山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
今回の地方財政計画と関連法案の前提あるいは基礎ともなります統計について質問いたします。 統計がゆがむと政策もゆがむ、統計が乱れると国が乱れる。千野雅人総務省統計局長が昨年5月24日、当委員会で答弁された言葉でありまして、私、そのとき、戒めの言葉としてはもう名言だなと思って聞いておりましたが、残念ながらこれが現実になってしまいました。 局長、今どういうお気持ちでしょうか。
千野雅人(総務省統計局長) お答えいたします。
統計の重要性は昔も今も全く変わらないと考えてございます。委員御指摘の答弁は、統計が国家運営の基盤であるという意味合いで申し上げたものでございまして、その認識は今も変わっておりません。
山下よしき にじみ出るものを私は読み取ることができましたが、政策のゆがみ、国の乱れを正すのは国会の責任だと思います。
日本統計学会が厚生労働省の毎月勤労統計調査における不正について、1月28日、声明を出しております。こう言っています。統計法を遵守することは公的統計の必須の前提。調査方法の変更が担当部局の独断で行われ、さらにその変更が公表されていなかった。今回の法令違反は公的統計の信頼性を根底から揺るがすものだと。極めて厳しい指摘であります。 この声明の中でこう言っているんですね。事業所を対象とする標本調査の場合は大規模事業所間の変動が大きいため、通常は大規模事業所については全数調査とすることが適当であり、毎月勤労統計の場合もそのような検討を経て現行の調査設計が承認されていると触れられております。 そこで、まず総務省に伺いますが、一般的にこの大規模事業所については全数調査とすることがなぜ適当とされるのでしょうか。
横田信孝(総務大臣官房政策立案総括審議官) 一般論でございますけれども、標本調査においては母集団の中で傾向が異なる、具体的に分かりやすく言いますと、ばらつきが大きいといった場合には、どこが調査の対象となったか否かによって調査結果に影響が生じることがあり得るということでございます。このため、このような場合には、調査結果の精度を確保するという観点から全数調査を行う例があるということであると承知しております。
山下よしき もうちょっと詳しく聞きますけど、要するに500人以上ですから、以上ですから、上はもう何千、何万というのがあるかもしれない。で、500人程度の。それ、ばらつきが大きいから、抽出するとそれによってちょっと大きな誤差が生じるかもしれないので全数が望ましいと、そういう理解でいいですか。
横田審議官 そういう場合が多くなるということでございます。
山下よしき 厚労省に伺いますが、毎月勤労統計調査は、500人以下については抽出調査、500人以上については全数調査とするという設計にしていますが、なぜでしょうか。
土田審議官 今総務省の方からお答えになられたような理由でそうされているものというふうに理解しております。
山下よしき にもかかわらず、2004年1月から東京において500人以上の事業所を抽出調査としたのは、厚労省、なぜでしょうか。
土田浩史(厚生労働大臣官房政策立案総括審議官) お答え申し上げます。
東京都につきましては、平成16年以降、500人以上の事業所につきましては抽出調査を行うこととした理由でございますけれども、特別監察委員会の1月の報告におきましては、当時の担当は、継続調査、いわゆる全数調査の事業所につきましては、企業から特に苦情が多く、大都市圏の都道府県からの要望に配慮する必要があった、また、都道府県の担当者の負担を考慮したからだと思うが、誤差計算しても大丈夫だという話だったというふうに記憶しているというような、担当は述べておりまして、また、平成15年7月に通知されました16年度調査の事務取扱要領におきましては、規模500人以上の事業所は東京に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できるためであるというふうに記載されているところでございます。
山下よしき 今のは極めて納得し難いんですよね。
先ほど総務省さんがおっしゃったように、これはそういう理由があるわけですよ、全数調査にする。それを勝手に、要望があるからとか、あるいは、何ですか、全数調査にしなくても適切な復元処理。それは全数調査じゃないと駄目なんだというふうに先ほど理由があったのに、それを棄却するような理由ではないと言わなければなりませんね。 結局、肝腎なところは、なぜか、ああなるほどなと合点がいくのはないんですね。だから、統計委員会、5人の委員の方々が最近出された特別監察委員会の追加報告書に対する意見書で、分析も評価もなく、再発防止を考える際に必要な情報が著しく不足していると批判するのは当然だと思います。その中には、当事者がどういう理由の下に不適切処理を始めたか、それが納得できないということが指摘されております。 ほかにもまだ聞きたいことがあるので進みますけれども、まず総務省に確認ですけど、一般論としてで結構なんですけど、定められた手続を経ずに調査方法を勝手に変更することは統計法違反だと思いますが、いかがでしょうか。
横田審議官 これは法律上の、統計法上の定めでございますけれども、調査計画を変更する際には総務大臣の承認を経るということになっております。その調査計画に定めることについては、これも法定されておりますので、それぞれについて守っていただくという前提になっておるということでございます。
山下よしき 基幹統計の調査方法ですからね、これ勝手に変更しちゃったら法違反なんですよ。
更に驚くのは、勝手に抽出調査にしながら、抽出調査にしたんだったら復元処理がされなければならないのに、それがされなかったことであります。 もう一つ総務省に確認しますけれども、一般論で結構なんですけど、抽出調査にした場合の復元処理というものはどのようになされるのでしょうか。抽出率あるいは回収率に触れて御説明いただきたいと思います。
横田審議官 これも一般論でございますけれども、抽出調査は母集団の中から一部を抽出し、この抽出した標本のみを調査するというものでございます。この結果から何らかの方法を用いて平均や分散といった母集団の統計量を推定すること、これを前提として行うものだということでございます。
具体的に申しますと、例えば、調査の回答として得られた数量に抽出率とそれから回答率の逆数を乗じることで母集団の統計量を推定するという場合もあるという、そういうことでございます。
山下よしき 抽出率に逆数を掛けて計算するということですが、資料をお配りいたしました。
これは、厚生労働省統計情報部が都道府県の統計担当課に発出した毎月勤労統計調査抽出率の逆数表の送付についてということでして、2枚目に添付しておりますけれども、これがその通知に添付されていた事業所抽出率逆数表ですね。ちょっと数字ばっかり並んでいますけど、左の縦にTLとかDとかEというアルファベットが並んでいるのは、これは産業分類であります。それから、横軸に、上の方に00から01、02と47まであるのは都道府県でありまして、13番目が東京ということになっております。 ですから、これ見ますと、これは500人以上の事業所についての表ですから、500人以上の事業所については東京だけが抽出率逆数が一以外の数字も含まれておりまして、要するに抽出調査であるということが分かります。2だったら2分の1の抽出である、3だったら3分の1の抽出であると、その逆数がこうなるわけであります。 昨日、厚労省に確認いたしましたら、この抽出率逆数表を作成したのは厚労省さんだということでありました。つまり、都道府県がそれぞれ自分のところで抽出率を決めて厚労省に報告して、それを集約したんじゃなくて、厚労省が各県ごとの抽出率を産業分野別に決めて、それを都道府県にこういう方法でやりなさいと通知したものであります。 そこで、厚労省にこの逆数表に関わって2点確認したいんですが、一つは、産業ごとにこの逆数が違う、抽出率が違うのはなぜか。二つ目に、これ資料を3枚目に付けておりますけれども、実はこの抽出率が年度によって変わっていくんですね。この産業分類、分野別に変わるのはなぜか。年度ごとにも変わっていくのはなぜか。お答えください。
土田審議官 毎月勤労統計調査の標本設計に当たりまして、全体の標本数に制約のある中で、回収率の状況等を踏まえまして、年度ごとに産業別、規模別の状況を勘案いたしまして十分な統計の精度を確保できるように抽出率を設定しているということで、このような年度ごとにも変わっているということでございます。
山下よしき 産業別にいろいろ構造が違うでしょうから、それも変化するということでこういうふうに分類を変えていっていると、数字を変化させているということでした。
総務省統計局にお聞きしますけれども、一般的に、このような抽出率逆数表があるということは、復元作業のためにあると考えていいんでしょうか。このような逆数表がありながら復元しない場合とは、どんな場合が考えられるんでしょうか。
横田審議官 標本調査は、母集団の中から一部を抽出し、この抽出した標本のみを調査するというものでございます。
その結果から、何らかの方法を用いて平均や分散といった母集団の統計量を推定するということを前提とするということでございますので、これは通常、復元をするという理解でございます。
山下よしき そういうことなんですよ。これつくったのは、復元のためにつくっているんですよ、厚生労働省は。なぜ復元しなかったんでしょうか。
土田審議官 平成16年以降、適切な復元処理がなされなかった理由につきましては、特別監察委員会の1月の報告によりますと、抽出調査の変更に伴い、復元のための必要なシステムの改修が行われなかったこと、また、毎月勤労統計調査に係るシステムの改修の体制が事務処理に誤りを生じやすく、発生した事務処理の誤りが長年にわたり発見されにくい体制となっていたことなどがこの原因や背景にあるというふうに指摘されているところでございます。
山下よしき 今の答弁、間違っていますよ。1月の報告書でそうなっていることについては、予算委員会でうちの辰巳孝太郎議員がシステムの変更がなければちゃんと処理ができないんですかと言ったら、そうじゃないと。システムの変更は関係ないんですよ。そんなもう古い答弁してもらっちゃ困りますよ。
大体おかしいんですよ。だって、この東京の500人以上の事業所を抽出調査にしたのは2004年からですよね。その時点でこういうものを発出しているわけですから、分かっているわけですよ。それをずっと、年度ごとに、産業別ごとにこれ変えながら、しかも都道府県に発出したわけですから、これを、表を見れば、これは統計に関わる専門家だったら必ず気付くはずなんですよね。500人以上の事業所は全数調査でなければならないのに、東京都は抽出調査になっているのはおかしいんじゃないかと気付くはずなんですね。 私、前回2月の質問でも、このひどさを伝えるために、国民に対しては500人以上は全数調査でやりますよというふうに厚労省は公表しているんですよ、一って全件。ところが、内部でこっそり、2004年から2018年1月までずっとこうやって国民欺いていたんですよ。だったら、本当に統計のその分野の専門家だったら、これ見たら、あっ、まずいと気付くはずなんですよね、国民にうそをついていると。そして、確認したら、ちゃんと復元作業がされていたかちゃんと確認するはずなんですよ。14年間も何100人という統計の専門家が見たでしょう。何でそうならなかったか、ちゃんと納得できるお答えをください。
土田審議官 追加の特別監察委員会の報告書によりますと、過去に適切な復元処理を行われていなかったこと及びそれを公表することなく放置していたのは、単に前例を踏襲したり、業務が多忙であったり、復元処理による影響が小さいと判断したりしたことを理由とするものであり、規範意識の欠如、事の重大性に対する認識の甘さがあったことは否定できないというふうにされているところでございます。
山下よしき 誰がそんなことで納得しますか。今おっしゃったのは、忙しかったから、気付いていたけれども忙しかった。気付いた人はそれはいるでしょう、報告書でそう書いていますよね。
土田審議官 ただいま申し上げましたとおり、気付いていた者につきまして、単に前例を踏襲したり、業務が多忙であったり、復元処理による影響が小さいと判断したりということが理由とされていたものでございまして、規範意識の欠如、事の重大性に対する認識の甘さがあったというふうに指摘されているところでございます。
山下よしき その気付いていた人の中に、F課長、自分で試算してみた、こう書いてある。もう報告書そのまま、追加報告書ですけど、室長Fは、平成29年頃に適切な復元処理による影響を試算したが、その影響は大きいものではないと判断したと。気付いて復元してみたら、影響は大きいものではないと勝手に判断しているんですよ。
そんなことはないですよ。これによって21年ぶりに実質賃金が伸びたという総理が報告するようなことが起こったけれども、それはかさ上げされていたという非常に大きな影響があったんですよね。それをこんな報告書で済まそうとする。 これに対して、誰も納得しないですよ。これに対して、厚労省、どんな試算をしたのか。試算をしたと言っている。つかんでいますか。このF課長。
土田審議官 今後しっかり調査してまいりたいというふうに思います。
山下よしき つかんでもいないんですよね。言われたまま。試算したけど影響はないと思ったからって。意図的ではなかったって。冗談じゃないですよ、これは。
統計委員会の意見書には、この点はちゃんと、どういう試算をしたのかを情報提供すべきだと言っていますけど、統計委員会に情報提供しましたか。
土田審議官 3月6日の統計委員会におきまして5名の委員の方々から特別監察委員会の追加報告に関しまして意見書が提出され、11日、これを受けた厚生労働省への情報提供要望があったところでございます。これは、統計委員会が今後厚生労働省に対しまして統計技術的、学術的な観点から情報提供を求めたものというふうに受け止めております。
厚生労働省といたしましては、今後これらの統計技術的、学術的な事項等につきまして、統計委員会での検証を通じて順次適切に説明してまいりたいというふうに思っております。
山下よしき 順次適切にですけれども、速やかにする必要があるんですね。
この全数調査するものを手続取らずにこっそり抽出調査にして、それずっと14年間怠りながら国民には全数調査と欺き続けてきた。そして問題は、2018年1月にこっそり復元しちゃったと、それで実質賃金がかさ上げされちゃったと。もう本当にこれひどいことなんですけれども、これ、意図的ではなかったと言ってもこれは絶対通用しない。なぜこんなことが起こったのかをちゃんと真相を解明しなきゃ駄目なんですね。 これ、一つ今疑惑になっているのが、今報告したような流れと並行して、2015年3月頃に官邸の中江総理秘書官が、毎勤統計について、厚労省の統計担当者に対して、伸び率が遡って改定されると、それなりにプラスになっていた数字がマイナスにぱたぱたっと変わっていく、それは問題ではないですかと見解伝えたということを、御本人が、首相秘書官が国会で答弁されています。それでローテーションサンプリングの導入について検討が始まるんですが、プラスの数字がマイナスになるのは問題だというふうに言われたことが、2018年1月、こっそり復元してしまうということに、そんたくされたり圧力になったのではないかという疑念もありますが、もう今日はそこは追及いたしません。 最後に、総務大臣に伺います。 2月の委員会で、大臣は私の問いに、今御指摘がございましたように、やはりどういうことでこういうことになっていったのかということをしっかり解明することが大事だと思っておりましてとおっしゃっています。で、特別監察委員会の追加報告書は残念ながら解明されていないということを統計委員会が3点御指摘をされておりますけれども、少なくとも統計委員会の3点早く出しなさいと、総務大臣として厚労省にきちっと意見を求めるべきではないでしょうか。
石田真敏総務大臣 今御指摘の3月6日の統計委員会に提出された意見書は、毎月勤労統計調査の今後の改善に向けて、統計技術的、学術的観点から検討するために必要とされる情報でありまして、2月27日に厚労省により公表された毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書に掲載されていない情報について同省に提供を求める内容となっていると承知をいたしております。
それで、統計委員会では、この意見書を審議をいたしまして、統計技術的、学術的観点から、再発防止等のための検討に資する3点の情報を求めることについて合意を得られたことから、統計委員長の指示に基づきまして、3月11日に厚生労働省へ情報提供要請を行ったと聞いております。 これは、今も申し上げましたように、統計技術的、学術的観点から統計委員会が必要とされる情報でございますので、厚生労働省には今回の要請に応じて速やかに誠実に対応していただきたいと考えております。
山下よしき 大事な御発言だったと思います。
この統計委員会の声明は、こんなことがあったら、学会だったら追放されると、重大な事態だと厳しく言っています。これ、重大な事態という認識が余りにも厚労省になさ過ぎる。 最後に、委員長、前も言いましたけれども、姉崎元厚労省統計情報部長、中江総理秘書官、それから特別監察委員会の追加報告書に出てくるD課長、すなわち久古谷氏、それからF課長、後、室長である石原氏らを参考人として当委員会で統計問題の集中審議を行うよう要請して終わります。