山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
大分、杉尾さんと問題意識が重なっておりますので、どうしようかなと思いながら質問させていただきます。
まず、統計法第1条、「公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報である」と、非常に重要な定義ですが、意味を説明いただけますか。
三宅俊光 総務省政策統括官 お答え申し上げます。
ご指摘の文言は、公的統計についての基本認識を規定したものでございます。公的統計は行政機関等による適時適切な施策の企画立案、実施のために作成されるとはいえ、国民は行政によるそうした統計利用の反射的効果を受ける立場にとどまるものではなく、国民自らが国民生活や企業活動といった社会の様ざまな行動において積極的に公的統計の利用者となる、こういうことを示したところでございます。
山下よしき 政策決定するときの根拠になると、非常に重要な位置づけだと思います。
続いて、統計法第3条、基本理念の二で、公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ中立性及び信頼性が確保されるよう作成されなければならないとありますが、この意味をお答えください。
三宅 統括官 お答えいたします。
公的統計の作成にあたりましては、必要となる統計の内容に照らしまして、最も適切な情報源及び合理的な作成方法により、社会経済の実態を正しく表すように、特定の者が恣意的に有利になるようなものとなることのないようにしなければならないということを意味するものでございます。
山下よしき 大事なご答弁だと思います。
そこで、具体の問題を聞きたいと思いますが、聞くことは杉尾さんとダブっておりますが、厚労省の働き方改革をめぐる、総理も厚労大臣も、裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短いというデータがあるという、この根拠となった厚労省のデータ、これは公的統計と位置づけられますか。
三宅 統括官 お答え申し上げます。
ご指摘の労働時間等実態総合調査は、厚生労働省が労働基準法第101条の規定に基づきまして、労働基準監督官による臨検監督業務の一環として実施したものと承知しております。
この調査結果は、当該業務の結果、副次的に作成されたものと承知しておりまして、統計法上の統計調査に基づき作成されたものでありませんが、行政機関等が作成する統計であることから、同法の公的統計には該当します。このため、統計法に定める、公的統計は中立性、信頼性が確保されるように作成されなければならないという基本理念は、この調査結果にもおよびます。
山下よしき 公的統計だということでありますが、そうすると、この厚労省のデータ、野党の指摘によって間違っていたということが認められて、首相の答弁は撤回をされましたし、裁量労働制の適用業務の拡大については削除されました。政策決定の根拠である公的統計がでたらめだったと、これは非常に深刻な事案だと言わなければなりません。
杉尾さんが先ほどやり取りされました。その答弁はもういいです、その答弁はいいです。別の角度から聞きたいんですが、私、2月19日に厚労省労働基準局提出の平成25年度労働時間等総合実態調査に用いた付表というものをいただいております。ここに調査事項というのがありまして、これを見ますと、裁量労働制については労働時間の状況の平均を取っております。それに対して、一般労働者については調査した月の中で最長の1日の時間外労働の時間というものを取っております。裁量労働制は平均、一般の労働者は1月のうちで最長の時間、これ、比べてはいけないものを比べていたと、驚くべきことがやられていたということなんですが、間違いありませんか。
土屋喜久 厚生労働大臣官房審議官 お答え申し上げます。
この実態調査に関しまして、今ご指摘がございましたように、調査対象事業場における平均的な者の労働時間として、一般労働者と裁量労働制の労働者では異なる仕方で数値を選んでいたところ、当該数値を比較したということは不適切であったというふうに考えておりまして、また、この調査のうちの裁量労働制に関するデータは国民の皆様に今回の裁量労働制の改正について疑念を抱かせることになったということから法案から全面削除をしたという、こういう経過でございます。
国会、また国民の皆様方に大変なご迷惑をお掛けしたことについて、深くおわびを申し上げたいと思います。
山下よしき 不適切じゃ済まないですよ、これ。だって、平均値と最長の値を比べちゃ駄目じゃないですか。誰が考えても、小学生でも分かる、失礼ですけど。それを比べて、結果として裁量労働制より一般の労働者の方が労働時間が長い。比べるものが間違っているんですよ、比べちゃならないものを比べたと。何でこんなことになったんですか。
土屋 審議官 この比較につきましては、私どもが、平成27年の当時だったと思いますが、様ざまなご議論にお答えをするという中で、特にこういった比較を求められた中で、データとしてお出しをできるものは何かないかという作業をやっていく中で、データの前提を十分に確認しないまま比較をしたデータを申し上げた、その後、その比較についてご質問をいただく機会もございまして、国会でもご答弁を申し上げる機会があったと、こういう状況の中で起こったことだというふうに考えております。
山下よしき 2月22日の野党の合同ヒアリングの中で、私も参加を時どきするヒアリングですが、当時の厚労省の労働条件政策課長はこう言っておられます、大きなターニングポイントは日本再興戦略改訂2014、これで1回リセットになったと。
日本再興戦略改訂2014というのは、次期通常国会に高度プロフェッショナル制度も裁量労働制の対象業務の拡大も法案として提出するということを閣議決定したものであります。それまでは、裁量労働制の時間、一般労働者の時間、JILPTの調査として裁量労働制の方が長いというごく当たり前の調査結果が出ていたんですが、この労働条件政策課長は、再興戦略2014で、これが大きなターニングポイントになったと、環境の影響も大きかったというのが、言い訳するつもりもないけど、そういったことがあるというふうに私たちの前で言ったんですね。
まともな調査やっていたけれども、総理が議長になる産業競争力会議やこの日本再興戦略改訂2014、これが大きなターニングポイントになって環境が変わった、言い訳するつもりないけれども、これでこういう結果になっちゃったということに影響があるということを私たちの目の前で認めました。
総務大臣にうかがいます。なかなか難しい質問かもしれません。
私は、先ほどからずっと、統計とは何か、政策決定の根拠になるものだと、そして、中立性、信頼性はなぜ大事かというと、特定の者に恣意的に有利になるようにしてはならないということが言われました。私は、残念ながら、総理が責任者に立っているこういう産業競争力会議や日本再興戦略2014が、突然、裁量労働制の適用業務の拡大、あるいは高度プロフェッショナル制度をもう次の国会で法案として出すということをトップダウンで決めた、それに、残念だけれども、現場の厚労省の方がたは、大きなターニングポイントだったと、言い訳するつもりはないけれども、環境の影響を受けたと言っているんですよ。これは非常に重大だと言わなければなりません。
中立性どころか、政府の方に偏った調査を意図的に作らざるを得なくなったんじゃないかと、信頼性はもう根底から崩れた、そういう政権のトップダウンによって信頼性、中立性が崩されることが起こったと言わなければならない、そこまで底ついたこれは総括をする必要があると思いますが、総務大臣、いかがでしょうか。
野田聖子 総務大臣 山下委員ご指摘のとおり、統計法では、公的統計について、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならないという基本理念が規定されているところです。ですから、今般の国の作成する統計において不適切な取扱いが見られたことについては、統計制度を所管する総務省として極めて残念、これに尽きます。
今般の法案では、行政機関等の責務として、「基本理念にのっとり、公的統計を作成する責務を有する。」と明記したところです。総務省としては、今後、この責務が各府省においてしっかり果たされるよう周知徹底してまいりたいと思っています。
山下よしき 私の質問には答えておられません。
そういう残念な事態がなぜ起こったのか、政権のトップダウンで意向をそんたくせざるを得ない状況に追い込まれたんじゃないかと私は問題提起しているんです。担当官の方は、その影響があったと、大きなターニングポイントだったと正直に答えられていますから。私は、統計を所管する大臣として、そのことをしっかりと底ついて調べた上で今後に生かさなければ、生かしようがないと思っているんですよ。
そこで、もう1回厚労省に聞きますが、監察チームの報告、いまだに行われていないですが、いつまでにやるのか。それから、今回のこの裁量労働制をめぐるデータの間違いについて、政府の統計に対する国民の信頼が失われているわけですから、これは総務省、あるいは統計委員会から報告を聴取されたり、意見を聴取されたりしましたか。この2点、お答えください。
坂口卓 厚生労働大臣官房総括審議官 前段についてお答えを申し上げさせていただきます。
先ほど来議論がございましたデータの作成経緯につきましては、これまでも私どもの方でも確認をしてきたところでございますけれども、今月の衆議院の厚生労働委員会で、第3者的な目で調査すべきとのご指摘もございました。こうしたことから、今後のさらなる確認につきましては、委員今ご指摘ございましたような厚生労働省に設置されている既存の監察チームというものを活用して、弁護士等、外部の有識者の目を入れて確認をすることとしております。
いつまでという点につきましては、改めて外部の有識者にご相談しながら進めるものでございまして、いたずらに時間を掛けるつもりは毛頭ございませんけれども、一定の時間がかかるということについてご理解をいただきたいと思っております。
土屋 審議官 質問の後段についてお答え申し上げます。
本調査で集計をいたしましたデータは、労働基準監督官による臨検監督業務の一環として実施をした業務統計でございまして、総務大臣のご承認を受ける必要がある統計調査には該当しないということで、したがいまして、今回の問題に関しては総務省から統計法に基づくヒアリングというものは受けていないという状況にございます。
山下よしき 総務大臣、これ、そういう、何といいますかね、もうしゃくし定規な解釈するんじゃなくて、これだけ国政の特に統計調査に対する信頼が根本から損なわれる事態が、先ほどの農林水産省の問題もそうですよ。もうそれ、今日、済みません、聞きませんけれども、時間なくなりましたので。
こういう問題について、何でこんなことが次つぎと起こるんだろうかと。ちゃんと底ついて、私は統計を所管する大臣としてイニシアチブを発揮すべきだと思いますが、いかがですか。
野田 総務相 厚生労働省の調査、ヒアリングについては、今お話があったように、総務省としては厚生労働省から統計法に基づくヒアリングを行うことはしませんが、一方、この問題が明らかになった後、厚生労働省の動向を注視して関連情報の収集を行っています。そして、厚生労働省が統計法に基づく統計調査として再調査を行った場合には、総務省としても専門技術的な観点からしっかり審査するとともに、厚生労働省の求めに応じてしっかり相談に乗るよう、私の方からも職員に指示したいと考えているところです。
山下よしき 再調査は当然なんですが、再調査がちゃんとしたものになるかどうかの前提として、ちゃんと総括しないと駄目だということを指摘しておきたいと思います。
法案のもう一つの面、調査情報の提供先の拡大について聞きたいと思います。
調査票情報提供先について、これまでの公的機関と同等の者から、相当の公益性を有する者に拡大されることになります。
まずお答えいただきたいんですが、調査票情報の提供、そしてオーダーメード、匿名データの提供について、それぞれ相当の公益性とは具体的にどういうことでしょうか。
三宅 統括官 お答えいたします。
法案の第33条の2、これに規定いたします調査票情報の提供における相当の公益性が認められるものにつきましては、調査票情報が特定の調査客体を識別できる情報を含み得る、こうしたものであることを踏まえまして、調査票情報の提供を受けて統計の作成等を行うことについて、国民の統計調査に対する信頼が損なわれることのないような公益性が認められるものを意味をしているところでございます。具体には、条文で例示しております学術研究の発展に資する統計の作成等を行う場合のほか、学術研究と密接に関連する高等教育の発展に資する統計の作成等を行う場合を想定しております。
また、お尋ねのオーダーメード集計及び匿名データの提供につきましての相当の公益性でございますけれども、これらの集計、提供制度によって特定の調査客体を識別できる情報は提供されないこと、また、両制度が平成21年以降、約10年にわたり特段の問題もなく運用し、社会的な理解が進んでいると認識していることから、現在より提供条件を拡大しても国民の統計調査に対する信頼を損なうおそれは小さいというように考えております。
具体に例示で示しております学術研究の発展に資する統計の作成等を行う場合のほか、官民データ活用推進業務計画、これにおきまして、データの利活用により諸課題の解決が期待できる分野として指定されております農林水産、インフラ、防災、減災等の、重点分野と言っておりますけれども、こうした分野に係る統計の作成等であって、当該統計の作成等が国民生活の健全な発展や国民生活の向上につながるといったものを追加することを想定しているところでございます。
山下よしき 日本経団連が、2016年4月19日に公的統計の改善に向けた提言をされております。そこには、「企業における利用促進に向け、今後は、利用目的を学術研究だけでなく、企業の商品開発、市場分析、地域産業の活性化等にも活かせるように緩和することが求められる。」としておりますが、今回、その他公益性を有するというところの中に、経団連の言う企業の商品開発、入りますか。
三宅 統括官 お尋ねのご指摘のオーダーメード集計でありますとか匿名データの利用関係でありますけれども、今申し上げたような適用の拡大を考えているところでございます。
こうした点が経団連から要望のありました企業の商品開発とどのように合致するか、これは具体に申請を受けて審査をしていくということになろうかと思っております。
山下よしき 非常に怪しい答弁だと私は思いますよ。個々の企業が商品開発するために、公的統計から必要なデータを作ってくれと依頼されたら、オーケーということもあり得るという今ご答弁に聞こえますよ。しかも、その基準は今、ないんですよ。これから省令に委ねられるわけですからね。そんなことでいいんだろうかというふうに思わざるを得ない。
やはり、国の政策を決定するための法的な統計、それをどう使うのかというのは、やはりあくまでも公的な、公益に資するものでなければならないのに、それが一企業の商品開発にどんどんどんどん使われていくようになったら、これ公的統計に協力する側も考えを変えなければならないということにさえなりかねない問題だと思います。
そこで、最後に、オーダーメードや匿名データへの加工をしても、様ざまなデータを寄せ集めるなどすれば特定されることもあるということが専門家から指摘されておりますが、こういうオーダーメード、匿名データへの加工で絶対に個人情報、プライバシーが漏えいしないと言い切れるんでしょうか。
三宅 統括官 お答えいたします。
匿名データは、調査票情報を特定の個人又は法人その他の団体の識別ができないように加工したものでございます。この匿名性を担保するために、調査実施機関は、ガイドラインにのっとりまして、各種の匿名化処理の技法を用いて匿名化処理を行うということにされております。さらに、基幹統計調査に係る匿名データを作成する場合には、法第35条の2項に基づきまして、あらかじめ統計委員会の意見を聞かなければならず、匿名性は十分に担保されているものと考えております。
また、オーダーメード集計につきましては、そもそも利用者自身が調査票情報を取り扱うことがないので、利用者から漏えいすることはありません。
以上でございます。
山下よしき ただ、専門家は、匿名データにしたとしても、いろいろ数が集まって集計されると分かる場合があるというふうに言っておられるんですね。そういう心配あると思うんですが。
そこで、これ大臣に聞きたいと思うんですけど、まず政府委員でも構いません。私は、調査票データの二次利用について、本来、本人同意を取るべきだと思うんです。少なくとも、調査協力を求める段階で、第3者に提供される可能性があると、匿名データに加工するなどする、その場合もあるということをちゃんと事前に伝達、少なくともするべきではないかと思いますが、これどうですか。
三宅 統括官 お答えいたします。
調査票情報につきましては、秘密の保護及び国民の統計調査に対する信頼性の確保の観点から、第40条におきまして、統計法に特別の定めがある場合を除きまして、その行った統計調査の目的以外の目的で利用、提供することは禁止されております。そして、この特別の定めとして32条から38条の規定を設けておりまして、このように統計調査で報告した内容が二次的利用として用いられることがあり得ることは、平成19年の新統計法制定以来、既に制度として定着しているというふうに理解をしております。
その上で、今回の改正では、調査票情報の二次的利用の透明性の確保及び利用成果の社会還元の仕組みといたしまして、提供時点で提供を受けた者の氏名、名称、提供に係る統計調査の名称を公表し、成果を得られた時点でその成果を公表するといった制度を設けることといたしておりまして、個別の二次利用につきましても透明性を担保できるようになったと考えております。
今回の公表制度につきましての制度内容を含めまして、二次的利用につきましてのさらに国民の理解を得られるよう周知に努めてまいります。
山下よしき もう終わりますが、これ、家計調査の集計、個人に配られるやつですけれども、ここにちゃんと、統計法に基づき政府が実施する基幹統計調査です、記入内容は厳重に保護されますので、ありのままをご記入くださいとあるんですよ。誰もこれ第3者に提供されると考えないです、これ読んだら。ところが、どんどんどんどん二次加工されていく、しかも、その利用対象が広がると。にもかかわらず、安心してくださいというままでこれからもいくということですから、これは非常に心配だということだけ指摘して、終わります。