戦争法案をめぐり、18日の参院本会議で行った安倍晋三首相問責決議案への賛成討論、要旨は次の通りです。
安倍晋三首相の問責決議案に賛成する第1の理由は、安倍晋三首相が憲法99条の「憲法を尊重し擁護する義務」をないがしろにし、憲法を憲法でなくする暴挙にひた走るからです。戦争法案の中身は「戦闘地域」での米軍への兵たん、戦乱が続く地域での治安維持活動、地球上のどこであれ米軍を守るための武器使用、集団的自衛権の行使など、全て「憲法違反」であることは明白です。
憲法学者の大半、歴代の内閣法制局長官、最高裁の元長官までもが憲法に反すると断じました。山口繁元最高裁長官は、「集団的自衛権を行使したいのなら、9条改正するのが筋だ」と安倍政権による憲法解釈の大転換を批判しました。これに対し首相は「退官した一私人の発言」と切り捨てました。あまりにごう慢、不遜(ふそん)です。さらに山口氏は「日本が米国との関係で、集団的自衛権を行使するには、日米安全保障条約の改定が必要」と述べます。憲法を踏みにじり、安保条約の枠まで踏み越えて、アメリカと一緒に「海外で戦争する国」へとひた走る、首相の暴走を到底認められません。
国民に真実隠す
第2に、国民に真実を隠す欺まん的な答弁を繰り返し続ける首相の姿勢です。
安倍首相は、集団的自衛権の行使を必要とする理由として、「紛争地から避難する日本人を乗せた米艦の防護」「ホルムズ海峡での機雷除去」をあげていました。しかし、両事例とも政府側自ら答弁のなかで否定しました。立法の必要性が真実ではないと鮮明になった今、廃案にする以外ありません。
こうした手法は戦争法案だけに限りません。労働者派遣法改悪の実態は「一時的・臨時的」とされてきた派遣労働の原則を崩す、派遣先がいつまでも派遣労働者を使い続けることができるようにするものです。ところが首相は「派遣労働者の正社員化を進める法案」だと言い続けました。憲法・労働法の根本である直接雇用の大原則を、欺まん的手法で崩壊させ、アメリカと大企業の利益に追随する政治は許されません。
民主主義の否定
第3に、安倍首相が国民の批判に一切耳を傾けない、民主主義否定の姿勢を取り続けていることです。肌寒く降り続く雨のなか、連日数万の人々が国会を取り囲んでいます。8月30日には12万人を超える、空前の人波が国会周辺を埋め尽くしました。全国いたるところで、幅広い年齢層の人々が「ひとりひとり」「個人として」声をあげ、これまで誰も見たことのなかったような無数の集会、「戦争法案の廃案」「憲法守れ」のコールが響いています。
「今国会での成立に反対」の声は、どの世論調査をみても国民の6割以上です。与党は200時間以上の審議を理由に採決を強行しましたが、この審議時間をもってしても、国民が納得するどころか、いっそうの批判をあびることになりました。国民主権の原則、民主主義の原則にたてば、法案の撤回こそが、安倍政権のとるべき選択です。しかし首相は「成立し、時が経ていくなかで間違いなく理解は広がる」と言い放ちました。国会審議を通じて、国民を納得させられなかった法案を強行・既成事実化し「いずれはわかる」とうそぶく。これほど国民を愚ろうする政治はありません。
さらに国民多数の「反対」の声を押し切り九州電力川内原発を、再稼働させ、辺野古新基地建設反対という沖縄県民の総意にも、集中協議と称して、あたかも耳を傾けるかのようなそぶりを見せながら、期間が終わるやいなや、埋め立て工事を再開しました。まさに民意無視、問答無用の態度だと、言わなければなりません。
最後に、戦争法案に反対する女子学生が国会前で行ったスピーチを紹介します。「今の私たちにとって、安倍さんが一番の脅威です。あなたの横暴によって、どれだけの人が悲しんでいるか。首相に言いたい。この国には知を身につけ、権力に隷属しない、批判的な思考力を養う、多くの学ぶ者がいることを。私たちは権力に対する沈黙を破ります」。ここにこそ未来があります。
同様の思いを募らせる幾多の若者、国民とともに安倍首相問責決議案に賛成を表明します。