日本共産党を代表して、放送法改定案に対する反対討論を行います。
NHKによる常時同時配信については、その影響が様々な分野に及ぶため、総務省は2015年に放送を巡る諸課題検討会を設置し、NHK、民放、有識者、総務省などで、常時同時配信によりどのような公共的価値が発揮されるのか、民放やローカル局への影響と連携、受信料制度のあり方などについて検討が重ねられてきたものです。
しかし、2017年、当時、高市総務大臣が現段階では議論が十分に煮詰まっていないとして、据置状態となっていたものを、2018年1月、安倍首相が推進の意向を強く示し、様々な課題に解決の道が付かないままに規制改革推進会議にのせられ、常時同時配信実施ありきの流れがつくられたものであります。
その結果、受信料をどう考えるのか、今後民放のキー局がNHK同様にネットで番組を流すようになれば民放地方局のビジネスモデルが壊れることになるのではないかなどなど、肝腎の問題が今後の課題として先送りされています。
地方向けの放送について、現行放送法は義務規定であるにもかかわらず、本法案は努力するとしているだけで、結果、地方の視聴者は中央、東京発の番組だけを配信されます。
また、ネット配信に伴って新たな著作権処理が問題となりますが、権利者団体等とは権利処理ルールについての協議を始めたにすぎません。民放局への影響や番組制作費の増大は明らかですが、その結果、番組の質の低下や番組作りを担う労働者への待遇が引き下げられることがあってはなりません。
これらの課題は、公共放送として果たすべき役割にも深く関わっており、NHKと民放の2元体制による放送の規律を維持していく上でも重要な課題であり、それらの解決を先送りして国民・視聴者を置き去りにするやり方は、到底容認できるものではありません。東京オリンピックまでにというスケジュールありきではなく、こうした重要課題の解決について、関係者はもちろん、国民的納得と合意を得た上で実施すべきであります。
さらに、本法案は、NHKが作成する実施基準に常時同時配信事業に関する業務範囲、費用などを追加させて、総務大臣が認可するものとなっています。総務大臣が認可を下すにあたっての判断基準については省令改正としており、政府関与の強化、恣意的、政治的な利用にもつながりかねないとの懸念は払拭できません。
NHKの公共性はこれまで以上に大きな意義を持つことになります。政府から独立した第三者機関による監督、規律の確保など、新たな体制の確立が求められています。
最後に、このような問題があるにもかかわらず、本委員会で参考人質疑も行わず、たった3時間半程度の質疑だけで採決することは、当委員会の役割を果たす上でゆゆしき問題であることも指摘し、反対討論といたします。