小中校のエアコン電気代–総務相が「適切に措置」 と答弁 法治主義に反する–辺野古「執行停止」批判 
2018年11月22日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 昨日の質問通告と順番変えまして、まず、民主主義と地方自治に関わる重大問題について質問します。

 9月30日、沖縄県知事選挙で辺野古新基地建設反対を掲げる玉城デニー氏が、相手候補に8万票の大差を付けて勝利いたしました。沖縄県民の揺るがぬ民意があらためてしめされる結果となりました。

 ところが、その直後、沖縄防衛局は、沖縄県による埋立承認撤回の処分に対し執行停止を申し立て、10月30日、国土交通大臣は、行政不服審査法の規定によりその効力を停止すると決定いたしました。玉城知事は強い憤りを禁じ得ないとコメントされましたが、そもそも行政不服審査制度をこのように用いていいのかということが問われております。

 資料1枚目に行政不服審査法の抜粋を載せておきました。第1条、この法律は、行政庁の処分に関し、国民が簡易迅速に不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図ることを目的とするとあります。要するに、国民、すなわち一般私人が行政に対して裁判を起こすにはお金も時間も労力も必要となり、泣き寝入りとなりかねないので、簡易迅速に国民の権利を救済するためにこの制度があるということであります。

 したがって、これ本来、国の機関がこの制度を用いることはできないはずです。適用除外にするべきなんです。ただ、国の機関なら全ての場合この制度の適用除外になるかというとそうではないと。

 この法律7条2項にどういう場合適用除外となるかについて明記されてあります。傍線引いたところですが、国の機関がその固有の資格において当該処分の相手方となるものについては、この法律の規定は、適用しない。つまり、国の機関が固有の資格において行った事務事業に対する行政処分については、行政不服審査制度の適用はされないということであります。

 そこで問題になるのが、この行審法のいう国の、固有の資格とは何かということなんですが、資料2枚目に、「逐条解説 行政不服審査法」、2016年4月総務省行政管理局発行より当該部分を抜粋いたしました。傍線引っ張っています。

 固有の資格の概念は、一般私人が立ち得ないような立場にある状態を指すものとされる。なお、どの処分について固有の資格を認めることができるかどうかの判断はおおむね①及び②のようなメルクマールで判断されることになるとして、①は処分の相手方に着目したメルクマール、基準が述べられております。処分の相手方が国の機関等に限られているケースは、固有の資格に当たるものと考えられる。例えば、地方公共団体による地方債の発行はこのケースに当たり、該当し、固有の資格に当たると総務省は説明しております。

 一方、公有水面の埋立ては、国又は地方公共団体に限らず民間事業者も行う場合があるのでこのケースに該当しないと国交省は判断していると思われます。

 そこで、②は事務事業の性格に着目した基準を示しております。傍線引っ張ってあります。処分の相手方が、国の機関等に限られていない場合であっても、当該法令上、当該処分の相手方に係る事務事業について、国の機関等が自らの責務として処理すべきこととされている又は原則的な担い手として予定されているケースについては、当該法令に定める制度において国の機関等は、その行政主体たる地位が特に着目されているものと考えることができ、一般私人が行う場合が排除されていないといっても、一般私人が任意に行う場合とは事務事業を実施する背景が異なることから、一般には固有の資格に当たるものと考えられるとしております。大変大事な基準だと思いますが。

 そこで、今日は国土交通副大臣に来ていただいておりますが、この②の基準に照らして、防衛省沖縄防衛局が米軍新基地を建設するために公有水面を埋め立てる事業が固有の資格に当たるものではないと判断した理由を述べてください。

大塚高司国土交通副大臣 お答えをいたします。

 行政不服審査法第2条におきまして、審査請求をすることができる者については、「行政庁の処分に不服がある者」と規定をしておるところでございます。

 沖縄防衛局のような国の機関であっても、こういう処分を受けたものと言える場合におきましては、一般私人と同様の立場で処分を受けたものであって、固有の資格、すなわち一般私人が立ち得ないような立場で撤回を受けたものではないと認められることから、審査請求をすることができると解釈をされます。

 この点、前回の承認取消しの違法性が判断されました平成28年の最高裁裁判におきまして、判決におきまして、承認の取消しが行政不服法第2条の処分であることを踏まえた判断を行っております。今回の承認の撤回も、埋立てをなし得る法的地位を失わせる点で承認の取消しを何ら変わらないことなどから、沖縄防衛局は行政不服審査法第2条の処分を受けたものと言えます。

 したがって、沖縄防衛局は、一般私人と同様に、今回の承認の撤回については審査請求ができるということで判断をいたしました。

山下よしき 答えていないんですよ。

 最高裁の判決は、処分に当たると言っているだけなんですよ。しかし、処分に当たっても、それが固有の資格に当たるかどうかの基準に照らして判断しなければなりません。その処分の相手方、つまり沖縄防衛局の行った事務事業の性格が固有の資格に当たるかどうか判断しなければならないんですね。

 この②の基準に照らして、そう判断、当たらないと、固有の資格に当たらないと判断した理由を聞いているんですが、処分に当たるとしか今言っていないんですよ。もう1回言ってください。

林俊行(国土交通省水管理・国土保全局次長) お答えいたします。

 今ほど大塚副大臣の方からご答弁をさせていただいたとおりでございますけれども、平成28年の最高裁判決におきましては、前回問題になりました辺野古の埋立承認の取消しにつきまして違法性が判断をされておりますけれども、その際には、この埋立承認の取消しが行政不服審査法2条の処分であるということを踏まえた判断を行っております。そのために、今回の承認の撤回も埋立てをなし得る法的地位を失わせる点では承認の取消しと何ら変わらないということですので、沖縄防衛局は行政不服審査法第2条の処分を受けたものと解釈をしております。

 したがいまして、沖縄防衛局については、一般私人と同様に、今回の承認の撤回について審査請求ができると判断をいたしました。

山下よしき 7条2項を私、しめして、7条2項の判断が求められる、その基準はメルクマールに逐条解説で書いていますよと。じゃ、このメルクマールにのっとって、なぜこれが固有の資格に当たらないと判断したのかを聞いているんです。その答えはありません。

林次長 委員ご指摘のメルクマールについて申し上げますと、②の事務事業の性格ということでございますけれども、公有水面埋立法の免許あるいは承認の対象にしておりますのはあくまでもその公有水面の埋立てでございまして、このことにつきましては、国でも、あるいは地方公共団体など行政機関でありましても、また一般私人におきましても、免許なり承認を取らないと埋立てを行うことができないという意味では同様であると考えております。

山下よしき 答えになっていないです。それは①なんですよ。国だけではなくて、一般私人、民間事業者も埋め立てることができる、取り消されれば埋め立てることができなくなる、それは同様だという場合は①なんですよ、固有の資格じゃないと言うんだったらね。しかし、その上に、処分の相手方が国の機関に限られていない場合であっても、その事業、事務の性質が国の機関等が自らの責務として処理すべきこととされているということであれば、これは固有の資格に当たると考えるべきであると、こう書いてあるんですよ。その判断していない。

 元々この今回の埋立予定水域は、キャンプ・シュワブに隣接した水域ですので、日米安保条約6条に基づく地位協定により米軍に提供された水域なんですよね。米軍提供水域です。ここを埋め立てるには日米両政府の合意が必要でありまして、その合意を前提に沖縄防衛局は公水法上の埋立申請を行って、一連の基地建設のための事業を遂行しております。

 日米両政府の合意を得て、そして米軍提供水域を米軍基地を建設するために埋め立てるなどという行為が、この性格が一般私人にできるはずないじゃありませんか。国以外にできるはずないじゃありませんか。だから、当然そういう内容に照らして、性格に照らしてこの②の判断基準にのっとれば、私は、これは明らかに固有の資格に当たるとならなければいけないと思うんですが、当たらないとした理由を言ってください。

林次長 繰り返しになって恐縮でございますけれども、私ども、辺野古の基地云々というのはちょっと所管外でございますので、お答えをする立場にはございません。

 公有水面埋立法の対象にしております行為、これはあくまでも公有水面の埋立てという行為でございますので、その点につきましては、特定の事業者が、責務であったり、あるいは特定されている、この人しかできないといったようなものではないというふうに考えておりまして、そういう意味でお答えをさせていただきました。

山下よしき 結局、この②を無視しているということですよ。全く無視している、形式上だけ判断してね。違いますよ。事の性格からいうと、これは固有の資格に絶対当たると。

 その判断を、じゃ、米軍基地のために公有水面埋め立てるという事業、民間事業やったことありますか。そんな申請出ましたか。

林次長 これまでそういったケースはないと思います。

山下よしき ないんですよ。

 だから、これはしっかり、私が言いたいのは、行政不服審査法によって執行停止を決定したと言いながら、行政不服審査法の判断基準を全く無視している。これは法治主義に反しますよ、こんなことは。こんな無法な国交大臣の決定は、私は取り消すべきだと思います。

 委員長に一つ提案いたしますが、今回の執行停止に対しては、多数の行政法学者が異議を唱えておられます。委員会として、そうした方の意見を聞く機会を設けるよう提案いたしたいと思いますが、ご検討ください。

秋野公造総務委員長 後刻理事会にて協議いたします。

山下よしき 次に、この夏の猛暑により児童生徒が熱中症で亡くなりました。あってはならないと、小中学校の教室や体育館に来年の夏までにエアコン設置を求める声と運動が高まって、補正予算に設置のための特例交付金が盛り込まれました。

 この問題で、長年運動してきた新日本婦人の会の皆さんが、この特例交付金を活用してエアコン設置をと全国各地の自治体に要請したところ、多くの自治体が歓迎し、積極的にエアコン設置の申請がされております。

 同時に、設置に伴う不安も出ております。その一つがランニングコスト、電気料金の問題です。既にエアコンを設置している学校でも、節約のために室温が三十度を超えることがあるとか、電気使用量が一定量を超え、料金が上がることを知らせるデマンド警報が鳴ると、校長先生が各教室の冷房を切って回っているという実態があります。

 総務大臣、せっかくエアコンが設置されても、これでは子どもたちの命を守り切ることはできません。勉強に集中できる環境をつくり切ることもできません。

 2点、提案いたします。一つは、エアコンの運用に伴う電気料金の増額分、普通交付税で措置すべきではないか。二つ目、その際、既設の電気料金を調査することになると思いますが、先ほど述べたような、節約のために不10分なエアコン運用となっている学校もあることを踏まえ、必要な料金を正確に反映すべきではないか。以上、いかがでしょうか。

石田真敏総務大臣 今まで公立小中学校の学校運営に要する経費につきましては、光熱水費を含め、普通交付税において措置をしています。しかしながら、冷房設備に係る電気代については、冷房設備の設置率が低かったことから、これまでは光熱水費に積算されていなかったわけでございます。

 この平成30年度の補正予算におきまして、全ての公立小中学校に冷房設備を設置するためブロック塀・冷房設備対応臨時特例交付金が計上されたことを踏まえまして、平成31年度より、冷房設備に係る電気代について、普通交付税により措置をすることを検討いたしております。

 続きまして、その普通交付税措置の検討に当たって調査をするかというお話でございました。

 公立小中学校のうち標準的な規模の学校で冷房設備設置率が70%以上の学校約千五百校を抽出し、冷房設備に係る電気代をただいま調査をいたしているところでございます。この調査結果を踏まえまして、全国の冷房設備に係る電気代の所要額を見込み、普通交付税により適切に措置してまいりたいと考えております。

山下よしき 先ほどの質疑でもありましたけれども、来年度は、そういう意味ではエアコンの設置費用あるいはランニングコストで自治体の必要経費はかなり増えると思われます。先ほどの自治体訪問でも、もう結局、交付税の総額は変わらないから自治体の中での予算の奪い合いになってしまうという声も出されておりました。

 そこで、総務大臣、一般財源の総額、交付税の総額、増額する必要があるんじゃないかと。自治体の首長さんも経験されている大臣の決意を伺いたいと思います。

石田総務相 来年度の地方歳出につきましては、国の歳出の取組と基調を合わせつつ、適切に地方財政計画に計上することといたしております。

 その上で、学校の冷房設備への対応も含めまして、地方団体が様々な地域課題に取り組めるよう、新経済・財政再生計画に沿って安定的な財政運営に必要な一般財源総額をしっかりと確保してまいりたいと思っております。

山下よしき やはり必要経費は増えるんですからね、増額を図るべきだと思っております。

 エアコン設置の特例交付金は体育館にも活用できると聞いておりますが、文科省さん、今、体育館の申請、採択の状況、どうなっていますか。

山崎雅男(文部科学大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官) お答え申し上げます。

 公立小中学校等は児童生徒の学習の場であり、その学習環境の安全性を確保することは重要であるというふうに考えております。

 今般の補正予算においては、児童生徒の日々の学習に際して、熱中症を予防し安全を確保する観点からエアコン設置に取り組むこととしているため、まずは児童生徒が最も長時間を過ごす普通教室への設置が最優先というふうに考えております。

 その上で、普通教室以外へのエアコン設置は、執行状況を勘案しつつ、各地方自治体からの要望も踏まえながら、今後状況を見極めていきたいというふうに思っておりますが、現在、各地方自治体の事業量を把握するための調査を取りまとめ、その内容を精査しているところであり、今後、早期の内示に努めてまいりたいと考えております。

山下よしき 何で体育館にエアコンが必要かということですが、猛暑日には子どもたちを外で遊ばせることはできません。したがって、体育の授業は体育館でやることになります。それから、始業式、終業式などの全体行事も体育館で行われますし、もちろん災害のときには体育館が避難所になります。

 総務省に伺いますが、補正予算の特例交付金の枠の大半は、私、文科省に聞きましたら、普通教室で埋まってしまうんじゃないかというふうに聞きました。放置できないんじゃないでしょうか。

林崎理(総務省自治財政局長) お答え申し上げます。

 ただいまの交付金の対象にならないような体育館につきまして、関連する財政措置、私どもの方で一定ございますのでご説明申し上げたいと思いますが、避難所の指定を受けている小中学校の体育館におきましては、避難者の生活環境の改善のために空調設備を整備する場合には、緊急防災・減災事業債というものがございまして、これの活用が可能でございます。

 この緊急防災・減災事業債につきましては、地方債の充当率を100%といたしておりまして、その元利償還金の70%を交付税措置をすると、こういう仕組みでございまして、今年度、30年度の地方債計画におきましては五千億を計上しているところでございますけれども、更なる活用が可能でございますので、防災・減災対策に取り組む自治体におきましては、是非この制度も積極的にご活用いただきたいと私どもとしても考えているところでございます。

山下よしき そちらで付いたとしても、体育の授業にも使いますからね、エアコンは。

 文科省、特例交付金で体育館へのエアコン設置の申請をしたけれども採択されなかった自治体には、今の緊防債が活用できることを周知すべきだと思いますが、いかがですか。

山崎参事官 お答え申し上げます。

 制度を所管する総務省とも連携しつつ、緊急防災・減災事業債を活用して体育館へのエアコンを設置することも可能であるということについて、自治体の周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

山下よしき 11月9日、全国知事会が、被災者生活再建支援制度の充実と安定を図るための提言を発表されました。その土台となったワーキンググループの見直し検討結果報告を見ますと、同制度適用開始20年を迎え、同制度において支障となった事例が出てきている、そのため支援対象を拡大する検討を行ったとあります。

 この支援制度というのは、ご存じのとおり、1995年阪神・淡路大震災以来の被災者の皆さんの粘り強い運動と時々の政治の決断によって法制度が設立され、拡充されてきたものであります。したがって、そういう点で今回の知事会の検討も大変重要な意義を持っていると思いますが、石田大臣、どういうご認識でしょうか。

石田総務相 被災者生活再建支援制度は、阪神・淡路大震災を踏まえて、著しい被害を及ぼす一定規模以上の自然災害が発生した場合に、住宅に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた世帯に対しまして、全都道府県の相互扶助及び国の財政支援を行うため、平成10年度に議員立法により制定されたと承知いたしておりまして、制度創設から20年を迎えまして、近年大規模災害が続いている状況を受けて、被災者支援に向き合う都道府県が制度を運用する立場から、本制度の現状と課題について検討を行い、貴重な提言を行ったものと考えております。

山下よしき 時間参りましたので。

 これまでも、私有財産の再建には支援しないとか過去の災害被災者とのバランスとかいうことが壁になりましたけれども、それを打ち破ってきたのはやはり被災者の実態であります。そういう点で、今回の知事会の調査、提言にはそういう実態がたくさんありまして、それに基づいた新しい制度発展の提言もされております。もう時間が参りましたので、その点については引き続きまた議論したいと思います。

 ありがとうございました。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。