ダムの今後の在り方 住民と一緒に考えることができるようにすべき 
2017年6月6日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 総務省は、様々な社会資本の維持管理等について、行政監察、行政評価・監視を行っています。2001年には水資源に関する行政評価・監視を行って、その中でダムについても触れています。

 そこで、今日は熊本県を流れる球磨川水系のダムの問題を取り上げたいと思います。

 球磨川水系のダムといいますと、かつて最大の支流であります川辺川に建設が計画されていた川辺川ダムが住民運動の高まりなどによって中止されたことはよく知られております。さらに、今注目されているのは球磨川中流の荒瀬ダムの撤去事業であります。

 荒瀬ダムというのは、熊本県が設置、運営していた発電用のダムですが、洪水の多発、それから水質の悪化などが問題となって撤去を求める住民運動が起こって、2010年、県が撤去を決断いたしました。2012年から撤去工事が始まって、今年度中に終了することになっております。

 先月、私、現場を見てまいりました。幅100メートルは優に超える河川に、既にダムの姿はありませんでした。もうきれいさっぱりなくなっておりまして、対岸の岩盤に残ったダムの形跡を見て、ここに巨大なコンクリート構造物があったんだなということを想像するしかないぐらい、もうきれいになくなっておりまして、ダムが撤去されたために上流と下流がつながって自然な流れが生まれておりました。こんな大きな構造物を撤去することができるんだなと私感嘆いたしましたが、住民の方の話を聞きますと、洪水の危険が減り清流がよみがえったと、大変うれしそうに、また誇らしく語ってくれました。

 国交省に伺いますが、ダムの撤去というのは全国でも初めてと聞きましたが、荒瀬ダムの撤去について国交省としてどう評価されているんでしょうか。

根本幸典(国土交通大臣政務官) 荒瀬ダムは、熊本県企業局所有の発電専用のダムであり、河川管理者である当時の建設大臣の許可を受けて昭和30年に熊本県が設置し、運用してきた施設です。近年、発電の事業継続性などの観点から荒瀬ダムの存続について議論され、最終的には、先ほどありましたように、平成22年に熊本県において、水利権の更新に当たり漁協などの関係者の同意を得ることが非常に困難であるなどの理由により用途廃止を行うという判断がなされたところであり、現在、撤去のための工事が行われているものと承知しております。

 なお、河川区域内に許可を受けて設置された許可工作物について、その用途が廃止された場合には、許可を受けた者が撤去の許可申請を行った上で、自らの負担により撤去を行うのが原則であります。

山下よしき ありがとうございました。

 用途が廃止された場合には撤去が原則ということでありましたが、さらっとおっしゃいましたけど、私はこれ非常に重要な原則だと思うんですね。設置者だけではなくて、河川の周辺に住んで河川を利用する住民も参加してダムの存廃を決めていくことが今後非常に大事だと私は感じております。そうしてこそ、ダムによらない治水、あるいは住民参加の河川管理など、新しい河川行政が具体化されていくんだと思っております。

 総務大臣に伺いますが、この熊本県が住民の意見を踏まえて撤去することを決めた荒瀬ダム、もう撤去されたんですけれども、私は住民自治の面からも積極的な意義があると思いますが、大臣の御感想、いかがでしょうか。

高市早苗総務大臣 ダムの設置、管理や撤去については総務省の所管外でございますので、個別の事例に係る評価や適否については私から答弁し難いということについては御理解を賜りたいと存じます。

 一般論としては、地方公共団体において、住民の皆様のお声をよく伺った上で行政運営を行うということは非常に重要な点であると考えております。

山下よしき 荒瀬ダム撤去の現場を案内していただいた住民の方が、もう一つ見てほしいダムがあるんだといって案内いただいたのが、荒瀬ダムから十キロ上流にある瀬戸石ダムというダムであります。瀬戸石ダムは1,958年に造られた、これも発電用のダムでありまして、現在、電源開発、Jパワーが管理をしています。沿川の住民の皆さんから、瀬戸石ダムの上流で洪水被害が起こっている、水質も悪化したなどの声が出ております。聞きますと、瀬戸石ダムは、国交省が二、3年ごとに行う定期検査による評価でA判定が続いているとのことでした。

 伺いますけれども、国交省によるダムの定期検査とはどういう検査か、またA判定とは何か、どういう対応をすることが求められているのか、それぞれ説明してください。

野村正史(国土交通省水管理・国土保全局次長) お答えをいたします。

 国土交通省が行うダムの定期検査は、国及び水資源機構が管理しているダム、それから国が許可した発電事業者等が管理している利水ダムを対象として、ダム検査規程に基づき、河川管理者としての立場から、ダムの維持、操作、その他の管理の状況について定期的に検査を実施するものでございます。

 このダムの定期検査結果において、ダム及び当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応を必要とすると判断された場合には、評語としてAを付するとともに、その旨をダムの設置者に対し指摘事項として通知しております。これがすなわちA判定と言われるものでございます。

 なお、指摘事項については、ダム設置者から対応方針につきまして報告を求めることとしておりまして、瀬戸石ダムにつきましても、ダム設置者であります電源開発株式会社から定期検査に係る指摘事項の通知に対して、堆砂除去のための対策を実施する旨、その都度報告を受けているところでございます。

山下よしき 瀬戸石ダムについては、今おっしゃったように、ダム及び当該河川の安全管理上重大な問題があり、早急な対応が必要とA判定されておりますが、具体的な問題事項として、計画堆砂形状より堆砂が進んでいる地点があるため洪水被害が発生するおそれがあるというふうに指摘されております。

 堆砂とは何か、洪水被害にどういう影響があるのか等について説明してください。

野村次長 ダムの堆砂とは、ダムの貯水池に流入した土砂が堆積することをいいます。ダムは、計画段階において、一定期間に想定される堆砂容量を確保しておりますが、計画堆砂容量を超えることが見込まれる場合や、貯水池の上流部に堆砂が生じて上流の河川に洪水被害が発生するおそれがある場合には堆砂対策が必要となります。

 堆砂対策といたしましては、堆砂量や進行状況に応じて、例えば、貯水池内に堆積した土砂を掘削する対策、あるいは、ダムの上流に貯砂ダムというもう一つのダムを設置して、貯水池に土砂が流入する前にそこに土砂をためて、それを掘削して効率的に排除する対策、あるいは、貯水池を迂回する排砂トンネルの設置により土砂を貯水池に入れずにダム下流に流す対策、あるいは、ダム本体に土砂を吐くゲートを設置する対策などがございます。これらの堆砂対策につきましては、必要な対策をダムの設置者が検討して実施することになります。

 以上でございます。

山下よしき 今説明ありましたが、資料1枚目に、この堆砂のイメージについて、これ、瀬戸石ダムを撤去する会の方から提供された資料を掲示しております。これはイメージです。しかし、今御答弁あったように、ダムのない川は堆砂は基本的に発生しません。ダムを造れば、それによって水位が上昇します。それだけではなく、そこに堆砂が生じますと更に水位が上昇して、それが上流部で起きれば、先ほどの御答弁にあったように洪水の危険があるということで、いろいろな対策をしなければならない、それはダムの設置者がしなければならないということでありましたが。

 もう一つ聞きますが、この瀬戸石ダムは、2002年以来7回連続でA判定、安全管理上早急な対応が必要と、しかも内容は堆砂ということがずっと繰り返し指摘されております。7回連続A判定のダムはほかにどのぐらいあるんですか。

野村次長 今御指摘ございました7回連続でA判定のダム、これは確認できる範囲内ではほかにはございません。瀬戸石ダムだけでございます。

山下よしき 今御答弁ありましたように、ほかにはないんですね。全国でここだけが7回連続、もう十数年にわたって指摘されながら、堆砂の除去が進まずに来ているということです。こんなこと許されるんですか。国交省。

野村次長 先ほど御答弁申し上げたとおり、やはり河川管理者の立場として、いわゆる河川管理者以外が設置するいわゆる利水ダム等についても、そこはやはり治水上の観点も含めて適切に維持管理されることが必要であると考えておりまして、そのために、定期検査を行って、そして指摘を行って、そしてその指摘に対してどのように対応するかということの報告を求めておりまして、先ほどお話し申し上げましたとおり、都度、電源開発株式会社からはこのような堆砂対策を実施しますという報告をいただいておりますので、私どもはそれを着実に実施していただくように注視しているところでございますので、決して、そのままたまるに任せるということが私ども許容しているところではございません。

山下よしき 資料2枚目に、国交省提出の瀬戸石ダム堆砂状況調査表に基づいて作成した表とグラフを示しています。左側の表を見ていただきたいんですが、例えば2002年度は堆砂量六十三万三千立米、それから2009年八十五万八千立米、2016年百二万七千立米となっております。これ、数字間違いありませんね。

野村次長 特に堆砂量につきましては、ダム設置者の方から毎年報告を求めておりますので、今ここに資料としてお示しした数字、基本的には報告のあった数字と一致していると思っています。

山下よしき それで、グラフにしたのが右なんですけれども、見ていただいたら分かるように、もう一貫して増え続けております。堆砂容量というのを囲んで載せておりますが、これは、ダムの計画時に100年経過したらたまっているであろう堆砂の量として堆砂容量が設定されているんですが、七十六万九千立米であります、この瀬戸石ダムの場合はですね。ところが、これを2009年にもう優に超えちゃいました。50年しかたっていないのに100年たってたまるはずの堆砂量を超えちゃったと。その後も増え続けておりますから、これ非常に危ないということが言えるわけであります。

 それで、結局、いろいろ先ほどから除去もしているんだということなんですが、計画、対応もしているんだと。確かに除去はされているようです。しかし、住民の方によりますと、少しぐらい除去しても、それ以上にまた土砂が流入して堆砂がたまるので、全然減らずにこういうふうに増え続けてきているんだということでありました。

 資料3枚目に、洪水時の被害を写真で示してあります。この右上は、河床が堆砂で大きく上昇している写真であります。左下は、洪水時、道路が冠水している写真であります。県道や生活道路が冠水すれば、学校や仕事にも行けないという状況が生まれております。瀬戸石ダムの上流で一番洪水が頻発しているのが芦北町というところでありまして、最近だけでも2008年6月、2010年6月、2012年7月に洪水被害が起こりました。床上浸水、車の水没、道路の冠水、集落の孤立。2012年の7月では、道路が2日間つかって、葬儀の予定があったけれども、車が使えないので、ひつぎが運び出せずに葬儀ができなかったということも起こったと聞きました。

 住民の生の声を紹介したいと思いますが、10年前に宅地のかさ上げをしてもらったが、最近の増水時はかさ上げした地面から三十センチのところまで水が来ると。近年、各地の集中豪雨を見ると、このかさ上げの高さで大丈夫か心配だ。あるいは、2年に1回程度は球磨川があふれ、道路が冠水する。自分は何度も肥薩線、すぐそばに鉄道が通っているんですが、その線路の上を歩いて帰ったと。急病人が出たらどうするのかとか、堆積土砂、必要なところが手付かずだと、撤去すべきところを確実に撤去するように国交省がダム管理者のJパワーに強く指導してほしいなどの声が出ております。

 国交政務官に伺いますが、住民はJパワーに堆砂の危険を指摘し、除去を要請してきましたけれども、このように堆砂量が増え続けて、このような被害が繰り返し出ております。住民の声、どうお感じでしょうか。

根本政務官 瀬戸石ダム周辺においては、昭和57年に家屋の浸水被害を伴う洪水が発生をいたしました。このため、瀬戸石ダムの設置者である電源開発においては、ダム堆砂の影響により浸水被害が生じるおそれのある地域について、昭和57年洪水クラスの洪水が再び発生しても家屋の浸水被害が生じないよう、堆砂除去に加え、平成8年から家屋のかさ上げや移転補償、田畑の浸水地役権の設定などを実施しており、平成27年までに完了したところです。

 また、現状においても、瀬戸石ダム上流の県道などの一部区間では、平成24年や平成28年など近年でも浸水が生じております。

 国土交通省といたしましては、引き続き堆砂対策が必要な状況であると認識しており、堆砂の状況を的確に把握しながら、電源開発において適切に堆砂対策が進められるよう注視しつつ、必要に応じて指導、助言を行ってまいります。

山下よしき 必要に応じて指導、助言ということなんですが、こういう状況が残念ながら続いておりまして、グラフで示したように堆砂は減っておりません、増えております。危険がますます増えていると言わなければなりません。

 ですから、私は、国交省としてJパワーに速やかに堆砂の除去を行うよう強く指導すべきではないかと。その際、どこの堆砂が、河道が曲がっているところにたまっているこの堆砂を一番最初にどけなければ、ここから越水するぞということも住民の皆さんが一番よく御存じですから、よく住民の意見を聞いて堆砂を、速やかに実施する、そういうふうに強く指導すべきだと思いますが、いかがですか。

野村次長 先ほどもお答えいたしましたとおり、電源開発におきましては、毎年の掘削量を明示した計画を策定をし、特に平成27年には更にそれを強化する形で新たな計画を定めて堆砂の除去を実施しているところでございまして、私どもとしましては、まずはその計画に基づき、電源開発におきまして堆砂対策が適切に実施されるよう、まず状況を的確に確認をしていくということから始めたいと思います。

 そして、今先生御指摘のように、住民の声にもきちんと耳を傾けるということでございますけれども、もちろんこれまでも電源開発におきましては住民の声を聞きながら対策を進めてきたものと承知をしておりますけれども、国交省といたしましても、河川管理者としての立場から引き続き、やはり地元住民のそこの地域に住んでおられる方々が分かっておられるということもありましょうから、そういったことで地元住民など地域の声に耳を傾けながら堆砂対策を進めていくよう、電源開発に対しまして技術的な助言をしっかりと行ってまいりたいと思っています。

山下よしき 是非政務官に聞きたいんですけど、こういう状況がずっと続いておりまして、対策するんだ、するんだと言いながら、やっているんだけれども全然追い付いていないというのがもう実態なんですよ。今それを注視するという御答弁でしたが、注視していたらますます大きな被害が続発することにならざるを得ないと思います。

 私は、もうこれ以上対策が滞るならJパワーにダムの管理運営能力ないと言わざるを得ないんですが、そういう厳しい立場から強い指導を、政務官、やるべきじゃありませんか。

根本政務官 国土交通省においては、定期検査の結果や毎年の堆砂量測定の結果を踏まえ、これまでも電源開発に対して適切な堆砂対策を行うよう指導、助言に努めてきたところです。また、電源開発においても、逐次堆砂対策を強化してきており、近年の堆砂状況を踏まえた対策は講じられてきたものと考えております。

 なお、瀬戸石ダムについては、本年5月に国土交通省において定期検査を実施し、現在その結果を取りまとめているところです。その検査結果や本年電源開発から報告される予定の直近の堆砂量の状況を踏まえ、引き続き電源開発に対し指導、助言を行ってまいります。

山下よしき 住民の声を紹介しましたから、それを重く受け止めていただいて、政治のやはり役割が大事だと思いますから、今政務官うなずいておられますので、強い指導を期待したいと思います。

 最後に、経済産業省に伺います。

 私は、Jパワーに対して、発電に係る経費、すなわち人件費だとか維持費だとか、それから堆砂の除去費もこれに含まれると思います。それから、売電先、それによる収益などの情報を住民に提供させて、この瀬戸石ダムの今後の在り方について住民と一緒に考えることができるようにすべきだと思いますが、いかがですか。

小澤典明(経済産業大臣官房参事官) お答えいたします。

 個別のダムあるいは発電所の設置、運営につきましては、基本的には事業者が判断すべきものと考えてございます。

 その上で、そういった設置、運営に当たっては、これは電気事業法に基づく法令上の義務付けといったことはございませんけれども、地域の住民の皆様の理解を得られるよう取り組むことは非常に大事だというように認識しております。そのために必要な取組につきましては事業者において適切に行われるべきものと考えております。

 実際に、瀬戸石ダム発電所につきましては、事業者である電源開発が、ダムの、発電所の状況に関する情報提供、あるいは住民の皆さんの声をお聞きする、そういった理解活動、さらには、先ほど国交省の方からもございましたが、堆砂の土砂対策など、こういった活動をやってきているところでございます。

 引き続き、こうした努力が継続していくこと、そういったことが大事かというように思っております。

山下よしき 終わります。

 

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。