山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
過去2回、合併特例債の発行期限は延長されました。今回の法案でさらに5年間延長されることになるわけですが、その提案理由は何か、議案提案者にうかがいたいと思います。
橘慶一 衆院総務委員長代理 お答え申し上げます。
合併特例債につきましては、委員ご指摘のとおり、東日本大震災に伴って過去2回、発行可能期間が延長されております。しかし、その後、平成28年熊本地震等の相次ぐ大規模災害や、全国的な建設需要の増大、東日本大震災の被災市町村における人口動態の変化等により、合併市町村の市町村建設計画に基づいて行う事業等の実施に支障が生じている状況にございます。
また、160を超える地方公共団体から合併特例債の発行期間、可能期間を5年間延長してほしいとの要望があることも踏まえまして、合併特例債の発行可能期間をさらに5年間延長する旨の本法案を提案したところでございます。
山下よしき ありがとうございました。
合併特例債を利用した事業の実施に支障といいますか問題が生じている事例を一つ紹介したいと思います。
奈良市は、2005年に、隣接する月ケ瀬村、都祁村と合併し、二十三事業から成る新市建設計画を策定いたしました。その主要な事業の一つが、資料配付しております新たな火葬場建設運営計画である奈良市新斎苑等整備運営事業であります。総事業費54億円、うち29億円に合併特例債を充てる予定になっております。
現在ある火葬場は供用開始から既に100年経過しておりまして、途中、当然修理もしたわけですが、老朽化と敷地の狭さが深刻で、火葬の申込みから4、5日の待機というのは日常茶飯事になっております。したがって、新たに建て替えることは必要だと私たちも考えております。
ただ、事業者の選定の手続に問題があったと言わざるを得ません。手続は公募型プロポーザル方式で行ったんですが、1回目の公募は1者のみの応募で、しかも上限価格を大きく超える金額の提示であったために不調に終わりました。再公募を行ったところ、上限価格内の価格を提示した事業者が現れ、その事業者に選定されましたが、問題は、応募の締切りから事業者の選定までわずか5日間しかなかったということであります。しかも、再公募は1者しかやはり応募していないということなんです。これは市議会でも、1者だけの応募で競争性が担保されていない、僅か5日でまともな審査ができるのかといった批判が相次ぎました。
原因はなぜかといいますと、合併特例債の発行期限が迫っていることにあるというふうに言われております。合併特例債を使用するには、この新たな火葬場建設を合併特例債の発行期限2020年までに建設を終えて完成させる必要があるんですね。そのために、逆算すると、事業者との契約のための議案を今年の3月議会までに通過させなければなりません。そのために、1者応募、しかも5日間という短期間の事業者選定となってしまったわけですが、総務大臣、この合併特例債の発行期限が迫る中で、こういう余りにも短期間で競争性がない応募、事業者選定になってしまっている事態が起こっている問題、どう認識されますでしょうか。
野田聖子 総務大臣 お答えいたします。
合併特例債は、合併した市町村が団体ごとに決められた発行限度額の範囲内で、法に定められた発行可能期間内に市町村建設計画に基づいて実施する公共的施設の整備事業等に活用できるものです。
各市町村におきましては、議会における予算審議等を通じて、財政の見通しや発行可能期間、そして事業の実施スケジュール等を踏まえながら合併特例債の活用について判断をされているものだと承知しているところです。
山下よしき そういうふうに判断してやってきたつもりなんですよね、奈良市も。ところが、こういう事態が起こっているんです。
私は、総務省は、合併特例債の発行期限が迫る中でこのような問題が生じることを予測できたと思うんですよ。なぜなら、特例債の発行枠は2兆円も残っております。駆け込み的な利用は当然予測できることであります。それからもう一つは、公共施設の建設には通常数年掛かるということ、これも常識ですので、ですから、もうあと3年で期限が迫ってきているということになりますと、何とか活用したいということで、こういう問題が起こることは容易に予測できたんじゃないかと思いますが、総務大臣、いかがでしょうか。
野田 総務相 合併特例債に発行可能期間が定められているのは、合併市町村の一体感を早期に醸成するためです。合併特例債を活用した事業の内容や実施の時期につきましては、あらかじめ定められた発行可能期間の中で、市町村建設計画に基づいて事業が効果的、計画的に実施されるよう各市町村が自主的に判断すべきものと考えております。
山下よしき 分かるんです、その建前は。しかし、こういうことが起こっているのはなぜかということを問題提起しているんですね。
そこでうかがいますけれども、合併特例債で建設された火葬場、斎場の数は幾らか、火葬場、斎場の建設工期は平均的に幾らか、お答えください。
山崎重孝 総務省自治行政局長 市町村建設計画の中に火葬場、斎場は結構ありまして、全国で約二百事業というふうに認識しております。
その建設工期ですが、それぞれの事業の内容等により異なってきますから一概にお示しすることは困難ですし、また、施設の性格上、なかなか難航することもあるというふうに認識しております。過去の事例、押しなべて見てみますと、おおよそ3年ないし4年となっているところでございます。
山下よしき 今あったように、全国で合併特例債を活用して火葬場の建設等に200件以上、実際事業がやられているんですね。結構いろいろトラブルが当然ながら住民の皆さんとの間で起こることもあって、建設までに期間がかかるんですよ。ですから、そういう事態が全国でも、これは奈良だけではなくて起こっているはずなんですね。
しかも、火葬場建設に関する補助金というのは、この合併特例債以外は災害時に補助する以外はないんですよ。したがって、平時にこういうものを新設したい、もう老朽化したので建て替えたいというときには特例債が非常に利用しやすいということで、皆さんこれ活用されているわけです。ところが、こういう問題が起こるわけです。
奈良も残念ながらいろいろ住民の反対運動が起こりました。これは、単なる地域エゴではなくて、予定地が土砂災害警戒区域に入っていると。もし土砂災害が起こったら利用できないじゃないか、アクセスできないじゃないかと、余計火葬場を待つ人が増えるんじゃないかということになっていましてね。ですから、これは一定対策を打ったから今回議会で承認されたことになるんですが、私は、特例債の発行期限が迫る中で、自治体に対して早期にこういうことが起こらないようにしてくださいよという注意喚起をすること、総務省として、それから、迫ってくる中で、住民合意や事業者の選定手続に無理が生じていないかを把握すると、この必要があったと思うんですけれども、総務大臣、今までにこういう問題点に対する対策、行ったことありますか。
山崎 局長 先生ご指摘のように、合併特例事業につきましては期限がございます。10年間ということをあらかじめ申し上げております。そういった意味で、合併当初から、この期間内にしっかりと実施していただきたいと、計画的にということを度重なっていろいろ申し上げております。
それから、総務省では、合併特例債の発行期限が近づいてきましたので非常に気にしておりまして、毎年毎年どのような実施状況になっているかということを把握しております。そういった意味で、計画的な活用ということ、それから、法律で定まった期限ですからそれを超えられないということで、相当私どもとしては熱心に要請をしてまいったところでございます。
今般、先生ご指摘のことがございますので、また改めまして事業につきましてどうなっているかということは把握してみたいと思っております。
山下よしき 平成の大合併というのは、ご存じのように、政府が強引に、私から言わせればあめとむちを使って一気に合併を進めたということに問題点があったと思います。このあめの最大の一つが合併特例債ですね。ところが、もう合併が終わったら、この特例債に関わって様々な問題が生じたとしても、もうそれは知らぬ顔だということでは自治体に対して余りにも冷たいと言わざるを得ません。
これ、延長するわけですから、同じような問題がさらに広がる可能性もあるわけですから、今ご答弁あったように、しっかりと自治体に注意喚起をする。そして、どんな問題が生じているのか、しっかり把握して対策を取ることを強く求めて、質問を終わります。