子育て支援そして子供貧困対策 シングルマザーへの取り組み強化を 
【議事録】参議院内閣委員会質疑

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 今日は非婚のシングルマザーに税法上の寡婦控除が適用されない問題について、女性活力・子育て支援担当でもある森大臣に伺いたいと思います。
 寡婦控除とは、配偶者との死別や離婚で子供を養育している一人親に対して一定の所得控除が受けられる制度であります。配偶者との死別や離婚とされていることから、婚姻歴のない非婚のシングルマザーについては寡婦控除は受けられません。この寡婦控除のあるなしは、住民税や国民健康保険料、保育料、公営住宅の家賃など様々な経済的負担に影響を及ぼします。
 資料の1枚目に婚姻歴の有無による一人親家庭の年間負担の比較、東京八王子市の場合を紹介してあります。例一は、給与収入額2,584,400円、月収にすると215,300円のシングルマザー、子供2歳で市営住宅に入居されている方の場合、住民税、所得税、保育料、家賃の納付総額が、婚姻歴なしの方だと597,400円に対し、婚姻歴ありだと469,400円となって、その差が128,000円ということになります。それから、例二、給与収入額2,014,770円、月収167,900円のシングルマザー、子供2歳、市営住宅入居の場合は、納付総額が、婚姻歴なしだと456,200円に対し、婚姻歴ありだと247,200円で、その差額が209,000円にも開くわけであります。
 念のために、この八王子市というのは2013年度からみなし適用、非婚の母に対しても寡婦控除をみなし適用することを実施しておりますのでこの差は埋められることになったんですが、多くの自治体ではこの大きな差が残ったままになっております。
 そこで、森大臣、同じ一人親世帯なのに婚姻歴があるかないかで寡婦控除の適否が分かれ、非婚の母が差別されている、経済負担が大きくなっている、不合理だと思いませんか。

○森まさこ内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画) 御指摘の非婚の母子世帯を含む一人親家庭については、子育てと生計の担い手という役割を一人で担わなければいけないので経済的な困窮状態にある家庭が多いことを承知しております。このため、一人親家庭の自立を支援していくことが重要であると考えております。
 政府としては、これまでも子育て生活支援、就業支援、養育費の確保策、経済的支援策等の施策を総合的に展開しております。また、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることがないよう、子供の貧困対策を推進することも重要であります。本年1月には子どもの貧困対策の推進に関する法律が施行されたところでありまして、私がその担当になっております。
 内閣府としては、関係省庁と連携して子供の貧困対策を総合的に推進するための大綱の策定に取り組んでいくこととしておりまして、現在その準備をしているところでございます。こうした取組を通じて、厳しい生活状況にある母子世帯の支援を図っていくことが重要であると考えております。

○山下よしき 母子世帯が厳しい状態にあるのは承知しておりますし、総合的な施策をそれなりにやってきたし、大綱でやろうとされていることも承知しておりますが、しかし、同じ母子世帯であっても非婚か婚姻歴があるかないかによってこれだけの差別が実際に行われているんですよ。これは物すごい経済的な負担なんですね、いろんな方に聞きますと。これ、不合理だと思われませんか。

○森大臣 税制については担当外ではございますけれども、地方公共団体におきまして、この各種制度における寡婦控除のみなし適用を実施をしているという例が今委員からもお示しがありましたので、それぞれの制度の趣旨や目的、運用実態を踏まえて所管省庁及び運用する地方公共団体において適切に対応いただきたいというふうに考えております。
 今御紹介いたしました子どもの貧困対策法でございますが、これは全ての貧困状態にある子供をしっかりと守っていくと、その環境を整備していくという観点から見てまいりますので、子供がひとしく心身共に健やかに育つことができるように配慮してまいりたいと思います。

○山下よしき 核心をしっかり捉えていただきたいんですが、様々な総合政策とは別に、こういう実際に、これ非婚というだけで同じ一人親世帯なのにこの適用がされずに経済的負担が物すごく、これ、所得税の税額控除だけじゃなくて、それが全部リンクしますから、保育料や家賃にですね、大きいんですよ、これは。低所得者ほど、実はこの適用をされるかどうかで負担が大きく変わるんですね。だから、これはやっぱり自治体任せじゃ駄目だと思うんですよ。
 自治体も頑張っています。八王子だけではなくて、様々な自治体で寡婦控除のみなし適用による非婚のシングルマザーに対する支援が広がっております。
 資料二に、これは私どものしんぶん赤旗がみなし適用による保育料の軽減措置のみについて、東京都を除く県庁所在地四十六市とそれ以外の五政令市の計五十一市について独自に調査をした結果を載せておりますが、これ見ていただいたら分かるように、1,997年の岡山市を皮切りに、2013年度までに松山市、千葉市、高知市、札幌市、高松市、那覇市、新潟市、奈良市、熊本市が、それから2014年度に予定されている自治体も加えますと、青森市、仙台市、山形市、前橋市、相模原市、岐阜市、大津市、堺市、鳥取市と。これ調べた五十一市のうち十九市までが既に自治体ではみなし適用によってこういう非婚の母に対する支援を独自にやっているんですね。これ以外にも、多くの自治体でみなし適用がされています。例えば沖縄県では十一市八町村で実施し、非婚家庭の約九割が保育料において寡婦控除のみなし適用を受けられるというところまで前進をさせております。
 森大臣、自治体がこうやってみなし適用をすることで非婚の一人親世帯への支援ができるようにする努力は広がっているんですが、政府、何もしないでいいんですか。

○森大臣 今まさに委員が御指摘なさいましたように、子供が親の状況によってその育成が左右されることがないようにという、そのまさにその発想で子ども貧困対策法ができているわけでございます。今その大綱を取りまとめるための準備作業をしておりますので、御指摘の点も踏まえて、子供たちの育っていく環境を整備していくということを行ってまいりたいと思います。

○山下よしき じゃ、大綱の中に盛り込むと、それを検討するんですね。

○森大臣 大綱を作成するために今有識者の委員による会議体を準備しておりますので、その中でまた御指摘の点も含めて検討をしていただきたいというふうに思います。

○山下よしき 検討してもらうんじゃなくて、大臣として大綱の中に盛り込むように働きかけるということでいいですか。

○森大臣 今大綱の策定に向けて準備作業中でございますので、御指摘の点も含めてこの有識者における検討会議の中で検討していただきたいというふうに思います。

○山下よしき 今検討していただきたいということは言われましたが、こうした自治体のみなし適用の拡大、それから世論の高揚の大きな力になったのが、昨年9月4日に出された非嫡出子に対する相続差別は憲法14条1項、全て国民は法の下に平等であって差別されないに違反するという最高裁決定であります。決定後、嫡出子との差別解消を定めた民法の改正も行われました。社会の大きな前進がこの間あったわけであります。
 私は、この最高裁決定の核心は、父母が婚姻関係になかったという子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであると述べた点にあると思っております。
 法律家でもある森大臣、この決定をどのように受け止めておられますか。

○森大臣 御指摘の最高裁判所の決定は、昨年9月に、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1としていた民法第900条第4号ただし書前段の規定が憲法第14条第1項に違反するとしたものでございまして、政府においては、この最高裁判所の判断を受けて、第185回国会に嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等化するための民法の改正法案を提出し、改正法は昨年12月に成立をしたものというふうに承知をしております。
 担当大臣は谷垣法務大臣でございました。

○山下よしき 事実を述べているだけで、森担当大臣として、女性活力・子育て支援担当なんだから、その大臣として最高裁の決定をどう受け止めておられるか。法律家でもある大臣に聞いているんですよ。大臣の認識を聞いているんです。

○森大臣 弁護士としての認識というふうに先ほど問われまして、また今は法律家としての認識というふうに問われましたけれども、私は現在、子育て支援担当大臣でございますので、その大臣として申し上げたいというふうに思いますけれども、最高裁判所の判決を受けて法務大臣の方が法案を提出し、その法案が通ったというふうに受け止めております。また、その法律をしっかりと適用していくことが重要であるというふうに思います。

○山下よしき 大臣として聞いているんですよ、法律家というだけじゃなくて、大臣なんです。
 私が大臣として聞きたいのは、この決定の中に、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択し、修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきであると、この認識、これはまさに子育て支援担当大臣として物すごく重い意味があると思っているから聞いているんですよ。いかがですか。

○森大臣 まさに今委員が御指摘をした判旨の部分でございますけれども、子供にとっては、先般の子ども貧困対策法もそうでございますが、子供にとってその家庭の環境、親の状況に左右されずにひとしく育成される、育っていく、そのことに着目をして子ども貧困対策法もできました。私は、担当大臣として、全ての子供がひとしく健やかに育っていくように頑張ってまいりたいと思います。

○山下よしき その趣旨に外れる事態がいまだにあるんですよ、この非婚の母という点でいいますと。
 私は、この最高裁の決定によって非婚の一人親を差別する根拠は失われたと思います。ならば、相続差別が許されないのと同じく、婚姻歴の有無で寡婦控除の適用を差別し、子供に不利益を及ぼすことも許されないことは当然だと思います。これは、もはや非婚の母子の置かれている不合理の軽減を自治体のみなし控除だけに任せておくことはできないと思います。
 東京新聞が昨年11月19日付けで、非婚ひとり親寡婦控除、首都圏で十区市町でみなし適用が広がっているということを紹介した記事の中で、適用しないと答えた自治体は、税制改正で対応するべきだ、あるいは国が不公平のないように制度設計するべきだと、こう答えているんですね。これは、自治体の善意でやるんじゃなくて、国が制度としてやるべきだというのが自治体からも出ております。2010年の国勢調査によりますと、全国の非婚のシングルマザーは132,000人、10年前から倍増したとされております。ですから、私は、いよいよこれはもう国が決断するべき出番だと思うんですよね。所得税法の改正による解消を図るべきだと思います。
 日弁連が本年1月16日に作成した寡婦控除規定の改定を求める意見書というものがあります。そこでは、法律婚の有無により、寡婦控除の適用について差別する現行制度は合理性を欠き、憲法14条の平等原則に反し違憲であることは明らかであると述べ、結論として、これを迅速に是正し、差別の解消を実現する方策として、寡婦控除制度を非婚の母にみなし適用することを求め、各自治体でもこの動きが広がりつつあるが、まだ一部にとどまっており、国の制度改正を求める声が広がっているとして、より根本的な差別是正を行い、非婚の一人親世帯の負担を軽減するためには、寡婦控除を非婚一人親にも適用するよう所得税法を改正するべきであると、これ日弁連が要請しております。
 森大臣、女性活力・子育て支援担当大臣として、政府の中で非婚の母への差別をなくすために法改正を提起すべきではありませんか。

○森大臣 シングルマザーを含む一人親家庭の子供がひとしく健全に育成をされるための取組を更に強化をしていかなければならないと思います。先ほど御紹介した様々な国の制度がございますが、決して十分とは言えないと思います。それを更に充実化していくことを今検討しております。
 さらに、先ほど御紹介いたしました子どもの貧困対策法もできました。まずは、この成立した法律をしっかり大綱を策定をして施行をしていく、そして運用していくことが大切であろうかと思います。その中で、シングルマザーを含む一人親家庭の子供の健全な育成についてしっかり努めてまいりたいというふうに思います。
 税制の問題については私担当外ではございますが、税制の問題について様々な御意見があることは承知をしております。そのような様々な制度の中で、今後また子供の幸せを追求しながら議論をして検討していくことが大事であろうかというふうに思います。

○山下よしき これ大綱にも、法律に基づく大綱ですから、その法律の中にも実際にこの非婚のシングルマザーに対する差別を解消するということが入っていないわけですから、これは、法律では。だから、大綱を幾ら盛り込むといったって、それはなかなか難しいんですよ。だから、やっぱりこの問題はこの問題としてきちっと解決しないと、これはいつまでも残ることになるんです。
 沖縄県は母子、父子世帯の比率が全国で最も高いんだそうですが、ここで2008年から全国に先駆けて未婚の母子世帯にも寡婦控除を適用するよう取り組んでこられた沖縄県母子寡婦連合会の会長与那嶺清子さんが、こう言っておられます。未婚であろうと、そこには次代を担う子供たちがおり、その子供たちが健やかに生きる権利は全ての大人たちが保障しなければならない義務ですと、そのとおりだと思うんですね。
 実は、与党の平成26年度税制改正大綱でも、寡婦控除について検討項目に挙げられております。これは何とかしなあかんの違うかということに今、与党の中でも検討がされようとしているわけですね。
 森大臣、これはやっぱり森大臣が政府の中で、そして与党の中で、非婚の母が差別されず控除が受けられるように積極的にイニシアチブを発揮してこそ私は子育て担当大臣と言えると思うんですけれども、いかがですか。

○森大臣 私の担当は子育て支援そして子供貧困対策でございますので、子供の貧困を解消するため、様々な制度の在り方について、今後大綱を策定していく過程で有識者の方も含めて御議論をいただくことが大事であろうかと思います。
 税制については担当外ではございますけれども、与党の中でも今御指摘のように検討項目に挙がっておりますので、子供の貧困という立場から、しっかりとそういった観点で検討が行われるということは見ていきたいというふうに思います。

○山下よしき 是非大臣として本当に責任持って、これ大臣が1番やれるポジションにいるんですよ。そのときにやっぱりやれることはやらないと、そういうことを私は提起している。
 同時に、立法府である私たちもこれやろうと思ったらできるんですから、これ超党派でこういう不合理は解決するために力を合わせようではないかということを呼びかけて、終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。