参院選挙制度 自民が党利党略案に固執 参院特委合意形成の意思なし 
2018年07月09日 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。私からも、豪雨災害の被災地にお見舞いを申し上げたいと思います。

 自民党の発議者にうかがいます。
選挙制度は議会制民主主義の土台であり、どういう選挙制度にするのかは、議会を構成する各党会派間で十分議論を重ね、合意を得る努力を尽くす必要があると考えますが、自民党にそういう認識はありますか。

岡田直樹参院議員(発議者) 委員ご指摘のとおり、選挙制度は議会制民主主義の土台であり、いかなる選挙制度にするかは、議会を構成する各党各会派間で十分議論を重ね、合意を得る努力を尽くすことが必要だと認識しております。

 それゆえに、先ほども牧山委員にもお答えを申し上げましたけれども、参議院改革協議会の下、選挙制度専門委員会で全ての会派からの代表者によって計17回の議論を願い、私、専門委員長でございましたけれども、努めて公平公正にその運営を図ってまいったところでございます。

 一例を挙げますれば、共産党委員から、憲法改正でまとめるつもりはないだろうねと、そういうくぎを刺されたこともございました。私は、そういう仕切りをするつもりはございませんと、自民党会派の委員にもそういう憲法改正によらない方法もしっかり考えなさいと、そういうふうに申し上げたこともございます。ご理解をいただきたいと思います。

 しかしながら、先ほどもお話を申し上げたように、各会派の隔たりというのは極めて大きいものがございまして、これはやはり、今の全国比例と選挙区の二本立てか、あるいはそれを一本化するのかと、そこでそもそも大きな隔たりがある、これを埋めるのは容易なことではございません。そこで、次の参議院選挙まで1年近くなった時点で、各派のご了解を得て、各会派の意見を併記する形ではありましたけれども、報告書をまとめて参議院改革協議会で報告をしたところでございます。

 そして、わが党としては、やはりこの選挙制度専門委員会の中の議論でもいろんな論点が煮詰められてきた。一つには、やはり2県合区というものは、これはいろいろ問題が多いと。これをブロック制にせよというご主張と都道府県単位を尊重せよというご主張に、ベクトルは違うんですけれども、2県合区については非常に問題がある、このことは大分、一票の較差の是正と並ぶような認識になってきたというふうに思いますし、また、定数についても、これは参議院の在り方を踏まえてしかるべく考えていく必要があると、定数の増員も避けて通れないと、こういう意見を述べられた会派も複数あったと、このように存じます。

 そうしたエキスを入れて法案を考え、そして、参議院改革協議会にご提示をしたところでありまして、それで代表者懇談会も開かれました。そのとき、山下先生から大変厳しいご質問を自民党にいただいた。その点については、先ほど牧山先生がご提示になった資料にもありますけれども、誠に異例のことではございますけれども、法案提出前に7項目にわたる書面での我々の見解を示させていただくような誠意を尽くしてまいったことをご了解いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

山下よしき 多数党が数の力で自らに都合の良い選挙制度改変を強行するなら、議会制民主主義は壊れます。ですから、今、岡田提案者も述べたように、参議院では、選挙制度改革について長年にわたって、名称は様々ですけれども、議長の下に小会派も含めた全会派の代表による協議の場をつくる努力をしてきたわけであります。

 わが党もその立場から、伊達議長の下での選挙制度改革の協議の場において、一つ、2009年9月の最高裁判決にのっとり投票価値の平等を目指す、二つ、選挙制度の最も重要な見地である多様な民意が正確に議席に配分される制度とする、三つ、参議院の立法機能、行政チェック機能を弱め、民意を削る定数削減は行わないという基本的考え方を明らかにするとともに、具体的には、かつて西岡元議長が提案された、総定数を維持し、ブロックごとの比例代表制とする案をたたき台として議論すべきと提案をしてまいりました。こういう立場に立って各党会派の合意づくりの努力を行ってきたわけであります。

 先ほど、岡田座長の努力は分かりました。では、自民党の姿勢はどうだったのか。

 昨年2月1日、伊達議長主催による初の各派代表者懇談会が開かれて、議長から選挙制度を含む参議院改革が提起されました。その際、わが党など野党のみならず、与党である公明党代表、確か魚住さんだったと思いますけれども、からも、選挙制度改革は憲法改定と切り離して行うべき旨の発言がありました。にもかかわらず、自民党は憲法改定を前提とした選挙制度改定案を提案し、最後までその案に固執し続けたわけであります。

 発議者、自民党さんにうかがいますが、自民党は憲法改定を前提とする案で各党会派の合意を得ることができると考えていたのですか。

岡田発議者 先ほど申し上げましたとおり、参議院改革協議会の下に設置された選挙制度専門委員会で17回の議論が精力的に行われたわけでございます。その中で、わが党、私、専門委員長の立場でございましたので、自民党の委員からは、まずは憲法47条や92条の改正による合区の解消、そして広域的地方公共団体の位置付けということについて、これを各会派の理解を求めたところでございますけれども、それは、先ほど2月1日の申合せの件もございましたけど、私は、そのことの議論自体はこれは憲法審査会で行われるべきものだと思っておりまして、憲法論議については。ですから、しかしながら、この専門委員会で一つの会派が憲法改正による案を主張することを妨げるというのは、これまた言論の自由というか民主主義にもとるところもあるというふうに考えました。

 しかしながら、先ほど申し上げたように、共産党の委員から、そうした、この専門委員会の場を憲法改正で誘導するがごときことはしないだろうねと、そういうお尋ねに対して、私はそういうことはしませんと申し上げたことは、先ほどもご答弁申し上げたとおりでございます。

 そして、そのときに、これも牧山委員にも一部お答えをしたことでございますけれども、憲法改正によらない方法として、制限連記や奇数区の検討ということも含めて公選法改正、これを自民党の4月13日の考え方の中に明記されてございます。憲法改正のみにこだわっていたということはないということを申し上げたいと思います。

山下よしき それは事実経過が違いますよ。様々な案について党内で検討し、専門委員会で言及したということですが、自民党が各派協議の場で提案したのは、正式に提案したのは憲法改定を前提とした案です。今年の4月になってもまだそれ主張していましたから。

 自民党が改憲を党是としていることは私も承知しております。その是非を今問うているのではありません。しかし、参議院の選挙制度改革を行うに当たって、憲法改定に反対あるいは消極的という政党会派が多数存在している下で、改憲を前提とした案を提案し、固執するという姿勢は、私は、客観的には、これは合意形成を図る意思がないと言わざるを得ません。これはもう何遍聞いても同じ答えしか返ってこないでしょうから。

 しかも、参議院選挙制度改革の議論開始とまさに同時期、昨年の5月3日、安倍総理、自民党総裁は、突然、憲法9条の改定を目指すと宣言し、これで国民世論が大きく分かれました。そのような情勢で、改憲が僅か周知期間まで入れると1年余りで実現する可能性はゼロに等しかったし、事実、いまだもってそうなっておりません。なのに、改憲前提の案につい4月まで固執し続けてきたのは自民党だったんですね。私は、全会派の実務者による選挙制度に関する専門委員会が1年間、計17回協議を重ねたにもかかわらず合意を得ることができなかった最大の要因は、最大会派である自民党がこういう改憲案に固執し続けたという態度にあったと断じざるを得ません。

 ところが、改憲の前提の案が破綻しますと、自民党は、専門委員会で一度も提案も議論もしなかった新たな案を、専門委員会が報告を出した後の今年6月になって突然持ち出しました。その内容は、もうるる指摘されているように、2015年改定公選法の附則に盛り込まれた抜本改革には程遠く、党内事情を優先したもので、野党各党が強く反発したのは当然でありました。その案をいきなり法案にして提出して、委員会で審議、採決するというのは、選挙制度改革の手続としては余りに非民主的で乱暴に過ぎると言わざるを得ません。

 各派代表者懇談会等で多くの党から厳しい批判があったことに自民党提案者は胸の痛みを感じるべきだと思いますが、いかがですか。簡潔に、簡潔に。もう経過説明は要りません。

岡田発議者 先ほどの憲法改正に固執し続けたというご批判でございますけれども、今、まさに5月、報告書を出した後の段階では、これは現在の各派の状況から見て現状では憲法改正によることは難しいと、そういうふうに見切りを付けたわけでございますので、固執し続けたということは必ずしも当たらないのではないかと思っております。

 胸の痛みを感じないかというご下問もございました。各派の皆様のお言葉を丁寧に聞き、そして一定のやはり時間の制限もございますから、丁寧に、しかし国民に対する責任を果たしていく、そうした覚悟を胸に刻んでおりますので、胸に痛みはございません。

山下よしき 驚きました。胸の痛みがないと。5月から改めたというのは、5月までの1年間は改めなかったということで、そこに胸の痛みを感じなければ、最大会派としてですね。

 自民党のこういうやり方は今回が初めてではありません。2000年公選法改定でも、参議院選挙制度改革協議会が9回協議を重ね、全会派一致でまとめた合意を突然自民党が踏みにじり、比例代表選挙を非拘束名簿式に変更することを勝手に押し付けてきました。私は当時、協議会の当事者でしたからよく覚えております。選挙制度改革における非民主的で乱暴なやり方は参議院自民党のお家芸だと言わなければなりません。

 ただ、先週末からの当委員会での質疑で、選挙制度改革についての各党会派の考え方がよく分かり、私は聞き応えがあったと思っております。賛否はともかく、各々の哲学がよく出ておりました。唯一、哲学よりも党利党略が優先されていたのが自民党の案であります。

 わが党も5日、総定数二百四十二を維持し、全国十ブロックの比例代表制、非拘束名簿式を提案し、各党にも届けております。せっかく本格的な議論が始まったわけですから、ここで議論を打ち切って自民党案を多数で可決するのは、議会制民主主義にとっても、参議院にとっても不幸なことだと言わなければなりません。

 法案審議を一旦中断し、改めて、各派代表者懇談会など、各党協議で合意を図るべきだと思います。

 石井委員長、法案の審議、採決、一旦中断してすることを理事会で協議していただけますか。

石井浩郎委員長 後刻協議をいたします。

山下よしき 終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。