日本共産党の山下芳生議員は28日の参院環境委員会で、石綿(アスベスト)の飛散防止対策を抜本的に強化するためには大気汚染防止法改定案の内容では不十分だと指摘しました。
冒頭、山下氏は、「泉南アスベスト訴訟」など被害者・家族のたたかいで勝ち取った、「産業の発展を労働者の命と健康より優先させる社会であってはならない」との到達点を胸に行政にあたることが求められていると迫りました。小泉進次郎環境相は「今回の法改正にいたるまでには多くのたたかい、さまざまな歴史があった」と述べました。
山下氏は、改定案で規制対象となった石綿含有成形板(ストレート材)などレベル3建材が古い工場建屋の壁や屋根に大量に使用されており、解体時にアスベストが飛散して、周辺のマンション住民や子どもたちが暴露する危険性が高いことを、調査した大阪市西淀川区の実態から告発。事前調査の対象とするだけでなく、解体時の隔離養生、集じん・廃棄装置の設置も義務化すべきだと提起しました。
小泉環境相が、義務化は考えていないと述べ、規制対象にするだけでも「前進」と正当化したのに対し、山下氏は「アスベスト健康被害の一番の教訓は、国が危険性を知りながら規制権限を行使しなかったこと。今またそれが問われている」と厳しく批判しました。
同法案は、賛成多数で可決。共産党は反対し、修正案を提出しました。
【議事録】
山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
私の地元は大阪です。大阪南部の泉南地域は、かつて全国一のアスベスト産業の集積地で、最盛期は200の工場がありました。その工場の元労働者やその家族、周辺住民が石綿肺や肺がん、中皮腫などを発症した責任は、国が早い時期にアスベストの危険性を認識しながら、適切な時期に製造、輸入、使用を中止しなかったことにあるとして、全国に先駆けてたたかわれたのが泉南アスベスト訴訟であります。
私も、原告の皆さんから直接たくさんの声を聞きました。今日は、資料1に泉南アスベスト訴訟の原告の娘さんの訴えを載せておきました。読み上げます。
私は、原告のHの娘です。母は78歳ですが、石綿肺と続発性気管支炎のため1日中ベッドで過ごしています。母は、40歳のときから15年間、石綿工場で働きながら5人の子供を育てました。男勝りの性格で、職場では1人でリングやカードなどを二役も三役もこなし、Hさんには背中に目があると言われていました。
そんな母が、ここ数年、病状が悪化し、数メートルしか歩けず、入浴はもとより、着替えもトイレも1人ではできません。あの勝ち気だった母が、ひどい息切れとせきの苦しみのため、もうこれ以上の辛抱はできないとか、死んで楽になりたいと訴えます。母は、耐え切れず、救急車を呼んで病院に搬送されたことが何度もあります。週に何度も救急車を呼んだときには、もう呼ばないでほしいとまで言われました。中略。
母の職場は、石綿の粉じんが粉雪のように飛び散り、真っ白で前が見えないほどでした。私も高校生のときに訪ねたことがありますが、床一面に雪のように石綿が降り積もっていました。危ないとは誰も思わず、工場の二階には人が住んでいました。よく母と話すのですが、危険だと知っていれば石綿工場で働くことはありませんでした。泉南には、母のほかにも石綿の病気で苦しんでいる患者や家族の方がたくさんいます。工場周辺に住んでいたり、農作業していて石綿で病気になった方もいます。石綿が危険であると知らされていれば、被害のかなりは防げたと思います。
国は、どうして、石綿が危険だと知っていたのに、そのことを知らせてくれなかったのでしょうか。後略。
これは、2009年6月1日、当時の環境大臣に対する訴えであります。
裁判は長く苦しい闘いでした。いっとき、地裁での勝利判決が高裁でひっくり返されて、私、そのときの判決文、今でも忘れませんけれども、産業、経済の発展のためには国民の生命、健康が犠牲になってもやむを得ないという驚くべき不当判決が下されたこともありました。あのときの原告の皆さんの落胆と怒りは、今も忘れることはできません。
それでも、原告の皆さんは不屈に闘い続け、ついに最高裁の判決では、国は、労働者の生命、健康被害を防止するために、できる限り速やかに、適時にかつ適切に規制権限を行使しなければならない、国が産業発展を優先し、国民の生命、健康を犠牲にすることがあってはならないと明確に高裁不当判決を否定し、アスベストの危険性を知りながら適切な対策を怠った国の責任を認めたわけであります。
小泉環境大臣、アスベスト健康被害を受けた労働者や周辺住民、その家族の皆さんたちの文字どおり血を吐くような闘いによって、産業の発展を労働者の命と健康よりも優先させる社会であってはならないとの到達点を一歩一歩勝ち取ってきた、その到達点に立脚して作られ、一歩一歩前進してきたのが大気汚染防止法を始めとするアスベスト規制立法だと思います。そのことを胸に深く刻んで行政に当たる必要が、私はとりわけ環境省には求められると思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。
小泉進次郎環境大臣 山下先生おっしゃるとおり、産業、経済の発展のために国民の命や健康が脅かされる、ないがしろにされる、そんなことは決してあってはならないと、そういう思いでいます。
今回、アスベストに関する大気汚染防止法の改正を御審議をいただいているわけですが、それ以外の環境行政全般においても、水俣病を原点とする環境省として、そしてまた気候変動を直面する我々として、これからコロナの後の経済社会の再開のときにおいても、決して経済社会の再開のために、国民の命や健康、そして気候危機、この対策がおろそかになってはならないと、その思いで進めていきたいと考えております。
山下よしき 大事な認識なんですが、もう一つ肉声が聞きたいんです、もう一つ。
私は、血を吐くような健康被害を受けた原告や家族、その皆さんの長年にわたる苦しみと闘いがあってこういう到達、今大臣がおっしゃった到達がつくられてきた、それを胸に刻む必要があると、そのことを問うたんですが、その点、いかがでしょうか。
小泉環境相 まさに、環境行政というのは公害との闘いの歴史であると思います。今回の法改正に至るまで一歩一歩歩んできた中には、多くの闘い、そして様々な歴史があったことを踏まえて、前回の改正からあぶり出されてきた不十分なところ、課題、これを乗り越えるために、一歩前進をさせるためにもこの改正があると思いますので、よろしく御審議のほどお願いしたいと思います。
山下よしき 泉南アスベスト訴訟に続いて、全国各地で建設アスベスト訴訟が提起されました。これまでに各地の地裁判決あるいは高裁判決において、国の責任が11度、建材メーカーの責任が6度認められております。もう流れは決まっております。この流れの中で安全衛生法石綿則あるいは大気汚染防止法のアスベスト規制が強化され、今回の改定案につながったと理解しております。
それでは、今回の改定案は十分と言えるのかと。私が大きな問題だと考えているのは、石綿含有形成板など、いわゆるレベル3建材の規制が極めて不十分だという点であります。
そこで、まず環境省に伺いますが、今回なぜレベル3建材を規制対象にしたのか、簡潔にお答えください。
小野洋 環境省自然環境局長 お答えいたします。
いわゆるレベル3建材でございますが、これまで相対的に飛散性が低いということで規制対象としていなかったわけでございますけれども、環境省による調査の結果、石綿含有成形板等についても不適切な除去を行えば石綿が飛散することが明らかになってまいりました。具体的には、文献調査によりますと、レベル3建材の除去等作業現場38か所のうち15か所において作業現場近傍での石綿の飛散が確認されております。そのため、レベル3建材についても、レベル1、2に比べて相対的に飛散性は低いものの、作業時の石綿飛散防止を図るために新たに特定建築材料に追加し、事前調査等の規制対象、規制に追加することとしたものでございます。
山下よしき レベル1、2と比べて飛散性が相対的に低いという言葉がありました。確かにそういう面はあるでしょう。しかし、量はどうかと。これまで1000万トン輸入されたアスベストのうち700万トンはレベル3建材として使用されてきました。私たちの身近に最も多量に存在するアスベストはレベル3建材として存在するわけですね。
具体的に、レベル3建材がどのように存在しているのか、先日、私は大阪市西淀川区の千舟地域を視察してまいりました。資料の2枚目(資料2)にこういう大阪市西淀川区千舟地域の典型的な風景写真を紹介してあります。古い工場建屋と新しいマンションが隣り合わせで混在している、そういう地域なんです。工場建屋の壁に見えているのがレベル3建材、波形スレートであります。この波形スレートが大量に工場建屋の壁とか屋根に使われているのが見えます。
資料3は、この千舟地域に、ではどれほどレベル3建材を使った工場建屋が存在しているか、調査した結果を載せた地図であります。
黄色く塗ったところがレベル3建材、スレート材の屋根若しくは壁が認められたところで、これ、大阪アスベストセンターの皆さんが空からの写真と現地を歩く実地調査を行って、一つ一つ調査して作った地図であります。千舟という狭い地域にレベル3建材の工場建屋が数多く存在しているということが分かると思います。
実はこの地域は、駅が新設されて、JR大阪駅へのアクセスが大変良くなったということもあって、このところ古い工場が次々解体されて新しいマンションが建設されています。当然、マンションには若い世代や子供さんが多く入居し、人口も急増している地域なんです。したがって、心配なのは、こういう古い工場が解体されるときにアスベストが飛散する、それによって若い世帯や子供さんが暴露することであります。
ご存じのとおり、アスベストの疾患は潜伏期間が平均40年と極めて長いですけれども、若い世代や子どもさんにとっては、この長い潜伏期間を超えて、将来大変なダメージを残す危険性があると思います。
今日、もうひとつ、持ってまいりましたのは、これなんですけれども、これは、波形スレートの模型であります(右の写真)。この地域で、千舟でよく使われているレベル3建材、波形スレートなんですけれども、この波形スレートのアスベスト含有量は、重量に対して20%と言われております。これ大きさが30センチ掛ける30センチですので、重量、この1枚だけで1.4キロありますので、この1枚のスレート板にアスベストが280グラム含まれているということになります。
これがそうなんですけど、これはアスベスト、本物ではありません、小麦粉なんですけど(左の写真)。280グラムってこんなもんですよ。すごいずっしりきますよ。
ですから、この小さいスレート板1枚にこれだけのアスベストが含有されている。これが大量に住居、マンション等、隣り合わせで存在して、これから急速に解体作業を行われるという環境にあるわけですね。
では、アスベストのレベル3建材を使った建物の解体作業の実態はどうなっているか。現場をよく知る複数の方から直接話をうかがいました。
今回の法案では、レベル3建材を壊さずにそのままの形状で手ばらしすることが基本になっていますけれども、実際はそんな手間の掛かるやり方ではなくて、この波形スレートというのは長いですから、何メートルもあるスレート材を小さく割って、そしてフレコンバッグに詰め込むという作業になっているそうなんですね。フレコンバッグの大きさは1.5メートル掛ける1.5メートル掛ける1.5メートルの立方体ですから、何メートルもあったら割らなければ片付けることができないんですね。中には、アスベストの危険性を知らないまま、外国人労働者の方なんかがどんどんどんどんこのスレート板を足で蹴って割ったりという光景が間々見られるということになっております。これが現場の実際の実態なんですね。
地域の住民の皆さんに、そういうやり方で、こういう環境でアスベストが解体され破壊されたら、これは暴露の危険が当然出てくるわけですし、こういう工場地帯がどんどんマンションになっているところは全国各地にいっぱいあると思うんですね。
小泉環境大臣、今回、レベル3建材については、レベル1、2と同様の規制は見送られました。しかし、今紹介したような実態に照らして考えるならば、たとえレベル3建材であっても、建物解体時にアスベストが飛散する可能性は極めて高いと。そうすると、暴露の危険性も出てくると。しかも、これからピークを迎えるわけですから、私は、大臣、レベル3建材であってもレベル1、2と同様に、作業実施の届出、それから隔離、養生、集じん・排気装置の設置を義務付ける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
小泉環境相 大変分かりやすく、物を示していただきながらの御説明ありがとうございました。
レベル1、2と今回の新たな規制対象であるレベル3、これを同じように扱うべきではないかということについては、同じような対象としては考えておりませんが、一方で、新設する事前調査結果の都道府県への報告制度の対象とはしています。
この制度を通じて、解体等工事現場を網羅的に把握して、注意喚起、そして立入検査などによって実際に適正な石綿飛散防止措置が行われているか、確認、指導をしてまいります。さらに、作業後の発注者への報告や作業に関する記録の保存の義務付けによって都道府県等の指導の実効性や事業者の適切な作業の担保を図っていくことで行政命令もより積極的に行われるようになるものと考えておりますので、直接罰の対象とはならない行為についても間接罰によってしっかり担保されると考えております。
山下よしき 大臣、本当よく考えてほしいんですよ。
私は今、現場の実態を調査して提起いたしました。もうマンションの隣にこういうアスベスト、レベル3の建材がいっぱい使われて、隣り合わせて建っているわけです。住民の皆さんはそのことを知りません。そういう危険な状態にあることをほとんど知らないです。普通に暮らしています。しかし、だから、知らない間にどんどん解体されているんですね、実際は。
報告させると言っていますけど、どうやって監視するんですか。監視できないですよ。数時間で解体終わりますからね。だったら、ちゃんと漏れないような措置をとらない限り、分からないうちに暴露しちゃうということが特に若い世代と子供たちに起こり得るということを、私は現場を見たらそういうことを感じましたよ。だから、事前の調査の対象にはなっているけど、それ以降隔離もされないという状況でこのレベル3、量は1番多いです。1番身近に存在するレベル3ですから、これ本当にそのままでいいのかと。
先ほど大臣は、環境に由来する健康被害の未然防止が大事なんだとおっしゃったけど、私はこれ、未然防止しなきゃ、これから40年、50年先に今の子供たちや若い世代があのときの暴露で、あのときの解体でということになったら取り返し付かないですよ。そのことを真剣に考えるべきではないですか。
小泉環境相 まさに先生おっしゃるとおり、環境省の最も基本的かつ重要なことは未然防止、それは当然のことであります。そして、このレベル3建材については相対的に飛散性が低い、そして通常の解体で行われるような措置を講じていれば飛散は抑えられる、そういったことも確認をされております。
そういった中で、今回、対象と今までならなかった全ての石綿含有建材を、この成形板含めてその中の範囲に入れると、対象にすると、そういったことによって間違いなく今までよりもこの規制は前進をすると、そういうふうに考えておりますので、もちろん課題は自治体の皆さんへの周知、そして事業者への周知、そういったことはありますが、そこをしっかり進めていく一歩であると考えております。
山下よしき 非常に残念なんですよ。もう私は現場に行って、実際の解体工事のありようも見て、これは単に事前にあるかないかを調べるだけではとてもじゃないけどこのリスクをなくしていくことはできない、そう思ったんですね。やはり、泉南アスベストの一番の教訓は規制権限をちゃんと行使しなかったということですから、今それが問われているんだと思うんですね。
次に行きたいと思います。
大気濃度の測定が見送られたことについて厳しい意見が出ております。この作業現場の場内外で大気濃度の測定が義務付けられなければ、これは被害が発生したとしても原因を特定することができませんし、損害賠償の責任を問うことができません。これは、大防法第1条の目的、事業者の損害賠償の責任にも反するものだと思います。これも、環境省の今回の法改正に当たってのパブリックコメントでは、ちゃんとこの大気濃度の測定を義務付けるべきだという意見が356件に上っております。測定がちゃんと義務付けられれば迅速な体制も整備されると、測定の体制も整備されるという声もありました。
大臣、大気濃度の測定は最も基本的な監視手法であります。技術も既に確定しておりまして、東京都、大阪府、横浜市、さいたま市などでは条例によって実施されております。発がん物質を危険な形で取り扱う作業現場で建設事業者の利益を優先させて濃度測定を実施しないということは、私は環境行政としてはあってはならないと思いますけど、濃度測定、いかがですか。
小泉環境相 今日午前中の答弁でもさせていただきましたが、この大気濃度の測定について、先生御指摘のとおり、自治体の中でも、また諸外国でも義務付けという例があることも承知をしていますが、実際に全国一律でこれを制度化をするということのためにはやはり課題もあります。
その中でも、迅速化に向けた計測装置の開発、こういったことは環境省としてもしっかり取り組んでいかなければいけないということで、全自動測定ができる、そういった装置の研究、これは3か年で支援を進めているところでもあります。
そして、石綿の繊維数のみならずほかの繊維も含めた総繊維数の濃度測定については、民間検査機関における体制整備等を把握しつつ、測定結果の作業管理への活用や早期測定に向けた体制構築といった課題について検討を進めて、これらの取組に加えて情報収集もしっかり行って、この法律の改正が行われました暁には、必要があったときに中央環境審議会に審議もお願いをしていきたいと、そういうふうに考えております。
山下よしき 私は、本来、今回の改正で義務付けたら、義務付けることによって測定あるいは分析の体制も進んでいくんだと、そう考えております。
もう一つ、ちょっと一つ飛ばしまして、今回の改正案で不適切な除去等を行った者に対して直接罰が導入されることになりましたけど、余りにも量刑が軽すぎて、大手元請建設業者なんかには何のブレーキにもならないと言われています。
そこで、私、一つ提案なんですが、建設業法28条の適用という手法があるんじゃないかと。建設業の許可を持つ業者が建設工事を各種法令に違反して施工した場合、28条によって指示、営業停止、建設業許可の取消しができるんですね。加えて、これは公共工事受注などに影響する経営審査事項の評点が下がるということにもなりますから、これは相当な抑止力になるかと思うんですが。
国交省に伺いますけれども、大防法や安衛法、石綿則に違反して不適切な解体工事をした場合、例えば、衆議院の議論でわが党の田村貴昭議員が取り上げましたけれども、悪質だと政府も認めた鹿児島市のデパートの解体工事、お客さんや店員がいる状況の下で不適切な解体がされて、たくさんの方が暴露したと。こういう事例などにはもう建設業法28条適用すべきじゃありませんか。
中原淳 内閣府地方創生推進事務局審議官 お答え申し上げます。
建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたときや、建設業者の役員等がその業務に関して他の法令に違反し建設業者として不適当と認めるときは、御指摘のように、建設業法第28条に基づき監督処分を行うことができることとされております。建設工事現場におけるアスベストの取扱いについて規定する大気汚染防止法等についても、建設業法に規定するこの他の法令に含まれるものと考えているところでございます。
国交省といたしましては、御指摘のような事案に対して、関連する他の法令の適用状況等も含めて個々の事案に係る調査を実施し、事案内容を精査した上で厳正に対処してまいりたいと考えております。
山下よしき 是非やっていただきたいんですね。そういうことがあるぞというのが分かれば、それだけでも抑止効果に、不適正な工事のですね、になりますから、よろしくお願いしたいと思います。
今回の改正案で、建物所有者、中小解体業者への負担が増えます。先ほどの議論もありました。そもそも、解体時に余分な費用が掛かることになった原因は、これはアスベスト建材の使用を推進してきた国に責任があります。ですから、これは是非補助制度をつくる必要があるんじゃないかという提案なんです。
そうでなければ、届出の義務の対象が80平米以上、あるいは解体工事費100万円以上なので、それを下回るように工事の規模を小さくしたりして回避する、届出をですね、ということが行われるんじゃないかと、脱法行為が多くなる危険性もあります。オランダ、ドイツ、韓国では補助金制度を実施している例もありますので、これ検討すべきじゃないかというのが1点。
それから2点目に、同時に、今苦しんでいる人に対して、国と企業の拠出金による救済制度を検討することも当然必要ではないかと思いますが、2点、大臣、いかがでしょうか。
小泉環境相 今、補助金制度、これの創設ということで山下先生から御指摘をいただきました。
午前中も答弁させていただきましたが、今回のレベル3を対象にするということで費用負担が大きく増えるということはないというふうに見込んでいますので、新たな補助制度を創設する必要性は生じないと考えていますが、さっき申し上げたとおり、日本政策金融公庫においてはこの低利融資制度を設けています。そして、一定の負担軽減が図られています。
また、環境省としては、今技術的な支援もやっています。その技術的な支援というのは、例えば防止対策マニュアル、そしてまた、建築物等の解体工事における石綿の飛散防止対策技術講習会、こういったことも開催をしながら、大気汚染防止法に基づいて規制の遵守が徹底されるようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
稲津久厚生労働副大臣 お答えさせていただきます。
建設アスベスト訴訟がございまして、これは最高裁判所で係属中の訴訟5件を含めまして合計16件が係属中でございます。お尋ねの、国と企業のというお話がございましたが、基金等の創設について御指摘いただいていると思うんですが、早期救済等についてのコメントはこうしたことから差し控えさせていただきたいと思います。
厚生労働省といたしましては、業務によりアスベストに被災された方々については、これまで労災保険法による補償、それから石綿救済法に基づく特別遺族給付金により救済を行ってきたところでございます。まずはこうした現行の制度に基づきまして、必要な補償、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
山下よしき 終わります。
【修正案趣旨説明&反対討論】
山下よしき ただいま議題となりました大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党を代表して、その趣旨を説明します。
石綿を使用した建築物の解体工事はこれから2028年頃にピークを迎えようとしています。レベル1、レベル2建材については、これまで規制対象だったにもかかわらず、全国で違法な工事が相次いでいます。また、これまで規制の対象外だったレベル3建材についても、不適切な除去により石綿が飛散する事例が見られます。そこで、今回の改正案では、レベル3も含め、解体工事における石綿の飛散防止対策を抜本的に強化する必要がありました。
しかし、本法案の規制内容は、余りにも不十分です。大気濃度測定の義務化を見送ったほか、レベル3建材は事前調査の対象としただけで、作業実施届の義務付けや隔離養生や集じん・排気装置の設置の義務付けを不要としました。刑事罰は法定刑の上限が低過ぎ、抑止効果が期待できません。
よって、解体現場の労働者や周辺住民、子供たちのアスベスト暴露を何としても防ぐため、本修正案を提出するものです。
以下、概要をご説明いたします。
第1に、政府案でレベル1、2に限定している作業実施届と隔離養生及び集じん・排気装置の使用等について、レベル3建材を含めた全ての石綿含有建材を対象に義務化を図ります。
第2に、大気濃度測定、第3者による事前調査及び完了検査の実施の義務付けなど、具体的な飛散防止対策を行います。
第3に、調査費用や飛散防止措置に係る費用などへの財政支援を事業者に限らず、対象者を広げて行います。
第4に、故意犯だけでなく、過失に対しても罰則を科すなどの罰則強化の検討を行います。
以上であります。
委員各位のご賛同をお願い申し上げます。
【原案・修正案の討論】
牧山ひろえ環境委員長 これより原案及び修正案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
山下よしき 日本共産党を代表して、わが党提出の修正案には賛成、政府提出の原案には反対の討論を行います。
2018年の石綿による中皮腫や肺がんの死亡者数は4650人に上り、同年の交通事故の死亡者数3532人を大きく上回りました。
石綿は、2006年に全面使用禁止になるまでは、吹き付け建材や断熱材を始め、成形板や塗装、コンクリートの表面にも使用されており、石綿含有建築物の総数は3300万棟にも及びます。2028年にはこれら石綿含有建築物の解体がピークを迎えます。抜本的な飛散防止対策がなければ、石綿暴露により多くの労働者、市民そして子どもたちに甚大な健康被害が発生することになります。
しかしながら、政府案は、環境省のパブリックコメントにおいて356件もの意見が要求する解体、リフォーム時の大気濃度測定の義務化を見送っています。大気濃度測定の義務化は石綿飛散暴露防止対策として最も重要であり、もし大気濃度測定がされていなければ石綿被害の原因を突き止めることが困難になり、損害賠償請求が難しくなります。
また、今回新たな規制対象となるレベル3建材について、事前の調査の対象としただけで、都道府県への作業実施の届出の義務化や隔離養生や集じん・排気装置の設置の義務化を不要としています。しかしながら、レベル3建材を大量に使用した工場建屋が住居と隣接している場所で解体されるケースが多数あり、住民の暴露が心配されます。
政府は、切断や破砕をせず解体するか散水等による湿潤化でレベル3建材の石綿の飛散性が低くなると言いますが、解体現場では形ばかりの散水しか行われず、多量の粉じんが舞うなど飛散防止となっていないのが実情です。
さらには、レベル3建材の中には飛散性が極めて高いケイ酸カルシウム板第1種などが含まれます。さらに、違反者に直接罰を科すとしましたが、過失は対象にせず、法定刑の上限も低く、抑止力は期待できません。悪性中皮腫の病状は筆舌に尽くし難いものです。進行すると激しい痛みが絶え間なく襲い続け、治療法もなく、命が奪われることになります。このような残酷な疾患に労働者、市民、子供が罹患することは何としても防がなければなりません。
泉南アスベスト訴訟や建設アスベスト訴訟では、石綿の危険性を知りながら適宜適切な規制を怠った国の責任が断罪されました。今回の不十分な政府案では石綿被害を防止できず、被害を発生、拡大させ、過去と同じ過ちを繰り返すことになります。それは決して許されることではありません。
以上を理由に、原案に反対いたします。
なお、本法案は国民の命と健康に重大な影響を与えるものであり、本来なら専門家を招き意見を聞く参考人質疑を行うべきでありました。わが党としては、コロナ禍の下でもリモート会議システム等を用いて参考人質疑を行うよう提案しましたが、協議が調わず実現に至らなかったことは残念です。
充実した委員会審議ができるよう、引き続き努力することを表明して、反対討論を終わります。