安倍総理問責決議案賛成討論 
2019年6月24日 参議院本会議

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理問責決議案に賛成の立場から討論します。

 賛成理由の第1は、安倍総理には、主権者である国民の声に真摯に耳を傾ける姿勢が一切なく、ただただ数の力で、国民の切実な願いを踏みにじり、悪政を強行するばかりだからであります。

 その典型は沖縄です。安倍総理の任期中に、沖縄県民は、翁長雄志知事が誕生した知事選挙、オール沖縄勢力が圧勝した国政選挙、玉城デニー知事が誕生した知事選挙、そして辺野古埋立て反対が七割を超えた県民投票など、繰り返し繰り返し辺野古新基地建設ノーの圧倒的民意を示し続けてきました。ところが、総理は、口では沖縄県民の心に寄り添うと言いながら、ジュゴンとサンゴのちゅら海に土砂を投入し続けています。

 総理の行いは、沖縄に対する強権であるとともに、この国の民主主義と地方自治を土砂で埋め立てるものにほかなりません。

 過労死の悲劇を繰り返さない、過労死遺族に直接そう誓った安倍総理がその翌年に強行したのは、過労死水準の時間外労働を合法化し、残業代ゼロ制度を導入することでありました。

 労働時間規制を撤廃する残業代ゼロ制度は、間違いなく過労死を増大させ、地獄の苦しみを味わう遺族を増大させる、これだけはやめてほしいと炎天下で座り込み、遺影を抱いて傍聴する過労死家族の会の目の前でこの悪法を強行したことは、万死に値すると言わなければなりません。

 こうして国民の声に耳を傾けない安倍総理が、森友事件や加計疑惑など、自らと妻の友人や知人の声には敏感で、その結果、行政のあり方、税金のつかい方がゆがめられ、あろうことか、公文書が改ざんされるという歴史的犯罪行為が行われたにもかかわらず、自ら進んで真相を解明し国民に説明することに背を向け続ける態度には、同じ政治家として怒りとともに恥ずかしさすら感じるものであります。

 こうした総理の姿勢が問責に値するのは余りにも当然と言わなければなりません。

 賛成理由の第2は、安倍総理が、憲法を最も尊重し擁護しなければならない立場にありながら、それに反し、立憲主義を破壊し続けているからであります。

 秘密保護法、安保法制、共謀罪法、安倍政権が強行したこれらの法律は、憲法によって保障されるべき人権と民主主義、平和主義と根本的に矛盾し、それらを破壊するものであります。だからこそ、歴代の自民党政権ですらその一線を越えることはできませんでした。中曽根総理も小泉総理も、憲法9条の下では集団的自衛権の行使はできないと国会で繰り返し答弁してきたのです。

 ところが、安倍総理は、一片の閣議決定で歴代政権の憲法解釈をくつがえし、現行憲法下での集団的自衛権の行使を容認し、続いて、憲法学者がそろって違憲と断定した安保法制、戦争法を数の力で強行いたしました。歴史に深く刻まれるべき暴挙中の暴挙と言わなければなりません。

 さらに、違憲の安保法制を強行した安倍総理は、最新鋭ステルス戦闘機F35を新たに105機購入し、「いずも」型護衛艦を改修してF35が搭載できるよう空母化するなど、海外で戦争する国づくりの具体化を図っています。こうした動きについて、来日したトランプ米大統領は、様々な地域の紛争、また離れた地域の紛争にも対応してくれることになると述べ、海外における紛争への参戦にあからさまな期待を表明したのであります。

 そして、総理は今、憲法9条の明文改憲に突き進もうと躍起になっています。最も憲法を守らなければならない総理自身が改憲の旗振り役を演じる、これほどの立憲主義じゅうりんはありません。

 保守を自認する政治学者の中島岳志氏は、保守の立場の立憲主義は、基本的に国民が権力を縛っていて、この国民の中には死者が含まれていると考えると述べています。憲法9条には、日本が起こした戦争によって犠牲となった内外の死者の無念、残された者の平和への願いが刻まれています。憲法9条を改変し、死者の縛りを解いて、海外での無制限の武力行使に道を開こうとする安倍総理は、もはや保守とは言えないと断ぜざるを得ません。

 賛成理由の第3は、安倍総理が、国民の多くが感じている暮らしの不安、将来不安、老後の不安を解決する展望を一切示さないばかりか、深刻な問題を直視することすらせず、国民から明日への希望を奪い、不安を増大させているからであります。

 どの世論調査でも、10月からの消費税10%への増税に反対する国民が多数となっています。当然です。安倍政権下で行われた5年前の増税によってもたらされた家計消費の落ち込みは、いまだ回復しておりません。さらに、世界経済の悪化も加わって、政府自身が景気悪化の可能性を否定できなくなりました。

 私は、3月、安倍総理に、今、消費税を10%に増税することは、坂道を下り始めた人の背中を後ろから蹴飛ばすようなもので、国民の暮らしも経済も谷底に転がり落ちることになる、警告をいたしました。その後、萩生田自民党幹事長代行は、消費税増税に関わって、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかないと発言しました。谷底も崖も同じではありませんか。

 暮らしと経済に大打撃を与える10月からの消費税10%への増税は、今からでも中止すべきであります。にもかかわらず、安倍総理が、経団連など財界の要望のままに消費税増税を前提にした骨太方針を閣議決定したことは重大であります。

 老後の暮らしは、年金だけでは月5万5000円不足する、30年で2000万円貯蓄が必要と正直に認めた金融庁の報告書に、多くの国民が不安を強めています。

 今政治がやるべきは、報告書を受け取らない、なかったことにすることではありません。どうすれば安心できる年金制度をつくることができるのか、真剣に考え、国民に提示することであります。

 わが党は、その立場から、年金給付を減らし続ける仕組み、マクロ経済スライドを廃止し、減らない年金をつくることを提案しております。そのために、一つ、高額所得者の保険料を見直し1兆円規模で年金財政の収入を増やす、二つ、巨額の年金積立金を年金給付に活用する、三つ、賃上げと正社員化を進めて保険料収入と加入者を増やすという改革を提案しております。

 ところが、安倍総理は、党首討論で、わが党の志位委員長がマクロ経済スライドを廃止し減らない年金をつくる具体的提案をしたにもかかわらず、ばかげた案だなどと批判するだけで、安心できる年金制度をどうつくるかについて一切語ることはできませんでした。

 それどころか、総理はその後、出演した民放テレビ番組で、マクロ経済スライド廃止の提案に言及し、やめてしまってそれを保障するには7兆円の財源が必要ですと発言をしたのであります。重大発言です。年金給付を自動的に削減するマクロ経済スライドが完全実施されたなら、年金給付は7兆円も削減されると安倍総理自身が明らかにしたのであります。

 国民の不安を直視せず、不安を解決する具体的提案をただ批判するだけで、自らは何ら解決の展望を示さない、結果として不安をより増大させている総理に、国民の将来を託すことは断じてできません。

 以上、国民の声を聞かず、立憲主義を破壊し、国民の明日への希望を奪う安倍総理の責任は極めて重大であり、国民を代表する本院が問責決議を可決することは当然であります。

 この間、野党四党一会派の党首は、市民連合との間で共通政策を合意しました。そこには、安保法制や共謀罪など立憲主義に反する諸法律を廃止する、憲法9条改定に反対する、辺野古新基地建設を中止し普天間基地の撤去を進める、再稼働を認めず原発ゼロを目指す、そして、10月に予定されている消費税率引上げを中止し税制の公平化を図るなど、13項目の政策が明記されております。ここにこそ希望があると言わなければなりません。

 日本共産党は、来る参議院選挙において、市民と野党の共闘で安倍政治を終わらせるとともに、国民の願いの実現とぶつかる、財界中心、アメリカ言いなりという政治の二つのゆがみを正すために全力を尽くす決意を表明し、賛成討論といたします。

 

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。