ふるさと、長く暮らしてきた地域を守りたい、これは自治の原点、源泉–過疎地域自立促進特別措置法の一部改正案 
2017年3月30日 参院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 法案を取りまとめられた衆議院の提案者の皆さんに敬意を表したいと思います。
 私は、過疎地域の役場職員、そして住民の皆さんの取組について、私自身がいろいろ歩いて感じていることについて紹介して、提案者の皆さんの御認識を伺いたいと思います。
 もう10年ほど前になるんですが、奈良県南部の山深いところにある下北山村というところを訪ねました。人口は当時で1,200人の村で、ここでどうやって村を維持していくのか、いろいろ政策をつくっておられました。一番の政策の柱は毎年赤ちゃんが10人生まれることを目標にするということでありまして、そのときはほぼ毎年10人赤ちゃんが生まれるということを達成しておられました。雇用の場づくりの研究、村営住宅の建設、それから、都会の小学生を下北山村に招いて山村留学していただいて、その体験を通じて親子で移り住んでくるというような方もいらっしゃるということを聞きました。
 そういうことを一生懸命考えておられるのが村の役場にいらっしゃった、まあ10人ぐらいでしたけれども、職員の皆さんでありました。どうやって地域を守るのか、いかに地域の暮らしを、文化を維持するのか、一生懸命考えている役場の皆さんがいらっしゃるということがいかに大事なのかということを痛感したんですが、提案者の皆さんに、過疎地域における生活、文化等を維持する上での地域の役場職員の果たしている役割について御認識伺いたいと思います。

黄川田徹(衆院総務委員長代理) お答えいたします。
 過疎地域の役場職員というだけではなくて、地方公務員、日々汗をかいて頑張っておると、こう思っております。特にもう過疎地域の役場職員につきましては、ほとんどが、生まれ、育ち、骨をうずめる、そういう人たちだと、こう思っております。
 大変、限界集落とか集落の維持とか厳しい状況にあるわけでありまして、それでも公務員としての部分と集落の構成員の一人として活動するということ、そこが目に見えていると、こう思っております。例えば防犯協会の一員になるとか、あるいはまた消防団員に加入するとか、それから、そういう集落は歴史と文化が連綿と続いているところが多いわけでありますので、地域行事に参加するだけではなくて、それをどうやって伝承していくとか、そういう思いも強いかと思っております。
 実は、私も2万人の市の職員でありました、ここに来るまでは。例えばお正月行事、お正月というと1月1日を思いますけれども、我々にとっては小正月の行事、1月15日。様々ございます。そういう中で裏方として頑張っていく、そういう部分がありますし、私自身も、敬老会、こういう中で余興、出し物がありますけれども、その出し物に出演したという経験もございます。
 地域を支えるのは役場だけじゃないので、仕組みとして集落支援員あるいはまた町おこし協力隊とか出ておりますので、それらをうまく連携させる要の人間もこれ役場職員だと、こう思っております。ますます大きな役割、役場職員にあると、こう思っております。

山下よしき ありがとうございます。
 それぞれお一人お一人皆さん思いをお持ちだと思いますが、今、黄川田議員からお答えあったとおり、地域に住みながら地方公務員として住民と一緒になってその地域をどう守るのかということを一生懸命知恵を出されている、そういう方がいてこそ地域がずっと維持されるということだと思います。
 それから同時に、この間、平成の大合併などでもう合併されてしまった地域もたくさんあります。しかし、そういうところでもやはりふるさとを守りたいという営みは随分やられていると感じます。
 兵庫県の但馬地域というところがあります。谷議員のちょうど御地元ですけれども、ここも10年ほど前に医師不足が問題になりまして、但馬にある九つの公立病院のうち三つをもうベッドのない診療所にしようかという動きが県主導で起こったんですが、そのときに、もう瞬く間に地域ぐるみで自分たちの病院を守ろうという運動が起こりました。梁瀬病院という旧山東町、今は朝来市に合併されておりますけれども、その梁瀬病院がベッド数なしになっちゃったら困るということで、当時の区長会の会長は、命を何と心得ておるんやと憤って、昭和31年に住民が一等地を提供して資金も出して造ったのが梁瀬病院で、そこを潰すわけにはいかないと自ら区長会の会長が大阪に医師の確保に走るとか、あるいは、経営がピンチだと聞けば、町内に号令を掛けて、地元のおらが病院で健康診断を受けるようにとくまなく声掛けるとか、あるいは、もう医師がなかなか国や県に頼んでも来ないんだったら、住民の皆さんが自分の孫を医学部に進学させて医師として戻ってきてもらうようにしようじゃないかというところまで真剣に話合いがされておりました。
 やはりベッド数のある病院がなくなったら、ふるさとに住み続けることができない、子育てができないということでそういう必死の努力がされていると思ったんですが、こういう合併、ここは残念ながらされたところですけれども、されようがされまいが、住民の皆さんが自分たちの暮らしを守り維持したいという思いから様々な取組をされていることについて、提出者の皆さんの御認識、いかがでしょうか。

谷公一(衆院総務委員長代理) 今御指摘の朝来市の山東地域は私の選挙区で、医療の確保ということはそれぞれの地域にとって大変大事なことであります。ですから、そういう思いをしっかり受け止めて行政は対応しなければならないというふうに思っています。御指摘の山東町は、四町が合併して朝来市という、天空の城で有名になりましたが、市になったわけでありますけれども、それぞれ市役所機能、市役所の本庁がない地域においてもしっかり目配りをして様々な支援ということを継続的にしていくことが必要かと思います。
 私も少し前まで政府で復興副大臣あるいは復興大臣補佐官をさせていただきましたが、例えば宮城の石巻、あそこも平成の合併をやりました。石巻の中心街だけを見ては石巻の復興はうまくいかない。雄勝がどうか、牡鹿半島はどうか、そういった旧町のところもしっかり目配りをしながら復興を進め、また地方創生を進めなければならないというふうに思っております。
 現行の過疎法は平成の合併前の単位で指定しておりますけれども、先ほど来御質問の今後の過疎対策を、どういうエリアを、今の市町村のエリアのままでいいんかどうかということも含めながら、今後検討をしていくべき課題だと思っております。

山下よしき 今御答弁あったとおり、生まれ育ったふるさと、長く暮らしてきた地域を守りたい、これは私は自治の原点、源泉だというふうに思います。ですから、効率化という一つの物差しだけで地方の政策を考えることは正しくないということを痛感しております。
 最後、いろいろな努力あるんですけれども、やはり多くの過疎地域では人口減少に歯止めを掛けることができておりません。その根底に共通して一次産業の衰退があると私は感じております。
 これも何年か前に訪ねた和歌山県田辺市、これは田辺市に旧二町二村が合併してつくられたところですが、残念ながら周辺部は人口が減っております。ここの真砂市長さんは周辺部出身の町長さんでもあってそういうこともよく御存じなんですが、市長は、地方が元気になろうと思ったら農林水産業です、一次産業が元気になれば雇用も生まれIターンも生まれるとおっしゃっておりました。
 やはり小手先の対策ではない、林業も含めた一次産業の再生、これに本腰を入れて政策を進めることが本当の意味での過疎対策になっていくんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

谷代理 委員のおっしゃるとおりだと思います。過疎地域の多くは農林水産業の振興と深く結び付いている地域でありますので、農業なり林業、畜産業あるいは水産業を活性化する、それで食べていける、そういう地域を目指さなければならないと思っています。あわせて、それだけではなくて、今、半農半Xというような言葉がございますけれども、農業をしながらほかの仕事もやり生活の糧を得る、そういったことが進むような様々なきめ細かな施策も必要かと思います。
 大きな流れとしては、地域おこし協力隊に典型的に見られるごとく、田園回帰の流れというのは今少しずつですけれども起こっていると思いますので、そういった方向が今後もより根付いて大きく広がるように頑張らなければならないというふうに思っております。

山下よしき 終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。