放送大学やKLMオランダ航空の5年無期雇用転換逃れの雇い止めをやめさせるよう政府をただす 
2018年5月31日 参議院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 2013年施行の改正労働契約法によって、期間の定めのある有期雇用契約が通算5年を超える場合に、労働者が求めれば期間の定めのない無期雇用契約に転換することとされました。いわゆる無期転換ルールでありますが、今年4月からこのルールが適用開始されて、少なくない職場で労働者の雇用の安定に役立っていると承知しております。

 私の昨年11月の参議院の代表質問に対し安倍総理は、無期転換ルールを避ける目的で雇い止めすることは法の趣旨に照らして望ましいものではない、企業への周知や啓発指導にしっかりと取り組んでいくと答弁されました。大事な答弁だったと思います。

 ところが、総務省と文部科学省共管の放送大学学園が各都道府県に設置している学習センターの有期契約の職員の皆さんが今年の3月末で大量に雇い止めされました。

 総務省、放送大学の学習センターの役割について説明してください。

山田真貴子 総務省情報流通行政局長 お答え申し上げます。

 放送大学の学習センターでございますが、全国各地に設置をされておりまして、放送大学のキャンパスとして、学習者の身近な場所におきまして、面接授業の実施、単位認定試験の実施、インターネットやDVD等による再視聴学習機会の提供、学習支援等を行う役割を担っているものと承知をしているところでございます。

山下よしき 大事な役割を果たしているんですが、国から年間78億円の補助もされております。その学習センターで働く職員403人のうち、79人が3月末で雇い止めされました。多くは5年以上あるいは10年以上働いてきた女性の皆さんであります。

 兵庫と徳島の時間雇用職員の女性2人から直接訴えを聞きました。お二人とも1年ごとに契約更新して10年以上働いてきた方で、にもかかわらず3月末に雇い止めをされました。それぞれ兵庫あるいは徳島の労働局に申告をして対応を求めておりますが、大学当局は態度を改めておりません。

 今日、皆さんのお手元に私が独自入手した資料の一部を配付いたしました。

 労働契約法の改正への対応についてと称した、平成25年3月5日、これは放送大学学園の常勤理事会に配られた資料であります。冒頭書いてあります。平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約について、通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより無期労働契約に転換することとなる。その次のページ、そのため、期間業務職員、時間雇用職員、特定有期雇用職員の労働契約について、改正労働契約法の施行日以降、以下のとおり取り扱うこととする。

 その次、抜粋ですけれども、時間雇用職員、教務補佐員、研究補助員、TA等を含む、これらの方々についてはこれまで特に規定が明文化されていなかったため次の一から三の取扱いに改めるとあって、一、通算雇用期間の上限を5年までとする、現在在職している時間雇用職員の雇用期間については、最長でも平成25年4月1日から5年を超えないものとするということを明記したペーパーであります。

 まさにこれは無期転換ルールを避ける目的で雇い止めするための対応だということをあからさまに述べた文書であります。女性たちは、私は労働契約法改正がなければずっと働き続けられたんだと言っております。そのとおりだと思います。これまでは1年契約を繰り返し10年以上働いてきたのに、法改正によってそれができなくなった、こんな理不尽なことは私はないと思います。

 女性たちに聞くと、ベテランが辞めていく中で、センターは勤続3年未満の人だけになったというんですね。様々な年齢層の人たちがこれは受講する場所ですから、やはり一定の経験も必要なんだけれども、それが絶たれていると。

 厚労省にうかがいますが、労働契約法18条そして19条に係るゆゆしき問題だと思いますが、女性からの申告で兵庫労働局は学習センターに啓発指導を行ったけれども、拒否されたと聞いております。一体どんな対応をしているのか。このまま放置するんですか。

成田裕紀 厚生労働大臣官房審議官 まず、個別の事案についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論として申し上げますと、事業主と労働者との間の個別労働紛争について紛争解決の援助の申出があった場合には、個別労働紛争解決促進法に基づき、都道府県労働局長による紛争の自主的な解決をうながす等の助言、指導を行っているところでございます。

山下よしき 私は、こんなあからさまな無期転換ルールの逸脱のための雇い止めはないと思いますよ。これで何にも労働行政ができなかったら、労働行政は何のためにあるんだということになると思いますよ。

 まあ、時間ないですから、私、総務大臣の責任も問われると思います。これ、総務省所管ですからね、共管ではありますけれども。総理答弁に反することが総務省の足下の法人で進んでいると。これ、大臣として是正指導すべきではありませんか。

野田聖子 総務大臣 山下委員にお答えします。

 放送大学学園の職員の雇用形態については、労働関係法令に基づき、同学園が適切に定めるべきものと考えています。無期転換ルールについても、同学園において、改正労働契約法の趣旨を踏まえ、適切に対応していただくべきものであると考えています。

 総務省としては、労働関係法令を所管する厚生労働省、同学園を共同で所管する文部科学省と連携しながら、同学園に対し、引き続き労働関係法令に基づき適切な対応がなされるよう伝えてまいりたいと考えます。

山下よしき 今ペーパー読んでいただいたんですが、私は、総務大臣として本当に積極的な対応が必要だと思うんですね。

 いろんな理由があります。組織の活性化とか学生のニーズに合わせた魅力的なサービスとか言うんですが、そんなものは雇い止めの理由には全くなりません。いろんな対応がされるべきなんですね。一方で、この4月から、138人、非常勤職員を新たに採用しております。雇い止めのための雇い止めなんですよ。

 総務大臣、足下でこんなことが起こっている。しっかりと情報をつかんで、しかるべき対応をしてください。

野田 総務相 繰り返しになりますけれども、厚生労働省そして文部科学省とまずしっかり連携しまして、そして学園に対して、この労働関係法令に基づいて適切な関係がしっかりなされるよう、しっかり伝えていきたいと思います。

山下よしき 次に、KLMオランダ航空の日本人客室乗務員がこの7月から大量に雇い止めされようとしている問題について質問いたします。

 国交省、オランダ航空の日本国内の就航状況、月々の乗客規模などについて報告ください。

久保田雅晴 国土交通省航空局航空ネットワーク部長 お答え申し上げます。

 オランダ航空の日本への就航状況につきましては、2018年の夏ダイヤにおきまして、アムステルダム—成田路線を週七便、アムステルダム—関空路線を週七便、それぞれ運航してございます。

 日本路線におきます旅客数につきましては、両路線合計で、2016年は約40万人、2017年は約42万人の利用となってございます。

山下よしき そういう状況なんです。

 この日本人客室乗務員の方々が、7月から順次、期間が来たということで雇い止めされようとしておりますが、これは後で言いますけれども、まさに無期転換に掛かるような方々がそうされようとしているんです。

 まず、どんな働き方をされているかについて大臣にお聞きいただきたいんですが、私、日本人客室乗務員の問題というのは、日本人の乗客にとっては安全に直結した問題だというふうに、いろいろ話聞いて理解いたしました。

 例えば、こういう事例があったんです。2014年、アムステルダム発関空行きの便で、搭乗手続終了直後に火災事故が起こりました。窓の外が真っ黒い煙で覆われて、オランダ人の乗務員がすぐに操縦士に知らせて対応したんですが、緊急事態ですから、オランダ人乗員たちは英語ではなくオランダ語でのやり取りになったそうです。日本人客室乗務員は、そういう中で、オランダ語の内容をしっかり把握して、機体からのこれは出火ではないと、緊急脱出の必要はないと、エンジンを掛けるための機材であるジェットスターターというものが出火して炎が上がったけれども、すぐに機体から分離されて事なきを得たので大丈夫だということを、オランダ人のオランダ語のやり取りを聞いて、日本語でその都度アナウンスをして日本人の乗客に伝えたというんですね。怖かったけれども、すぐにアナウンスが日本語で入ったので安心したと感謝されました。大半は日本人の乗客だったということであります。そういう役割をしておられる。

 それから、昨日、私が直接会ってお聞きした方は、日本人の乗客の方が急病になったと。日本人の方の病気の表現というのは、やはり外国人と比べて割と、何といいますか、そんなにオーバーにしないので、キャッチするのは、やはり日本人の客室乗務員がそのことを踏まえて引き出して大丈夫ですかと言って、そうすると、かなり重篤だ、重症だということが分かったので、これはオランダ人クルーとも相談して緊急着陸が必要だという判断して、札幌の空港に着陸したそうなんですね。ふだんは降りない空港ですから、その地上乗務員とのやり取りなんかも日本人のクルーがかなり役割を果たしたと言っていますけれども、すぐ病院に行って手術をやって命は取り留めたんですが、もし緊急着陸して手術しなければ命はなかっただろうとドクターに言われたそうですけれども、そういうことを日本人の客室乗務員はやられている。

 非常に大事な日本人の乗客にとっては役割だと思いますが、まず総務大臣に、こういう役割を果たされている日本人客室乗務員について、感想はいかがでしょうか。感想で結構です。

野田 総務相 お答えいたします。

 大昔になりますけど、私も就職活動をしているときに航空会社に憧れて希望したことがありましたけれども、夢はかないませんでした。多くのやっぱりお客様相手に本当に心温まるサービスをしていただいて、快適な、そして安全な空の旅をつくっていただいていることに、私自身も時々利用しますので、感謝しながらも大切な仕事だと認識しているところです。

山下よしき 快適、安全、大切なお仕事だと。そのとおりだと思います。

 ちょっともう大分前の話になりますが、野田大臣の先輩でもあられます亀井静香運輸大臣が、1994年のことなんですけれども、日本の航空会社の中でアルバイトスチュワーデスを導入することが問題になったんです。そのときに亀井大臣は、契約制の客室乗務員導入について行政指導もされまして、そのときの国会答弁でこういう答弁されています。雇用形態が安全面にどういう影響を与えるのか、乗務員について、一体化の問題等から全体的に判断していく、将来、3年たったら正社員に切り替えるというやり方か、それとも最初から直ちに正社員に切り替えていくのか、それは航空会社に判断してもらうという趣旨の答弁をされて、単にこれは雇用形態だけではないんだと、安全の問題だ、クルーと一体に、雇用形態がばらばらでは安全対応ができないんだという趣旨のことをはっきりと国会で答弁されまして、そういう対応もされまして、以降、今ではJALもANAも客室乗務員は正社員に替わっております。

 私は、この亀井静香当時運輸大臣の判断、大変正しいものがあったと思いますが、感想で結構ですが、いかがでしょうか。

野田 総務相 私も、かつて亀井先生とは郵政の関係とかでいろいろ出会いがありまして、一見怖い方、怖く見える方なんですけど、非常に細やかな気遣いをなさる、先を見通せる方だと思っております。

 これにつきましても、私は、そのとおりで、いい形になってよかったなというふうに思います。

山下よしき ところが、残念ながら、そういう大事な役割を果たしているKLMの日本人客室乗務員、そしてまた亀井静香大臣の言葉を引くまでもなく、安全にとっては雇用形態は非常に大事なんだという客室乗務員なんですが、オランダ航空は、日本ベースで働いている日本人客室乗務員の方については、これまで2年契約プラス3年契約などで5年以内の有期雇用にしてまいりました。これまでは5年以内だったんです。しかし、ジャパンキャビンクルーユニオン、客室乗務員の組合が、5年を上限にした契約では安全上もいろいろ問題があるだろうということで交渉をされまして、さらに3年間の契約更新を認めさせて、2015年からさらに3年の延長がされております。したがって、2年、3年プラス3年ですから8年間の契約でいろいろ経験を積まれた方々が、この7月からその8年間が切れようとしているわけです。

 なぜ、8年間切れたらさらに延長したらいいじゃないかと思うんですが、その3年前のときに、もう残り契約が2日間で切れるというときに、これで契約しなければ駄目よということで、3年限りだという条件をもうのまざるを得なかったんです。しかし、状況が変更すればいろいろ協議には応じようということになっているんですが、そこで今問題になっておりますのは、もうそろそろその7月から8年目の方が来るわけです。

 私は、いろいろ事情があるわけですから、これは厚労省に聞きますけれども、これが8年間、本当にそういう仕事をしてきた方が、いろんな事情はあろうにせよ、無期転換ルールが適用される今年から、こういう方々がどんどんどんどん切られていくなんということは絶対にあってはならないと思いますが、どういう指導をしていますか。

土屋喜久 厚生労働大臣官房審議官 お答え申し上げます。

 個別の事案につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、まず、無期転換ルールについては、これを定めた労働契約法が民事の法規でございますことから、無期転換申込権が発生する前の雇い止めについて紛争が生じた場合には、最終的には司法においてその有効性が判断されるというものでございまして、行政としてその適否について申し上げることができないということがございます。

 ただ、その上で、厚生労働省としては、本年4月から無期転換の申込みが本格的に始まるということを踏まえて、まず、このルールへの対応が円滑に行われるようにあらゆる機会を捉えて周知を図ってきたわけでございまして、また、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持って雇い止めをするというような事案を把握した場合には必要な啓発指導を行ってきたところでございますし、また今後ともそこをしっかり対応してまいりたいと思っております。

山下よしき 私、当事者の方から聞いたんですけれども、東京労働局はKLMに対して啓発指導されました。されたんですけれども、先方の受け止めは、いろいろ説明を受けたけれども、その雇用方針を変えろなんて聞いていませんといって開き直っているんですよ、開き直っているんです。

 こういう状況で、無期転換ルールを守る、その1番先頭に立たなきゃならない厚生労働省の、私は、放置したら責任が果たせないと思うんですね。引き続き頑張っていただきたいと思いますが。

 野田大臣にうかがいます。

 私は、厚労省もこれから頑張っていただくんですが、野田大臣はもう言うまでもなく女性活躍担当大臣でもあられます。日本の優秀な女性たち、まあキャビンクルーには男性もいますけれども、これから、さっき言ったように、毎月、7月から次々と期限が来て雇い止めになるような方々が出てくるんです、多くは女性ですけれども。

 女性活躍担当大臣でもある野田大臣の目の前でこういうことが起こっていいのかと、いかがですか。

野田 総務相 お答えいたします。

 まず、ご指摘の個別のオランダ航空の事案については、事実関係の詳細を承知しておりませんので、この場でのお答えは差し控えさせていただきます。

 一般論として、私は、今委員がおっしゃったように、女性活躍・男女共同参画担当大臣でございまして、そこで申し上げるとするならば、例えば男女間の賃金格差の問題、女性の非正規雇用の問題などを含め、女性活躍以前の課題にしっかりと目を向けること、フェアネスの高い社会の構築を目指していくことが、特にこの人口減少局面にある日本にとってはとても重要なことだと思っています。

 無期転換ルールというのは、有期契約で働く方の雇用の安定を図るために設けられたものであり、不安定な雇用に苦しむ多くの女性にとっては雇用の安定や処遇改善につながることが期待されているものと考えています。そして、企業にとっても、今お話があったような、その熟練の上に立った安全性とか、またそういうプロ意識の高さとか、そういうものがかえってその企業の値打ちを上げていくという視点もちゃんと捉まえていただかなければならないかなと思います。

 いずれにしても、企業の皆様には無期転換ルールの制度の趣旨をしっかり踏まえて取り組んでいただくとともに、制度を所管されている厚生労働省において適切な対応に努めていただきたいと思います。

山下よしき 総務省として、今、女性活躍推進について、行政監視として調査対象にされているんですね、大臣。行政監視の対象として女性活躍推進について今調べ始めているんです。中身はいろいろあると思います。女性社長の比率がどうだとかというのはあるんですが、そういうことだけではなくて、本当にすばらしい役割を発揮して活躍されている女性たちが、その場が奪われるようなことがあっていいのかということも、私はこの調査の対象にすべきだと思います、いろんな企業聞き取っていますから。

 最後に、提案、お願いなんですけれども、大臣自身が、今日、たくさん当事者傍聴されております。是非、オランダ航空の雇い止めの不安で1日1日を今送られている女性の皆さんの声を直接聞いていただいて、そして、オランダ航空にも、そういうことがあっていいんだろうかと、女性活躍に逆行するんじゃないかということを今度の行政監視の一環として聞くことだってできますから、これ是非検討してくれませんか。

野田 総務相 委員、今日、実はこの委員会で初めてオランダ航空の皆さんの話を山下委員のご質問によって少しずつ中身を承知しているところで、しっかりまた検討させていただいて、とにかく日本はもう女性の活躍なかりせば成り立っていかない国だということを多くの方たちがご理解いただいているところでございます。そこをしっかり踏まえて取り組んでいきたいと思います。

山下よしき その志が現実の問題として是正できるように、私も是非精いっぱい頑張りたいと思いますから、行政機関の皆さんと政治の力が問われていますので、しっかり取り組んでいただけるよう私も力を合わせるということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

About 山下よしき 364 Articles
日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。