安倍政治根本からただす 対案示し転換訴え 
2018年10月31日 参議院本会議

山下よしき 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 この間、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など、大規模な自然災害が連続しました。亡くなられた方、被災された方々にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 災害から国民の命と財産を守ることは政治の要です。その立場から2点提案します。

 一つは、被災者の住宅となりわいをどう再建するかです。

 東日本大震災では、いまだに5万7000人もの被災者が避難生活を強いられています。7年半もたつのに、なぜ住宅の再建ができないのか。インフラの点検だけでなく、被災者の住宅となりわいの再建に関わる問題点の把握こそ緊急に行うべきです。被災者生活再建支援法の支援金を500万円に引き上げ、支援対象を半壊や一部損壊に拡大することも決断すべきです。

 もう一つは、被害を拡大させず、命を守るための防災対策です。

 大阪で9歳の児童らが犠牲となったブロック塀の倒壊も、倉敷市真備町で高齢者の多くが自宅一階で溺死した堤防の決壊も、その危険が早くから予測されていたにもかかわらず、危険を最小化する対策が取られてこなかったことが共通しています。何が原因なのか、どうすれば命を守り抜くことができるのか。底をついた検証を行い、防災対策の在り方を転換することが必要です。

 以上2点、総理の答弁を求めます。

 北海道胆振東部地震では、全道の295万戸が停電するブラックアウトが起こり、道民生活に大きな打撃を与えました。大手電力会社の全エリアが停電したのは初めてのことです。

 地震発生時、電力需要量の半分を苫東厚真石炭火力発電所の3基が一手に供給していました。その3基が停止し、電力の半分を失ったことが全道停電の決定的な要因となりました。

 総理、電力の安定供給のためには、大規模集中発電から分散型への転換が必要、これが北海道大停電が示した重大な教訓だと考えますが、いかがですか。

 この分散型の電力供給の対極にあるのが原発です。原発の特徴は、大出力かつ出力の調整ができないこと、そして震度五程度の地震で自動停止することです。もし北海道電力が泊原発を稼働していたら、その出力は電力需要量の七割近くを占めることになり、全道停電が起こるリスクは一層大きかったでしょう。

 総理、原発に固執することが分散型への転換を阻む最大の障害になっているとの認識はありますか。

 九州電力は、10月、4回にわたって一部の事業者が持つ太陽光発電からの電力の受入れを1時停止しました。九電は、秋は電力の需要が減り、需給バランスが崩れると大規模停電を起こすおそれがある、それを回避するための措置だと主張しています。しかし、原発四基を動かし続ける一方で太陽光発電を抑えるやり方は、再生可能エネルギー普及のブレーキになるとの懸念と批判が広がっています。

 総理、今回の事態は、原発再稼働を続ける限り再生可能エネルギーの普及は進まないことが明らかになったと考えますが、いかがですか。

 安倍政権は、エネルギー基本計画で、2030年度に電力の二〇ないし22%を原発から供給することを目標としていますが、これは、既存の原発と建設中の原発、合わせて37基を全て稼働させるものです。国民の75%が原発ゼロを求めていることに逆行します。

 今も多くの住民がふるさとの家に戻れずにいる東京電力福島第1原発事故の教訓に加え、原発が電力の安定供給のリスクとなり、再生可能エネルギー普及のブレーキとなっている点からも、原発頼みのエネルギー政策を根本から転換すべきです。日本共産党は、他の野党の皆さんと共同して原発ゼロ基本法案を提出していますが、その真剣な検討を求めるものであります。

 総理は、来年10月から予定どおり消費税を10%に増税すると宣言しました。

 しかし、4年半前、消費税を5%から8%に増税したことによって、家計消費は、1時的どころか、いまだに落ち込んだままで、2人以上世帯の実質消費支出は年25万円も減っています。総理、こんなときに増税を強行すれば、消費が一層冷え込み、景気がますます悪くなることは火を見るよりも明らかなのではありませんか。

 政府は、消費税増税は社会保障のためと言います。しかし、所得の少ない人ほど負担が重くのしかかる弱い者いじめの税金である消費税を、立場の弱い方々を支える社会保障の財源にするほど本末転倒はありません。

 しかも、現実はどうでしょうか。消費税が導入された1989年度から2018年度までの30年間で国民の皆さんから集めた消費税の税収を累計すると、372兆円に上ります。ところが、社会保障は充実どころか、年金は削られ、医療費の窓口負担は増やされ、介護保険の利用料は上げられるなど、改悪の一途をたどりました。

 どうしてこんなことになったのか。調べてみると、同じ時期に、法人三税の税収は累計で291兆円も減っています。つまり、消費税税収の約八割が、社会保障のためでなく、結果的に大企業を中心とした法人税減収の穴埋めに回されたことになります。これでは社会保障が良くなるわけがありません。

 安倍政権は、今回の増税も全世代型社会保障をつくるためだと言っています。しかし、財務省が財政制度等審議会などに示しているのは、後期高齢者医療制度の窓口負担の1割から2割への引上げ、介護保険の利用料の、これも1割から2割への引上げ、要介護1、2の生活援助の保険給付外し、そして、児童手当の給付対象から多くの共働き世帯を除外することなど、全世代にわたって社会保障を大削減する計画です。

 国民には社会保障のための増税と言いながら、実際は社会保障に削減の大なたを振るう、国民をだまし討ちにするようなやり方はもうやめるべきではありませんか。財源というなら、アベノミクスで純利益が2.3倍に増えた大企業、保有資産が大きく膨らんだ富裕層にこそ応分の負担を求めるべきではありませんか。答弁を求めます。

 今回の消費税増税に伴って導入されるインボイス制度は、中小零細事業者にとって深刻な問題です。年間の売上げが1000万円以下の免税業者は、インボイス、適格請求書を発行できません。しかし、納入先はインボイスがなければ仕入れ税額控除ができなくなり、過大な税負担を強いられます。そのために、500万とも言われる免税業者が取引から排除されてしまうことになります。だからこそ、日本商工会議所など中小企業団体がこぞって反対しているのです。

 総理は、インボイスの導入によって中小零細事業者が取引から排除されることを認識しているのですか。消費者だけでなく、中小零細事業者にも致命的な打撃を与える消費税10%への増税は、直ちに中止すべきであります。

 政府が検討している入管法改定案は、128万人に上る現状の外国人労働者の人権侵害をそのままに、どの分野にどれだけ受け入れるのかなど重要な問題を法制定後政府に全て委ねてしまう白紙委任立法です。このまま閣議決定するなど断じて許されません。

 現在の技能実習生制度は、一つ、職業選択の自由、居住の自由など個人の尊厳と基本的人権を制度として奪っている、二つ、労働者として保護するといいながら、実際には労働基準法や最低賃金法すら守られていないという重大な問題を抱えています。背後にブローカーが暗躍する実態もあります。

 総理、こうした現状を正さないまま、なし崩し的に外国人労働者の受入れ対象を拡大するなら、世界から尊敬されるどころか、人権後進国として軽蔑されることになるのではありませんか。まずやるべきは、外国人の人権を制限している制度を根本から見直し、現にある人権侵害をなくすことではありませんか。

 わが党は、外国人労働者の基本的人権が保障される受入れ制度を整えて秩序ある受入れを進めていくべきであり、そうしてこそ日本人の労働者の権利と労働条件を守ることにもつながっていくと考えるものであります。

 自民党衆議院議員が、LGBTのカップルは生産性がないなどとした暴言を雑誌に寄稿しました。LGBTの人たちへの偏見をあおる差別発言であり、憲法に保障された個人の尊厳を冒涜する人権侵害の発言であります。ところが、総理は、まだ若いからと擁護し、不問に付す許し難い態度を取っています。

 総理は、この発言で傷ついた人たちの気持ちをどう考えているのですか。

 政治家のモラルが最も問われなければならないのは、安倍総理、あなた自身です。森友、加計学園問題では、安倍総理の説明に納得していない国民が七割に上るなど、国民の多くは総理がうそをついていると思っています。その総理のうそを隠すために公文書が改ざん、隠蔽され、国会で虚偽答弁が繰り返されたのです。

 違うというのなら、鍵を握る安倍昭恵氏、加計孝太郎氏の国会招致と証人喚問を堂々と行うべきではありませんか。

 9月26日に行われた日米首脳会談について、総理は、合意した日米交渉は、TAG、物品貿易協定であって、包括的なFTA、自由貿易協定とは全く異なると弁明しています。しかし、首脳会談で合意した日米共同声明の英文の正文を見ると、TAGという言葉はどこにもなく、FTA交渉開始の合意そのものであることは明らかです。

 総理、合意したのはFTAそのものではないのですか。ごまかしはやめて、国民に正直に説明すべきではありませんか。

 日本の食料主権と経済主権を身ぐるみ米国に売り渡すことになるFTA交渉開始に合意しながら、外交文書の翻訳まで捏造し、うそで国民を欺く、こんなひきょう、卑劣なやり方は断じて許されません。

 9月30日に行われた沖縄県知事選挙で、沖縄に新たな米軍基地は造らせないと命燃え尽きる瞬間まで闘い抜かれた翁長雄志前知事の遺志を継ぐ玉城デニー候補が、過去最多の得票を得て大差で勝利しました。沖縄県民は辺野古新基地建設ノーの民意を明確に示した、総理はそう受け止めないのですか。

 当選したデニー知事との会談で総理は県民の気持ちに寄り添うと述べながら、その僅か5日後、沖縄県の埋立て承認撤回に対し効力停止を申し立てる対抗措置に乗り出し、昨日、国土交通大臣は、不当にも埋立て承認撤回の執行停止を決定しました。安倍政権は沖縄県民の声を聞く耳は持たないということですか。

 そもそも、国民の権利を守るためにある行政不服審査制度をねじ曲げて、防衛省沖縄防衛局が国土交通大臣に不服審査を申し立てるなどというのは、自作自演の茶番劇と言わなければなりません。

 この決定に対し、玉城デニー沖縄県知事は、結論ありきで法治国家にあるまじき態度だ、公平性、中立性を欠く判断に強い憤りを禁じ得ないと抗議しています。県民は、翁長さんの命懸けの撤回を僅か数枚のペーパーでなきものにするのかと怒りに震えています。

 総理、民主主義も地方自治も法治主義も破壊する、国交大臣による無法な決定は取り下げるべきです。沖縄の揺るがぬ民意を尊重し、辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時閉鎖、撤去を掲げ、米国と交渉することこそ、日本の総理のやるべきことではありませんか。答弁を求めます。

 これまで安倍政権は、辺野古新基地建設を始め、安保法制、軍備拡大などを進める上で、北朝鮮の脅威を最大の口実にしてきました。しかし、朝鮮半島で対立から対話への歴史的な転換が起こっています。3回に及ぶ南北首脳会談、初の米朝首脳会談によって、朝鮮半島の非核化と平和に向けた歴史的合意が交わされました。

 総理も所信表明演説で、歴史的な米朝首脳会談によって北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています、この流れに更なる弾みを付け、朝鮮半島の完全な非核化を目指しますと述べられました。しかし、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル問題の対話による平和的解決の流れを促進する様々な努力をしている中、流れに弾みを付けるどころか、逆行しているのが日本です。

 今年の防衛白書では、北朝鮮問題について、これまでにない重大かつ差し迫った脅威だと述べ、引き続き日米軍事一体化を進め、大軍拡を進める口実にしています。

 総理、この防衛白書の認識は、対決から対話への歴史的転換を全く無視しているのではありませんか。

 さきの日米首脳会談後の会見でトランプ大統領は、私が、日本は我々の思いを受け入れなければならない、巨額の貿易赤字は嫌だと言うと、日本はすごい量の防衛装備品を買うことになったと述べました。

 総理、トランプ大統領とのこのやり取りはどの場で行われたのですか。具体的にどのような武器をどれだけ買うことが話し合われたのですか。お答えください。

 防衛省の来年度概算要求には、陸上配備型迎撃システム、イージス・アショア本体を二基導入するために2352億円もの関連経費が計上されています。しかし、配備候補地としている秋田県や山口県では、電磁波の影響やテロ攻撃の標的になることへの不安とともに、北朝鮮情勢が変わっているのになぜ必要かという批判が噴出しています。

 地元や住民の合意なしに計画を進めることなどあってはなりません。米側の武器購入要求に唯々諾々と応じ、朝鮮半島の平和と安定に背を向け、逆に情勢を悪化させることになるイージス・アショアの配備は中止することを強く求めるものであります。

 総理は、国連総会での首脳会談で、韓国の文大統領の強いリーダーシップに対し敬意を表すると述べられました。文氏は、朝鮮半島で絶対に二度と戦争は起こしてはならない、対話しか解決の道はないとの信念で、南北、米朝首脳会談を実現し、画期的な外交イニシアチブを発揮しました。軍事ではなく対話の平和外交でこそ事態の解決が進む、まさにこれは憲法9条が指し示すものであります。

 にもかかわらず、総理は9条改定に執念を燃やしています。今ある自衛隊をそのまま書き込むだけで、自衛隊の任務も権限も変わらないと言いますが、9条に自衛隊を明記すれば、9条2項の空文化、死文化に道を開き、海外での武力行使が無制限になってしまいます。

 今、日本に求められているのは、平和の激動に逆らい、9条を変えて戦争する国づくりを進めることでは断じてありません。北東アジアに生きる国として、この地域に平和体制を構築するための外交的イニシアチブを発揮することこそ、憲法9条を持つ国として政府がなすべきことだと考えますが、総理の見解を求めます。

 日本共産党は、安倍政権による9条改憲を許さない1点で立場を超えた共同を広げ奮闘する決意であることを述べて、質問を終わります。

 

 

安倍晋三内閣総理大臣 山下芳生議員にお答えいたします。

 被災者の住宅となりわいの再建等についてお尋ねがありました。

 東日本大震災による避難者数は5万6000人に減少しましたが、いまだ多くの方が仮設住宅での不便な生活を強いられています。また、平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震など、本年も多くの災害が生じており、これらの災害の被災者の方々が1日も早く安心できる生活を取り戻せるよう、被災自治体と連携して、地域の課題やニーズの把握に努め、被災者に寄り添いながら、住宅・生活再建に向けた支援やなりわいの再建に向け、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。

 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により支援金を支給するものです。このような制度の趣旨からすれば、支給対象の拡大や支給額の引上げについては、国や都道府県の財政負担等の課題があり、慎重に検討すべきものと考えます。

 ブロック塀等については、過去の地震による被害を踏まえ基準を強化していますが、現行基準に適合しない古いものであることから、安全点検のチェックポイントを公表し周知するとともに、避難路に面するものについては、耐震診断の義務付けや撤去費用等に対する支援を検討しているところです。

 また、平成30年7月豪雨では、小田川等がバックウオーター現象等に伴う越水等により堤防決壊し、尊い命が失われるなどの甚大な被害が生じました。今回の被害を踏まえて、抜本的な治水対策を進めるため、事業を集中的に実施し、再度の災害を防止することとしています。

 今回の一連の災害で生じた被害の状況や地域ごとの復旧復興の進捗等に応じて必要な財政措置を講ずるため、平成30年度補正予算案に9356億円を計上しているところであり、早期の成立のご理解とご協力をお願いいたします。

 被災地の皆様の命を守り、安心を確保できるよう、引き続き検証を行い、防災対策をしっかりと進めてまいります。

 北海道におけるブラックアウトの教訓についてお尋ねがありました。

 今回の北海道胆振東部地震におけるブラックアウトと同様な事象を繰り返さないため、現在、電力インフラの総点検を実施しております。11月中に対策パッケージを取りまとめ、災害に強い電力供給体制を構築してまいります。

 原発政策に関連して、分散型への転換、再生可能エネルギーの普及、原発ゼロ基本法案についてお尋ねがありました。

 現在、多くの原発が停止している中で、東日本大震災前に比べ、一般家庭で平均で約16%電気代が上昇し、国民の皆様に経済的な大きなご負担をいただいている現実があります。こうした経済的なコストに加え、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。

 様々な電源によるベストミックスを追求する中で電力の安定供給を維持するためには、それぞれの電源の特性を踏まえながら、あらかじめ決められたルールに基づき出力制御を実施することが必要であります。そうした中でも、再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが安倍内閣の一貫した方針であります。

 また、分散型エネルギーは、非常時にも活用できるエネルギー供給源を確保する点や地域活性化にも資する点から重要と考えます。政府としては、これまでも地産地消型エネルギーシステムの構築に対する支援などを行ってきておりますが、今後も、自家発電設備や蓄電設備の整備を支援するなど、分散型エネルギーの普及を後押ししてまいります。

 なお、議員提出法案の扱いについては、国会の運営に関わるものであり、国会がお決めになることであると考えます。

 消費税率引上げの影響についてお尋ねがありました。

 前回の2014年4月の消費税率引上げの際には、耐久財を中心に駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じ、景気の回復力が弱まることとなりました。だからこそ、この間、我々はしっかりと3本の矢の政策を進めてまいりました。その結果、消費は、一国全体を捉えるGDPベースで見て、実質で2016年以降、前期比プラス傾向で推移し、2013年の水準を上回るなど、持ち直しています。

 来年10月に予定されている消費税率の引上げに当たっては、前回の3%引上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応してまいります。

 社会保障の財源とその負担の在り方についてお尋ねがありました。

 社会保障の充実については、これまでも、消費税率の引上げに伴う増収により、持続可能性を確保しながら、待機児童の解消や低所得者の医療・介護保険料の軽減などを実施してきたところです。

 来年10月に予定する消費税率引上げに際しては、その使い道を見直し、半分を国民の皆さんに還元します。子供たち、子育て世代に大胆に投資することで、来年10月から幼児教育を無償化いたします。

 少子高齢化という国難に正面から取り組むため、お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換してまいります。

 なお、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりましたが、その中でも、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベースの拡大により、財源をしっかり確保しております。さらに、金融所得課税の見直し等を講じてきたところであります。

 今後の税制の在り方については、これまでの改正の効果を見極めるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えています。

 インボイス制度の免税事業者への影響についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下において適正な課税を確保する観点から導入するものであります。

 他方、インボイス制度を導入すれば、免税事業者が取引から排除されるのではないかなどと懸念する声があるのも事実であり、政府としては、免税事業者が課税事業者への転換の要否を見極めながら対応を決めていただくよう、インボイス制度の導入までに4年間の準備期間を設けるとともに、そこから更に6年間、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認めることとしています。

 外国人材の受入れ拡充についてお尋ねがありました。

 技能実習制度は、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度ですが、一部の監理団体や受入れ企業において労働関係法令違反や人権侵害が生じている等の指摘があることから、制度を見直し、昨年11月に技能実習法が施行され、制度の適正化を図っているところです。

 新たな受入れ制度は、深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、真に必要な業種に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材をわが国に受け入れようとするものです。

 受入れに当たっては、日本人と同等の報酬をしっかりと確保するとともに、社会の一員としてその生活環境を確保するため、現在検討を進めている外国人材の受入れ・共生のための総合的対策をしっかり実行に移し、在留のための環境整備について関連施策を積極的に推進することとしております。

 LGBTに関する発言についてお尋ねがありました。

 ご指摘のとおり、LGBTと言われる性的少数者に対する不当な差別や偏見はあってはならないことであります。多様性が尊重され、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に政府としてしっかり取り組んでまいります。

 国会招致と証人喚問についてお尋ねがありました。

 行政プロセスが公正公平に行われたかについては、引き続き政府においてしっかりと説明責任を果たしてまいります。その上で、国会の運営については国会がお決めになることだと思います。

 日米物品貿易協定交渉についてお尋ねがありました。

 これまでわが国が結んできた包括的なFTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを交渉を開始する段階から明確に目指してきました。

 しかし、今回の日米共同声明では、サービス全般の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまでわが国が結んできた包括的なFTAとは異なるものと考えています。

 他方、FTAについて国際的に確立した定義が存在しないことも事実であるため、言葉遣いの問題として、今回の交渉についてFTAの一種ではないかとのご意見があることは承知しています。

 そうした中で、私が、これまでFFR協議について、FTA交渉でもFTAの予備交渉でもないと申し上げてきた最大の理由は、国内の農林漁業者の皆さんにTPP以上の関税引下げが行われるものではないかとの懸念があったためであり、農林水産業は必ず守り抜くとの思いから申し上げてきたものであります。

 そして、今回は、日米共同声明において、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意しました。この点が最大のポイントであり、この前提の上に今後米国と交渉を行い、わが国の基である農林水産業を必ずや守り抜く決意であります。

 沖縄における選挙結果、国土交通大臣による執行停止決定、普天間飛行場の返還についてお尋ねがありました。

 選挙の結果については真摯に受け止めています。その上で、地方自治体の首長選挙の結果について政府の立場で見解を述べることは差し控えたいと思います。

 沖縄防衛局が行った審査請求及び執行停止の申立てについては、公有水面埋立法の所管大臣による国土交通大臣により、関係法令にのっとり執行停止の決定が行われたものと承知しています。これは、法治国家として法律に基づき必要な法的手続が行われたと認識しており、これを尊重すべきものと考えています。

 住宅や学校で囲まれ、世界で1番危険とも言われている普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府と地元の皆様の共通認識であると思います。

 普天間飛行場を移設した上で全面返還するとの方針は、米国政府との間で累次にわたり確認しているものです。

 政府としては、現在の日米合意に基づき、抑止力を維持しながら、普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでまいります。

 今後とも、地元の皆様のご理解を得る努力を続けながら、沖縄の皆様の心に寄り添い、基地負担の軽減に一つ一つ結果を出してまいります。

 防衛白書の記述についてお尋ねがありました。

 防衛白書におけるわが国を取り巻く安全保障環境に関する記述は、様々な情報を総合的に分析、評価した上で、極力客観的な記述に努めたものと考えています。

 また、北朝鮮に関しては、金正恩委員長が朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思を改めて文書の形で明確に約束した意義は大きいとも記述していると承知しています。

 いずれにせよ、歴史的転換を無視しているとのご指摘は当たらないものと考えております。

 米国製装備品に関するトランプ大統領とのやり取りについてお尋ねがありました。

 本年9月に行った日米首脳会談において、私から、米国製の防衛装備品を含め、高性能な装備品を導入することがわが国の防衛力強化のために重要であると考えている旨をトランプ大統領に説明したところです。

 日米首脳会談のやり取りの一つ一つについてお答えすることは差し控えたいと思いますが、防衛装備品の導入については、五か年計画である中期防衛力整備計画に基づき、米国製の防衛装備品を含め計画的に取得しており、今後とも、わが国の主体的な判断の下、防衛力の強化を行っていく考えです。

 イージス・アショアについてお尋ねがありました。

 わが国の防衛を考える上で、わが国を射程に収める数百発の弾道ミサイルが現実に存在するという事実から目を背けることはできません。

 防衛装備品については、事態が切迫してから取得しようとしても数年間という長期間を要します。国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な責務であり、いかなる事態にも対応し得るよう、平素から万全の備えを取ることは当然のことであると考えています。

 イージス・アショアは、あくまでもわが国の主体的な判断により導入を進めているものです。

 また、弾道ミサイルから国民の生命、財産を守る純粋に防御的なシステムであり、周辺諸国に脅威を与えるものではありません。地域情勢を悪化させるとのご指摘は当たらず、導入を中止することは考えていません。

 もとより、イージス・アショアの配備に当たっては、地元の皆様のご理解をいただくことが大前提であり、様々なご懸念やご要望について一つひとつ丁寧に対応していく考えです。

 北東アジア外交と憲法についてお尋ねがありました。

 6月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。この流れに更なる弾みを付け、日米、日米韓の結束の下、国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指します。

 同時に、国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な任務であり、いかなる事態にも対応し得るよう万全の備えを行ってまいります。

 憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、お尋ねですので、あえて私が自民党総裁として一石を投じた考えを改めて申し上げるとすれば、現行の憲法第9条第1項及び第2項の規定を残した上で、自衛隊の存在を憲法に明記することによって、自衛隊の任務や権限に変更が生じるものはないと考えています。

 他方、現在、自民党の党内において行われている憲法改正をめぐる議論の状況や方向性についてお答えすることは差し控えたいと思います。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。