若者を使いつぶす=ブラック企業の規制緩和するな 
【議事録】 2013年5月14日 参議院予算委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 ブラック企業について質問します。
 かつては暴力団のフロント企業という意味で使われたブラック企業という言葉ですが、今は違います。新卒の若者を正社員として大量に採用し、過大な業務を与え、長時間労働やパワーハラスメントなどで短期間のうちに企業に極端に従属する人間に変えてしまう、その過程で若者は選別され、精神を病むなどして大量に退職に追い込まれる、そういう企業を若者たちがブラック企業と呼ぶようになっています。そのブラック企業が今や有名企業にまで広がっています。
 私は、3月の代表質問で、政府としてブラック企業の実態を調査すること、背景にある長時間労働を規制することを求めました。総理は、厳正に対処すると答弁されました。
 総理、その後どんな対策を取られましたか。

安倍晋三首相 労働基準法の違反などが疑われる企業には調査に入り、長時間労働の抑制を指導し、重大な法違反については厳正に対処するなど取り組んできたところであります。
 特に、過重労働が疑われる事業場への重点的な監督指導を労働基準監督署に改めて徹底をするなど、そうした対応をしているわけでございますが、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと、このように考えております。

山下よしき 今やブラック企業は社会問題になりつつあります。就職活動中の学生はもちろん、その親たちも子供の就職先がブラック企業ではないかと不安を抱くようになっています。ですから、これ早急な対策が必要だと思うんですね。
 ブラック企業と言われている企業で、若者たちはどんな働かされ方をしているか。4月23日、朝日新聞は、大手衣料品販売店ユニクロの柳井正会長のインタビューとともに、ユニクロで働く若者たちの実態をリアルに報じました。
 ユニクロでは、新卒社員が入社後3年以内に退社する割合が50%に達しています。休職している人のうち42%がうつ病などの精神疾患だといいます。ある20歳代の男性元社員。会社が決めた勤務時間の上限ではとても仕事を消化し切れず、サービス残業の毎日、繁忙期の勤務は月300時間を超えた、周囲にはうつ病になって突然出社できなくなる同僚がいた、このままでは自分も精神状態がもたないと退社を決めた。別の20歳代の元店員。膨大な仕事量と店長代理の資格試験の重圧に押し潰されそうだった、休日も厚さ十センチほどのマニュアルの勉強に費やし、入社8か月後にうつ状態と診断され退社したなどの例が載っております。
 わが党も独自に調査をいたしました。
 ある20歳代のユニクロの元店長は、去年の4月に入社をし、9月に店長に合格をしました。大学を卒業して僅か半年で、店舗の売上目標達成からアルバイトの管理まで過酷な労働が強いられました。12月にはうつ状態となって休職し、3月に退職をしています。学生時代、彼と同じ部活動だった友人たちは、あの人、人間変わっちゃったね、前はもっといい人だったのにと、その変貌ぶりに驚いていました。
 ユニクロだけじゃありません。大手居酒屋チェーン店、IT関連企業等々でも同様の事態が広がっております。高校、大学と一生懸命勉強し、多額の費用を掛けてようやく卒業し、正社員として就職できた若者が、家族にも良かったねと喜んでもらった若者が、何年もたたないうちにうつ病などで退職に追い込まれる。若者の能力を生かすのではなくてすり潰す、若者を育てるのではなくて人間を壊す、私はこんなことを許す社会であってはならないと思いますが、総理の認識、いかがでしょうか。

安倍首相 それはまさに私もそのとおりだと思うわけでございまして、人材として若者を採用した以上は、経営者も責任を持ってそうした人材を育てていくという姿勢が求められているだろうと、このように思います。

山下よしき 大事な御答弁だったと思います。
 ブラック企業と言われる企業で働いていた元社員の若者に是非実態を聞かせてほしいと連絡を取りますと、その多くは是非聞いてくださいと、こう言うんです。しかし、実際、当日になると、体調が悪くて家から出られません、こうなる人が多いんですね。会社のことを思い出すと苦しくなるんでしょう。いつまでも尾を引いている。まさに人間が壊され、人生が壊されていると、そう思いました。
 私は、ブラック企業根絶のために二つの緊急提案をしたいと思います。
 一つは、政府として、各企業の新入社員の離職率を調査し、離職率の高い企業については企業名を公表すること。もう一つは、企業が採用募集する際に、現在、賃金、勤務時間、勤務場所、休日などを明示することが義務付けられていますが、それに加えて新入社員の離職率の明示を義務付けること、これだけでも学生の皆さんには大事な情報提供になると思います。
 総理、このくらいはやらなくちゃ駄目なんじゃないでしょうか。

安倍首相 先ほど答弁させていただきましたように、違反が疑われる企業には調査に入って長時間労働の抑制を指導し、また過重労働が疑われる事業場に対する重点的な監督指導を行い、重大な法違反については厳正に対処しているわけでありますが、一方で、御提案について申し上げると、若者の離職率に対する調査によれば、若者が離職する理由には、仕事上のストレスが大きい、あるいは労働時間が長いといったものがある一方で、給与に不満、会社の将来性、安定性に期待が持てない、あるいはまたキャリアアップするためなど、様々な理由があるのも事実でございます。
 御提案は、言わば雇用する際に離職率を学生たちに対して示すという御提案なんだろうと、このように思うわけでございますが、単に離職率が高いことをもって労働関係の法違反が生じていると考えることはなかなか難しいわけでございますが、一方、今御提案にあった、若者たちが就職する際に様々な情報をあらかじめ取得をして、その上で参考にしながら就職をするということについては研究をさせていただきたいと、このように思います。

山下よしき 是非早急に検討いただきたいと思います。
 若者を大量に採用した上で使える者だけを選別して、残りは自己都合退職に追い込む、僅か数年間で体力を消耗し尽くし退職していくことを織り込んで労務管理を行う、あたかも摩耗した部品を交換するように新しい若者に取り替える、こういうやり方の企業経営が成り立つのはなぜか。代わりは幾らでもいるからなんですよ。今や若者の2人に1人は非正規雇用となり不安定で低賃金な働き方を強いられておりますが、それが新卒の若者たちを正社員を目指す過酷な競争に駆り立てております。
 歴代政府の規制緩和によって非正規雇用が増大したことがブラック企業が広がる土壌となっている、総理、そういう認識はありますか。

安倍首相 自民党政権においては、経済産業構造の変化に対応して必要な労働分野の改革を行ってまいりました。こうした中で、非正規雇用については、近年、労使双方のニーズによりこれは増加をしているわけでありますが、厳しい経済状況の中、我が国の失業率の上昇を抑えたという側面もあるということは指摘されているところでございます。また、労働規制については、現在、産業競争力会議や規制改革会議の場で、それぞれの設置目的に沿って自由闊達に議論をいただいているところでございます。
 政府としては、関係各層の御意見も踏まえながら、その適否を含めて今後検討をしていきたいと、このように考えております。

山下よしき 労使双方のニーズという言葉がありましたけど、とんでもないですよ。多くの非正規で働く若者は、正社員になりたくてもなれないから今派遣や期間社員で働いているんですよ。
 自民党政権の労働の規制緩和によってどうなったか。1990年50万人だった派遣労働者が2008年には400万人、8倍に増えております。こういう下で新卒の若者たちが正社員を目指す苛烈な競争に駆り立てられ、いつでも代わりはいるんだという事態をつくっているんですよ。あなた方がつくったという自覚を私は持つ必要があると思います。
 重大なことは、安倍内閣の下で新たな労働の規制緩和が検討されていることです。パネルにいたしました。(資料提示)
 もう時間ないので特徴だけ言いますけれども、解雇を自由化し、残業代ゼロで長時間労働を野放しにし、非正規雇用を増大させる、こういうメニューがずらっと並んでおります。こんな労働の規制緩和を進めたら、ブラック企業根絶どころか、逆にますます拡大することは明らかじゃありませんか。総理、やめるべきじゃありませんか。

安倍首相 これは、誤解されたらいけないんですが、安倍政権が進めていることではありません。解雇自由化なんということは全く考えてはおりませんし、当然、残業代ゼロ、長時間労働野放し、こんなことも全く考えていないわけでございますし、非正規雇用増大、こんなことも全く考えてはいないわけでございまして、我々は今、経済の状況が大きく変化をしていく中において、グローバルな競争に我が国の企業も勝ち残っていかなければならないというのが現実でございます。
 この現実の中において、これは労使双方の中においてニーズに対応する中において、日本の企業が生き残る中において何とか雇用を確保していきたいと、こう考えているわけでございまして、しかし、その中においても、非正規雇用者の方々が正規に移っていきたい、そういう希望を持っておられる方々がそういう希望を達成できるような、そういう夢を達成できるような道はしっかりとこれは広くしていく必要があるだろうと、このように考えているところでございます。

山下よしき 全く考えていないとおっしゃいますけど、安倍内閣の下で産業競争力会議や規制改革会議に参加している委員の皆さんが、これ資料として出しているんですよ。そこにこういうメニューがずらっとあるんですよ。それはどうなるかというと、解雇自由であり、残業代ゼロ、長時間労働野放し、非正規雇用増大になるようなメニューがいっぱいあるんですね。
 私は、一企業の目先の利益のために若者たちを使い潰す、そんなことを許す社会には未来はないと思います。実効あるブラック企業対策を緊急に実施すること、そしてブラック企業を更に拡大する雇用の規制緩和を中止することを強く求めて、質問を終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。