○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
今年は、戦後70年の節目の年に当たります。日本共産党は、日本が行った侵略戦争と植民地支配によって犠牲となった内外の人々に深い哀悼の意を表するとともに、過ちを2度と繰り返さない決意を新たにするものであります。
総理は、8月14日、安倍談話を発表されました。そこには、侵略、植民地支配、反省、おわびなどの言葉はちりばめられていますが、侵略と植民地支配を行ったのは誰なのか、主語がありません。戦後50年の村山談話に示された、日本が国策を誤り植民地支配と侵略を行ったという歴史認識は、全く語られておりません。反省とおわびも、過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、安倍総理自らの言葉としては語られておりません。そこで、総理自身の歴史認識を今日は聞きたいと思います。
まず、植民地支配について聞きます。
私は、植民地支配というのだったら、どの国がどの国を支配したのかが肝腎要だと思います。総理は、日本が植民地支配を行ったという認識をされているのでしょうか。
○安倍晋三内閣総理大臣 21世紀構想懇談会の報告書においては、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして戦争への道を進む中において、1930年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されています。懇談会において有識者の方々が共有した認識、その報告書の上に立って今回の談話を作成したわけであります。
戦後、全ての民族に自決の権利が認められるべきだという考え方が国際社会の大きな目標となりました。そうした国際的な流れの中で、日本も自らの過去を振り返り、植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界をつくっていくことを強く決意しました。今回の談話においては、そのことと併せて、過去の植民地支配も含め、さきの大戦における行いについて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明した歴代内閣の気持ちについて、私の内閣においても揺るぎないものとして引き継いでいくことを明確にしたところでございます。
○山下よしき 今、懇談会の報告書では明記されているという御答弁でしたが、私は安倍談話を幾ら読んでもその主語を見出すことはできませんでした。
そこで聞いているんですけれども、総理は日本が植民地支配を行ったという認識をお持ちなんですか。
○安倍首相 この談話については、言わば談話全体が一つのメッセージになっているわけでございますから、一つ一つを切り取って、それを一部分だけを切り取って議論するのは、より幅広い国民とメッセージを共有するという観点からは適切ではないと、こう考えるわけでありますが、今回の談話作成に当たりましては、様々な有識者の方々にお集まりをいただきまして、21世紀構想懇談会の中で様々な議論をいただいたわけでございます。当然、それぞれ視座は異なったわけでございますが、その中において共通の一つの認識が示されたわけでございまして、それは今申し上げたとおりでございまして、21世紀構想懇談会の報告書においては、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして、戦争への道を進む中において、1930年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されているわけでございまして、この談話を発表する冒頭申し上げたとおり、私はこの報告書を歴史の声として受け止めたいと思いますと、こう述べたところでありまして、この報告書の上に立って今回の談話を発出したところでございます。
○山下よしき 報告書の上に立ったのに、なぜ安倍談話では日本が植民地支配を行ったという認識が示されていないのか。歴代の政権は示しておりますよ。村山内閣は談話で、我が国が国策を誤り、植民地支配と侵略を行ったと、日本が植民地支配を行ったということをはっきり述べておりますよ。それが述べられていないんです、安倍談話には。
そういう認識、総理自身にないんですか。
○安倍首相 今回の談話作成に当たりましては、例えば今御紹介をいただいた村山談話における国策を誤りといった抽象的な用語で終わらせず、どのように針路を誤ったのか、歴史の教訓を具体的に酌み取らなければならないと考えました。ただし、政治は歴史に謙虚であるべきとの考え方の下、その具体的な作業については、21世紀構想懇談会を設け、有識者の皆さんに行っていただいたわけであります。
その報告書の上に立って、今回の談話においては、第1次世界大戦後、戦争自体を違法化する新たな国際社会の潮流が生まれる中で、当初は日本も足並みをそろえたが、世界恐慌が発生し、経済のブロック化が進むと、日本経済は大きな打撃を受け、その中で日本は孤立感を強め、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって解決しようと試みた旨述べた上で、満州事変、そして国際連盟からの脱退、日本は次第に国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした新しい国際秩序への挑戦者となっていった……
○岸宏一予算委員長 簡潔な答弁をお願いいたします。
○安倍首相 進むべき針路を誤り、戦争への道を進んでいきましたと記しているわけでございます。
○山下よしき 幾ら聞いても、肝腎要のことは答えられません。なぜ安倍談話に日本が植民地支配を行ったという認識が示されていないのかと聞いても、お答えはありません。
私は、じゃ、角度を変えますが、日本がどの国に対して植民地支配を行ったのか、これは非常に大事ですが、その認識、総理はありますか。
○安倍首相 これは先ほども申し上げましたように、21世紀構想懇談会の報告書において、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして戦争への道を進む中において、1930年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されているわけでありまして、この懇談会の報告書を歴史の声として受け止め、その上において今回談話を発出したところでございます。
○山下よしき 受け止めたのになぜはっきり書かないのかということを聞いているんですよ。
歴代の政権は、そのことについてもはっきり語っております。村山談話の翌年、1996年2月16日、自民党の橋本龍太郎総理は参議院の予算委員会で次のように述べております。
韓国併合につきましては、昨年11月、村山前総理が金泳3韓国大統領に宛てた書簡におきまして、韓国併合条約における植民地支配の下において朝鮮半島地域の方々に耐え難い悲しみと苦しみを与えたことにつきまして、深い反省と心からのおわびの気持ちを抱いていることを表明されたと記憶いたしております、私としても同様でありますと。橋本総理は、韓国併合条約によって日本が朝鮮半島を植民地支配したという認識をはっきり自分の言葉で国会で述べております。
総理、あなたも同じ認識ですか、それとも違うんですか。あなた自身の言葉でお答えください。
○安倍首相 談話においては、「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」と明確にしているところでございます。
○山下よしき 全く答えていないですよ。総理、ちゃんと自分の言葉で答えてくださいよ。
橋本総理も、朝鮮半島を日本が植民地支配したとはっきり認識を述べました。私は、報告書で何を書いているかを聞いているんじゃありません。安倍談話にはそれがないんです。だから、安倍さん自身がそういう認識があるのかどうか、はっきりお答えください。
○安倍首相 今回、専門家の皆さんにお集まりをいただいて、そして21世紀構想懇談会の中で様々な御議論をいただき、一定の共通認識を得るに至ったわけでございます。その上において、それを一つの歴史の声として受け止め、それを前提に今回談話を作成し、それを閣議決定したわけであります。つまり、この談話が全てでございまして、その中からお酌み取りをいただきたい。
今申し上げましたように、「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」、つまり、それは全く変わりがないわけでございます。(発言する者あり)
○岸予算委員長 速記を止めてください。
〔審議一時中断〕
○岸予算委員長 速記を起こしてください。
それでは、山下さん、もう一度質問してください。
○山下よしき これは、橋本総理だけじゃないんですね。1998年10月8日、自民党の小渕恵3総理は、訪日した金大中韓国大統領とともに日韓共同宣言を発表いたしました。そこには、「両国が過去を直視し相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことが重要」ということを述べた上で、「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。」とはっきり書かれてあります。小渕総理もまた、日本による植民地支配によって韓国国民に多大な損害と苦痛を与えたということをちゃんと語っているんですね。
総理は、先ほどから何遍聞いても総理自身の言葉でそのことを語らない。これまでの歴代政権の認識を引き継ぐと言われますが、全く違うじゃないですか。もう一度答えてください。
○安倍首相 まさに談話で、安倍内閣の談話で示しているとおりでございます。
まさに、ここに書いてありますように、事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう2度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。さきの大戦への深い反省、さきの大戦への深い悔悟の念とともに、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国をつくり上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動な方針を、これからも貫いてまいりますと述べているわけでありまして、そして、その上において、まさにこれは私が総理大臣として、安倍内閣として談話として発出したものでありますから、これはそのままお受け取りいただきたいと、こう思うわけでありまして、我が国は、さきの大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピン始め東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。
まさに安倍内閣においても揺るぎないものでありますし、今後もそれは揺るぎないであろうということをここに述べたものであります。(発言する者あり)
○岸予算委員長 速記を止めて。
〔審議一時中断〕
○岸予算委員長 速記を起こして。
○山下よしき じゃ、もう一回だけ聞きますね。
有識者懇談会の報告書には、日本が植民地支配したとはっきり書いてあるんです。何でそれを安倍談話では削ったんですか。何でそれを書かないんですか。なぜ安倍総理自身の言葉で語らないんですか。それを言ってください。
○安倍首相 今回なぜ有識者懇談会をつくったかということでありますが、言わば政治は、政治は……(発言する者あり)まず、ここから話をしなければ御理解いただけないのではないかと思います、残念ながら。
○岸予算委員長 静粛に。
○安倍首相 まず、政治は歴史に謙虚でなければならないということであります。それは常に、一つは、政治は歴史から知恵を学ばなければならないということであります。同時に、歴史を見るときに、政治的、外交的な配慮をすることによって事実をねじ曲げてはならないということであります。だからこそ、政治は歴史に謙虚でなければならない。そういう観点から、今回、まさに様々な視点を持つ方々にお集まりをいただいて議論をしたわけでございます。
そして、そこで出された提言について、先ほど申し上げましたように、それを歴史の声として受け止めたということを申し上げたわけであります。その声を私は総理大臣として受け止めたわけであります。その声を受け止めて、まさにその受け止めた上において今回談話を発出したところでありまして、まさに先ほど述べたように、さきの大戦への深い悔悟の念とともに我が国はそう誓ったわけでありまして、そして、こうした歴代の立場は、安倍内閣もそうでありますが、今後も揺るぎないということを述べているわけでございます。
○山下よしき 全く答えになっておりませんよ。
ただ、唯一、一つだけ答えがあったのは、政治は、言葉を発するときに政治的影響を考えなければならないということだけでした。
ということは、橋本総理、小渕総理は、日本が朝鮮半島を植民地支配したとはっきり言っていますよ。これ、政治的配慮が足らなかった、間違いだったということですか。
○安倍首相 それは、それぞれの総理の見識においてなされた発言だろうと思います。
○山下よしき 何遍聞いても、そのことを言いません。結局、肝腎なことははっきり答えないんですよ。引き継ぐと言いながら、日本が朝鮮半島を植民地支配したという核心部分については一切語らない、一番大事な点は引き継いでいないということがはっきりしたと思います。
安倍談話は、さらに、日露戦争と植民地支配の関係について触れております。
では、日露戦争が朝鮮半島の人々に何をもたらしたのか。日露戦争と朝鮮半島の植民地支配の関係について、総理の認識を伺いたいと思います。
○安倍首相 この談話の中において、2つ目のパラグラフ以降、100年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていた。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、19世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配の下にあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけたということで、言わば、当時の多くの西洋諸国の下の植民地の人々が、自分たちはなかなか独立できないのではないかという人々に対して勇気を与えたという事実を書いたわけでございます。
それと、この日露戦争の結果と朝鮮半島との関係につきましては、これはもう史実にあるとおりでございます。
○山下よしき その認識を聞いているんですよ。それ答えられないんですか。
○安倍首相 ここで一つ一つの歴史的な事実について委員と議論することは差し控えたいと思いますが、この表現については、言わば朝鮮半島との関係で申し上げたわけではなくて、まさにパラグラフ全体を見ていただければお分かりのように、100年前は広大な植民地が広がっていた、西洋諸国が圧倒的な技術による優位を生かして多くの国々を植民地支配をしていた中にあって、日露戦争が植民地支配下にあった人々に対して勇気を与えたという事実を述べたのみでございます。
○山下よしき そのアジアの人々の中に朝鮮は入っているんですか、朝鮮の人々は。
○安倍首相 これはまさに多くの人々ということで、一般的に表現したものでございます。
○山下よしき 答えられないんですね。当たり前だと思いますが。
朝鮮半島の植民地化がどのように進められたのか。明治の初めから、日本は清国やロシアと競いながら武力で朝鮮宮廷を脅迫して、計画的に朝鮮を植民地としていきました。1895年、日本の朝鮮支配に反対する中心人物だった朝鮮の王妃閔妃を日本の公使の命令で殺害します。日露戦争が開始された1904年、日本は首都漢城、現在のソウルを軍事占領し、日韓議定書を強要して日露戦争への協力を韓国に約束させます。そして、第1次日韓協約を強要し、韓国の財政と外交の事実上の実権を握ります。翌1905年、日露戦争の勝利をてこに、第2次日韓協約、いわゆる韓国保護条約を押し付け、外交権を完全に取り上げるということもやりました。同時に、韓国に日本の総監府なるものを置いて、もはや独立国とは言えない属国化を進めたのであります。その直後の1906年から11年にかけて、韓国の植民地支配に反対する反日義兵闘争が起こりますが、これに対する日本の弾圧によって犠牲となった方々は4万人に上ると言われております。こうして、朝鮮、韓国人民の抵抗を抑圧しながら、1910年、韓国併合条約によって韓国、朝鮮の植民地化を完成させたわけであります。
この歴史的事実を踏まえるならば、日露戦争は朝鮮半島の植民地支配を進める重要なポイントだった。総理にその認識はありますか。
○安倍首相 日露戦争についてのこの記述については、先ほど申し上げましたように、今回、言わば世界史の中で日本はどういう立場にあったのかということから記述を説き起こしたわけであります。
21世紀構想懇談会においても、日本の歴史だけを見る、あるいは日本や周辺国との関係だけで歴史を見るのではなくて、世界史的な視点から歴史を見ながら、日本はどう行動を取ってきたのか、どこで日本は政策を誤ったのかということを明確にすることを言わば中心的な議論としたところでございます。
そういう中におきまして、まさに100年以上前は世界には広大な植民地が広がっていたという歴史的な事実を述べ、その中で日本はどのような行動を取ったか、そして日露戦争がどういうインパクトをもたらしたかということについて記述をしたわけでございます。
○山下よしき 朝鮮半島の植民地化と日露戦争との関係については、何遍聞いてもお答えがありません。
歴史の事実ははっきりしております。日露戦争直後の1905年、保護条約はどのようにして締結されたのか、伊藤博文が憲兵を引き連れて宮廷に押し入って強引に調印させたものです。宮廷の外では、日本軍が演習と称して大規模な軍事的威嚇をやりました。退出しようとした大臣をつかまえて、伊藤博文が余り駄々をこねるようならやってしまえと脅し付けながら、文字どおりの強圧的なやり方で従属化を図りました。伊藤博文は韓国の皇帝に、この条約をのまなければ、これまで以上の困難な境遇になり、一層不利益な結果になることを覚悟せよと迫ったことを日本の天皇に対して報告しております。
日露戦争が暴力と強圧によって韓国の植民地化を進める重要なポイントとなったことは歴史の事実ですよ。そのことを総理は一切認めない、そんなことで、先ほど日露戦争がアジアの人々を勇気付けた、よくぞ言えたものだと、とんでもない認識だと言わなければなりません。
私は、歴代政権が述べている日本の植民地支配による多大な損害と苦痛とは何か、これにもしっかりと思いをはせる必要があると思います。朝鮮半島の人々は、自分たちの言葉を使うことを禁じられ、日本語の使用を強要されました。創氏改名で名前まで変えさせられました。さらに、徴兵検査によって日本兵として戦場に駆り出され、本人の意に反して日本軍慰安婦となることを強要されました。
総理、日本の植民地支配によってこうした損害と苦痛を与えたという認識が総理にはありますか。日本の植民地支配によってもたらされたものだと認識ありますか。
○安倍首相 それはこの談話にあるとおりでございまして、この談話にありますように、「我が国は、先の大戦における行いについて、」でございまして、行いとは、まさにさきの大戦への深い悔悟の念として日本が胸に刻んでいる、そう誓ったものでございまして、その中で国名を挙げているわけでありまして、「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」と、このように述べているわけでございます。
○山下よしき ばらばらになっているんですよ、安倍談話は。村山談話は、日本が国策を誤って植民地支配と侵略をしたことによってアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたことを反省しているんです。ばらばらじゃないですか。総理に幾ら聞いても、日本が植民地支配をしたという認識を示されない。
私は、植民地支配によって国を奪い、言語を奪い、名前すら奪ったことを日本国民は忘れてはならないと思います。それを両国の共通の歴史認識とすることが未来にとって重要であると思います。だからこそ、村山談話はそのことを主語もはっきりして述べているんですね。歴代内閣の立場は揺るぎないとしながら日本が植民地支配を行ったという歴史認識を語らない、これは欺瞞だと言わなければなりません。
こうして植民地支配を、朝鮮半島における植民地支配を足場にして、日本は、中国、アジア太平洋地域へと侵略戦争を拡大していきます。
総理にその点について聞きます。日本が中国、アジア太平洋地域に対して行った戦争、1931年、満州事変、1937年、日中全面戦争へと続き、1941年、アジア太平洋戦争に拡大した戦争は侵略だったのか、そうではなかったのか、総理の認識を端的に伺います。
○安倍首相 今回の談話は、21世紀構想懇談会において有識者の方々が共有した認識、その報告書の上に立って作成したものであります。
報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと私も思います。だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉を挙げた上で、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としてはもう2度と用いてはならないことを、さきの大戦への深い悔悟の念とともに誓ったわけであります。
さきの大戦における日本の行いが侵略という言葉の定義に当てはまれば駄目であるが、当てはまらなければ許されるというものではないわけでありまして、かつて日本は、世界の大勢を見失い、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって打開し、あるいはその勢力を拡大しようとしたわけであります。その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが今回の談話の最も重要なメッセージであります。その上で、具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては歴史家の議論に委ねるべきだと思うわけであります。
重要な点は、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としてはもう2度と用いてはならないということでありまして、これが私たちが過去から学び、教訓とし、反省すべきことであります。
○山下よしき ここでも明確な答弁がありませんでした。私は、中国、アジア太平洋地域に対して日本が行った戦争が侵略なのかそうでないのかと総理の認識を問いましたが、はっきりした答弁はありませんでした。談話の中にもそのことは書かれておりません。
しかし、この点でも歴代の政権とは違うんです。歴代内閣は中国に対する侵略をはっきりと認めてまいりました。小渕総理は、1998年11月26日、訪日した江沢民中国主席とともに日中共同宣言を発表いたしました。そこには、双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える、日本側は、1995年8月15日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに深い反省を表明した、こうはっきり述べております。
総理、歴代の内閣の立場は今後も揺るぎないと言うんだったら、日本による中国への侵略が中国国民に多大な災難と損害を与えたということをなぜ安倍談話に書かないんですか、なぜ総理自身の言葉で語らないんですか。
○安倍首相 先ほど申し上げたとおり、報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと私も思いますと先ほど述べたとおりでございます。その上において、ここに書いてありますように、事変、侵略、紛争。いかなる武力の威嚇や行為も、国際紛争を解決する手段としては、もう2度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。さきの大戦への深い悔悟の念とともに、我が国は、そう誓いましたと。こう述べているわけであります。
ここから、当然、我々のさきの大戦における反省、教訓が酌み取られると、このように思います。
○山下よしき はっきり答えないんですね、侵略と。これまで村山談話でも、それから今申し上げた小渕総理の日中共同宣言でも、日本が中国に対し行った侵略とはっきり書いているんですよ。なぜこれまで述べたことを安倍談話では述べないのか、なぜ安倍総理自身の言葉で語らないのか。
私は、幾ら反省、2度と繰り返さないと言っても、日本が過去に行った戦争が侵略だったというはっきりした認識に立たなければ、これは同じ過ちを繰り返すことになるじゃありませんか。歴代内閣の立場は今後も揺るぎないとしながら、具体的な戦争についての認識を問うと歴史家の議論で逃げる、これも私は欺瞞だと言わなければなりません。
結局、総理は、日本が行った植民地支配も侵略もはっきり認めませんでした。自分自身の言葉で語りませんでした。そして、自分自身の言葉で深く反省し、謝罪することもされませんでした。結局、安倍談話というのは、村山談話以降の歴代内閣が表明してきた立場を事実上投げ捨てるものに等しいと言わなければなりません。語っていないんですから。
日本は、中国に対する侵略からアジア太平洋戦争へと侵略戦争を拡大します。その結果、アジアの人々2,000万人、日本人310万人が犠牲となりました。そして、70年前、ポツダム宣言を受け入れ、文字どおり多大な損害と苦痛を内外の人々に与えた戦争を終わらせました。
そのポツダム宣言には何とあるか。日本の戦争を世界征服のための戦争、はっきりこう書いてあります。侵略戦争だったと明確に述べております。総理は、ポツダム宣言のこの規定を認めないんですか。あくまで日本の行った戦争は侵略だと認めないんですか。
○安倍首相 日本はポツダム宣言を受け入れ、敗戦をしたわけでございます。その後、まさに我が国は、戦争の惨禍を二度と繰り返さないとの不戦の誓いの下に、平和国家としての歩みを進めてきたわけでございます。
○山下よしき 日本の戦争をポツダム宣言は世界征服の挙に出た戦争、侵略戦争だったとはっきり認めているんです。この規定を総理は認めないんですかと、こう言っているんです。
○安倍首相 まさに日本はポツダム宣言を受け入れ、敗戦をし、まさにポツダム宣言を受け入れたわけでございます。
○山下よしき だったら、日本の戦争を侵略戦争と認めなければならないはずですよ。それを何遍聞いても認めない、個々の具体的な問題については歴史家の判断に委ねると言って逃げる。そんなことをやっていたんでは、日本はアジアでも世界でも孤児になると言わなければなりません。
ポツダム宣言には、日本の軍隊の武装解除、それから民主主義の復活強化なども述べられております。これを踏まえて、日本国憲法に第9条や基本的人権が明記されました。今、安倍政権がそれを覆し、日本を再び海外で戦争をする国につくり変えようとしていることに多くの国民が危惧を覚えております。
70年前の教訓を踏みにじる。70年前の痛苦の反省、歴代内閣が認めてきた侵略と植民地支配を、談話でも総理自身の言葉でもはっきり認めない。70年前の教訓を踏みにじる戦争法案の撤回を強く求めて、質問を終わります。