消費税増税 地方財政を悪化 代表質問 
2019年3月13日 参議院本会議

山下よしき 日本共産党を代表して、安倍総理並びに関係大臣に質問します。
 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から8年がたちました。改めて、犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、今も避難生活を強いられている方を始め、被災された方々にお見舞いを申し上げます。政府が被災者支援に最後まで全力を尽くすこととともに、東電が最後のお1人まで誠実に誠意ある賠償を行うことを求めます。
 震災の教訓を生かすために、野党は、津波で根こそぎ住まいを失うなど、被災された方々への支援金の上限をせめて500万円に引き上げる被災者生活再建支援法改正案、いまだ4万人を超える方がふるさとに戻れない福島の現実を踏まえた原発ゼロ基本法案を提出しています。
 総理、二法案を真剣に検討すること、与党が審議に応じるようイニシアチブを発揮することを強く求めます。

 地方自治に関わって2点聞きます。
 沖縄で辺野古埋立ての是非を問う県民投票が行われました。全市町村で反対が賛成を上回り、全県で反対が七割を超えました。昨年の県知事選挙で玉城デニー知事が得た過去最高の得票をも上回っています。
 総理、投票結果を真摯に受け止めるというのなら、直ちに土砂投入を中止して、沖縄と誠実に対話すべきではありませんか。
 ところが、総理は、3月5日の予算委員会で、わが党の小池議員に、県民投票の結果が示す沖縄の民意は辺野古基地建設反対だということを認めるかと何度問われても、結果について評価は差し控えたいとしか答えず、辺野古基地反対が沖縄の民意であることを最後まで認めませんでした。
 総理、なぜ認めないのですか。自分の気に入らない民意は認めないということですか。
 岩屋防衛大臣の、県民投票の結果に関わりなく、あらかじめ埋立事業を続けることは決めていたとの答弁にも驚きました。菅官房長官も同様の考えだと語っています。総理、安倍政権には民主主義も地方自治も関係ないということですか、お答えください。
 総理は国会答弁で、6割以上の自治体から自衛隊員募集の協力が得られていない、誠に残念だ、このような状況に終止符を打つためにも自衛隊の存在を憲法上明確に位置付けることが必要と述べました。しかし、自衛隊施行令には、防衛大臣は、自衛官募集に関し、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な資料の提出を求めることができるとあるだけで、自治体に応じる義務はありません。だから、多くの自治体は、募集対象者情報の提出、すなわち若者の氏名、生年月日、男女の別及び住所を名簿にして提出することを求められても、個人情報保護、プライバシー保護などの観点から提出していないのです。これは、地方自治の原則からも当然のことであります。
 歴代の防衛庁長官、防衛大臣も、私どもが依頼しても自治体は応える義務というのは必ずしもございません、石破防衛庁長官、地方公共団体が実施し得る可能な範囲での協力をお願いいたしております、中谷防衛大臣、と繰り返し答弁しています。防衛大臣、政府はこうした立場を変えたのですか。
 このような自治体の対応に終止符を打つとして、憲法に自衛隊を書き込むと言い出した総理の狙いは何か。若者の名簿の提出をお願いすることしかできない現状に終止符を打ち、自治体に強制的に名簿を提出させるようにすること以外ないのではありませんか、答弁を求めます。

 厚生労働省の統計不正を調査する特別監察委員会の樋口委員長が、2001年以降、同省の審議会や研究会など32の会議で、会長、座長、委員などの役職を務めていたことが明らかになりました。これでは、特別監察委員会の第3者性は到底確保できません。現に、同委員会の追加報告書に対し、国の統計を所管する総務省の統計委員会から、分析も評価もなく、再発防止を考える際に必要な情報が著しく不足していると厳しい意見が出ています。
 総理、統計に対する国民の信頼を取り戻すためには、真に第三者性が確立された体制で調査をやり直すことが必要だと考えますが、いかがですか。

 地方財政について質問します。
 国と地方を合わせた支出のうち、地方の支出の割合は六割を占めるのに、税収全体に占める地方税の割合は四割しかなく、10年前より後退しています。全国知事会など地方六団体は、巨額の財源不足が解消されていない、地方交付税の法定率の引上げなど特例措置に依存しない持続可能な制度の確立をと求めています。
 総理、毎年出されるこの要請に、政府として、いつ、どのように応えるつもりですか。
 来年度の地方財政計画は、10月からの消費税増税を前提に、地方税収が大幅に増えると見込んでいます。しかし、消費税を3%から5%に引き上げた際、上向いていた景気が急速に悪化し、地方の税収総額は減りました。家計消費も実質賃金も落ち込んでいる今、消費税10%への増税が地方財政を悪化させないという保証はどこにあるのですか。総理、お答えください。

 安倍政権は、自治体の様々な業務にトップランナー方式を導入し、基準財政需要額の単位費用を、民間委託などを前提に削減してきました。導入された18業務での削減額は1632億円にも上ります。
 政府はさらに、自治体の窓口業務にまで導入しようとしていますが、窓口業務は、住民のニーズを直接つかみ、新たな政策につなぐ最前線です。総務委員会で意見陳述された富山市の森市長は、職員がフェース・ツー・フェースで様々な相談に対応でき、市民に安心感が生まれると、窓口業務の民間委託に反対されました。
 石田総務大臣、この声をどう受け止めますか。窓口業務の民間委託を進めるための財政誘導は断念すべきではありませんか。

 次に、女性と子どもの貧困の問題です。
 現在、税制上の寡婦控除は、婚姻歴のない非婚、未婚のひとり親には適用されません。そのために、税や保育料などの支払が年間10万円ないし数10万円も高くなるなど、非婚のシングルマザーは大きな不利益を受けてきました。同じシングルマザーでも婚姻歴があるかないかで差別される、これは憲法14条の平等原則にも子どもの権利条約にも反する事態だと言わなければなりません。
 総理、余りに理不尽であり、不合理だと思いませんか。

 世論と運動によって、公営住宅の入居資格や賃料、保育料などについては、非婚のひとり親世帯に対しても寡婦控除のみなし適用がされるようになりました。地方税においても本法案で2021年から住民税への非課税措置が適用されます。しかし、所得税については、与党内で検討するとしながら数年にわたってストップが掛かったままです。
 総理並びに麻生財務大臣、所得税における非婚のひとり親世帯に対する寡婦控除の適用を直ちに決断すべきではありませんか。
 虐待によって子どもの命が脅かされることがあってはなりません。児童相談所に付設される一時保護所は、心も体も傷つけられた幼い子どもに24時間体制で丁寧に対応する大事な役割を果たしています。ところが、全国に137か所しかない一時保護所では、定員を超えて子どもを保護する事態や受入れを断らねばならない事態が広がっています。背景には、施設整備の補助単価が低く、自治体負担が重いことがあります。
 子どもの命を守り抜くために、児童相談所とともに一時保護所の整備と職員配置への十分な財政措置を急ぐべきです。
 総理の見解を求めて、質問を終わります。

安倍晋三内閣総理大臣 山下芳生議員にお答えをいたします。

 野党提出法案の審議についてお尋ねがありました。
 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により最大300万円の支援金を支給するものです。支援額の引上げについては、国や都道府県の財政負担等の課題があり、慎重に検討すべきものと考えます。
 また、いわゆる原発ゼロ基本法案に関しては、現在、多くの原発が停止する中で、震災前と比較して一般家庭で平均約16%電気代が上昇し、国民の皆さんに経済的に大きな御負担をいただいている現実があります。
 資源に乏しい我が国にとって、こうした経済的なコストに加え、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えないと考えます。
 いずれにせよ、御指摘の両法案については、議員立法によるものであり、その取扱いについては国会において御判断いただくものと考えています。

 沖縄の県民投票、その結果の評価、辺野古移設についてお尋ねがありました。
 沖縄に米軍基地が集中する現状は、到底是認できません。沖縄の負担軽減は、政府の大きな責任です。今回の県民投票の結果を真摯に受け止め、これからも政府として基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。
 住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が、固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければなりません。これは地元の皆様の共通認識であると思います。普天間の全面返還を日米で合意してから20年を超えた今もなお返還が実現しておらず、もはや先送りは許されないと思います。
 先日、沖縄県玉城知事にお目にかかり、知事とは今後とも様々な形で意見交換を行っていくことで一致したところです。長年にわたる地元の皆様との対話の積み重ねの上に、これからも御理解を得る努力を続け、普天間飛行場の1日も早い全面返還の実現に向けて全力で取り組んでいく考えです。
 県民投票は地方自治体における独自の条例に関わる事柄であり、その結果について政府として評価を加えるようなことは差し控えたいと思います。
 安倍政権においては、普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現するという基本方針で取り組んでおり、この方針の下、移設工事については防衛大臣が適時適切に判断しているところです。いずれにせよ、民主主義も地方自治も関係ないとの御指摘は当たりません。
 政府としては、今後とも沖縄の基地負担軽減に全力を尽くし、一つ一つ着実に結果を出してまいります。

 憲法に自衛隊を書き込む狙いについてお尋ねがありました。
 憲法改正の内容について、内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えるべきものと思いますが、お尋ねであるため、あえて申し上げれば、近年の調査でも自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は二割にとどまります。かねてから申し上げているとおり、君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは余りにも無責任ではないでしょうか。
 私は、国民のため命を賭して任務を遂行する自衛隊員の諸君の正統性を憲法上明文化し、明確化することは、国防の根幹に関わることだと考えています。このような状況に終止符を打つためにも、自衛隊の存在を憲法上明確に位置付けることが必要ではないか、このような私の考えを申し上げているものであります。
 なお、自衛官募集については、自衛隊法第97条において、都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行うと規定されており、法律上、自衛官募集は自治体が行う事務とされています。一般論として申し上げれば、行政機関に対して法律に基づいて与えられた事務について、行政機関はこれを適切に遂行すべきものと考えられます。
 いずれにせよ、法令に基づき自治体の事務とされている事項について、六割以上の自治体が求めに応じていないことは事実であり、残念であると申し上げているものであります。

 統計問題についてお尋ねがありました。
 特別監察委員会の樋口委員長は統計や労働経済研究の専門家であること等から、その個人の資質に着目して委員長をお務めいただいているものと承知しています。また、委員会の下に元最高検検事の方を事務局長に迎え、独立性を強めた上で、先般、追加報告書が取りまとめられたところであり、その内容については、中立性、客観的な立場から検証作業を行っていただいた結果であると考えています。

 特例措置に依存しない地方財政制度の確立についてお尋ねがありました。
 アベノミクスの政策により来年度の地方税収や地方交付税の法定率分が増加となったことに伴い、平成31年度の地方財政対策では、財源不足が大幅に縮小し、臨時財政対策債の発行額を7000億円減と大幅に抑制しました。その上で、地方交付税を始めとした一般財源総額を前年度から6000億円増となる62.7兆円確保しております。これらの内容については、地方六団体からも高い評価をいただいているところであります。
 今後とも、法定率の見直しなど制度的な対応の議論も行いつつ、歳入面では、地域経済の好循環を全国津々浦々で一層拡大することなどにより地方税等の更なる増収を図るとともに、歳出面では、めり張りを付けて歳出構造を見直すことで、臨時財政対策債のような特例債に頼らないよう、財務体質の強化を図ってまいります。

 消費税の増税に伴う地方財政への影響についてお尋ねがありました。
 家計消費について、世帯当たりの消費を捉える家計調査の家計消費支出は、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっています。一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、2016年後半以降、増加傾向で推移しており、持ち直しています。
 消費を取り巻く環境を見ると、生産人口が減少する中でも雇用が大幅に増加し、国民みんなの稼ぎである総雇用者所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用・所得環境は着実に改善しており、消費は持ち直しが続くことが期待されます。
 その上で、今回の消費税率の引上げに当たっては、前回の8%への引上げの際に耐久財を中心に駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、いただいた消費税を全て還元する規模の12分な対策を講ずることとしています。これにより消費を下支えし、景気の回復軌道を確かなものとして、地方税収の確保も図ってまいります。
 なお、御指摘の実質賃金については、毎勤統計では、アベノミクスによる雇用拡大で女性や高齢者などが新たに雇用された場合は平均賃金の伸びも抑制され、さらに、デフレではない状況もつくり出す中で物価が上昇すれば一層抑えられるという特徴があることに留意が必要だと考えています。

 未婚のひとり親に対する税制上の対応についてお尋ねがありました。
 ひとり親家庭の自立を支援し、子どもたちの未来が家庭の経済状況によって左右されることのないよう、これまでも児童扶養手当の増額など積極的な支援を実施してきました。さらに、子どもの貧困に対応するため、平成31年度与党税制改正大綱を踏まえ、児童扶養手当の支給を受けており、所得が一定以下のひとり親に対し、個人住民税を非課税とする措置を今回の法案に盛り込んだところです。
 未婚のひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等については、与党において、平成32年度税制改正において検討し、結論を得ることとされており、政府としては、こうした議論も踏まえつつ適切に対応してまいります。

 一時保護所への財政措置についてお尋ねがありました。
 一時保護は、子どもの安全確保のため、個々の子どもの状況に応じ適切に行われることが重要です。このため、適切な環境で一時保護を行うことができるよう、来年度予算においては、施設整備に関する補助単価を加算するほか、一時保護を実施するための専用施設に対する補助などを行うこととしています。
 御指摘の一時保護所の整備と職員配置への財政措置の拡充については、実情を踏まえた適切な対応を検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

石田真敏総務大臣 山下議員にお答えをいたします。

 まず、窓口業務の役割についてお尋ねがございました。
 住民の多様な相談を受け住民のニーズを把握することは、地方公共団体の重要な役割の一つであります。他方、質の高い公共サービスを効率的、効果的に提供する観点から、外部資源を活用しながら業務改革を進め、そこで捻出された人的資源を職員が自ら対応すべき分野に集中することも重要であると認識いたしております。
 このため、例えば窓口業務のうち定型的な申請、届出等は民間委託の対象としつつ、住民からの相談については職員が担当することにより、職員が住民ニーズを直接把握しながら業務改革を行うことが可能であると考えています。
 いずれにいたしましても、窓口業務の民間委託を含め、どのように業務改革を進めるかについては、各地方公共団体において地域の実情に応じて適切に判断されるべきものと考えております。

 次に、窓口業務へのトップランナー方式の導入についてお尋ねがございました。
 トップランナー方式は、多くの団体が民間委託等の業務改革に取り組んでいる業務について、その経費水準を単位費用の積算基礎とするものであります。窓口業務へのトップランナー方式の導入につきましては、現時点におきまして多くの団体が民間委託を導入している状況にないため、平成31年度においては導入を見送ることとしております。
 今後、窓口業務の委託につきまして、委託が進んでいない理由を踏まえた上で、地方独立行政法人の活用や標準委託仕様書の拡充、全国展開などの取組を強化し、その状況を踏まえ、トップランナー方式の導入を検討することとしています。
 なお、地方交付税は使途が制限されない一般財源であり、トップランナー方式の対象業務をどのような手法で実施するかは各地方団体において自主的に判断されるものであります。(拍手)

岩屋毅防衛大臣 山下芳生議員にお答えいたします。

 自衛隊員の募集に対する自治体の協力についてお尋ねがありました。
 自衛隊法第97条において、都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官等の募集に関する事務の一部を行うと規定されております。また、自衛隊法施行令第120条により、防衛大臣は、自衛官の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができると定められており、これらの法令上、自衛官等の募集は、法定受託事務として自治体の行う事務であります。
 防衛省としては、自治体から募集に必要な資料を当然に提供いただけるという前提で、丁寧に依頼を行っているところであります。
 御指摘の答弁におきまして、当時の防衛大臣が、私どもが依頼しても応える義務というのは必ずしもございません、あるいは、地方公共団体が実施し得る可能な範囲での協力をお願いいたしておりますと答弁したのは、自治体に対し、法令に基づく事務として資料の提出を求める一方、これを強制することはできないことを述べたものであります。この意味において、御指摘の答弁の趣旨は現在も変わるものではありません。
 今後とも、より多くの自治体から資料の提出をいただくべく、丁寧に働きかけてまいります。

麻生太郎財務大臣 山下議員から、未婚のひとり親に対する税制上の対応について、一問お尋ねがあっております。
 未婚のひとり親に対する税制上の対応につきましては、先ほど総理から既に答弁がありましたとおり、今回の地方税法の改正法案におきまして、子どもの貧困に対応するため、一定のひとり親に対し個人住民税を非課税とする措置を講ずることとしているところであります。
 平成31年度与党税制改正大綱では、更なる税制上の対応の要否等につきましては、平成32年度税制改正において検討し、結論を得ることとされております。
 政府といたしましては、与党における議論を踏まえ、適切に対応してまいります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。