選手への中傷に懸念 サッカーくじ バスケ・単一試合導入案 山下議員反対 
2020年12月1日 参議院文部科学委員会

 サッカーくじ(スポーツ振興くじ)の対象にバスケットボールのBリーグを加え、単一試合くじを盛り込んだ「スポーツ振興投票の実施等に関する法律の改正」案などが1日、参院の文教科学委員会で可決しました。同法案は超党派のスポーツ議員連盟のプロジェクトチーム(PT)が検討し、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会の4会派が共同提案。日本共産党、れいわ新選組は反対しました。

 共産党の山下芳生議員が反対討論し、Bリーグを対象とすることに加え、単一試合投票が実施されれば「射幸性を高め、八百長などの不正行為が入りやすくなる」と指摘。「スポーツの持つ目標達成の努力の過程やフェアプレー精神をないがしろにし、金銭絡みの勝敗の結果のみにこだわる傾向を助長する」と批判しました。

 さらに、SNSを通じた「いわれなき誹謗(ひぼう)中傷に選手、審判がさらされかねない」との問題点を挙げるとともに、スポーツ振興の財源は「国が責任を持って確保・増額するのが本来の道筋」と表明しました。

 採決に先立つ質疑で山下議員は、従来の複数試合くじと比べて格段に予想しやすくなる単一試合くじによって、高額購入者が懸念されることから、「購入金額の上限を考えているのか」とただしました。法案提出者は「いまは想定していない。細心の注意を払っていきたい」と述べるにとどまりました。

 山下議員は、賭けに外れた人がSNSで中傷し、選手がうつ病や引退に追い込まれた海外の事例を挙げてただすと、提出者は「単一試合の導入で選手に新たな緊張を生んではならない。委員のご指摘の通り」と答弁。同時に「SNSの批判の相談支援など、選手の安全確保に万全を期したい」などとしか答えられませんでした。

 れいわの舩後靖彦議員は「スポーツ振興予算は水もののくじの売り上げに頼らず国が出すべき」だと主張しました。


 

【動画】




【議事録】



山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 スポーツくじのこれまでの経過を振り返りますと、当初は複数試合、つまり、一つの試合だけで結果が出るようなくじではなくて複数試合による予想型だけだったものが、非予想型のBIGを導入し、さらに、海外サッカーやワールドカップまで対象を広げてきました。くじの種類、対象がずっとこの間拡大されてきたという歴史であります。

 提案者の方にうかがいますが、法案ではさらにバスケットボールを追加し、単一試合の投票や、それからリーグ戦やトーナメント戦の順位予想投票も導入ということになっているんですが、理由は何でしょうか。

青柳陽一郎 衆議院議員(法案提案者) お答え申し上げます。

 まず、バスケットボールの対象競技への追加に関しては、これまでスポーツ振興投票の対象競技がサッカーのみであったところ、Bリーグの目覚ましい発展とこれまでの健全な運営状況に鑑み、Bリーグからも強い要望があったことを踏まえ、そしてそれらの対策を講じていることも踏まえ、バスケットボールを今回対象競技として追加するものといたしました。

 現行の予想型商品については、予想が難しい、複数の試合を予想するのは非常に手間がかかる、あるいは自分で試合を選べないといった声が寄せられておりまして、先ほどの寄附のこともあるんですけれども、試合観戦をするスポーツファンが実際あまり購入していないということが課題となっておりました。そこで、単一の試合の結果を予想する単一試合投票とリーグ戦の順位等を予想する順位予想投票を導入することといたしました。

 また、スポーツ振興投票が施行されて約20年が経過しておりますけれども、スポーツ振興投票が一定程度社会に定着してきておりまして、さらに、Jリーグ等においてもこれまで不正行為事案が発生したことはないという実績に加えて、商品設計等において適切な配慮を行うことによって射幸性の抑制と不正行為の防止を担保しつつ売上げの向上を図っていくということが可能であるだろうという判断をいたしまして、単一試合投票の導入を今回盛り込んだところであります。

山下よしき  ありがとうございます。

 単一試合についてちょっと突っ込んで、おわかりだったら教えていただきたいんですけれども、単一試合のくじになりますと、さっきご答弁があったように、購入者が結果を複数試合と比べてはやはり予想しやすくなるということになるわけですね。そうなりますと、一発当ててみようと、そういう購入者がくじを例えばたくさん買うということだってあり得るかもしれない。
 
 これ、すみません、通告していません。ちょっとわかれば教えていただきたいんですけれども、考え方をですね。例えば、100万円賭けて10万円の賞金を狙う方が出てくるかもしれない。全集中で真剣に予想するということになるでしょう、そうすると。これまでと比べ物にならないくらい購入者はヒートアップすることになると思うんですけど、この辺り、さっき射幸性を抑制するとありましたけど、そのあたりはどう考えているんでしょうか。

齋藤健 衆議院議員(法案提案者) 今回のスポーツ振興投票の改正ですけれども、当せん金の払戻しの割合というものが実は売上金額の2分の1というふうに低く定められているのと、それから、残りの収益についてはそのスポーツの振興等のために充てられるという寄附的な性格がまず強いものになっているということで、その単一試合投票の導入自体がその性格に影響が出るものとは考えておりません。

 そして、今回導入する単一試合投票につきましては、払戻し率が売上金額の50%以下に決まっているということ、それから、おそらく当せん者数も多いことが想定をされますので、特定の購入者に多額の利益が生じるということが考えにくい、そういう制度設計になっています。

 Jリーグ、Bリーグとも、特定チームの試合は1日1回でありますし、次の次節まで数日から1週間程度の間隔が空きまして、そこで冷却期間が置かれることにもなります。ですから、次から次とお金をつぎ込むような、そういう状況にはもうなり得ない、そういう制度になっておりますので、そもそも仕組み上、この単一投票を導入したからといって射幸心があおられていくということはない制度設計になっているわけであります。

 なお、この商品設計にあたりましては、過去の試合データなどに基づきまして当せん倍率が過度に高くならない投票パターンというものを設定していく、それとともに、収益がスポーツ界に還元されてスポーツを支えることにつながるものであるという、そういうギフティングの性格が強いという、こういうスポーツ振興投票の性格についても一層周知を図っていきたいと。

 こういうことを通じまして、射幸心が過剰にあおられない、そういうように配慮すること、これ求められていることでありますし、それを徹底していきたいと思っています。

山下よしき  そうなりますと、1回の購入金額の上限というのを決めるかどうかというのは非常に大事だと思うんですよね。さっき言ったように、100万円だったら当せんした人たちの、何というんですか、オッズというんですか、収益の率がたとえ0・1であったとしても10万円ですから、1回10万円ということで相当熱が入ってくるかもしれません。上限というのは考えておられるんでしょうか。

齋藤衆院議員 いま、上限を設定することは想定をしておりませんけれども、射幸心をあおらないように制度設計は細心の注意を払っていきたいと思っています。

山下よしき  ちょっとその上限がないと、ちょっとそういう方が出てくるんじゃないかなと。

 単一試合をくじの対象にしますと、やっぱり選手個々の一つのプレー、審判の一つのジャッジ、これに対するプレッシャーがやっぱり高まってくると思うんですよね。そこ大事な問題だと思うんですが、さらにバスケが入ると、バスケットボールというのはやっぱり一チーム5人ですし、サッカーに比べて点数がすごく上がりますよね。どっちかというと、一人のプレーの占める役割というのがサッカーよりもはるかに高いんじゃないかなと思うんですね。

 そういう単一試合、そしてバスケットを入れることによって選手のプレーに対するプレッシャー高まるんじゃないかなと思うんですが、お考えあればどうぞ。

青柳衆院議員 バスケットボールはチームの競技でありますし、交代が何度も可能な競技でありますので、そういうことはないというふうにリーグ側のヒアリングからも確認しておるところでございます。

山下よしき  海外では、例えばテニスの勝敗を賭けるということが盛んなところもあるようで、上位の選手のSNSには賭けに負けた人から中傷のメッセージが届くと聞いております。ある選手は、ランキングが下の選手に敗れたときなどは、洪水みたいに中傷のメッセージが襲ってきた、全部私を侮辱する内容だった、負けたときだけでなく、フルセットの末にセットカウント2、1で勝利したときにも、2、0で賭けていたのにおまえのおかげで大損だと口汚くののしられた。韓国ではバスケットがくじになっていますけれども、くじをはずした人が腹いせにネット上に書き込む罵声、毎日目にすると。うつ病の初期になったり、あるいはもうそれが嫌で引退を表明するという選手まで出ていると。そういうことがないようにする、これ大事だと思いますが、いかがですか。

齋藤衆院議員 一般論で申し上げれば、SNSの普及によりまして選手が批判にさらされる、そういった機会が増加しているというのは事実だと思います。

 今回の単一試合投票は、特定の購入者に多額の利益が生じにくい商品であり、また射幸心を過剰にあおらない商品設計を行うこととされておりますが、単一試合投票の導入が選手に新たな緊張を生むものとなってはならないと、これは委員ご指摘のとおりだと思っています。

 私どもも、選手等の安全を確保することはスポーツ振興投票制度の運用に当たっての前提条件であると考えております。したがいまして、単一試合投票の導入に当たりましては、選手等の当事者の意見を十分踏まえて制度設計を行ってきたところでありますし、その実施に当たりましても、SNS上における批判についての相談支援をはじめとして、選手等の安全確保のための措置については万全を期していきたいと考えております。

山下よしき  終わります。




【反対討論】



山下よしき  私は、日本共産党を代表して、スポーツ振興投票の実施等に関する法律及び独立行政法人日本スポーツ振興センター法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 反対する第一の理由は、スポーツ振興投票の対象競技にバスケットボールを追加するとともに、射幸性を高め、八百長などの不正行為が入りやすくなるために除外されてきた単一試合、順位予想が追加され、スポーツの健全な発展やスポーツ本来の文化的、教育的役割をゆがめ、青少年を始めスポーツ関係者の人格形成やモラルに対する悪影響を拡大するおそれがあるからであります。

 単一試合を対象にしたくじは、仲間内で抵抗なく手軽に賭けが行われやすくなるなど、ギャンブルに対する意識の薄れや賭博を容認する環境の形成などの弊害が予想されます。どのような対策を取ったとしても、単一試合のくじは、購入者にとっては予想や賭けがしやすく、また選手や審判、チームにとっては給料面等で待遇が悪いあるいはクラブの経営が困難などの事情から八百長等の働きかけを受ける可能性がぬぐい切れず、不正行為が発生する余地があり、スポーツの健全な発展の妨げになりかねません。

 また、単一試合を対象としたくじは、当然スポーツの見方も変え、スポーツの持つ目標達成への努力の過程やフェアプレー精神をないがしろにし、金銭がらみの勝敗の結果のみにこだわる傾向を助長します。スポーツの観戦やSNS上の様ざまな情報発信が、スポーツの良さ、プレーへの称賛ではなく、試合での失敗やミスジャッジなどマイナス面をことさら強調し、いわれなき誹謗(ひぼう)中傷に選手や審判がさらされ、緊張関係や脅威を生むことにもなりかねません。文化として、また権利として発展しているスポーツをギャンブルにおとしめることになります。

 反対する第二の理由は、スポーツ振興の財源をもっぱらくじという賭博による国民からの収奪に頼り、貧困な国のスポーツ予算がさらに削減されることになりかねないからです。

 この間、スポーツ予算が必要になるたびに、射幸心をあおる高い賞金額のくじの販売や海外リーグの追加、事実上19歳未満への制限をなくすコンビニ販売やネット販売といったくじの拡大が続けられてきました。本法案で対象競技を追加するなどのさらなる拡大は、ますますスポーツ振興財源のくじへの依存を強めるものです。

 国が責任を持って国費でスポーツ予算を確保、増額するのが本来の道筋であると申し上げ、討論を終わります。
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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。