公衆衛生維持向上のため、地方衛生研究所の独立行政法人化はやめるべき 
【議事録】 2013年5月9日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 今日は、地方衛生研究所の地方独立行政法人化について質問したいと思います。
 2009年、新型インフルエンザが大阪でも流行したときに、大阪府立公衆衛生研究所が新型インフルの陽性を確認いたしました。これは、公衛研がふだんから高い検査技術を維持し、国や保健所、行政機関との連携を取って業務を行っていたからこそできたことだと思います。
 さらに、2000年に発生した雪印低脂肪乳食中毒事件。食中毒の有症者数、実に1万4780名に達したわけですが、原因が特定できず、被害が拡大する中、国、大阪府、大阪市、保健所が一体となって調査を進めました。その中で、公衆衛生研究所は低脂肪乳に含まれていたごく微量の細菌毒素の検出方法を開発し、早期の原因究明に大きく貢献したわけであります。
 総務大臣に伺いますが、こうした公衛研の果たしている役割についてどう認識されているでしょうか。

新藤義孝総務大臣 都道府県及び指定都市において地域保健対策の推進、それから公衆衛生の向上、増進を図るために、調査研究、試験検査、研修指導及び情報収集、解析、こういった事務を行う機関としての地方衛生研究所が設けられているわけでありまして、今委員のおっしゃったようないろんな効用があったというふうに思います。
 地方の衛生研究所は、本庁部局や保健所との連携の下で、地域住民の方々の健康維持や生活の安全確保に関する役割を担っていると、このように認識をしております。

山下よしき 非常に重要な役割を担っております。
 資料に大阪府立公衆衛生研究所の業務の内容を配っておりますけれども、非常に多岐にわたる業務をこなしておられます。
 ところが、大阪府と大阪市は、この大阪府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所を統合した上で地方独立行政法人にすることを進めております。独法化ということになりますと効率化がやはり求められ、不採算であっても実施しなければならない検査や研究業務が除外されるのではないか、あるいは感染症の発生、食中毒の拡大などの健康危機管理に対応できなくなるのではないかなどを心配する声が関係者から非常に上がっております。
 ところで、厚生労働省、今日は副大臣来ていただいておりますけれども、厚生労働省が所管する国立感染症研究所は独法化されず国立で運営されておりますが、それはどういう理由からでしょうか。

秋葉賢也厚労副大臣 感染研の場合は、やはり国民の生命や健康を守るために、また今回も新型インフルエンザの問題等もございます。重篤な感染症が発生した場合の診断、あるいは治療や検査の方法などの開発、疫学調査を行うなど、国の重大な危機管理に直結する業務を行っておりますことから独法化をしておりません。
 そもそも、平成9年の行財政改革の中で出された答申の中にも、やはり災害の問題、あるいはこういった国民の生命にかかわる分野については例外規定のような報告書が出ているところでございまして、そういった取組をしているところでございます。

山下よしき そういう理由からなんですね。
 新藤総務大臣、現在、全国47都道府県とそれから指定都市などを合わせて79の地方衛生研究所が設置されております。この中で地方独立行政法人にした研究所はありますか。

新藤大臣 これまでのところございません。

山下よしき ないんですね。
 厚生労働省は、昨年7月、地方衛生研究所の機能強化について健康局長通知を出しております。その中で、地方衛生研究所を設置する自治体に対してどのような役割を求めているでしょうか。

秋葉副大臣 昨年7月の地域保健対策の推進に関する基本的な指針の改正におきまして、地方衛生研究所は、強毒性の新型インフルエンザ等の発生、広域化する食中毒の発生などの健康危機管理事案に対しまして迅速な検査体制の確立や検査精度の向上などが求められているということを踏まえまして、地域における科学的かつ技術的中核機関としてより一層充実強化を図るべきだということを盛り込ませていただいているところでございます。

山下よしき 今ありましたように、現在、国民は、鳥インフルエンザウイルス感染症、マダニ媒介感染症、それから風疹の大流行など、新旧入り交じった感染症の脅威にさらされております。こうした下で、健康危機管理ネットワークの一翼を担っている大阪府立公衆衛生研究所を独法化して、効率化が追求され地道な研究が切り捨てられるようなことになれば、これは住民の健康、安全を守り公衆衛生を確保するという地方自治体の責任が果たせるのかという問題があると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

新藤大臣 この地方の独立行政法人は、地域において確実に実施される必要のある事務事業であって、地方自治体が直接実施する必要はないものの、民間の主体に委ねては確実な実施を確保できないもの、これらを効率的かつ効果的に行うために設ける法人であって、この独法に丸投げするものではないということでございます。
 そして、地方自治体が行う地域保健行政は、この地方衛生研究所は本庁部局や保健所との連携の下で調査研究等の業務を行うと承知をしております。したがって、この地方独立行政法人制度の趣旨にのっとってこれらの業務を地方独立行政法人に行わせるとする場合においても、これまでどおりに保健所等の関係機関との緊密な連携、そして地域保健行政における役割、こういったものを果たしていくことが重要であると、このように考えております。

山下よしき これまでも独法化というのは検討されてきているんですね。私手元に、これは平成18年度厚生省の委託研究で、「地方衛生研究所のあり方および機能強化に関する研究」というのが出ております。大阪府立衛生研究所の所長さん、東京都の所長さん、国立感染症研究所のセンター長、あるいは各県の所長さん、副所長さん、これらの方々、専門家の方々が検討して、こうあります。「地研は将来の健康危機管理に備えた予見的な研究も実施している。日頃の地道な調査研究が、突発的な健康危機発生時において、医療や原因究明に大きな役割を果たしている。」と。
 これ、雪印の食中毒事件のときも、初めてのことなんです、原因が分からなかった。しかし、それを解明していく上で、大阪府立公衆衛生研究所の日ごろの不断の研究と蓄積がやっぱり役に立って、1万4000人出ましたけれども、それ以上発生しなくなったんですね。これは民間でできるのか、あるいは、独法になって効率化を優先させるようになって、日ごろの日常的な研究というものにしっかりとこれまでどおり取り組めるのかというのは物すごく大事なことです。だから今、地方の公衛研は全部公立でやっているんですね。独法化やったところないんですよ。
 御存じのとおり、地方独立行政法人の認可権限は総務大臣にあります。これ、もしここで大阪で独法化が進んじゃうと、こういう非常に大事な公衆衛生の危機管理のネットワークが綻びていくことにもつながりかねない、非常に重要な問題がありますから。私は、大阪府市統合本部が議論、見ましたけれども、会議録、専門家の方々が懇切丁寧に専門家の意見を出しているのに対して、もうとにかく結論は選択と集中だと、あるいは大阪では生レバーを食べれるようにするために仕事したらええんやとか、非常に僕は乱暴だと率直に言って感じましたよ。
 だから、本当にこれは最後の歯止めを掛ける上で、私はこんな公衛研の独法化はやめるべきだと思いますが、これしっかりと本当に機能が果たせるのかどうか。私は慌てるべきじゃない、ストップ掛けるべきだと思いますが、いかがですか。

新藤大臣 地方の衛生研究所を独立行政法人化する、それに対しては今いろんな御意見がありました。御心配があるとするならば、そういう心配に10分に配慮したものとならなければいけないと、これは当然のことであると思います。その上で、住民の不安や行政の目的達成、こういったものを前提としつつ、この独法の、地方の独立行政法人、これの法律の規定に基づいて我々とすれば対応してまいりたいというふうに思います。

松あきら総務委員長 時間が来ておりますけれども。

山下よしき 一言。
 これは非常に全国的な問題でありますから、地方が決めることだからということでは済まない。許認可の権限は総務大臣ですが、関係の法令と照らし合わせて認可することになっていますから。これはもう、公衆衛生がちゃんと維持されるかどうか、これが一番の物差しでなければならない、そのことを申し上げて、質問を終わります。

About 山下よしき 364 Articles
日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。