山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
総理は、昨年11月22日、参議院本会議での私の質問に対し、過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない、強い決意で長時間労働の是正に取り組むと答弁されました。
過労死をなくすことは、働き方改革の原点です。昨年、NHKのある番組で過労死事件と向き合う弁護士が取り上げられて、娘や息子たちが過労死した御遺族の声が紹介されました。少し紹介します。
電通勤務の高橋まつりさん、享年24歳を過労自殺で失った母、幸美さん。私は娘を助けられなかった、守れなかったという自責の念でずっと来た。彼女が弱かったから自殺したんじゃないかと思われるのは不本意。彼女の尊厳を守りたいと弁護士を頼った。娘の尊厳を守ることができ、私が今生きていられる。
システムエンジニアの西垣和哉さん、享年27歳を失った母、迪世さん。なぜこんなことになってしまったのか合点がいかなかった、一生懸命育ててきた子ですから。息子は、おかん、俺のことあれからどうなったときっと聞くと思って、あの子に説明してやれることをきちんと持ってからあの子に会いに行こうと。こんなことは私だけで十分。繰り返されてはならない。
胸が潰れる思いで聞きました。共通しているのは、なぜ我が子が死ぬほどまでに働いていたのか、なぜそのようなことになったのか原因を知りたい、そして、二度とこのようなことはあってはならないという思いであります。
総理に伺います。こうした御遺族の声を踏まえるなら、私は、労働者が働き過ぎが原因で亡くなるなどということは絶対にあってはならないと思いますが、総理の認識、いかがでしょうか。
安倍首相 過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない。強い決意で長時間労働の是正に取り組んでいきます。そのため、史上初めて、労働界、経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない罰則付きの時間外労働の上限規制を導入することとしたところであります。
我々の目指す働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本で働くことに対する考え方そのものに手を付けていく改革であります。長時間労働の是正を始めとして、働く人の視点に立った改革を着実に進めていく考えであります。
山下よしき 総理に一点だけお聞きします。過労死の悲劇を繰り返さないためには、こうした一つ一つの過労死の事例からしっかり教訓を酌み取る必要があると思いますが、いかがでしょうか。
安倍首相 それぞれに様々な事情があると、こう思いますので、それは当然そういう観点からしっかりと見ていく必要があるんだろうと、このように考えております。
山下よしき 残念ながら、また新たな過労自殺が起こりました。(資料提示)昨日、朝日新聞が、裁量労働制を違法適用し、昨年末に東京労働局から特別指導を受けていた野村不動産の50代の男性社員が過労自殺し、労災認定されていたと報じました。野村不動産は、全社員約1900人の中で約600人に企画業務型裁量労働制を適用していましたが、本来は適用できないマンションの営業担当者らが裁量労働制で働いていた。亡くなった男性もその1人だったということであります。
このケースのように、裁量労働制は、本来適用が認められていない業務に濫用される危険性をはらんでいると。野村不動産のような有名企業でも濫用されていたわけですから、ほかにもたくさんあると思われます。
厚生労働大臣に伺いますが、裁量労働制の違法適用、どうやって食い止めるんですか。食い止められないんじゃないですか。
加藤勝信働き方改革担当大臣 裁量労働制も含めて、労働基準法の履行確保、これを図っていくため、労働基準監督署においては監督指導を行っております。違反が認められた場合には是正を図らせるとともに、悪質な事業場に対しては、捜査の上、書類送検を行うなど厳しく対応させていただいております。
また、来年度より、働き方改革を通じ、働く方々の労働条件をしっかり守っていくため、全ての労働基準監督署に特別チームを新たに編成をし、長時間労働是正のための監督指導の徹底、また、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない中小企業に対するきめ細やかな支援を効果的に推進することとしております。
長時間労働の是正を始めとして、働く人の視点に立った改革、これを着実に進めていきたいと思っております。
山下よしき 監督指導というんですけれども、では、こういう野村不動産がやっていたような裁量労働の違法適用を実態把握できているのかと。今、是正したこれまで件数は何件あるのか、お答えください。
加藤大臣 裁量労働制に係る監督指導を実施した件数について、平成29年に裁量労働制に関し是正勧告を行った事業数は130事業場であります。
山下よしき 私が聞いたのは、違法適用に対する是正件数です。
加藤大臣 済みません。今のは、済みません、全体を申し上げさせていただきました。その後の違法適用に関して、ちょっと済みません。(発言する者あり)
金子原二郎予算委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
金子委員長 速記を起こしてください。
加藤大臣 済みません。
是正勧告を行った事業場数は130ということでございます。
山下よしき 裁量労働制の違法適用での実態はつかめているんですかと。で、是正件数幾らですかと聞いているんです。違法適用ですよ。
加藤大臣 その違法の適用というのは幾つかパターンがあるんだろうというふうに思います。対象業務が異なる場合、あるいはみなしと実際労働時間が違う場合、健康・福祉措置が実施されていない場合、それ以外、苦情処理措置、あるいは労働時間の状況把握等がしっかり行われていない場合、それぞれがあるというふうに承知をしております。
山下よしき だから、この対象業務が違う場合の是正、じゃ、幾つですか。(発言する者あり)
金子委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
金子委員長 速記を起こしてください。
加藤大臣 済みません。
それぞれについては、結果的に法違反となる場合には例えばそれはみなし適用がなされないということでありますから、要するに労働時間の32条の適用あるいは割増し賃金の37条違反、こういうことになるわけでありまして、その事業数は先ほど申し上げた130事業場数と、こういうことになります。
山下よしき 結局つかんでいないということなんですよ。裁量労働制を適用してはならない業種に適用していた、こういう野村みたいな実態をつかめていないんですよ。よくそれで是正指導すると言えたものだと。
2月20日、わが党の高橋千鶴子議員が衆議院の予算委員会で、裁量労働制を隠れみのにただ働きや長時間労働をさせることがあり得る、対象業務を拡大すればもっと起こり得ると指摘したのに対し、加藤厚労大臣は、野村不動産を始めとして適切に運用していない事業所等もございますから、そういうものに対してはしっかり監督指導を行っているところでありますし、今後とも更に進めていきたいと思っておりますと答弁されました。
野村不動産でもしっかり監督指導しているから大丈夫だという答弁でしたけれども、しかし、先ほどの質疑でもありました朝日の報道では、野村不動産への特別指導のきっかけは過労自殺の遺族の方の労災申請だったとあります。
厚労大臣、これが事実なんじゃありませんか。しっかり監督指導したのは犠牲者が出た後だったんじゃないですか。
加藤大臣 先ほども申し上げておりますように、監督指導に当たって、当然監督指導官の数にも限りがございますので、より効率的に実施するために様々な情報をいただいている、また、今お話がありましたように、労災、特に過労死等につながる案件、こういったことを踏まえてそれぞれ必要な監督指導を行っていると、こういうことでございます。
山下よしき 答弁に、答えてくださいよ。この野村不動産の特別指導は過労死の労災申請がきっかけだったと、これが事実じゃないのかと、亡くなってから指導したんじゃないのかと聞いているんですよ。
加藤大臣 個々の指導についての具体的なきっかけ等についてはこれまでもコメントを控えさせていただいているところでありますが、ただ、一般論としては先ほど申し上げたとおりでございます。
山下よしき あのね、一般論では済まないんですよ。国会でわざわざ野村不動産の特別指導を例に出して、今後ともしっかり監督指導をすると答弁したんですよ。その根拠が今揺らいでいるわけですからね。これ、事実が明らかにされなければ国会審議ができなくなる、労働行政の信頼が崩れるということになるんですよ。
答えていただきたい。今度の野村のこの労働者の過労自殺の発生日、それから労災申請日、それからこの特別指導、野村に対してですね、を行った調査着手日、それぞれ三つがどういう時系列になっているのか、答弁した加藤大臣、これ調べて国会に報告すべきではありませんか。
加藤大臣 それぞれちょっとどこまで申し上げられるか、私、今分かりませんけれども、できる限りそれをお示しをさせていただきたいと思いますけれども、私が申し上げたのは、そうした本来適用されるべきでない業務等に裁量労働制が適用されていた、そうした事案についてこういう形で監督指導をさせていただいているということを申し上げているわけでございますので、その端緒においては、先ほど申し上げた様々な情報、あるいは過労死等の事案、こういったことも含めて対応させていただいている、これは一般論でありますけれども、そういうことでございます。
山下よしき さっき、特別指導の会見のときに過労死が起こっていたことを知らなかったと言っていたじゃないですか。ですから、それはちゃんと調べて報告してください。よろしいですね。
加藤大臣 先ほど申し上げた、申し上げれるところと申し上げないところもあるかもしれませんので、申し上げられる限りは報告をさせていただきたいと思います。
山下よしき 結局、裁量労働制を隠れみのにして、長時間労働、ただ働きが行われていたとしても、命が失われなければ違法行為が見付からないという状況になっているんじゃないかということなんですよ。
ですから、もちろんこれ、裁量労働制というのは労使の合意や本人の同意が必要です、手続が。その手続を踏ませることによって濫用を防ぐということになっているんですけれども、しかし、防げなかったわけですね。行政による許可は不要です。届出だけでいいんですよ。野村でもこういうことが事前チェックできなかったんで過労自殺が起こったわけですから、私、総理に伺いたいと思います。
これ、一人の人間の命が失われたわけです。裁量労働制は行政が事前に濫用を防ぐことが極めて難しいと、この事実をお認めになって、今後の教訓にすべきではありませんか。
加藤大臣 もちろん、裁量労働制でも過労死の事案もございます。それ以外の働き方でも過労死の事案もございます。我々、そういったものをしっかりと認識をしながら、監督指導を始め必要な取組をしていきたいと思います。
安倍首相 ただいま厚労大臣がお話をさせていただいたように、裁量労働制の中にも残念ながら過労死が起きている、そしてまた一般の働き方においても起きているのは事実でございまして、そういうことを防ぐために労働基準監督署がしっかりと様々な情報を入手しながら適切な指導を行っていくことがいずれにせよ大切であろうと、このように考えております。
山下よしき それが難しいと。野村も後から分かったんじゃないかと。調査してくれるそうですけどね。
ですから、やっぱりこれ、裁量労働制が事前に濫用を防ぐことが難しいと、これしっかり事実見なければ、過労死の皆さんの、御遺族の皆さんの無念を受け止めるとおっしゃいましたけれども、そうならないということを指摘したいと思います。
それから、この労使合意や本人同意、それから行政への届出だけでいいというのは高度プロフェッショナル制度でも全く同じ仕組みになっておりますから、こういう違法な適用、採用ですね、高プロでも同じ心配があるということだけ指摘をしておきたいと思います。
次に、昨年10月、NHKで起こった過労死が公表されました。2013年7月、首都圏放送センターに配属されていた31歳の佐戸未和さんが、都議会議員選挙、参議院選挙の取材など連日の過酷な労働の中、参議院選挙の投票日の2日後に寝室で携帯電話を持ったまま鬱血性心不全で亡くなり、翌年5月に過労死の労災認定がされました。
今日、NHKの上田会長にお越しいただいております。NHKの職場でこのようなことが起こったことについてどう受け止めておられますか。
上田良一NHK会長 お答えいたします。
若く未来のある記者が亡くなったことは痛恨の極みであります。我が子を失われた御両親の思いは察するに余りあります。
佐戸未和さんが過労死の労災認定を受けたことは大変重く受け止めております。公共放送を共に支える大切な仲間を失うようなことは二度とあってはならず、命と健康を守ることを最優先として、昨年12月に公表いたしましたNHKグループ働き方改革宣言の実現に取り組んでまいりたいと考えております。
山下よしき 佐戸未和さんの母、恵美子さんは、毎日毎日、娘の遺骨を抱きながら娘の後を追って死ぬことばかり考えていました。本当に宝物だったんですね。それが本当に志半ばで、本人が一番無念だったと思います。父、守さんは、未和の過労死の事実を踏まえて、その原因なりを含めて働き方改革を進めていただいて、二度と未和のような過労死が発生しないようにしていただきたいと述べておられます。重い言葉だと思います。
佐戸未和記者はどのような働き方をしていたのか。2005年に入局後、鹿児島放送局で勤務し、2010年から首都圏放送センターに勤務となり、主に東京都政を担当しておられました。お母さんは、都庁の近くのホテルで昼食を未和さんにごちそうになったときも、ばたばたっと来て、さあっと職場に戻っていったことなどを語っておられます。もう日常的にたくさんの仕事を抱えていたようです。
その佐戸記者が、2013年6月の都議選、7月の参議院選挙の取材に当たる中で、御遺族と弁護士の調査によりますと、時間外労働が6月は188時間、7月は209時間に上っておりました。過労死ラインの2倍であります。鬱血性心不全で亡くなりました。6、7月で休みは僅か3日間。日付をまたいで25時、27時まで働く日も何日も続いて、徹夜状態でほぼ24時間働いていたこともあったといいます。
上田会長に伺います。なぜこのような長時間、休日なしの労働を止めることができなかったのか、若い優秀な記者の死をなぜ防ぐことができなかったのでしょうか。
上田会長 お答えいたします。
若く未来のある記者が亡くなったことは痛恨の極みであり、佐戸さんが過労死の労災認定を受けたことは大変重く受け止めております。
当時、記者に適用いたしておりました事業外みなし労働時間制でも、勤務の始まりと終わりの時間を把握し、月間休務日数3日以下に該当する場合、産業医による面接指導を勧奨、実施する仕組みはありました。しかしながら、過労死を防ぎ切れなかったという点では、勤務管理や健康確保への意識なども含めて、健康管理上不十分なところがあったと考えております。
このため、労働組合との協議を重ねました末、昨年4月に専門業務型裁量労働制を導入いたしました。これにより、記者に求められる自律的な働き方を担保しながら、勤務時間の段階に応じて健康確保措置を実施しております。事業場外みなし労働時間制のときに比べまして、意識改革が進み、勤務管理や健康管理の強化が図られてきたと考えております。さらに、記者の健康確保を強化するため、健康管理時間の基準を見直すことを労使で協議いたしております。
今後、二度と過労死を起こさないように、働き方改革を更に前に進めてまいりたいと思います。
私が今申し上げたところで、事業場外みなし労働時間制というのを事業外みなし労働時間制と誤って申し上げたようですが、訂正させていただきたいと思います。
山下よしき 今あったように、NHKでは当時、記者に対して事業場外みなし労働時間制を適用していました。この制度は、事業場の外での業務のために労働時間の把握ができないということで、例えば八時間なら8時間働いたとみなすという制度であります。労働時間の把握、管理が極めて曖昧になるんですね、この制度は。
私、NHKの職員の方に直接何人か聞きました。当時、記者はタイムカードに打刻することにはなっていた、さっきおっしゃったように。しかし、外で働いていることもあって、その打刻は当日ではないんです。後日、何日分かまとめて本人が本局に行ったときに出勤時刻と退勤時刻を自己申告で記録するということになっておりました。本人が手帳に書いていたメモなどを見て後から記録するというんですが、どのぐらいの頻度で本局に行くのかというと、一番間隔の多い人は1か月に1回というんですね。
これではしっかりした労働時間の把握はもちろん、健康確保措置といったって、もう体がくたびれ切ったときに分かる、後から分かるということになりますので、これはまともな健康管理はできないなと思ったんですが。
厚労省に伺います。こんなずさんな労働時間の管理、許されるんですか。
山越敬一(厚生労働省労働時基準局長) お答え申し上げます。
労働間の把握につきましては労働時間の適正な把握のためのガイドラインが設けられておりまして、今御指摘がありましたみなし労働者につきましては、こうした方についても健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があるとされているところでございます。
山下よしき NHKは労働時間を適正に把握、管理していなかったです。罰則はあるんですか。
山越局長 お答え申し上げます。
労働基準法におきましては、使用者に対しまして賃金台帳への労働時間の記入を義務付けておりまして、これにつきましては罰則が設けられているところでございます。
山下よしき 事業場外みなし労働時間制です。
山越局長 ガイドラインで定められている事項につきましては、これは責務でございますので、これについての罰則は定められていないところでございます。
山下よしき そのとおりなんですね。使用者が労働時間を把握しなくても罰則ないんですよ。それがみなし労働時間制なんですね。長時間労働が蔓延するのは当たり前だと言わなければなりません。
女性活躍担当大臣でもある野田大臣に聞きます。
佐戸未和さんは亡くなった二か月後に結婚する予定でした。亡くなった未和さんを見付けたのは、連絡が取れず心配して駆け付けた婚約者の方でした。未来ある女性が仕事と家庭の両立どころか命さえ奪われてしまった、どう受け止められるのか。そして、未和さんの命を守ることができなかったみなし労働時間制、問題あるとお考えではありませんか。
野田聖子総務大臣 お答えいたします。
佐戸未和さん、31歳、今委員が御指摘のとおり、過労死によって命を失い、そして無念の思いで旅立たれたわけであります。心からお悔やみと、そして御冥福をお祈り申し上げたいと思います。
まず初めに、働き過ぎによって尊い命が失われるということは絶対あってはなりません。
そして今、結婚間近だったというお話がありました。私たちいつも考えなきゃいけないのは、私の場合も、自分が31歳だったときって約4半世紀前です、25年ぐらい前。この25年にいろんなことがありました。いろいろな思い出がございました。それを佐戸未和さんはかなえることができなかったということをやっぱり共有していきたいなと思っています。であればこそ、真摯にこの佐戸未和さんの死を受け止めて、二度と、男女問わずですけれども、過労死、過労自死をさせてはならないということを考えています。
また、私自身、女性活躍担当大臣として働く中、やはり女性は頑張り屋さんが多いです。そして、まだまだ、この国会も始め働く場所というのは、女性が男性の皆さんと互角に働くためには相当頑張らなきゃならないということをプレッシャー掛かってくるわけですね。そういうことも踏まえて、そういう風潮の中で、女性が例えば精いっぱい頑張り過ぎなきゃいけない風潮というものをなくしていかなきゃならないし、女性はまた職場等でセクシュアルハラスメントのような余り男性が経験しないような心理的なプレッシャーも日々感じているわけでございます。そんなことをしっかりとこの際、真摯な議論の中で解決していけるよう、私自身も精いっぱい取り組んでいきたいと思っております。
山下よしき 思いは分かるんですけど、私が聞いたのは、みなし労働時間制は問題だと思わないかという問いに対してはお答えありませんでした。
佐戸未和さんのお母さんは、上司が日々の労働時間を管理していれば死なずに済んだ、みなし労働時間制を悪用した労務管理の怠慢による人災だと、きつく指摘しています。
総理に伺います。ここでもまた貴重な命が失われました。みなし労働時間制は、使用者が労働時間の把握しなくても罰則がありません。長時間労働にブレーキが掛かりません。この事実をしっかり認めて、これは今後の教訓にすべきではありませんか、総理。
安倍首相 みなし労働時間制は、業務の性質上、労働時間の把握が難しい場合などに、業務実態を熟知した労使双方が労使協定等で労働時間を定める制度でございます。つまり、このみなし労働制に移るに当たって、業務実態を熟知した労使双方がこれをしっかりと話し合って労働時間を定めていくということでありまして、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、その適正化に向け労働基準監督署がしっかりと指導を行っていくこととなります。
山下よしき 私、未和さんの長時間労働にブレーキが掛からなかった根本にこの制度があるということを受け止めるべきじゃないかと言いましたけれども、残念ながらそういうお答えはなかったです。
次に進みたいと思います。裁量労働制について質問をします。
JILPTがこの間、裁量労働制の方が一般の労働者よりも労働時間が長いという調査結果を出しております。これがその資料に基づくパネルですけれども、特に見ていただきたいのは、月間250時間以上、要するにもう過労死ラインを超えるような方々がやはり企画業務型、専門業務型の裁量労働者に多いということであります。
今日是非議論したいのは、なぜ裁量労働制など、みなし労働時間制がこの長時間労働を招き、過労死の危険を増大させるのかということであります。
パネルを次に示したいんですが、おさらいですけれども、みなし労働時間制というのは、さっきも言いました、一定の時間働いたものとみなし、その時間数に見合った対価を支払う制度であります。例えば、みなし労働時間が8時間なら、実際に8時間以上働いても使用者は残業代を支払う必要はありません。日本労働弁護団などは定額働かせ放題と言うのはここにゆえんがあります。
では、なぜ裁量労働制が長時間労働を招き、過労死の危険を増大させるのか。様々な労働組合、研究者、過労死家族の会が共通して指摘している問題が二つあります。一つは、時間配分の裁量はあっても、労働者は、業務量を制限する裁量はないということであります。
厚労大臣に伺いますが、裁量労働制の下で労働者が業務量を制限することはできますか。
加藤大臣 裁量労働制は、一定の知識、経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律の就業時間に縛られることなく、出勤退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、より効率的に成果を上げていただこう、こういう趣旨でございます。
今委員御指摘の点でありますけれども、業務量が過大であり、労働者の事実上の裁量が失われている場合には裁量労働制の要件を満たさず、みなし労働時間の効果が生じないということから、こうした場合においては労働基準監督署において本来の労働時間規制に基づいて指導を行うこととしているところでございまして、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合にも、その適正化に向けてしっかりと監督指導を行っているところでございます。
山下よしき 業務を断る裁量はありますか。
加藤大臣 先ほどと重複をするところでありますけれども、業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合には労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることがあること、また、労働者の上司に対し、業務の目的、目標、期限等の基本的事項を適正に設定し、指示を的確に行うよう、必要な管理教育を行っていくということ、そういった点に留意が必要だということでありまして、基本的には適切な業務量が設定されていくということが求められているというふうに思います。
山下よしき 業務を断る裁量はないんですよ、私、詰めていますから、厚労省の担当者の方とね。
いろいろ言いましたけれども、じゃ、別の角度で聞きます。労働者がその日の仕事を切り上げて帰ろうとしているときに、上司が夜十二時まで残って働いてくれと命令することは違法ですか。
山越局長 お答え申し上げます。
業務遂行の手段あるいは時間配分の決定等に関しまして使用者が対象労働者に具体的な指示を行っている場合は、労働時間のみなし効果は生じないものでございます。
山下よしき つまり、それはできないということなんですよ。違法になるんですね。
では、帰ろうとしている労働者に上司がこの業務をしてくれと追加の業務を命令するのは違法ですか。
山越局長 お答え申し上げます。
今御答弁申し上げたことと同様でございまして、使用者が対象労働者に具体的な時間配分についての決定についての指示を行っている場合については、労働時間のみなし効果は生じないものでございます。
山下よしき 追加の業務を命令するのは違法ですかと聞いているんです。
山越局長 お答え申し上げます。
業務につきましては、あらかじめこういった業務ということで命じられることになると思いますけれども、いずれにいたしましても、具体的な労働時間について命令、指示をしている場合についてはみなしの効果は生じないものでございます。
加藤大臣 今の御指摘、基本的にはできるだけ事前に指示をすることが望まれると思いますけれども、場合によっては追加的な業務が行われること、これは通常の仕事でもあり得ることなんだろうと思います。ただ、その結果において業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合には労働者から時間配分の、配分に関する裁量が事実上失われるという、こういったことを踏まえて指導をするということになるわけでございます。
山下よしき 追加の業務を加えること自身は違法じゃないんですよ。加藤さんうなずいている。ですから、結局、自由な働き方と言いながら、これだともう野方図に働かされることになるんですね。労働者に業務量を断る権利、制限する裁量はありません。使用者がどんなに多くの業務量を与えても違法ではありません。しかも、みなし労働時間を超えて働いても残業代を払う必要はないと。経営者にとっては、働かせば働かせるほど人件費の節約になるのが裁量労働制なんですね。
その下で、もう一つ、みなし労働時間と実労働時間の乖離、先ほど総理は是正すると言いましたけど、是正できない実態があります。
大企業に入社1年目から裁量労働制になっている方に聞きました。事業所として労働時間の状況の把握のために自主申告型タイムシートを上司に出すということになっていますが、こんな仕事になぜこんな時間を掛けるのかと言われて、月10時間分の手当なので10時間を超えない自主申告にしていると。
厚労省、こういうことをやっている使用者は法律で罰則はありますか。
山越局長 お答え申し上げます。
裁量労働制におきましては、対象労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉措置を講じていただくことになっております。このため、労働時間の状況について把握する必要があるわけでございますけれども、これにつきましては、使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務時間を把握する方法として具体的に明らかにすることが必要でございますし、その方法といたしまして、いかなる時間帯にどの程度在社したかということを記録等をすることが必要であります。こうしたことを決議等で定めた方法においてやっていただく必要がありますので、決議に定められた方法によりこうした労働時間の状況を把握していない場合は適正化の指導を監督署で行うものでございます。
山下よしき 罰則はないんですよ、もう私の方で言いますけどね。
結局、この一つ、二つ、こういうことがあるから裁量労働制の下で労働者は長時間労働になるし、過労死の危険が増大すると。これ、過労死の御遺族の方、共通して指摘している問題なんですね。
総理に伺いますが、こういう問題をしっかり踏まえないと裁量労働制の対象業務の拡大なんて絶対やってはならない。ましてや、高プロも同じ、同じ懸念があるわけですから、まず実態をこういう問題として把握すべきではないですか。
安倍首相 そもそも、裁量労働制は、一定の知識、経験を有した働く方本人に、会社が決めた一律の就業時間に縛られることなく、出勤退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、より効率的に成果を上げていただこうというものでありまして、基本的にはこの企画業務型においては本人の同意が必要だということになっておりますし、高プロにおいてもそうなっていると承知をしております。
金子委員長 山下君、時間が来ています。
山下よしき こういう深刻な問題があるにもかかわらず、拡大したり高プロを導入するなどということは絶対に認められない、そのことを申し上げて、終わります。