「誰もが8時間働けば普通に暮らせる社会こそ、国民が求めている」
今月4日の参院本会議で山下さんは、「働き方改革」一括法案は過労死を促進するとして廃案を求めました。月100時間の残業を容認し、労働者を死ぬまで働かせても企業の責任が問われない残業代ゼロ制度を導入する――。
無念を胸に刻み
こんな法案を出した安倍政権に気迫の追及をする山下さんにとって労働・雇用問題はライフワークです。
「国会で質問するときは働く人たちの人生を背負うつもりでいつも臨んでいます」
NHK記者・佐戸未和さんの過労死事件を参院総務委員会でとりあげた昨年12月、質問原稿の隅にこう記しました。“未和さんの無念を胸に刻んで”
「質問原稿の隅に書くのは政府との論戦に負けないよう自分を奮い立たせるためです」
国会で問題をとりあげるため実態調査に足を運びます。忘れられないのは11年前のこと。登録型派遣や日雇い派遣の実情を調査しようと、千葉県市川市を訪ねました。朝6時、集合場所に次つぎやってくる青年から直接声を聞き取りました。
“集合場所から派遣先までトラックの荷台に積まれて運ばれた”“冷凍庫で何時間も作業するのに手には軍手をつけるだけ”“好きな人ができても付き合ってといえない。登録先から仕事の連絡が来るのを待つ不安定さでは幸せになれない”
日雇い原則禁止
「こんな働かせ方を若者たちにさせていてはこの国に未来はない。政治の力で改めるべきだ」。山下さんは聞きとった声を政府に突きつけて質問。舛添要一厚労相(当時)は「先進国として改善していかないといけない」と答えました。その後、労働者のたたかいを力に日雇い派遣は原則禁止になりました。
「労働者派遣法の抜本改正ではありませんが、一歩前進です。たたかってこそ道は開ける。人間らしく働けるルールをつくりたい。そのために多くの人たちと力を合わせたい」
空調機器大手ダイキンエ業が2010年、200人の期間社員を雇い止めにしながら、新たに200人余の期間社員を雇い入れました。「仕事は継続しているのに労働者を細切れで入れ替える。許されるのか」。山下さんは国会で告発しました。
そのとき同社に雇い止めにされ職場復帰を求めてたたかった青山一見さんは語ります。
「山下さんはたいへん熱く行動力のある人です。私たちが争議を始めてすぐ調査に来ました。親身になって話を聞き、国会でとりあげてくれたことは大きな励ましになりました。一緒にたたかう仲間のようでした」
(つづく)