日本共産党の山下芳生書記局長は28日のNHK「日曜討論」に出演し、戦争法案について各党の幹事長らと討論しました。
自民党の言論弾圧
勉強会での発言は報道の自由を規制する暴論、沖縄への侮辱だ
最初に、25日に開かれた自民党議員の勉強会で、言論弾圧をあおる暴言や沖縄県民への侮辱が相次いだことについて問われました。
自民党の谷垣禎一幹事長は当初、「党の姿勢を誤解させるような発言だった」と述べるにとどまりました。これに対して山下氏は厳しく指摘しました。
山下 出席議員や講師の作家(百田尚樹氏)から、マスコミに対する言論規制を求める暴論が相次ぎました。こういう勢力に安保関連法案=戦争法案を扱う資格はないといわざるをえません。戦争法案は憲法9条を踏みにじって、日本を海外で戦争する国につくりかえる、違憲立法にほかなりません。だから審議が進めば進むほど、国民の反対の声が広がっていく。こういう法案は撤回・廃案するしかない。
「誤解を与えた」と繰り返し謝罪を口にしない谷垣氏に、山下氏はさらに迫りました。
山下 一連の発言は言論の自由への挑戦であり、沖縄県民に対する侮辱です。谷垣さんも事実確認をされた。そうだとすると、安倍総理は自民党総裁として国民と沖縄県民に謝罪すべきだと思いますよ。それをやらないのですか。
谷垣 私は党の責任者として、たいへん申し訳なかったという気持ちを踏まえて(勉強会出席者への)処分をいたしました。
谷垣氏は「申し訳なかった」と謝罪をせざるをえませんでした。安倍晋三首相の責任については最後まで避けました。
野党各党からも、「出席した加藤勝信官房副長官が、(百田氏の発言を)『拝聴に値する』と述べた。首相の責任は大きい」(民主党・福山哲郎氏)、「数におごっている」(維新・柿沢未途氏)、「猛省を促したい」(次世代・松沢成文氏)など批判が相次ぎました。
集団的自衛権
一内閣の解釈で憲法を踏み破ることは立憲主義の否定
続いて、歴代政府が憲法上、できないとしてきた集団的自衛権の行使を容認したことについて、「憲法違反」との指摘が相次いでいることが議題になりました。
福山氏は、安倍首相が1959年の最高裁砂川判決を集団的自衛権行使容認の根拠だと発言していることを批判。谷垣氏は、「砂川判決の読み方にはいろいろな考え方がある」とした上で、「日本が本当に危なくなったら、何もできないはずはないという基本論理は、(現在の)内閣法制局の見解にも入っている」と正当化しました。山下氏はこう指摘しました。
山下 憲法9条1項で戦争放棄、2項で戦力の不保持・交戦権の否認を明記しています。その下で、歴代政府は「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力であり、戦力にあたらないから憲法違反ではない」という説明をし、付随して「海外での武力行使は許されない、集団的自衛権の行使も許されない」という憲法解釈を踏襲してきました。72年の政府見解も、憲法9条の下で集団的自衛権の行使はできないことを説明するために当時の政府が出した見解です。ところが、全く同じ見解を、憲法9条の下でも集団的自衛権の行使ができるという説明に使いだした。こんなご都合主義はありません。一内閣の解釈で憲法を踏み破るようなことは、法的安定性どころか立憲主義の否定です。
外相は存立危機事態の具体例示せず――憲法解釈変更の理由なし
さらに、こう続けました。
山下 砂川判決から、集団的自衛権の行使を容認するような帰結は出ようがない。判決は自衛権についてふれてはいますが、「わが国が、自国の平和と安全を維持し」と、はっきり書いてあります。「わが国」「自国」とあるのですから、「他国防衛」のための集団的自衛権容認の解釈の余地はないとはっきりいっておきたい。
それでも谷垣氏は「(集団的自衛権の行使容認には)憲法9条改正が理想的だが、戦略環境の変化を考えると、解釈の変更もやむをえない」として、安全保障環境の変化を口実に挙げました。山下氏は反論しました。
山下 「安全保障環境が変化した」というのが、半世紀にわたって集団的自衛権の行使はできないとしてきた憲法解釈を百八十度変える唯一の理由なのです。
わが党の議員が国会で、「国際情勢が根本的に変容したというけど、他国に対する武力攻撃で、自国の存立が脅かされる存立危機事態に陥った国が世界で一つでもあるのか」と質問しましたが、1週間検討した結果、岸田文雄外相は一つも具体例を示せませんでした。これは立法事実そのものがない、憲法解釈を変更する理由がないということではありませんか。
憲法違反の戦争法案
230人を超す憲法学者が廃案を要求、聞く耳は持たぬという態度は傲慢・不遜
さらに、多くの憲法学者や元内閣法制局長官らが、戦争法案は「憲法違反」だと指摘していることについて問われました。
山下 (政府の姿勢は)冒頭の自民党の会合と共通するものがありますよ。異論や批判に耳を貸さない態度が問われていると思います。歴代の内閣法制局長官や、230人を超える憲法学者が、この戦争法案は違憲だとして廃案を求めているわけです。これに対して、「決めるのは学者でない」などという態度は傲慢(ごうまん)かつ不遜(ふそん)だといわなければなりません。しかも、自民党の勉強会の講師や、自民党政権の法制局長官といった方々もこのような意見をされています。これに聞く耳持たずの態度は、改めるべきです。
審議をすればするほど戦争法案の違憲性ははっきりしてきた
最後に、安倍首相が戦争法案について、「決めるときには決める」と述べて今国会成立の考えを明言したことについて問われました。番組では、6月5~7日実施のNHK世論調査を紹介。政府が法案について「十分説明している」は7%、今国会成立を求める人も18%です。
谷垣氏は「誠心誠意、理解を得たい」としつつ、「決めるときに決めるというのはそのとおりだ」として、今国会成立に固執しました。山下氏はこう批判しました。
山下 集団的自衛権以外でも、審議すればするほど違憲性がはっきりしてきています。たとえば、従来は行けなかった「戦闘地域」に自衛隊を送って、(米軍への)武器弾薬の輸送など「後方支援」=兵たんをするということですが、そうなれば当然相手から攻撃され、武器を使用すると安倍総理は認めました。(志位和夫委員長が)それでは(憲法が禁じる、海外での)戦闘になると指摘したのに対し、(総理は)「自己保存のための武器の使用は武力の行使に当たらない」、「他国の武力行使と一体化しない」などと弁明しましたが、このような概念は国際法上、存在しないことは政府も認めました。もう破綻した議論です。