4月13日、地方公務員法改正が審議されている参院総務委員会で、自治労連・非正規公務公共評議会幹事の小川祐子さんが意見陳述に立ちました。小川さんの発言をそのまま紹介します。
○地方自治体の職場で働く臨時・非常勤職員の現状。
小川祐子さん 私は自治労連非正規公共評議会幹事の小川裕子です。埼玉県内で学童保育の指導員として働いています。また自治労連埼玉県本部非正規公共協議会の事務局長として、県内自治体で働く臨時・非常勤職員と自治体業務を委託や指定管理などを受けている施設などで働く労働者の雇用を守り、賃金・労働条件を改善させ、住民サービスを守る活動を行なっています。
自治体に直接雇用されて働く学童保育の指導員は、子ども子育て支援新制度で、その役割は育成支援だと位置づけられました。子どもの育ちを保障し、保護者の子育てを支援するという、成長期の子どもたちの命と育ちを守る重要な仕事をしています。また、近年は障害児やDV対応など、より高い知識と技術が求められています。しかし、現場には正規職員が配置されず、臨時や非常勤でありながらもその責務を果たすため、一生懸命働いています。
総務省調査結果でお分かりのように、全国の保育士の4割以上が臨時・非常勤職員として任用されています。埼玉の非正規公共協議会に集まる仲間には、常勤職員同様フルタイムまたはフルタイムにごくごく近い勤務時間で働く保育士がたくさんいます。臨時・非常勤など非正規であっても、正規保育士と同じように担任を持ち、子どもたちや保護者と日々向き合って仕事をしています。
しかし、その賃金は正規の半分か3分の1、20年以上働いても手取りは20万円に届かない、退職金もなく老後の生活が心配、病気休暇がないので熱があっても無理をして働いている、育児休暇もないので子どもが出来たら辞めざるを得ないなど、仕事には誇りとやりがいを持ちながらも、労働者としては不安や不満を抱えて働いています。
そして一番大きな不安は、来年も働き続けることができるかという雇用不安です。非正規ではたらく若い保育士のなかには、将来に期待や希望が持てず、賃金は変わらなくても、一時金や退職金、休暇制度がある民間保育園に正規として転職していくという現状もあります。保育士不足は深刻で、このままでは公的保育の質が守られません。
保育士以外にも、正規と同じように専門性や資格が問われ、基幹的・恒常的に働く看護師や保健師、図書館司書などなどの非正規がいますが、一日の勤務時間を15分や30分短くされ、また週の勤務日を4日とされ、また任用の中断期間をおかれ、常勤ではないと正規との待遇格差が温存されてきました。自治体業務の多様化のニーズに対応するため、そして正規職員削減の調整弁として、自治体の使い勝手のよい、またいつでも雇い止めできる安上がりな職員として非正規が活用されてきましたが、私たちも正規と同じ常勤職員になりたいと強く願っています。
自治体では、こうした実態を改善するために労使間で待遇改善の努力が図られていますが、抜本解決のためには、法改正をはじめ基幹的・恒常的な業務に従事している非正規職員の正規化の途を政府の責任で示すことが必要です。
○今回の地方公務員改正案について、臨時・非常勤職員の立場からどのような問題点があるか。
小川祐子さん 総務省調査結果や研究会での問題点把握、「働き方改革実現会議」で公務を一体に取り上げることを求める発言が出されるなど、自治体の臨時・非常勤問題にもスポットがあてられ、政府として法改正に踏み込んだ検討がなされてきました。
しかし、今回の法改正は、「制度の趣旨に沿わない任用」の適正化のために行うと説明されていますが、臨時・非常勤職員の勤務実態を踏まえたものとなっていないということが最大の問題ではないでしょうか。今回、厳格化するという「特別職非常勤職員」や「臨時的任用職員」には一定の任用要件が規定されていますが、「会計年度任用職員」では、「一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職」としかありません。
そして、総務省の説明では、「再度の任用」が可能だとされています。これでは、任用根拠を変えただけで、基幹的・恒常的業務にも使い勝手のいい安上がりな労働力が自治体職場に拡大・固定化されてきた現状をなんら変えることにはつながりません。むしろ、いつまでも非正規雇用、いつでも雇い止めできる仕組みづくりだと考えます。
民間であれば、有期雇用の拡大を防止し、その労働者の保護を図るため労働契約法などが改正されてきました。民間ではたらく有期雇用の保育士であれば、5年以上同じ職場で働けば無期転換の権利が発生します。しかし、臨時・非常勤の保育士は公務員だからといって、雇止めの不安を抱えながら働き続けることになります。同じ有期雇用の保育士で、公務と民間とでどんな違いがあるのでしょうか。さらに、任用根拠の見直しで労働委員会の活用など権利の保護・救済の仕組みが制約されることになります。
二つ目に、会計年度任用職員の処遇をフルタイムと短時間とで差を設けたことによる問題です。先ほど紹介したように、正規職員との違いを設けるために勤務時間・日数をわざと短くしている実態があります。そのことによって、手当支給や共済・公務災害の制度適用の要件を満たさない状態がつくられています。今回の期末手当支給の制度化でさえ、地方自治体からは財政負担の増加への不安が出されています。そうしたもとで、フルタイム勤務が必要な職であっても、短時間に設定していく流れをつくるものだといえるのではないでしょうか。私たちはこれまで、仕事の専門性や継続性を訴え、年休の繰越や加算、昇給の仕組み、退職慰労金など、賃金・労働条件の改善を実現させてきましたが、それさえもなくなってしまう懸念があります。
今回の法改正によって、いま働いている臨時・非常勤職員の雇い止めや労働条件の切り下げはあってはならないことです。
これまで紹介してきたように臨時・非常勤職員は、住民・子どもと向き合って、その生活、いのち、発達を支えています。そうした仕事には専門性や継続性が必要なことはもちろん、その職務にあった労働条件が確保されなければならないと考えます。
「適正な任用等を確保し、それに対する給付を規定する」というなら、国の財源保障が絶対に必要です。財源保障のない状況では絵に描いた餅であり、以上の点から、この法案に反対せざるを得ず、大幅な修正を求めます。