マイナンバーカード顔写真、 警察に提供 「共謀罪」でも 
2016年5月16日 参議院総務委員会質疑

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本人も知らない間に監視?

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 今日は、個人情報保護と顔認証システムについて質問をいたします。それがマイナンバー制度やJ―LISとも関わってくるというふうに認識しているからであります。

 まず、個人情報保護委員会に聞きますが、顔認証システムとはどういうものか、分かりやすく説明してくれますか。

其田真理(内閣府個人情報保護委員会事務局長) 一般的に、顔認証システムとは、個人の顔画像からの顔の特徴情報を抽出いたしまして、あらかじめ登録してある特徴情報と照合することで特定の個人を識別する仕組みというふうに承知をしております。

山下よしき  昨年9月15日に、日本弁護士連合会が顔認証システムに対する法的規制に関する意見書をまとめて、政府関係機関に提出をいたしました。

 この意見書は、顔認証システムの実用化が急速に進んでいると述べておりまして、例えば、あるテーマパークでは、年間パスポート取得者は、自らの顔認証データを登録することで、入口のカメラに顔を向ければ、年間パスポート取得者であることを証明するカードを示さなくても顔認証によって有資格者であることの確認ができる仕組みを導入していると。便利かもしれませんが、恐らく本人はリスクについて認識されていないかもしれません。

 それから、日弁連の意見書では、また、複数の店舗間で万引き犯人等の顔認証データを用いた顔認証システムを導入している例があると。こういう場合、スーパーの万引きを各店舗間で連携して注意しよう、監視しようということでしょうけれども、この場合はもう本人は完全に認識されていないというふうに思います。

 意見書では、いずれの場合も不正利用の危険性はあるが、特に後者は、顔認証データが類似しているというだけの理由で本人の知らない間に監視の対象にされているという事態が起こりかねず、プライバシー権等の侵害に当たるおそれがあるというふうに述べております。

 私もこの意見書を読んで、そこまで顔認証システムというのは社会の中にもう普及されているのかと。これ、いろいろ、日弁連の方は、法的規制が必要だと、今もうフリーになっているという認識を示されていますが、総務大臣、直接の所管ではないかもしれませんが、情報通信の分野に関わりがないこともないと思いますので、こんな状況に今なっているということについて、感想、いかがでしょうか。

高市早苗総務大臣  先ほどの万引きの例のように、犯罪捜査については所管外でございますけれども、一般論として、顔認証も含めて個人情報につきましては、個人情報保護法などの関係法令に照らして適切に利用されるということが必要だと思います。

山下よしき  本来、建前はそのようになっているはずなんですが、日弁連の意見書は、顔認証システムは、膨大な監視カメラ画像から特定の個人を識別することを可能にする検索機能を有しており、これは、人々の行動さえ監視可能とするものであり、更なるプライバシー侵害性をはらんでいると述べております。

 自分がどこで画像を撮られているか知らない間に、それも瞬時に顔認証システムで特定の個人がいつどこで何をしているかというところまで分かっちゃうぐらいの今もうシステムになっているということで、これ、いろいろ対策が必要だということであります。

マイナンバーカード情報電子データで15年間保存

 総務省に伺いますが、地方公共団体情報システム機構・J―LISは、どういう業務を行って、どんな個人情報が蓄積保存されているのでしょうか。

安田充(総務省自治行政局長) J―LISの業務についてでございますけれども、地方公共団体情報システム機構法22条に規定がありまして、マイナンバーとすべき番号の生成、住民基本台帳ネットワークの運営、電子証明書の発行、地方公共団体の情報システムの事務の受託などを行うこととされております。

このような業務を行う中でJ―LISにおきましては、住民基本台帳法に基づく本人確認情報などを取り扱うことになっておりまして、これらについて保存をしているところでございます。

山下よしき  マイナンバーカードには個人番号、氏名、性別、年齢、住所などの個人情報が印刷されておりますが、このマイナンバーカードは希望する人のみの発行となっておりまして、希望者が申請するもので強制ではありません。

 そこで伺いますが、申請書に記述する項目、添付するものは何でしょうか。

安田局長  お答えいたします。マイナンバーカードの交付申請に当たりましては、交付申請者の氏名及び住所、マイナンバー又は生年月日及び性別を記載した申請書に申請者本人の顔写真を添付して行う必要がございます。

山下よしき  マイナンバーカードの申請は市町村窓口で受け付けられて、委託先のJ―LISでマイナンバーカードが作成され、でき上がったカードはまた市区町村に送られて、窓口で本人確認や暗証番号の設定を行い、交付となると聞いております。

 申請者がマイナンバーカードを受け取った後、この申請書に記載されている内容、あるいは添付されている顔写真等の個人情報は破棄されるんでしょうか。

安田局長 お答えいたします。マイナンバーカードの申請の際に用いられた交付申請書、交付申請書に添付された顔写真につきましては、J―LISにおきまして申請を受理した日から15年間保存いたしまして、当該期間経過後に破棄されることになっているところでございます。

山下よしき  J―LISに15年間保管されるということですが、その保管の態様なんですけれども、顔写真、氏名、年齢、性別、住所などの情報は紙ベースで保管されるのか、電子データで保管されるのか、いずれでしょうか。

安田局長  マイナンバーカード申請に用いられました顔写真データについてでございますけれども、J―LISにおいて、原本、紙媒体でございますが、この保存は申請書受領月から3か月後の月末までセキュリティー対策が施された保管室で保管するということにされております。

 また、電子での保存につきましては、申請受理した日から15年間、カード管理サーバーで保管するということにされているところでございます。

警察からの依頼で 「顔写真データ」含む個人情報を提供

山下よしき  J―LISに聞きます。

 これまでに、マイナンバーカード申請情報について、警察から情報提供の依頼を受けたことがありますか。あるとすれば、どう対応されましたでしょうか。

山口英樹(地方公共団体情報システム機構理事) お答えさせていただきます。

 私ども地方公共団体情報システム機構に対しまして、警察から捜査関係事項照会ということで、顔写真を含めたマイナンバーカードの申請者情報の提供依頼があったのかというお尋ねでございます。

 申請につきましては、まずございましたということと、それに対する対応でございますけれども、顔写真を含めたところのマイナンバーカードの交付申請書の情報については、個人のプライバシーに直接つながる情報であり、その保護の必要性が極めて高いものであることから慎重に対応することといたしております。当該情報が被疑事実に直接関係するなど特段の事情がある場合に限って提供することといたしております。

 以上でございます。

山下よしき  依頼はあったと、格段の事情がある場合に限って提出するということでしたが、もう少し詳しく聞きたいと思います。

 どのような内容の情報提供依頼だったのか、それからまた、その依頼は強制捜査である令状によるもの、あるいは任意捜査である捜査関係事項照会書によるもの、それぞれの依頼件数と対応条件について報告してください。

山口理事  お答えさせていただきます。

 まず、提供の根拠でございますけれども、刑事訴訟法第197条第2項に基づく捜査関係事項照会という形で照会をいただいているところでございまして、それにつきましては、私どもは法令並びに私どもの規定に基づきまして適切に対応をさせていただいているところでございます。

山下よしき  適切に対応ということは、提供した場合もあるという認識でいいんでしょうか。

山口理事 先ほどもお答えさせていただきましたけれども、特に顔写真を含むところの申請書の情報につきましては、プライバシーに直接つながる情報であるということで、私どもも、当該情報が被疑事実に直接関係するなど特段の事情がある場合に限って提供するということといたしております。

 具体的には、そういう意味で顔写真データを含む形で提供した件数がこれまで1件ございます。

「顔認証システム」と「監視カメラ」警察はすでに捜査に活用

山下よしき  顔写真データ付きで提出したことが1件あるということでありました。今日は警察庁にも来てもらっております。

 先ほど紹介した日弁連の意見書によりますと、警察庁は2014年より、あらかじめ作成した顔認証データベースと顔認証・照合ソフトウエアをノート型パソコンに組み込んだ可搬型顔画像検出照合装置を全国の都県警察に配備したというふうにあります。

 警察は、顔認証技術を使った犯罪捜査を既に行っているのでしょうか。

高木勇人(警察庁長官官房審議官) お尋ねのありましたシステムを含めまして、一部の都道府県警察におきまして、撮影した容疑者の顔画像と警察が保有する顔画像データを照合して被疑者の特定等の捜査に活用しているところでございます。

山下よしき  この日弁連の意見書によりますと、今警察庁の方からお話があった可搬型顔画像検出照合装置なるものの運用方法がこう書いてあります。

1、あらかじめ、組織犯罪の前科者等の顔認証データを登録したデータベースを作成しておく。

2、犯行現場及び周辺から、監視カメラの画像を収集する。

3、顔認証ソフトを使用することによって、2の画像の中から人の顔の部分を抽出して顔認証データを生成し、これと1とを瞬時に照合することによって、犯罪日時に近接した犯行現場及び周辺に、組織犯罪の前科者等に似た人物がいたか否かを瞬時に探し出すということでありますから、恐らくそういうことをもうやっておられるんだと思います。

 要するに、監視カメラ、かなり町中に設置されておりますけれども、そのデータとこのあらかじめ用意された、ここでは前科者等になっておりますけれども、顔認証データを瞬時に照合して犯罪捜査を行っているということでありますが、日弁連の意見書にはこうも書いてあるんです。警察庁の入札用の仕様説明書によると、その性能は10人以上の顔を同時に検知、サングラスやマスク姿、正面でない場合も検知、被写体の動きを追跡、10万件のデータベースを1秒以内に照合できるなどなどとあります。

 非常に高性能といいますか、そうした能力を持っているということなんですが、もう一度警察庁に伺いますが、必要があればJ―LISに特定の個人の顔写真データの提供依頼をすることがあるんでしょうか。

高木審議官 監視カメラ、防犯カメラ等の画像について、この防犯カメラは元々民間事業者が設置しているものが主でございますけれども、このデータを得るためには、先ほどもございました捜査関係事項照会等に基づきまして依頼をいたしまして御協力が得られたものについて入手をするということがございます。

 これは特定の事件の捜査に必要なものということで、具体の事件を想定してその必要な範囲内で提供を求めるというものでございます。

 「共謀罪」の捜査でも情報提供否定せず

山下よしき  必要の範囲内で顔写真データも含めた個人情報の提供を求めることはあるということでありましたし、先ほどJ―LISの方からは1件提供したこともあるということでありました。

 そこで、今、共謀罪の審議がされております。共謀罪というのは実際の犯罪行為がなくても相談、計画しただけで犯罪に問えるというものであります。

 ですから、これは、これを本当に立証しようと思いますと、実際の犯罪行為がない段階ですから、相談、計画があるのかないのか、あるとすればその内容はどうだったのかということをつかまなければ、これは共謀罪を成立させることにはなりません。

 したがって、必然的にこれ日常的な監視が必要となります。また、どういうグループが、どういう人物が相談、計画するかということをあらかじめ分からない場合の方が多いと思われますから、そうなりますと一般市民を広く対象にする必要も出てくると思われます。

 そのときにこのJ―LISの顔写真データが利用されることが私は大変危惧されると言わなければなりません。

 この顔写真には住所、氏名、性別、年齢、これが載っているわけですから、顔は分からなくてもこういう4情報を警察が入手している、しかも、その人たちはまだ何をしているわけでもない、何かをするかもしれないということを警察が一方的に決めるだけでその4情報から顔のデータを出しなさいという求めがされて、J―LISがそれに応じたとしますと、全国に張り巡らされている監視カメラを通じて、その人たちの逐一の行動が警察の手に把握されることになるということでありまして、そういうことをしなければこの共謀罪というのを立証することはなかなか難しいわけですね。犯罪が起こる前の話ですから。

 私は、この共謀罪とJ―LIS、まあ、もっと言いますとマイナンバーに記録されている顔写真のデータがそういうふうにリンクされると、これは非常に空恐ろしい監視社会になってしまうというふうに思いますが、これはJ―LISの理事の方、そんなことに使うことは絶対にないと言い切れますか。

山口理事  先ほどもお答えさせていただきましたとおり、顔写真情報を含むところの情報につきましては、極めてプライバシーに直接つながる情報でございますので、私どもとしましては、当該情報が被疑事実に直接関係するなど、先ほど1件と申し上げましたけれども、具体についてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、カードの不正取得のようなケースでございます。

 その意味で、直接そういう当該情報が被疑事実に関係する、そういった場合に限って提供するものということで御理解いただければと存じます。

山下よしき  今のはカードの不正使用の場合だったということを明らかにされましたけれども、これは共謀罪という新たな犯罪が構成されようとしているわけですが、それがされた場合にはこれまでの捜査の内容が変わってくると思われます。警察庁に伺いますが、これはまだ、我々は作ることに大反対していますけれども、仮に共謀罪が成立した場合、J―LISなどの顔データを提供することを求めることはないと言い切れますか。

高木審議官  テロ等準備罪についてお尋ねでございますけれども、テロ等準備罪につきましても、現行の様々なひそかに行われる犯罪と同様の形で、様々な捜査手法を用いて現在も潜在的な犯罪について捜査をしているところでございまして、この点につきましてはテロ等準備罪においても変わらないものというふうに認識をしております。

山下よしき  テロ等準備罪と称する共謀罪、これはもう思想、良心の自由を踏みにじる憲法違反の立法だと思いますが、それができた場合に、大変恐ろしい、犯罪の実行前にいろいろな情報が集められて犯罪者がつくられていく危険性があるということを申し上げて、終わります。

 

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。

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