“解雇特区”広がる恐れ—通知の雇用指針を批判 
【議事録】参議院内閣委員会質疑

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 まず、菅官房長官に質問をさせていただきます。
 安倍政権は公務員制度改革について、省益を排し、官僚が動くために行うんだと述べておられますが、そこで確認なんですが、私は厚生労働省の職員の方が労働者保護の立場に立って仕事をすることはこれは省益のためではないと考えますが、いかがでしょうか。

○菅義偉内閣官房長官 まず、安倍内閣の縦割り、省益を排除するためにこの公務員制度改革を目的としている、そのことは私たちはそう思って行っております。
 そしてまた、厚生労働省では労働者が働く環境の整備という任務の達成のために労働者の保護の事務をつかさどっていると、このように理解をいたしております。

○山下よしき その厚生労働行政の重要な労働者保護という仕事について少し疑問を生じざるを得ないことが生まれておりますので、続いて質問したいと思います。
 国家戦略特区の特区計画に基づく雇用労働相談センターで活用されるものとしてきた雇用指針というものがあります。これは、国家戦略特区指定の閣議決定はまだこれからですから、そこで特区ごとに特区会議を立ち上げて特区計画を策定するわけです。その上で雇用労働相談センターをどこに置くかということを決めていくわけですが、この特区計画の策定そのものが早くて7月頃になるというふうに聞いております。ところが、4月1日にはこの雇用指針なるものが各都道府県、政令市、それから労働局に、労働基準局長と特区室長の連名で通知をされました。まだ特区指定も決まっていない段階で、なぜ急いでこれを各地に送付したんでしょうか。

○大西康之厚労大臣官房審議官 委員御指摘の雇用指針でございますが、国家戦略特別区域法第37条2項に基づきまして策定するものでございます。同項につきましては本年4月1日施行とされております。
 また、この国家戦略特別区域法に基づきまして、本年2月の25日に閣議決定されました国家戦略特別区域基本方針において、法律の施行日までに諮問会議の意見を聴いてこの雇用指針を作成すると、そういうことにされておりますので、特区法の根拠規定の施行日であります4月1日付けで通知したものでございます。

○山下よしき まだ、しかし、それぞれの特区の地域指定という、それから、そこにおける特区計画というのはこれからなんですね。
 そもそもこの指針は、雇用労働センターで専門家が行う相談、助言活動に活用されることを想定して作成されてきた。にもかかわらず、何か全国の自治体にこれが配られているということになっているわけであります。えらい変わってきたということですね、性格が。
 しかも、この指針の内容なんですけれども、これまでの国会答弁では雇用のルールと裁判判例の類型を紹介するとしてきたんですが、私、これ見ますと、今日資料に抜粋で載せておりますけれども、紛争を未然に防止するためにという欄がいろんな項目ごとに入っているんです。その部分だけ抜粋をいたしました。
 そこを見ますと、例えば、労働契約書や就業規則に定め、それに沿った運用をすれば紛争を未然に防げるとして、例えば、この一番箱の上の下の方ですけれども、解雇をする場合には、雇用期間その他の事情を考慮して一定の手当を支払うことなどとあります。契約書にこういうことを書き込めば解雇できるというふうに読めるわけですね。
 これまで厚労省は、相当の理由がなければ解雇権の濫用になると、整理解雇四要件とか、あるいは能力不足などを理由とした普通解雇も、事業主側が能力発揮への努力をしているかどうかなどが必要だというふうに強調されてきました。解雇というのは厳しい要件が課せられていたんですが、この紛争を未然に防ぐためにという指針の部分だと、そういう厳しい要件は抜け落ちていて、一方で、紛争未然防止のために事業主側の例えば弁護士などが、事業主にこういうやり方がありますよというふうに解雇指南できるような内容になっていると、私には読み取れるわけです。
 これ、厚生労働省に確認しますけれども、今年に入ってこの案を作成したということですが、この未然に防止するためにという項、この概念ですね、これまでの労働行政の中でここまで踏み込んで書いたものがありますか。これが一点。それで、作成過程の中で原案の段階からこういうことが入っていたのか、途中から入ったとしたらそれは誰からの要請だったのか、お答えください。

○大西審議官 委員御指摘の雇用指針におきましては、労働契約に関する裁判例の分析、類型化と併せまして、これに関連する主な制度、あるいはグローバル企業等において特に紛争が生じやすい項目について、紛争を未然に防止するための具体的な助言を掲載しているものでございます。
 これは、まさに国家戦略特別区域におきまして個別労働関係紛争を未然に防止するという趣旨に即したものでございまして、こういったものにつきまして、厚生労働省のパンフレット等において何か先例としたというものではございません。
 また、この雇用指針の作成の過程につきましてでございますけれども、雇用指針につきましては、労使関係者の意見を踏まえつつ、厚生労働省が中心となって、関係府省が連携しながら政府として策定したというものでございます。
 この最初の原案というのがどの時点をもってというのがちょっとよく、まあ何をもって原案というのかは難しいところでございますけれども、この国家戦略特別区域法の趣旨に即して、この紛争を未然に防止するという、こういったことについて必要なものではないかという具合に考えておるところでございます。

○山下よしき 特区に絞ってと言いながら全国に送付しているということ自体がおかしいという点は、さっき指摘しました。
 それから、経過ですけど、内閣府と厚生労働省が私の事務所の問いに対して、経過の中で、国家戦略特区ワーキンググループの八田座長などと1月以降3回にわたって相談会を持って、その中で、判例だけでなく紛争を未然に防ぐアドバイスをとの提案があったということを認めています。そういうことですね。事実確認ですが。

○大西審議官 元々、この国家戦略特別区域法におきましては、国家戦略特区の諮問会議の意見を聴いてというような法律上の規定もございますし、その中で、国家戦略特区ワーキンググループというのは、委員御指摘のとおり、この八田座長がされているわけでございますが、そういうワーキンググループからヒアリングを受けたという事実はございます。

○山下よしき そのワーキンググループからのヒアリング受ける経過の中で、これが入ってきたんですよ。
 八田氏は、3月28日、国家戦略特区諮問会議で、この雇用指針では、過去の判例における判断基準を明確化し、その基準に沿ったものを書面で契約することを勧めている、そうした場合は、日本の裁判例はちゃんと尊重してきたという事実を前提として書かれていると発言されています。要するに、契約書面で書かれれば裁判はそれを尊重すると、こういうやり方でやれば、お金さえ払えば解雇できるんだということを書面で契約しておけば裁判でも大丈夫なんだという、そういうことを意味するこれ指針になっているわけですね。
 官房長官、伺いますけれども、契約書に書き込めば裁判所もそれを尊重する、あっ、済みません、順番ちょっと変えます、官房長官の前に厚労省に確認しますけれども、そういう書面で書かれれば尊重されると、そういう雇用指針だということでいいんですか。

○大西審議官 雇用指針では、もちろん労働契約に関する裁判例の分析、類型化と併せまして、これに関連する主な法律、制度とか、特に紛争を生じやすい項目について紛争を未然に防止するための具体的な助言を記載しているわけでございますが、これは解雇権濫用法理等のそういった判例法理を変更するものではなく、個別の紛争に当たってはこれまでどおり個々の事案の実情に応じて司法判断がされるというものであります。
 先ほど御指摘の解雇事由等を労働契約書に記載した場合でありましても、個々の事案ごとに、経済とか産業の情勢、あるいは使用者の経済状況や労務管理の状況、こういったものが総合的に考慮されて個別に司法判断がなされると、そういったものと考えております。

○山下よしき また大事な答弁です。
 仮に契約書にこうすれば解雇できますよと書かれてあっても、それが個々の事実に照らして、これまでの判例に照らして認められなければ駄目ですよという立場を今厚労省はお述べになりました。
 そうすると、官房長官、この雇用指針のこの部分というのは、これは実態に合わない不正確な内容に私はなっていると思うんですが、今厚労省が述べたことが政府の立場だと、これは共有できますよね。

○菅官房長官 これは私の所管外のことでありますので、今日は政府参考人出席していますので、政府参考人が答えるのが適当かと思います。

○山下よしき じゃ、もういいです。
 この八田氏を座長とする国家戦略特区ワーキンググループは官房長官が決裁してできたワーキンググループですので、そういうことも聞いてみたわけですね。
 そうしたら、もう厚労省に聞きます。
 厚労省は、書面で書いても駄目なものは駄目だとおっしゃいましたので、そうしたらそういうことをちゃんとこの指針にも書かなきゃ駄目だと思うんですよ。読んじゃったら、書面に書かれれば、書いて契約書にサインしてしまったらもう解雇されても仕方がないのかなと思っちゃうんですからね。
 そうじゃないんですよということを、これ書いていますか。

○大西審議官 委員御指摘のとおり、解雇権濫用法理の判例法理を変更するものではなく、個別の紛争に当たっては、これまでどおり、個々の事案の実情に応じ総合的な判断、こういったものが司法でなされるという具合に考えております。
 この点につきましては、この指針の総論部分におきまして、本指針に関しましてはあくまでも一般論であり、個々の事案ごとに、経済や産業の情勢、使用者の経済状況や労務管理の状況などを考慮して判断がなされると、こういう記載をしているところでございます。

○山下よしき その箇所を私も探して見付けましたけど、この分厚い38ページの指針の中に本当に二行だけそういうことが書いてあるんですよ。肝腎の太枠で囲んだ未然防止のためにという箱の中にはそういうことは一切ないんですよ。だからいろいろ、じゃ契約に際してとか解雇に際してとか箱の中を見たら、あたかもこれを書面で契約すれば解雇が認められるかのようにそこの部分だけ見れば受け止められかねないんですね。こういうものを私は全国に配るということはいかがなものかというふうに思いました。
 それからさらに、この未然に防止するとして述べられている中に、管理職又は相当程度高度な専門職、あるいは高額、あるいは相応の待遇を得て即戦力として、あるいは労働者保護に欠けることがない場合という一応前提は付いているというふうに読み取れるんですが、ここに書いてある今私が述べたケース、それぞれ具体的にどういう人を想定しているんでしょうか。

○大西審議官 御指摘のあった点につきましては、例えばでございますが、上級の管理者とか高度の専門知識や技能を有する技術者などで、なおかつ、その技術、能力を評価、期待されて特定の職務のために即戦力として採用されているという、そういった方が一つ当たるんではないかと。一般の労働者の労働条件を普通は相当程度上回っており、労働条件の決定においてもかなりこの労働者の交渉力というのが期待できる、そういったものが想定されているところでございます。

○山下よしき その相当程度というのは、なかなかこれを読んだだけでは分からないんですね。今、名ばかり管理職ということも大変社会問題になっておりますし、ワーキングプア、貧困化が進んでおりますので、例えば年収500万、600円であっても相当の待遇と思われる、これ相対的には。そういう環境だってあるわけですから、具体的にどのような人を想定しているのかという点がこれ読んだだけでは分からないので、使用者側の方が、あなたは専門的な能力があります、即戦力として頑張ってほしい、それなりの待遇しますと、こう言われたら、私はそういうことかなと。そして、書面でもう金銭的な解雇もできるというふうにサインしちゃったら、ああ、これはもう仕方がないのかなと思わせられかねないこれはやはり表現になっております。
 そういうことを指摘して、これは、こういうことを、大事な労働者保護の観点が弱く、非常に誤解を招く内容が書かれていることを普及しちゃいますと、結局労働者へのこれは解雇などの説得材料に使われかねない。司法に持ち込まれれば個々に判断されるといっても、労働者はよっぽどのことがなければ裁判に訴えることはできませんから、こういうものが独り歩きしたら、それこそ解雇特区がもう全国に広がっちゃうということになりかねません。
 私は、こういうものをまくんじゃなくて、是非労働者にとってもっと大事な情報を提供するべきだと思うんですよ。厚生労働省がちゃんとそういうものを作っておられます。労働基準局監督課が作られた、「知っておきたい働くときのルールについて」というこの冊子を見ますと、これだともう本当に分かりやすいですよ。
 労働法とは何だろう、労働法の役割とはということで、働く人というのは給料をもらわなければ生きていけない。したがって、悪い条件でも仕方がないなと思ってしまうこともあるだろう。しかし、こういうふうに全く自由にしてしまうと、実際に立場の弱い労働者にとって低賃金や長時間など劣悪な労働条件の不利な契約内容となってしまうかもしれません。そうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法は定められています。労働法について知識を付けておくことが皆さん自身の権利を守ることにつながりますというふうに、もうそこから、労働法というのは皆さんのためにあるんですよという、いいこれはパンフレットだと私は思いましたが。
 一方で、こういう逆の指針を全国にばらまくんじゃなくて、私はもっとこっちの方を積極的に活用する。全国の自治体にこういうものをちゃんと配付して、雇用指針だけじゃなくて、こっちの方もきちっと活用してもらうようにすべきではありませんか。

○大西審議官 雇用指針につきましては、労使の意見も聴いたということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、そうした労働政策審議会においても雇用指針全体が基本的には了解されているものと理解しておりますし、あわせて、その中で、労働者に対しても周知すべきだという御意見もいただいたところでございます。そういった意味で、私どもとしても、労働者保護の観点からそういった周知に努めるというのは大変重要なことだと思います。
 そうした中で、委員が御指摘いただきましたパンフレットでございますが、こちらの方につきましても、当然非常に重要な内容が含まれておりますので、雇用指針を活用する際には、委員御指摘のパンフレット含めまして、個別のいろんな労働者の保護のための法制度を解説した既存のパンフレット、こういったものも活用しながら、そういったものが図られるというようなことをしてまいりたいという具合に考えております。

○山下よしき 官房長官、こういうことを是非バランスよくやっていただく必要があると思うんです。解雇指南書ではなくて、労働者保護の立場に立ったこういうパンフレットあるわけですから、官房長官、全体を見渡して、こっちの活用を是非推進していただきたい。いかがでしょうか。

○菅官房長官 いずれにしろ、特区のことについては特区の法律に基づいて今雇用指針というものも出されたわけであります。まさにそこには、今政府委員から話がありましたけれども、労使の参画をしている審議会で理解もいただいているということでありますので、また特区は特区として必要なものについてはやはり進めていく必要があるだろうというふうに思いますし、特区を全国に広めるということでなくて、この指針に基づいて自分が特区をやりたいという手を挙げたところから選定をするわけでありますから、全国に広がることは、当初は、特区についてどういう効果があるのかということからまず始めていくという形になるだろうと思います。

○山下よしき 官房長官、ありがとうございました。以下の質問は別の大臣にさせていただきますので、もしよろしければ御退席いただいて結構です。

○水岡俊一内閣委員長 菅内閣官房長官、御退席いただいて結構でございます。

○山下よしき 続いて、国家公務員の解雇、分限免職について伺いたいと思います。
 2009年12月31日、社会保険庁の解体によって525名の公務員が分限免職となりました。当時、社会保険庁の職員1人のうち、日本年金機構に採用された者1人、全国健康保険協会に採用された者45人、厚生労働省などへ転任になった者1293人ということになっておりまして、残る方々は12月31日付けで離職になりまして、そういう方々が1159人。このうち勧奨退職が631人、自己都合退職3人、そして分限免職処分、いわゆる整理解雇の方が525人になったわけです。
 この分限免職処分に対して、71人の公務員の方が処分の取消しを求めて人事院に申請をされました。昨年5回にわたって判定が出され、昨年の12月20日の最後の処分取消しの判定までに4年間の歳月が費やされたわけであります。この結果、71人のうち25人の分限免職処分が取り消されました。
 国が行った処分に対して3人に1人の処分が取り消されるということになったわけですが、事実関係、間違いありませんね。

○江畑賢治人事院事務総局公平審査局長 お答え申し上げます。
 社会保険庁の廃止に伴います分限免職処分の審査申立てにつきまして、71件の判定を行っておりますが、そのうち25件が処分を取り消す判定だったということは間違いございません。

○山下よしき どういうこれは一体処分だったのかと私は率直に思う、取り消されるのはいいことですがね。
 それで、取り消されなかった方が今裁判に訴えておられますが、何人かは、その中のお1人、女性の方ですが、免職の処分が承認され、どうして解雇されたのか、その一点に納得がいかない。私としては、一人一人の方が手続さえしておけばもらえるはずの年金がもらえなかった、そんなことにならないよう法制度の範囲内でできるだけのことをやってきたと思います。ところが、社会保険庁というと、年金問題に伴う報道などのために、税金泥棒のようなイメージを持たれている方がたくさんいらっしゃいます。そのため、私は、自らの解雇について周りの方に話をすることもできません。ですが、年金問題によって500人もの解雇を許していいのかという思いで裁判に踏み切りましたと。
 相当年金の問題で社会保険庁の職員の方はバッシングされましたから、こういう整理解雇、分限免職された方も、なかなかそのことを声を上げて言えない状況がずっと続いてきたわけですね。
 そこで確認をいたしますが、分限免職のうち、国家公務員法第78条4号、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」の免職ですが、つまり、政府の都合と責任で行われた業務の廃止などによる免職の場合は、これは本人に全く責めがないと言っていいと思うんですが、そういうことをやる要件、これまでどう定められているでしょうか。

○千葉恭裕人事院事務総局人材局長 お答え申し上げます。
 国家公務員法第78条4号は、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」と規定をしておりまして、これに該当する場合には職員をその意に反して免職することができることとなっております。民間における整理解雇につきましては、判例や学説等におきまして、人員削減の必要性があるか、解雇回避のための努力が行われているか、人選の合理性があるか、解雇手続に妥当性があるかといった要素を踏まえまして総合的に妥当性が判断されるものと承知をしておりまして、公務部門における分限免職におきましても、このような考え方を踏まえながら対処することが適当であると考えております。
 このような中で、過去に地方公務員関係におきまして、任命権者において被処分者の配置転換等が比較的容易であるにもかかわらず、配置転換等の努力を尽くさずに分限免職した場合には権利の濫用になると判示されている例があるところでございます。

○山下よしき 要するに、配置転換等の努力を尽くさずに分限免職、すなわち解雇を行った場合には権利の濫用となるということでございまして、そこで、2006年6月の閣議決定で、退職不補充によっても定員の純減が困難な農林統計関係、食糧管理関係、北海道開発関係の組織再編に伴って、2007年から2010年度まで4年掛けて全省庁挙げて配置転換を行ったということがあります。その結果、1人の分限免職も出さなかったわけですが、そのときの経過について御報告いただけますでしょうか。

○川淵幹児内閣官房行政改革推進本部国家公務員制度改革事務局次長 お答え申し上げます。
 先生御指摘の点につきましては、平成18年6月の閣議決定で、国家公務員の配置転換、採用抑制等に関する全体計画という閣議決定がございます。この閣議決定は、平成18年に成立いたしましたいわゆる行革推進法に基づきます国の行政機関の定員の純減について、これに基づきまして定員の純減を図るに当たり、関係職員の雇用の確保を図りつつ進めることが重要であるということに鑑みまして、公務能率の維持向上にも十分配慮しながら、退職者不補充によっても純減計画の達成が困難な部門につきまして、平成19年度から22年度の4年間にかけましておよそ2900人の職員の配置転換が必要と見込みまして、政府全体で配置転換、採用抑制等の取組を行うということになったものと承知しております。
 この4年間の取組によりまして、国の行政機関で2500人弱、国の行政機関以外において100人弱の受入れが進みまして、合わせて2600人弱の受入れがなったものというふうに承知しております。

○山下よしき これ、実際は2900人余りの配置換えが必要になったんですが、今言われたような努力をやって2600人近く配置転換やったわけですね。退職者が何人かは出ましたけれども、分限免職は1人も出ておりません。そういう努力は過去やったんですよ。ところが、今回、社会保険庁の解体に伴うやり方は、分限免職525人ですから。
 実際、そういう分限免職回避努力義務が果たされたのかということですが、私は果たされていないとこの間ずっと指摘してきたんですが、人事院がこの間いろいろな申立てを受けて判定を下した中に、この問題についてどういうふうに総合的に判断されているでしょうか。

○江畑局長 お答え申し上げます。
 処分を取り消した事案の概要について申し上げますと、その取消し事由、必ずしも一様ではございませんが、基本的には、組織の廃止に当たり分限免職処分を行う場合には、処分を行う前提として分限免職回避に向けてできる限りの努力を行うことが求められ、本件については、社会保険庁及び厚生労働省は分限免職回避に向け処分直前まで種々の取組を行ったと認められるが、新規採用を相当数行ったこと、他府省による受入れは金融庁及び公正取引委員会の計9人と限定的なものにとどまっていること、各般の取組の開始時期が遅かったこと等、分限免職回避に向けての取組には不十分な点も認められ、公務部門における受入れ枠の増加は限定的なものであるものの、少なくとも一部増加させる余地はあったと認められると判断したところでございます。
 そうした中、地方厚生局等に転任候補者として選考された職員と同等以上の評価を受けたと認められる請求者を処分者が分限免職処分に付したことは、人事の公平性、公正性の観点から妥当性を欠き、取り消すことが相当であるとしたものでございます。

○山下よしき 処分が取り消された方はいますけれども、その前提として、分限免職回避努力が極めて不十分だったというのは、人事院全体がこの社会保険庁の解体に伴う分限免職について結論出したんですね。
 稲田大臣に伺いますが、これ政府が閣議決定でやったことなんですよ、社会保険庁の解体は。その中でそういう努力がされずに首切りがされちゃった、大変な思いをされている方がいる。これは是非、政府全体でこういう方々の救済について改めて、今こういう人事院の判定が出たわけですから、何らかの善処をされるべきじゃないかと、これが一点。今後、行革の名において、こういう回避努力義務なしに分限免職が安易にやられるようなことは絶対にあってはならない、そのことを教訓とすべきではないか。二点、お答えください。

○稲田朋美国務大臣 まず、第一点目の社会保険庁の分限免職問題につきましては、社会保険庁廃止に伴う職員の取扱いについては、当時決定をされた枠組みの中で厚労省において分限免職回避措置について相応の努力はされたものだというふうに思っております。
 ただ、今委員が御指摘のように、人事院においてその処分の取消しの判定がなされたわけでありまして、そのような事例に関しては厚労省において適切に対処されるべきであるし、対処されているものというふうに考えております。
 二番目の、行革の一環として組織の改編を行った場合、そのような場合にはきちんと職員の雇用に配慮をした進め方をしなければならない、委員御指摘のとおりだというふうに思います。

○山下よしき 最後、確認ですが、処分取消しされた方はちゃんとやってほしいというんじゃないんですよ。分限免職された方全体として、分限免職回避努力義務が不十分だったということが人事院の判定の中に共通して書かれているんですね。だから、取り消した、取り消されない、関係ないんですよ。分限免職を避ける努力がされていなかったというのは大きなことですから、その点で、今救済されなかった方も含めてもう一度善処をされるべきではないかということを申し上げているんです。

○稲田大臣 本件についての担当は厚労大臣であって、厚労委員会でも大臣が答弁をなさっているところでございます。当時の枠組みの中においては、その分限免職回避の措置を厚労省においてとられたものというふうに認識をしております。

○山下よしき 時間ですので、終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。