういう結論が世界の様々な実践の中から既に下されたということがこの事例には示されていると思います。

 そこで、日本国内で現在水道事業の民営化を検討している自治体、あるんでしょうか。

橋本審議官 お答え申し上げます。

 水道事業のコンセッションを検討していて具体的に条例案を提出している地方自治体は、大阪市と奈良市、この二件であるというふうに承知いたしております。

山下よしき 奈良市はもう議会で否決されました。

 大阪市なんですが、大阪市の水道局の水道料金は、大都市の中でも、また大阪府内でも最も安価なんですよ。この20年間値上げしておりません。しかも、ほぼ毎年黒字経営で、2014年度は年間122億円の黒字を出しております。一般会計からの補助金は近年ほとんどなく、水道料金収入により運営がされている。

 また、市内全ての浄水場で高度浄水処理を導入いたしまして、政令指定都市としては初めて市内全域への通水を実現いたしました。これによって、かつて決して評判の良くなかった大阪市の水道水の水質が格段に向上しました。大阪市の水はおいしくなったという評判が上がりまして、モンドセレクションで最高金賞を連続して大阪市の水道水、受賞しております。それから、食品安全管理の国際規格であるISO22000の認証も、公営水道としては世界で初めて取得したのが大阪市水道局であります。

 様々な努力によって大阪市は低額な水道料金と高い水質を誇る水道事業を実現し、市民に喜ばれております。高市大臣、このような大阪市の水道事業についてどう評価されるのでしょうか。

高市早苗総務大臣 全国的に見まして水道事業を取り巻く経営環境というのは、過去に整備した施設や設備の大量更新ですとか、人口減少に伴う料金収入の減少で相当厳しい状況にあると認識しています。

 この大阪市の水道事業でございますが、経常経費や企業債残高の削減に努められたということ、そして様々な分野での業務委託による民間活用に取り組むなどの経営努力も続けておられて黒字を計上しておられると承知しています。

 今後とも、安定的な事業継続のために中長期的な視点に立って経営に取り組んでいただきたいと思います。

山下よしき 今紹介したように、現在の公営企業体を中心としてすばらしい水質と低料金を維持しているんですね。何でこれをわざわざコンセッションで民営化する必要があるんですか。

橋本審議官 お答え申し上げます。

 大阪市水道局の方で平成27年8月に策定、公表いたしました「水道事業における公共施設等運営権制度の活用について(実施プラン案)」というのがございます。こちらによれば、公共施設等運営権制度を活用することにより、厳しい経営環境の中、事業運営の生産性、効率性を高めることができるとされており、具体的には、施工管理体制、発注方法の見直し等により、市民に新たな負担を求めることなく、管路耐震化のペースアップを図り、水道事業の安心、安全を強化できることが市民にとってのメリットであると、このようにされているものと承知いたしております。

山下よしき 確かに大阪市はそう願っているんですが、世界ではそうなっていないということを私は先ほど紹介いたしました。

 私だけじゃありません。野村ホールディングスのグループ、野村資本市場研究所の研究レポートによりますと、民間企業がこの水道事業の運営を担う場合、2つ問題があるんじゃないかと。一つは、事業から創出されたキャッシュフローの一部が株主配当や企業の内部留保に充当される可能性があること、二つ目に、地方公共団体に比して必ずしも高い信用力を維持しているわけではなく、資金調達コストが割高になる場合があることが指摘されております。この民営化の方針が余計な経費を招くことになると野村の研究所が言っているわけですね。

 それから、実際に、まあ、ちょっとそこを聞きましょう。大阪市はそこを入れていないんですよ。しかし、民営化したらこういうコストが掛かりますよということ、あるんじゃないですか、厚労省。

橋本審議官 先ほど政務官から答弁申し上げましたように、今、厚生科学審議会の方で審議をしているわけでございますが、そういった中におきましても、民営ということを前提としましたときにどういったものを費用として考えるかと、こういった点についても議論の論点の一つでございます。

山下よしき 論点の一つですよ。大阪市はその論点が抜けています。

 それから、大阪市が抜かしていないもう一つの大事な問題がありまして、大阪市の先ほどのペーパーによりますと、大阪市では、民営化実行に伴って540億円の税を水道事業株式会社は払わなければならなくなるということを言っております。これが、いろいろコスト削減、これは主に人件費の削減ですよ、それでコスト削減やったとしても、540億円、これは民間企業ですから税金を払わなければならなくなる。これは大変負担だということで、大阪市からは税の負担軽減措置の要望が出されております。これは、やっぱり民間事業でこういうことをやったら、コストが削減されるどころかいろんな負担が新たに生じて、税負担も生じるから大変だということを大阪市自身が認めているんですね。こういうことも大きな問題だと言わなければなりません。

 政務官、これいろんな問題があると。これ、一路民営化推進ではまずいという判断になりませんか。

馬場大臣政務官 今、様々な御指摘いただいていることも含めまして、今、検討の段階でありますので、しっかりと厚労省としても問題点を腹に置いて進めていきたいというふうに思います。

山下よしき 水道事業は、申し上げたように、憲法25条に基づく生存権、命に関わる大事な事業であります。民営化には適さないと言わなければなりません。新たな法人税、配当金などの経費も増加することになります。世界の潮流は、水道事業は公営で責任持ってやるべきだということでありまして、時代逆行の水道事業民営化の推進を政府が図るようなことはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。