山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
私からも、3月5日、訓練に向かった長野県の消防防災ヘリが墜落し、乗っていた9名の方がお亡くなりになったことに対して心からお悔やみを申し上げます。
お昼のニュースで告別式の模様が流されておりましたが、人命救助活動に当たってきた尊い命がこのような事故で二度と失われることがないように、しっかりと原因を究明し、対策を取ることを求めたいと思います。先ほど答弁がありましたので、これはもう答弁は求めません。
さて、消防庁は、2月6日、消防職場でのパワハラやセクハラなど、職場での嫌がらせ、ハラスメントの実態調査を実施するための有識者による会合を立ち上げました。その概要と目的、それから消防職場でどのようなパワハラ行為があったのか、御報告ください。
冨樫博之(総務大臣政務官) 消防庁では、消防本部における職員のセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等のハラスメント事案等の実態を調査し、各消防本部において講じる対策の在り方について検討するため、消防本部におけるハラスメント等への対応策に関するワーキンググループを開催しているところであります。
アンケート調査は、消防の職場におけるハラスメント発生の実態を把握し、ワーキンググループにおける検討の材料とするために実施しているところであります。具体的には、全国の消防職員のうち、男性3200名、女性800名を無作為で抽出し、最近1年間のセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等の経験の有無やその内容、ハラスメントを受けた後の対応等についてお聞きしているものであります。
また、パワハラ行為の事例としては、糸島市消防本部における複数職員による暴言、暴力、しごき等の事案や、千葉県消防学校における教官による体罰等の複数の不適切な指導があったところであります。
山下よしき 私は、調査がやや遅かったんじゃないかという実感を持っております。消防での暴力、いじめ、パワハラ、セクハラはしょっちゅう報道されております。
今ちょっとお触れになった、3月3日に福岡県糸島市消防本部で起こった事例をもう少し具体的に紹介します。消防本部の職員13人が集団で約30名の同僚に暴行、パワハラを繰り返していたと市長が記者会見をいたしました。訓練を装って日常的に暴行、パワハラが行われていた。例えば、100回から1000回の腕立て伏せを強要する、部下をロープで鉄棒につないだ状態で懸垂を命じ、力尽きると約30分間宙づりにするなどで、口から泡を吹き失神する職員もいたといいます。これ、100人規模の消防で約30人の被害者が出ていた。9年前から続いていて、少なくとも3人の若手職員が退職しております。過去に内部告発が何回もあったけれども、改善するどころか、告発者が逆に特定され、更なるいじめの標的となっていたと。
それから、こういう小さな消防だけではありません。東京消防庁でも先月15日、50代の消防司令が部下の20代女性消防士にセクハラを繰り返したとして懲戒処分になっております。職場や飲食店で女性の肩や腰を触ったり、嫁にしてやってもよいなどの声を掛けたりしていたと。
それから、少し前になりますが、渋谷の消防学校でレスキュー隊研修の教官6人が研修生を殴るなどの暴行を繰り返していた。4人の学校職員も暴力を目撃したのに報告しなかった。それどころか、上司の見回りを無線で知らせたり、研修生に隠蔽のための口裏合わせを指示していた。とんでもない連係プレーが発揮されていたわけであります。
私は、公務職場で、しかも最も人命を尊重すべき消防職場で暴力やいじめやパワハラがこれほど頻繁に、また深刻な内容で起きている、これは放置できないことだと思いますが、大臣、どのように考えておりますか。
高市早苗総務大臣 まさに放置できないことだと思います。いかなる職場におきましても、このパワーハラスメントや暴力については、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景として相手の尊厳や人格を侵害する、決して許されてはならない行為であると思います。
この消防の職場におけるパワーハラスメントや暴力の発生の原因ということで私から断定的なことを申し上げることはできないんですけれども、消防吏員は危険な現場において活動することを求められますので、階級制度に基づいた指揮命令系統というのが確立されていて、また、安全管理のため一定程度の厳しい指導、訓練が行われています。したがって、状況によっては、この指導の行き過ぎなどによるパワーハラスメントや暴力が起こる可能性があるということは推測できるかと思います。
現在、このパワーハラスメントのみならず、いわゆるセクハラ、マタハラなどハラスメント全般について、消防庁において有識者及び全国消防長会などをメンバーとしたワーキンググループを設置しています。29年度のできるだけ早い時期にこの取りまとめを行っていく予定です。その取りまとめを踏まえまして、ハラスメントの撲滅に向けた対策をしっかりと取ってまいります。
山下よしき 厚生労働省のパンフレットによりますと、職場のパワハラ、六類型挙げておりまして、身体的暴力はもちろんですが、言葉による精神的攻撃、それから無視するなど人間関係からの切離し、業務上明らかに不要な要求で無理で過大な要求をすること、また逆に仕事を与えないなど過小な要求、さらに私的なことに過度に立ち入る個の侵害などを挙げております。こうしたパワハラによってメンタル、精神疾患に追い込まれて休職や退職、そして自殺という最悪の事態も生まれております。
消防庁に伺いますが、消防職員のメンタル、精神疾患による休職者や退職者数の推移について報告してください。
大庭誠司(消防庁次長) 消防庁におきましては、パワーハラスメント、暴力を受けて精神を患い休職した者及び退職した者の人数についての調査を行っておりませんで、その人数については把握していないところでございます。
山下よしき 調査はしていないんですね、これまでは。今回調査初めてだと思うんですが、私も、今紹介あったアンケートの案を見せていただきました。アンケートは、女性消防職員2割に対するセクハラ・マタハラ調査、それから年代別に抽出して行うパワハラ調査とともに、全ての消防本部に行う調査というのもあります。
大庭消防庁次長に問題提起させていただきますが、この各消防本部に対する調査で、メンタル疾患の有無、長期休職者あるいは若手の退職者数も項目に入れて聞く必要があるんじゃないでしょうか。
大庭次長 今回調査を発出いたしておりまして、その中では、特に不祥事防止の対応に関する調査ということで、例えば公益通報窓口あるいは相談窓口、あるいは懲戒処分基準等に関する調査と掲げておりまして、具体の事例等については抽出する予定はございません。
山下よしき 是非それは私は調べた方がいいと思いますよ。
資料配付しておりますけれども、地方公務員災害補償基金の過労死等公務災害補償状況というデータがあります。これ3年前から、2013年から取り始めた統計なんですが、そこから精神疾患による公務災害事案をピックアップしてみました。
資料の一番下の表を見ていただきたいんですが、2013年から2015年の3年間の合計で、全国の消防職員約16万人いるわけですけれども、この消防職員の中で、業務による精神疾患の公務災害の申請が20件、公務災害の認定が11件となっております。これ自体、申請されたものだけですから氷山の一角だと思われますが、それでも申請20件のうち11件が自死されておりますし、認定11件のうち3件が自死されたことも分かりました。
太枠で囲んでいるところですが、消防職員、教職員、それからその他の地方公務員の1万人当たりの精神疾患による公務災害の率で比較しますと、消防職員は教職員の2.3倍の申請があり、その他の地方公務員の1.3倍の申請があります。また、認定件数では、消防職員は教職員の4.1倍、その他の地方公務員の1.8倍となっております。
消防職員のメンタル、精神疾患の比率が他の公務職場よりも高い。高市大臣、どう受け止めますでしょうか。
高市総務相 公務災害補償の対象となる精神疾患について資料を作っていただきましたけれども、まず、先ほど御指摘のあったようなパワーハラスメント以外にも、勤務時間の長さですとか異動によるストレスなど様々な要因があると思います。そして、特に消防職員はもう本当に凄惨な災害現場活動に従事することで強い精神的ショックを強いられるということ、また身体の危険にさらされるということなど、一般の地方公務員とまた異なったストレスを受けて精神疾患となるケースもあると思われます。
山下よしき 私も、これ全部がパワハラの影響だとは言いません。しかしながら、消防職員のこのメンタル、精神疾患の多さは、これはやはり消防職場のいじめ、パワハラの実態と無関係でもないというふうに考えるわけであります。
いじめ、パワハラがあってはならないと言うのなら、私は背景や原因をしっかり明らかにすべきだと思うんですが、消防職場での暴力、パワハラ、セクハラ問題について全労連、自治労連、連合、自治労などの労働組合の皆さんが繰り返し問題を指摘し改善を要求してきたわけですが、労働組合の皆さんが共通して指摘されているのは、暴力やパワハラが繰り返し起こる原因、背景の一つに、消防職員の団結権がいまだ付与されていない、回復されていないという根本的な問題があるという提起をされております。
例えば、職場で起こる様々な問題を自分たちで話し合い自分たちで解決していくための職員団体すらつくることが許されておりません。職場での暴力やいじめ、パワハラが起きても声を上げられない、報復や更なるいじめを恐れて我慢を強いられる、まして、上司や消防署長ら、各消防のトップである消防長などの幹部によるハラスメントには個人では対抗しようがないと。
私は、この労働組合の皆さんの団結権が回復されていないという問題提起、納得できる問題提起であると感じましたけれども、総務大臣、消防職場のハラスメントと団結権の関係、どう認識されていますでしょうか。
高市総務相 先ほど来申し上げていますように、パワーハラスメントの要因というのは様々だと思います。やはり階級制度に基づいた指揮命令系統、これが確立されていて、安全管理のための相当厳しい指導、訓練が行われているというようなことで、状況によってはパワハラにつながるような厳しい行き過ぎた指導というものになっているおそれがあると考えられるんですけれども、ただ、消防職員の団結権が付与されていないためにパワーハラスメントの発生が防止できないとは必ずしも言えないように思います。
パワーハラスメント対策については、労使関係の在り方にかかわらず、これはもう組織のトップから全部の職員までが全体として取り組むべき重要な課題であるというふうに私は認識をしています。先ほど申し上げましたハラスメントに関するワーキンググループで御議論いただいた上で、しっかりと撲滅に向けた対策に取り組んでまいります。
山下よしき 団結権の付与が全てパワハラを解決することになるとは私も申し上げておりません。しかし、こういう深刻ないじめ、特に上司だとかトップからいじめがあったときに職員がばらばらな状況、団結することが認められないような状況でどうやってこれを告発し解決していくのかということは、これはひとつ大きく考えなければならない問題ではあると思うんですね。
例えばもう一つ、じゃ、事例を紹介しますけれども、こんな事例ばっかり紹介するのは嫌なんですけれども、大変深刻な事例です。
消防長がパワハラを行い、退職強要している事例であります。関東のある消防本部、30代の消防士Aさんは、休日に友人とのスポーツ競技で足をけがし、3か月休職いたしました。復帰後、消防長から、自己管理ができていない、おまえに消防士の将来はない、辞めろと退職強要が始まりました。Aさんは、いじめ、嫌がらせがAさんに対して繰り返されるようになって、労働組合の相談窓口にどうしたらよいか相談したわけですが、その後、この相談したことが問題になって、朝礼の場で消防長が労働組合にパワハラ問題があると相談した者は誰だと発言し、その場で収まらないので名のり出たら、今後1年の間に一人前の仕事ができるようにならなければ退職する旨の誓約書の提出を強要されたということになっております。
これはもう公務災害として、その後出勤できなくなって、病院でうつ病と診断されて、公務災害の申請も行って、公務災害に認定されました。認定した裁定書に、職場を辞める旨の誓約書の作成を要求することを正当化できない、労働組合に相談したこと自体を理由として誓約書の作成を要求することは正当化できない、消防長らによる継続的な退職強要によって職を失うことへの深刻な不安を強め、その結果うつ病を発症したものと公務災害を認定されております。
これ、恐らく団結権問題になりますと、消防職員の委員会制度というのがつくられておりますから、そこでその団結権付与に代替されているんだということをよく聞くんですけれども、その消防職員委員会というのは、審議結果はあくまでも参考意見として、最終的な決裁権限は消防長が持つということになっておりまして、いろんなところでも、ほとんど要求が実らない、聞かされない、聞きっ放しにされているということも聞きますけれども、こういう職場の現状では消防長がやるパワハラということを解決することができないわけですね。
私は、労働者の基本的人権である労働三権、せめて団結権の付与というものは、もうこれは人権ですから当たり前なんですが、これだけパワハラが全国調査をしなければならないほど消防職場に蔓延しつつあるときに、この間の消防職員に対する団結権の付与についていろいろな議論があり、到達がありますけれども、こういうパワハラが蔓延している今だからこそ団結権の付与を改めて決断すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
高市総務相 消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権の在り方については、国家公務員制度改革基本法附則第2条において「国家公務員の労使関係制度に係る措置に併せ、これと整合性をもって、検討する。」こととされています。この国家公務員の労働基本権の在り方については、安倍総理から、多岐にわたる課題があることから、これまでの経緯なども踏まえ、引き続き慎重に検討する必要があると答弁をされています。ですから、消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権の在り方については、国家公務員についての動向を踏まえ、関係者の御意見をよく伺いながら対応する必要があると考えています。
しかしながら、今委員から例示されましたようなあってはならないことが続いてはどうしようもございませんので、今回設置させていただきました検討の場におきまして、それらの事例も踏まえて、まず発生防止対策と、仮に発生してしまった場合に適切に対応する体制の在り方についてしっかりと検討を進め、実行してまいります。
山下よしき 実態調査を踏まえて検討して対策を取るというのは当然なんですが、その際、今消防職員自身に団結権を認められておりませんけれども、広く公務員の職場で労働組合は活動しておりまして、当然ながら消防職員の実態もいろいろ聞かれているわけですね。その労働組合の皆さんから、このパワハラについていろいろな問題提起がずっとされてきた。そして、いよいよ実態調査をしなければならない段階に来ていると。
ですから、この調査を踏まえて対策を検討する際にはこうした労働組合の皆さんの意見も是非聞いていただいて、そして、本当にあってはならない、どんなに階級制があって過酷な訓練をする職場だとはいえ、こんな、私、これ聞いて読み上げるだけでももう体が震えるぐらいの怒りを覚えるような職場の実態があるわけですから、これをずっと告発し対策と改善の方法を提起されてきた労働組合の皆さんの意見もしっかり聞いて、これ本当にいろんな力を合わせて根絶するために総意を結集する、総力を結集する必要があると思うんですが、その点、御検討いただくべきではないかと思いますが。
大庭次長 この検討会におきましては、全国消防長会それから有識者の方々等で構成をいたしておりまして、ただ、やはり若手の消防職員の御意見もいろいろお伺いした方がいいということで、オブザーバーとして若手の消防職員の方々に何人か来ていただきましてこの検討会に参加していただくことを考えております。
山下よしき 大臣、もう労働組合でずっと毎年提起されているわけですね、この問題は。いろいろ経験を蓄積されておりますから、団結権付与の直接課題にならないかもしれませんが、パワハラをなくすという点でいうと、そういう皆さんの知見、問題意識もしっかりと私は参考にされることは絶対必要だと思いますが、いかがですか。
高市総務相 私も定期的に、自治労の方を始め労働組合の代表の方々と、処遇改善などの御要望も含めて会談の機会を持たせていただいております。就任以来、毎年やらせていただいております。
今回も、せっかく検討するんですから、できるだけ幅広い方々の御意見を承りたく、労働組合の方にも来ていただいてよろしいかと思いますので、しっかりと対応させていただきます。
山下よしき 是非そういう機会をつくっていただきたいと思います。
そもそも、消防職員の団結権は憲法28条で全ての労働者に保障されている労働基本権の一部であり、基本的人権です、繰り返しますが。それから、国際的にもILOから、公務員の労働基本権の回復、消防、刑事施設職員への団結権、団体交渉権の完全な付与を行うように、もう40年前から10回の勧告を受けております。ILO第87号条約批准国百二十二か国中、消防職員に団結権が認められていないのは現在日本ただ一国のみでありまして、これは極めて不当な事態、遅れた事態になっております。
アメリカは、消防職員、警察官、これは団結権と団体交渉権が認められております。争議権はありませんが、団結権が認められたら上司と部下の間に対抗関係が生じ、一糸乱れず任務を遂行できないという状況はアメリカでは生じておりません。
いろんな疑問がもうこれまでも繰り返し出されておりましたけれども、そんな心配はないと、2012年、当時の川端達夫総務大臣に私この問題を提起したんですけれども、いろいろな心配について、団結権を付与したことでこのチームワークが乱れるようなことはないだろうということを整理して答弁されておりました。
こういう到達点もしっかり踏まえながら、パワハラの根絶という点でも生きるように団結権の回復、消防職員に対するですね、改めて求めて、質問を終わります。