2020年05月21日
日本共産党の山下芳生議員は21日の参院環境委員会で、気候変動の抑止に向けて二酸化炭素(CO2)を大量排出する石炭火力発電の新規建設を中止し、2030年までのCO2削減目標を引き上げるよう、小泉進次郎環境大臣に求めました。山下氏は、小泉大臣の地元神奈川県横須賀市に石炭火力発電所の新規建設が行われていることを現地の調査を踏まえて告発。「子どもたちのことが心配だ」「温暖化の原因になる火力発電所を40年も50年も動かすのはおかしい」など住民の声を紹介し、「この声に応えるのが大臣の役割、使命ではないか」と問いました。小泉大臣は「横須賀だけを考えるのではなく地球規模の課題として取り組む」と答弁。山下氏は「足元の横須賀のことを見直せなくて、なんで地球全体を考えられるのか」と厳しく批判しました。
CO2の削減対策を決める「地球温暖化対策計画」を見直すにあたり、山下氏は、①コロナ後の経済産業システムは変わる、変えていく立場、②市民参加を大切にする立場、③2030年目標を上積みする立場―の三つの立場で見直すよう提案しました。小泉環境相は第1と第2の立場について「しっかり入れていきたい」と答え、第3の立場は「野心的な削減努力を反映できるよう最大限努力する」と述べました。
【議事録】
山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
今日は、気候変動について質問します。
産業革命前と比べて世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えることは、人類共通の死活的な急務となっています。もしも有効な対策を取らなければどうなるか、環境省は昨年7月に、2100年未来の天気予報をウエブサイトで公開しました。産業革命以前からの気温上昇を1.5度に抑える目標を達成した2100年と達成できなかった2100年の天気予報を作ってみたということであります。
資料に、環境省からいただいたデータを紹介しております。1枚目は、この冒頭の画面なんですが、このまま有効な対策を取らずに地球温暖化が進むと2000年頃からの平均気温が最大4.8度上昇すると予測されていますと、こうあります。
それから、資料の2枚目は、1.5度目標が未達成、温暖化が進行して最大4.8度上昇した場合の2100年夏の天気予報であります。各地の最高気温を見ますと、東京43.3度、札幌40.5度、名古屋44.1度、大阪42.7度、福岡41.9度など、沖縄を除いて軒並み四十度以上となってしまうという天気予報になっております。
資料の3枚目は、同じく1.5度目標未達成、夏のこの先1.月の気温予測でして、年間の猛暑日予想、最高気温が三十五度以上の日が、京都66日、名古屋63日、東京60日となります。日本列島が丸ごと真っ赤に塗られているわけですが、まさに灼熱地獄、とても生きていけないということになる未来なんですね。
それから、資料4枚目は台風の予測図であります。ここにあるように、台風情報、台風10号、中心気圧870ヘクトパスカル、最大瞬間風速90メートル毎秒とあります。台風の大きさは、御覧になっていただけるように、日本列島の半分ぐらいがすっぽり入ってしまう巨大なものでして、台風の目だけでも東京都がすっぽり入ってしまう大きさであります。こういう猛烈な巨大台風、スーパー台風が毎年接近し、大雨や暴風雨や海面上昇によって大被害をもたらすという予測であります。
私は、この環境省の未来天気予報は、このまま有効な対策を取らなければどうなるか大変よく分かる資料になっていると思います。現状は、世界でも日本でも、文字どおりの気候危機と言うべき状況であります。
私は、こうしたこの天気予報のような内容を全ての人の共通認識にすることが気候変動抑止、危機脱却の緊急行動を大きく発展させる出発点になると考えますが、小泉環境大臣の認識はいかがか、簡潔にお答えください。
小泉進次郎環境大臣 ご丁寧にこの環境省が作成した2100年未来の天気予報をご紹介いただいて、まず感謝を申し上げます。正直言って、この反応としては、2100年の天気予報なんか言われたってピンとこないよという、そういった反応も私の耳には聞こえていたので、逆に非常にいいと山下先生から言っていただいたことは励みになりました。是非先生からもこれをまわりにも広げていただきたいと思いますが。
先生にご紹介いただかなかった内容の中には、例えば、1.5度目標が達成できない場合には夏の熱中症などで国内死亡者数が1万5000人を超える、そして米の収穫量や品質が悪化する、まあこれなどはすでに感じておられる農家さんもいると思いますが、そういったことも紹介をしています。また、冬にスキー場がオープンできないとか言っていますけど、これなんかは、いや、もう既に雪不足でオープンできないよと、こういう状況もありますので、私としては、2100年どころかこれは相当前に起き得る可能性もある、そういった状況だと思います。
いいコンテンツを作って、気候変動の危機というのはコロナの前から存在した危機ですので、これに着実な取組をしようと、そのことが経済社会をより良く、持続可能に、そして強靱にしていくんだという思いを共有できるように、環境省、全力となって取り組んでいきたいと思います。
山下よしき 2100年よりも相当前にこういう状況が起こるかもしれないと。だからこそ、野心的な目標を立てて、法的拘束力を持って挑戦することがどうしても必要になると思うんですね。
じゃ、どうするかと。1.5度未満に抑えるためには、温室効果ガスの中でも排出量が多い二酸化炭素、CO2を減らさなければなりません。
国連のグテーレス事務総長は、2050年までに排出量実質ゼロにすることを呼びかけました。その鍵は、石炭火力発電の削減であります。昨年12月のCOP25でグテーレス事務総長は、石炭中毒をやめなければ気候変動対策の努力は全て水泡に帰す、石炭火力は唯一最大の障害とまで言って、石炭火力発電について2020年以降の新規建設を中止するよう訴えました。COP25に出席されていた小泉環境大臣は、演説の中で日本へのメッセージとして受け止めたと述べられました。
ならば、大臣、石炭火力発電の新規建設は中止すべきではありませんか。
小泉環境相 この石炭の問題というのは、恐らく私が大臣に就任するまでここまで大きな政治課題として議論されることが余りなかったと思います。それまで日本の中のエネルギー政策の議論は、特に原発事故以降は原発ですから。しかし、国際社会は、気候変動対策の中で最大の注目を浴びているところは石炭火力であります。
そういった観点からすると、あのCOP25以降、国内でも国会でもここまで、さあ日本は石炭火力どうするんだと、こういう議論が今高まりを見せていることは次のフェーズに向かう上で必要不可欠なところだと思うので、私は良かったと思っていますし、まさにその中で日本が具体的なアクションを示していかなければいけないと思います。
そういった中でも特に、私としては、日本が今国際社会からの批判が浴びている一つ、これは石炭火力の輸出に対しての公的支援を付ける付けないという話。こういった中で、今関係省庁で見直しに向けた議論を始めたところでありますし、環境省としても、その検討会を動かして、正式に取りまとめもほぼ済んでいるところであります。まさにこれからが各省調整です。その各省調整の中で土台を共有した中でいかに前向きな一歩を踏めるかどうか、引き続き最後まで全力の調整の努力をしたいと考えています。
また、先生からご指摘のあった新設の石炭火力をどうするか、こういったことについては、2030年、2013年度比26%カットというこの目標、これと整合した道筋が描けているべきです。これまでも、環境アセスにおいて経産大臣に対して、2030年の目標と整合した道筋が描けない場合の事業実施の再検討などを含む厳しい意見を提出してきましたので、今後も厳しい姿勢を取っていきたいと思います。
山下よしき 中止というふうになかなかおっしゃらないんですよ。私は、さっき紹介したような未来天気予報を出しながら、厳しく見ていくということだけでいいのかなと、やはり石炭火力の新増設は少なくとも中止だということをはっきり表明すべきだと思うんですよね。
そこで、大臣の地元横須賀で、現在石炭火力発電所が新規建設されております。私は2月に現地を訪ねて調査をしてまいりました。首都圏とはいえ、海や丘に囲まれた自然豊かな場所で、まさに風光明媚という言葉がぴったりのところでした。住民の方も多く暮らしていまして、工事はまだ始まったばっかりのようでしたけれども、こんなきれいなところに本当に石炭火力発電所を造るのかと驚きました。
住民の方々と懇談いたしました。環境がいいのでついの住みかとして横浜から引っ越してきたとか、不動産屋さんから旧発電所は10年も前に止まっているので稼働することはないと聞いてこの場所に決めたという人もいました。また、お母さん、若いお母さんたちは、子どものことが心配だとおっしゃっていました。
私が感動したのは、住民の皆さんがローカルな環境悪化の心配とともにグローバルな環境悪化の心配をされていたことです。昨年の台風では住民が誇りにしている久里浜という美しい海岸の護岸が高潮、高波で壊れた、これは地球温暖化の影響だとか、なのに温暖化の原因になる石炭火力発電所をこれから建設して40年も50年も動かすのはおかしいという声も聞きました。
小泉大臣、こうした地元の声、自分たちと地球の未来を心配する声に応えるのが大臣の役割、使命ではありませんか。
小泉環境相 山下先生には、私の地元を絶賛をしていただいてありがとうございます。そして、地元の市民の皆さんがローカルな視点だけではなくてグローバルな視点も持っているということは、横須賀というのは、ペリー来航を含めて開国の地横須賀ですから、そういうグローバルな視点が育まれていることも横須賀の歴史とも無縁のところではないだろうと思います。私も誇りに思います。
そういった中で、まさに横須賀だけのことを考えてはいけないだろうということも同時に思います。この地球規模で取り組まなければいけない気候変動の中で、仮にですよ、横須賀だけ石炭火力をなくしてこの地球規模の課題を解決できるのかというと、そういうことでもありません。
大臣としてやるべきことは、横須賀だけのことを考えることではなくて、まさに地球規模の課題をどのように地球規模で捉えて前に進めていくのか、日本全体としてどのようにやるのか、こういった全体を見た政策を遂行していくというのは非常に大事なことだと思いますので、地元の方の思い、そのことを受けながらも、全体を見てしっかりと確実に脱炭素を進めていく、そこをご理解いただきたいというふうには思います。
改めて言いますが、石炭の新規、これについては引き続き厳しく臨んでまいります。
山下よしき お言葉ですけど、横須賀だけを考えるんじゃなくて地球全体と言いますけど、私は、足下の横須賀でさえ新規建設石炭火力が今進んでいることを見直せなくて、何で地球全体のことを考えることができるのかと、これが問われているんだと思いますね。極めて残念です。地元の願いに、地球の危機に応えることができていないんじゃないかと。
国内で現在稼働している石炭火力発電は124基もあります。その上に、新たに建設計画中が全国各地に二十二基あるわけで、この22基のCO2排出量は新たに年間7474万トン、これから3割も増えるわけですね。コンセントの向こう側で電力会社が石炭火力を増強すれば、コンセントのこちら側で一般市民が幾ら節電しても、CO2削減努力は一遍に帳消しにされてしまうという声もあります。当然の声ですね。これに政府はそれでいいと言えるのかということが問われていると思うんですね。
今や世界の流れは脱石炭であります。フランスは来年2021年までに、イギリス、イタリアは2025年までに、そしてオランダ、カナダは2030年までに、ドイツも2038年までに石炭火力発電所を廃止することを決めております。
私は、日本も環境省が主導して、石炭中毒と言われる現状から脱石炭にかじを切るべきだと思います。実は今、その絶好のチャンスとも言えると思うんですよね。環境省が所管する地球温暖化対策計画を今見直す時期にあります。温対計画はCO2を減らす対策を各分野でどう推進するかを決めるものであります。
大臣、温対計画見直しの中で、エネルギー分野の石炭火力発電について、一つ、新増設はやめる、二つ、既設の石炭火力発電所も廃止していく、この2点を盛り込むべきではありませんか。
小泉環境相 まず、石炭火力に関する環境省としての基本的な考えは、これは改めてになりますが、長期戦略にあるとおり、石炭火力を含む火力についてその依存度を可能な限り引き下げること、これが環境省としても基本的な考えです。これによって温室効果ガスの排出総量の削減を図って、究極的にはカーボンニュートラル、すなわち脱炭素社会を実現をする、これ基本的な考えです。
そして、今先生からご指摘あった温対計画の見直しについては、長期戦略で示した大きな方向性を具体化させつつ、発電部門に対する取組については、エネルギー政策を所管している経産省とは緊密に連携を図りつつも、地球温暖化対策を所管している立場から、環境省として主張すべきことは主張していきたいと考えています。特に、環境省においては、再生可能エネルギーの主力電源化、これに向けて重点的に取り組んでいることを踏まえつつ、政府内の見直し作業を主導的に進めていきたいと考えています。
山下よしき 経産省との連携もあるけれども、地球温暖化を所管する環境省としてという立場が表明されました。私はそれは本当に今大事だと思うんですよね。
経産省は、石炭火力どんどんどんどん、原発も含めて推進の立場です。今や原発も石炭火力もなくそうという方向で世界は流れているわけです。それを主導できるのは環境大臣なんですね。
提案したいと思います。温対計画見直しに当たって三つの立場を踏まえる必要があるんじゃないか。一つは、コロナ後の経済産業システムは変わる、また変えていくんだという立場、二つは、市民の参加を大切にしてこの計画を見直していくという立場、そして三つ目は、温室効果ガス削減の2030年目標などを上積みする立場、これは非常に重要な立場になるんじゃないかと思いますが、大臣、この三つの立場を踏まえて温対計画の見直しに当たるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
小泉環境相 山下先生から今三つご提案がありました。
一つ目が、コロナ後の経済社会システム、これを転換する中で、気候変動対策、これをしっかりと入れ込むべきだと。これは、さっき片山先生のご質問の中でもお答えをしたとおり、そのことまさにそのとおりだと思います。これをおろそかにして経済社会活動の再開で環境がおろそかになってはならない、これを間違いなくしっかりと入れていきたいと思います。そして、この前の緊急経済対策の本文の中にも、我々の主張のとおり、この中に脱炭素社会への移行を進めるということもちゃんと明記をしてありますので、これがぶれることがないようにしたいと思います。
そして、二つ目に、先生から、取組を進めるに当たって市民の参加の重要性、これもご指摘をいただきました。これも、先生ご指摘のとおり、市民の意見を反映させる機会を設けるとともに、計画に掲げられる取組を進めるに当たっては、国民の価値観、そして行動の変容をどのように脱炭素型に根付かせていくかという観点も重要でありますから、この計画に盛り込むべく、そうした観点も計画に盛り込むべく検討を進めていきたいと思います。
最後に、三つ目が2030年の削減目標の上積み、こういったご指摘もいただきましたが、NDCにおいては、26%の水準にとどまることなく中期、長期の両面で温室効果ガスの更なる削減努力を追求していくということを明記をして、その後の削減目標の検討は更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指すと、これも明記をしてありますので、次のCOP26までの間に追加情報をしっかりといいもので提出できるように最大限の努力をしてまいります。
山下よしき 更なる野心的な削減努力とありましたけれども、残念ながら具体的裏付けがまだないんですよ。やはり石炭火力維持を前提にしていたんでは更なる野心的な目標というのは出てこないです。
そこで、最後にもう一つだけ提案したいんですけれども、やはり政治の決断が大事だということであります。
2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明をした自治体は、環境省ずっと後追いされていますけれども、今や日本の総人口の過半数に迫る勢いとなっております。
それから、2月20日、国会で超党派気候非常事態宣言決議実現を目指す会が設立をされました。この案内文には、この国会決議を実現することにより認識をまずは国会全体で共有し、その上で危機克服のために必要な具体的アクションプランの策定と実施という次なるステップに進んでいくとあります。共同代表幹事には自民党の鴨下一郎元環境大臣が、世話人には中川雅治元環境大臣もなっておられます。
世界でも、そして日本国内でも、気候非常事態宣言、それから二酸化炭素排出実質ゼロを目指す動きが広がっております。大臣、こうした流れに依拠して国として気候非常事態を宣言してはどうでしょうか。そのためにイニシアチブを小泉環境大臣が発揮してはどうでしょうか。
小泉環境相 先生がご指摘いただいた気候非常事態宣言、これは世界的に宣言の取りまとめを行っているNGO、クライメート・エマージェンシー・デクラレーション、これによれば、本年に入り宣言を行う国、自治体等が増加した結果、現在11か国、約1490の自治体等の宣言が登録をされているが、既に各国で行われた気候非常事態宣言は、このNGOの取りまとめを見る限り、国レベルでは主に議会により行われているものだというふうに承知をしています。
なお、先生からは、自治体の2050年の脱炭素宣言、ゼロカーボンシティをお触れいただきましたが、私が大臣就任したときは四自治体、それが今91自治体、そして、当初2000万人程度の人口規模レベルが、今は6200万人を超えている、ほぼ過半数まで来た。
この後押しを私が力を入れて取り組んできたのは、まさに気候非常事態宣言は、国会という議会が行われるものかもしれませんが、環境省として、できる限りの、この気候変動に対する危機感を共有する、取組を加速する後押しとしてできること、この自治体とともに歩む、こういった思いの表れとしてご理解いただければ大変有り難いと考えております。
山下よしき 国会が、あるいは政府が、別に区分けする必要ないんですよ。やはり政治が決断する必要あると、そのポジションにあるのはあなただということですから、残念ながらそれがないがために、ちまちまちまちま経産省と折衝するということでは今駄目なんじゃないかということを申し上げます。世界でも国内でもそういう流れが、機運が醸成されつつあるんですから、そのときを捉えて環境大臣としてのイニシアチブの発揮を強く求めて、質問を終わります。