「海外で戦争する国」断念迫る 
【議事録】参議院本会議代表質問

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 私は、日本共産党を代表して、総理に質問します。

 今国会は、これまでにない状況の下で幕を開けました。秘密保護法廃止を求める人波と声で国会が包囲されたのです。昨年暮れの秘密保護法強行に反対した国民の声は、収まるどころか、日がたつにつれ広がっています。

 なぜか。秘密保護法では、政府が保有する膨大な情報の中から政府の恣意的判断によって特定秘密が指定されます。懲役十年以下の重罰と、それによる威嚇や適性評価の名によるプライバシー侵害と権力の監視にさらされるのは、限られた公務員の特殊な漏えい行為だけではありません。国民の普通の日常とその自由が広く対象とされます。国民は、何が秘密かも秘密とされる社会の中で、自分が近づいた情報の中身も分からないままに処罰され得るのです。国民の知る権利に応えて巨大な行政機関の秘密に迫ろうとする取材と報道の自由もその例外ではありません。

 しかも、特定秘密と指定されれば、情報の国会への提供さえ政府の裁量に委ねられ、秘密会に提供された秘密を同僚議員に話すだけで重罰を掛けるなど、政府が事実上国会を縛ることにもなってしまいます。国会の国政調査権、議員の質問権をも乱暴に侵す、まさに国民主権と三権分立、議会制民主主義の根幹を壊すものにほかなりません。だからこそ、この法律には、成立してからもなお、多くの国民が廃止にすべきだという声を上げ続け、その輪は広まりこそすれ狭まることはないのです。

 日本共産党は、この希代の悪法を廃止する一点で、多くの政党会派、国民、諸団体と力を合わせて奮闘するとともに、今国会に秘密保護法廃止法案を提出いたします。総理、国民の声に真摯に耳を傾けるなら、悪法を施行する前に自らの手で廃止するべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、景気の現状と将来について、アベノミクスの成果だとして大変楽観的な見通しを示し続けてこられました。

 確かに大企業は巨額の利益を上げていますが、国民の生活は良くなったでしょうか。働く人の賃金は十八か月連続で減り続け、ピーク時に比べて年間七十万円も減少しています。パートや派遣、請負などいわゆる非正規雇用は、昨年七―九月期に、全雇用者の三六%、一千九百八万人に達しました。

 異常な金融緩和によって生じた株高で、いわゆる持てる人の資産は更に膨れ上がりました。昨年十一月発表された日銀の調査によれば、金融資産を保有している世帯では、一年前と比べて有価証券が約四割増加するなど資産が大きく増える一方で、金融資産を保有していない世帯、すなわち預貯金ゼロの世帯が、一九六三年の調査開始以来最高の三一%に達しています。

 他方、中小企業は円安による輸入物価の上昇を価格に転嫁できずに苦しんでいます。個人消費が低迷する下で値上げすれば売れなくなるからです。大企業のコスト削減による納入単価の引下げも経営を圧迫しています。

 総理、いわゆるアベノミクスを通じて、正規と非正規、持てる者と持たざる者、大企業と中小企業の間で格差が一層拡大し、経済の土台がむしばまれていることをどう認識されていますか。これを放置して、日本経済全体の好循環が実現できるとお考えですか。

 このようなときに消費税増税で八兆円もの負担増を強行したらどうなるか。何より、国民の暮らしに大打撃を与え、経済も財政も共倒れになるのではありませんか。加えて、所得の低い人ほど負担が重くのしかかる消費税の増税が格差を更に拡大し、経済の土台をますます掘り崩すことになるのではありませんか。まさに最悪の選択であり、四月からの消費税増税の中止を強く求めるものであります。

 総理は、消費税率引上げによる税収は、全額、社会保障の充実、安定化に充てると言われました。事実はどうでしょうか。医療では、七十歳から七十四歳の窓口負担の二倍化をこの四月から段階的に実行に移す。後期高齢者の保険料の値上げを、積み上げてある基金を使って避けようと努力する都道府県に圧力を掛ける。介護では、要支援の訪問介護、通所介護を介護保険から切り離す。さらに、年金は、二・五%の支給削減に加えて、マクロ経済スライドによる毎年一%、五千億円もの連続削減が計画されています。試算できるだけでその負担増と給付減は三兆円を超えるのであります。社会保障の充実に充てるどころか、増税の上に社会保障まで削るというのが事の真相ではありませんか。

 総理は、事あるたびに、雇用の拡大、所得の上昇、賃金の上昇と口にされています。それならば、歴代自民党政権による労働法制の規制緩和、すなわち一九九九年の派遣労働の原則自由化、二〇〇三年の製造業への派遣の解禁などによって非正規雇用が急増し、幾ら企業が収益を上げてもまともな雇用の拡大や賃金の上昇につながらない構造にしてしまったことこそ、まず改めるべきではありませんか。

 ところが、安倍政権は、世界で一番企業が活動しやすい国と称して、派遣労働の無制限の拡大、限定正社員など解雇しやすい雇用ルールの導入、サービス残業の合法化を進めようとしています。これでどうしてまともな雇用の拡大や賃金の上昇につながるのですか。更なる不安定雇用の増大と賃金の低下をもたらすことは明らかではありませんか。

 今やるべきことは、デフレが継続していた間でも、ため込まれ、増え続け、二百七十兆円にも膨れ上がった大企業の内部留保を賃金に回させることです。

 昨年の臨時国会では、総理も、我が党議員の質問に、政労使会議で内部留保の活用をお願いすると約束しました。この約束は実行されたのですか。まだなら、春闘が闘われる今こそ実行すべきではありませんか。

 あわせて、中小企業に対する支援を強めながら、最低賃金を抜本的に引き上げること、労働法制の大改悪を中止し、誰もが人間らしく働ける雇用のルールを確立することを求めます。
 日本共産党は、臨時国会に続き、今国会にもブラック企業規制法案を提出いたしました。若者を中心とした世論と運動とも合わさって、行政による初のブラック企業実態調査の実施や、ハローワークにおける新卒者向け求人票に新入社員の離職者数を公表するなど、既に幾つかの成果も生まれていますが、ここに甘んじるわけにはいきません。ブラック企業の手口となっている長時間労働やパワーハラスメントを是正する有効な手だてを直ちに講じるべきであります。

 我が党は、全ての会派の皆さんに、将来ある若者を使い潰すブラック企業をなくすための法改正に当たること、そのために、ブラック企業に苦しめられている若者たちを国会に招き、その声を直接聞くことを呼びかけるものであります。

 未曽有の大災害となった東日本大震災からもうすぐ三年がたちます。今年四月に三陸鉄道が全線で運転再開となるといううれしいニュースが発表されました。大きな困難の中で運転再開を実現した被災地の皆さんの努力と全国からの支援に心から敬意を表したいと思います。
 一方で、いまだに被災者の九割の方々が仮設住宅などの避難生活から抜け出せず、長期化とともに先の見通しが持てずにいるという深刻な状況の解決が急がれます。

 なぜ、住宅再建がこんなに遅れているのでしょうか。それは、個人財産の形成になるとして、住宅の復旧に十分な支援をしないというやり方に政府がかたくなに固執しているからであります。この姿勢を改め、住宅となりわいの再建に必要な公的支援を行うことを復興の基本に据えることを強く求めます。これは、現に苦しんでいる被災者にとって一刻の猶予もない切実な要求であり、さらに、災害が多発する日本列島において国民の命と安全を守る上で将来にわたって重要な意義を持つと考えますが、いかがですか。

 同じ被災地の中でも、福島の原発被害は深刻さを増しています。福島では十四万人近い人々が避難生活を強いられ、震災関連で亡くなった方が地震、津波の直接被害で亡くなった方を上回るなど、先の見えないつらい生活の中で命と健康が脅かされています。

 政府は、昨年十二月、福島の復興指針を決定しましたが、上からの線引きに対し、被災地の自治体首長からも、地域の分断を招く、支援策を差別するべきではないとの懸念と批判が相次いでいます。

 総理、原発事故前にどこに住んでいたかにかかわらず、また、避難している人もしていない人も、ふるさとに戻りたい人も戻れない人も、全ての被害者がその生活となりわいを元のように再建できるまで、国と東京電力が責任を持ってひとしく支援することを大原則に据えるべきではありませんか。

 安倍政権は、原発を基盤となる重要なベース電源として、将来にわたって維持、推進し、再稼働を進めるとしたエネルギー基本計画案を発表しました。これは、今なお原発被害に苦しむ福島の人々への重大な背信であり、原発ゼロの日本を願う国民多数の民意への挑戦だと言わなければなりません。現在、原発は全て停止しています。原発を再稼働させる必要性も条件もありません。日本共産党は、政府が即時原発ゼロの政治決断を行うことを強く求めます。
 TPP交渉についてお尋ねします。

 総理は、TPPについて、米国とともに交渉をリードし、攻めるべきは攻め、守るべきは守ると述べ、国益にかなう最善の判断をすると述べられました。そのアメリカでは、一月九日、上下両院の与野党幹部によって、政府に貿易交渉権限を与える大統領貿易促進権限、TPA法案が提出されました。そこでは、農業分野について、相当に高い関税、あるいは補助金体制の下に置かれている農産物の市場開放に優先順位を置くとして、相手国の関税をアメリカの関税と同等かそれ以下の水準にまで削減すると書かれています。

 総理、日本は今、精米輸入については一キログラム当たり四百二円の関税を掛けていますが、アメリカのそれは一・四セント、日本円にして一円そこそこです。アメリカの関税と同等かそれ以下の水準となれば、事実上ゼロということになります。こうした条件がオバマ政権に課せられている下で、どうして聖域が守られるのか。守るべきは守ると言うなら、その根拠を示していただきたい。根拠を示せないのであれば、TPP交渉から潔く撤退する決断こそするべきではありませんか。

 安倍内閣は、昨年の臨時国会で、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議、日本版NSC創設法と秘密保護法を強行し、それに続いて国家安全保障戦略、新防衛計画の大綱、新中期防衛力整備計画を矢継ぎ早に閣議決定しました。

 新防衛計画の大綱では、新たに統合機動防衛力の構築を掲げて、陸海空自衛隊が海外に迅速かつ持続的に展開できる能力を構築することを強調しています。そして、前線との間で兵士や物資を迅速に輸送するためのオスプレイ、水陸両用戦闘車両、無人偵察機、新型空中給油機などを新たに導入するとともに、米海兵隊のような殴り込み作戦を行う水陸機動団を編成するとしています。そのために、今後五年間に二十四兆六千七百億円もの軍事費を投入する大軍拡計画を定めました。

 総理、これは歴代自民党政権が建前としてきた専守防衛さえ踏み外すものではありませんか。軍隊は持たないと決めた憲法を持つ国で、それは絶対に許されないことではありませんか。

 さらに、日本を海外で戦争する国、とりわけ、アメリカと肩を並べて戦争できる国にするために、安倍政権が踏み越えようとしているのが集団的自衛権についての憲法解釈です。

 総理は、集団的自衛権について、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、いわゆる安保法制懇の報告を踏まえ、対応を検討してまいりますと述べられました。

 そもそも集団的自衛権とは、自衛という言葉が入っていますが、いかなる意味でも日本の自衛とは関係ない、アメリカ本土の自衛とも関係ないものです。戦後の歴史の中で、国連憲章五十一条に基づく集団的自衛権が発動されたのは、アメリカによるベトナム戦争、旧ソ連によるチェコスロバキアとアフガニスタンに対する侵略など、大国による侵略と介入の戦争しかありません。そのための口実とされたのが集団的自衛権であります。

 日本の現実の政治で集団的自衛権が問題にされたのは、インド洋やアラビア海、イラクやアフガニスタンでのアメリカの戦争へのあけすけな自衛隊の参戦要求でした。しかし、集団的自衛権は行使できないという憲法解釈があったからこそ、非戦闘地域に限るとか武力の行使はできないなど、自衛隊の海外での戦闘行為、戦争行動を禁止する歯止めが働いてきたのです。そのために、日本は戦後六十八年間、戦争によって一人の戦死者も出すことはなかったし、戦争によって他国の人の命を一人も奪うことがなかったという世界に誇るべき歴史を重ねてきたのであります。

 総理は、この歴史を誇りあるものと思いますか、それとも自衛隊員の血であがなう世界への関与を誇らしいとお考えなのですか。

 集団的自衛権の行使は憲法九条に照らして許されないというのは、内閣法制局だけの見解ではなく、歴代政権がずっと踏襲し、世界に向けて説明してきた日本の立場です。それを覆す権利は、あなたにも、あなたの内閣にもありません。

 総理は、戦後六十八年間守り続けてきた我が国の平和国家としての歩みは今後とも変わることはありませんと述べられました。それが本当なら、なぜ、これまでできないとされてきたことをやろうとするのですか。専守防衛さえ踏み越える企ても、そして集団的自衛権の行使を容認し日本を海外で戦争する国に変える企ても、やらないと言明すべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。

 最後に、世界では今、互いの独立を尊重し、文明や価値観の違いを認めながら、対話と信頼醸成に努めることで紛争を平和的に解決する流れが東南アジアなどから大きく広がっています。侵略戦争を断罪した戦後の国際秩序に挑戦し、専ら軍事力だけに頼るやり方は世界から孤立する道であることを述べ、質問を終わります。(拍手)


 

安倍首相の答弁

 山下芳生議員にお答えをいたします。
 特定秘密保護法についてのお尋ねがありました。
 特定秘密保護法については、様々な御議論を経て成立したものであり、その過程で伺った御意見を真摯に受け止め、今後とも、同法について国民の皆様に丁寧に説明を重ねるとともに、その適正かつ効果的な運用が図られるよう施行準備を進めてまいります。
 格差拡大の認識と消費税率引上げについてお尋ねがありました。
 格差については、格差が固定しないと同時に、誰もが何度でもチャンスがあるということが重要であり、頑張る人が報われる社会をつくっていかなければなりません。
 我が国は、長年にわたりデフレが継続し、賃金も伸びていませんでした。こうした中では、特に低所得の方々の生活に大きな影響があることから、デフレ脱却、経済の再生は大変重要な課題であると考えております。このため、政府としては経済の好循環の実現を目指しております。今後、政労使での共通認識も踏まえ、労使間で賃上げの実現や非正規雇用の方々の雇用改善に向けた十分な議論が行われ、賃金上昇が幅広く実現することを期待しております。
 また、消費税率の引上げに当たっては、これに伴う影響を緩和し、その後の経済の成長力を底上げするため、好循環実現のための経済対策を着実に実行してまいります。この消費税率の引上げにより、社会保障制度の安定財源を確保し、国の信認を維持してまいりたいと考えております。
 消費税と社会保障改革についてお尋ねがありました。
 消費税率の引上げによる税収は、全て社会保障の充実と安定化に充てます。少子高齢化の下、受益と負担の均衡が取れた制度とするため、昨年成立したプログラム法に沿って不断の改革を進めつつ、世界に冠たる制度をしっかりと次世代に引き渡していきます。
 御指摘の医療費の窓口負担を新たに七十歳になる方々から見直すことなどは、これまで暫定的に取られていた負担の軽減等を制度本来の姿に戻すもので、持続可能な社会保障制度としていくために必要なものであります。したがって、増税の上に社会保障まで削るとの指摘は当たらないと考えます。
 安倍政権における雇用制度の見直しや賃上げについてお尋ねがありました。
 自公政権においては、経済産業構造の変化に応じて必要な労働分野の改革を行ってきたところであり、こうした改革は、働く方々の多様なニーズに応じた雇用の場を確保する上で成果があったものと考えています。
 また、現在検討中の労働者派遣制度を始めとする雇用制度の見直しは、多様な働き方の実現を目指すものであります。派遣労働の無制限な拡大や、解雇しやすい雇用ルールの導入といったことは考えておらず、御指摘は全く当たりません。
 政府としては、労働界や経済界と一致協力して、非正規から正規へのキャリアアップの支援を進めることなどにより、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用を拡大してまいります。
 内部留保と賃金の上昇についてお尋ねがありました。
 これまで政府が強力に推進してきた三本の矢の効果等によって、今まさに企業収益は好転しつつあります。昨年十二月の政労使会議では、経済の好循環を速やかに実現するため、関係者それぞれがこれまでの行動にとらわれない新たな取組を大胆に実行していただきたい旨を申し上げたところです。これは、内部留保の活用に限らず、長引くデフレで染み付いた従来の行動から大胆に踏み出すよう要請したものであります。
 いわゆる内部留保については、個別企業ごとに事情が異なるものと承知しており、一律の対応を求めるのは適切でないと考えますが、今年の春闘においては、内部留保の活用の在り方も含め、各企業がそれぞれの経営状態等を踏まえて、昨年末の政労使会議において取りまとめた共通認識を踏まえ、好循環の実現につながる積極的な対応を行うものと期待しております。
 最低賃金の引上げや若者の使い捨てが疑われる企業等についてのお尋ねがありました。
 最低賃金は、平成二十五年度における全国平均で、対前年度十五円の引上げが行われたところであります。経済の好循環を目指すとともに、中小企業・小規模事業者の支援を工夫しつつ、労使と丁寧に調整するなど、最低賃金の引上げに努めてまいります。
 また、若者の使い捨てが疑われる企業等については、昨年九月、過重労働や賃金不払残業が疑われる企業等に重点的な監督指導を行ったところです。将来を担う若者などが生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくために、非正規から正規へのキャリアアップ支援を進めるなど、今後ともしっかりと取り組んでまいります。
 被災地における住宅となりわいの再建と、福島の原発事故に対する支援についてお尋ねがありました。
 被災地における住宅となりわいの再建に向け、政府としては、被災者生活再建支援金による支援や中小企業等グループ補助金等による設備等の復旧を支援してまいりました。また、復興大臣の下にタスクフォースを設置し、住宅再建や商店街等の再生に向けた加速化措置を打ち出してきたところであります。
 福島の復興については、昨年末に、帰還に向けた取組の拡充と新たな生活の開始に向けた支援の拡充の両面から福島を支援する、予防的、重層的な汚染水対策の実施など東京電力福島第一原発の事故収束に向けた取組を強化する、国が前面に立って原子力災害から福島の再生を加速するという三つの方針を打ち出したところであります。今後、この方針を踏まえて、地元とも十分に協議しながら、福島復興の道筋を具体化してまいります。
 避難指示の解除、早期帰還を実現し、あわせて、帰還困難区域を始めとした地域については、新しい生活を始めるために必要な追加賠償を行うとともに、復興拠点を整備してまいります。
 今後の原子力政策についてのお尋ねがありました。
 国民生活と経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築しなければなりません。この中で、原発については、徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。
 しかしながら、電力供給における海外からの化石燃料への依存度が第一次石油ショック当時よりも高くなっているという現実を考えると、そう簡単に原発はもうやめたというわけにはいきません。福島の事故も経験し、国民の皆様が原発の安全性に不安を持つのは当然のことです。福島の事故の教訓を踏まえ、安全を確保することが大前提であります。その前提の下、独立した原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の安全基準に基づいて徹底的な安全審査を行い、これに合格した原発について再稼働を判断してまいります。
 TPP交渉についてのお尋ねがありました。
 貿易促進権限法案、いわゆるTPA法案は米国の国内法案であり、米国議会における審議もこれからと承知しており、御指摘の農業分野への影響についてはコメントすることは差し控えますが、引き続き米国の動向を注視していきます。
 いずれにせよ、我々が選挙でお示しした公約はたがえてはならないと考えています。政府としては、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻め、国益にかなう最善の道を追求するという基本方針の下で、全力を挙げて交渉に臨んでいるところであります。交渉が最終段階を迎えている中、交渉からの脱退について言及することは、国益の観点からも不適切と考えます。
 防衛大綱は専守防衛を踏み外すものではないかとのお尋ねがありました。
 防衛大綱に基づく防衛態勢の強化は、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していること等を踏まえ、あくまでも我が国の存立と国民の生命、財産を十全に守り抜くことを目的としたものです。
 また、防衛大綱にも明記されているように、日本国憲法の下、専守防衛に徹することが我が国防衛の基本方針であることにはいささかの変更もありません。防衛大綱が専守防衛を踏み外すとの御指摘は全く当たらないものと考えます。
 平和国家としての歩みと集団的自衛権についてのお尋ねがありました。
 戦後、我が国は、自由で民主的で、基本的人権や法の支配を尊ぶ国をつくり、戦後六十八年にわたり平和国家としての歩みを進めてきました。これは世界に誇るべきものであり、その歩みは今後も変わりません。
 集団的自衛権については、現在、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会において検討が行われており、まずはこの懇談会における議論を待ちたいと考えています。
 政府としては、懇談会から報告書が提出された後に対応を検討することとなりますが、懇談会では今後詰めの議論が行われていくこととなっており、まずはしっかりと議論を深めていただきたいと考えています。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。