★原稿に思いを込めて
「彼らの〝誇り〟と〝悔しさ〟をつめこんで!」
東日本大震災の被災地、宮城県で起こった電機大手、ソニーの雇い止めを問題を菅直人首相相手に質問した際、質問原稿の余白に、力いっぱい書き込まれていました。
山下よしきさんは、自らを奮い立たせる意味も込めて、質問に臨む姿勢を原稿に記します。
ソニーは大震災から2カ月後、震災を理由に正社員280人を県外配転し、期間を限定して契約している従業員(期間社員)150人を雇い止めにする事業縮小計画を発表しました。期間社員の大半は二十代、三十代で、震災後、被災者でありながらも、ただちに工場にかけつけ、工場内の泥をかき出しました。やっと復旧のめどが立ち始めた矢先の解雇通告でした。
「彼らは身分こそ非正規だが志はプロフェッショナルだ。政府として大企業に雇用を守る社会的責任を果たさせること、雇用を守る中小企業を本気で支援することを強く求める」―。鬼気迫る山下さんの質問に他会派からも、「そうだ」の声が何度も上がりました。
質問終了後、質問を傍聴した期間社員の青年たちが山下さんのもとを訪れました。
「今回、(思いが)少し届いた気がしました。泣かないと思っていたけど、やっぱり…」と声を詰まらせる男性。力強くうなずきながら聞いた山下さんも、瞳が潤んでいました。
粘り強くたたかった期間社員らは、震災から1年が過ぎた12年4月、解雇を撤回させ、職場に復帰しました。「〝やった〟と思わず大きな声がでました。わがことのようにうれしい」と山下さん。
全参院議員のなかでトップを誇る184回(12年12月末)の質問の一つひとつには「胸のバッジは、みなさんの瞳」であり、自分は「代弁者」だという強い思いが込められています。雇用と労働、震災復興、子どもの貧困や生活保護バッシング、公立病院・医師不足、橋下・「維新」の憲法違反の「思想調査」など、国民目線で政府を追及してきたテーマは多彩です。
首相や大臣に真剣勝負で挑む国会論戦。山下さんはいいます。「論戦に負けない土台は何か。直接話を聞かせてもらった人たちの中にある真実です。首相や大臣はその声は聞いていない。僕ら議員が寄って立つものはそこなんです」
空調機器大手ダイキン工業による雇い止め撤回を求めてたたかう男性は、山下さんに初めて会ったときの驚きを隠しません。「話を聞かせてほしいと来られた時には、すでに調べ尽くしてありました。山下さんと話すなかで、これは自分たちだけの問題でない、非正規雇用の仲間全体の問題なんだという思いを強くしました」
労働者に話を聞くときは、一言一句残らずノートにメモするだけでなく、徹底してデータや情報を調べあげます。「僕らは当事者じゃないけれども、当事者に代わって質問する。生半可な知り方ではあきません。財界・大企業の側に立つ首相や大臣にも〝人としてこんなことを許していいのか〟と全力でぶつけたい」 (おわり)