【憲法の眼】日本列島騒然のたたかいで戦争法案を必ず廃案に 
「月刊憲法運動」に掲載

 安倍政権は、憲法9条を踏みにじり、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦後最悪の法案-戦争法案を国会に提出し、「夏までに成立させる」ことをねらっています。戦争法案の成立を許さないたたかいは、戦争か平和か、日本の国のあり方、日本の命運を左右する歴史的なたたかいとなっています。日本共産党は、国会論戦と国民的共同で安倍政権を包囲し、この企てを阻止するために、党の総力をあげてたたかいぬく決意です。

 この間の国会論戦を通じて、戦争法案とその推進勢力の三つの危険性が浮き彫りになりました。

 戦争法案は憲法を躊躇する違憲立法

 第一は、法案そのもののもつ「違憲性」です。

 戦後、日本政府の憲法9条解釈に関するすべての見解は、一貫して、「海外での武力行使は許されない」ことを土台として構築されてきました。ところが、昨年7月1日の「閣議決定」と、それを具体化した戦争法案は、集団的自衛権の行使を容認し、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力行使する=海外で武力行使をすることに道を開くものとなっています。まさに、従来の憲法解釈の根本を180度転換する立憲主義の破壊であり、憲法9条の破壊にほかなりません。

 戦争法案は、(1)集団的自衛権行使とともに、(2)これまで政府が「戦闘地域」としてきた場所にまで自衛隊を派兵し、武力行使をしている米軍等への補給、輸送など「後方支援」=兵站をおこなうこと、(3)形式上「停戦合意」がつくられているが、なお戦乱が続いている地域に自衛隊を派兵し、治安維持活動などにとりくむことなど、憲法を踏み破って海外での武力行使に道を開くいくつもの危険な仕掛けが盛り込まれています。

 私たちの追及に、安倍首相は、「戦闘地域」で自衛隊が攻撃されたら「武器を使用する」ことを認め、アフガニスタンに展開し多数の犠牲者を出した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動への自衛隊の参加も否定しませんでした。

 これらを認めるなら、たとえ、「後方支援」「治安維持」を目的とした派遣であったとしても、戦闘行為に巻き込まれ、武力行使となることは避けられません。

 自衛隊は、1954年の創設以来、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出さないできました。この歴史を覆し、憲法を壊し、「殺し、殺される」日本をつくる。このような暴挙は断じて許すわけにいきません。

 政府の「合憲論」は総崩れ

 くわえて、衆議院憲法審査会で、与党推薦の参考人を含め、参考人として招致された3人の憲法学者全員が、戦争法案は「憲法に違反する」との意見表明を行うという劇的な事態が生じました。それに対して、政府は、戦争法案を「合憲」とする見解を発表しました。しかし、わが党の、(1)集団的自衛権行使を許容したのは、「安全保障環境が根本的に変容」したからとされているが、何をもって、いつごろから根本的に変容したのか、(2)実際に世界で、他国に対する武力攻撃で、国の存立が脅かされた国があるのか、との追及に、中谷防衛相は答弁することができませんでした。

 戦争法案が、憲法を蹂躙する違憲立法であることはいよいよ明らかとなっています。

 推進勢力の異常な「対米従属性」はいかに危険か

 第二は、法案を推進している勢力の「対米従属性」です。

 私たちが、国会質疑で、「米国が、先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するのか」と質したのに対し、安倍首相は、「違法な武力行使をした国を、日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁しました。

 しかし、問題は、日本政府が、米国の違法な武力行使を「違法」と批判できるのかということです。米国は、戦後、国連憲章と国際法を蹂躙して、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。ところが、私たちの追及に、首相は、「日本は米国の武力行使に国際法上違法な行為として反対したことは一度もない」と認めました。このような国は、世界の主要国のなかでも日本だけです。

 さらに、ベトナム戦争への本格的介入の口実とされた「トンキン湾事件」、イラク戦争の口実とされた「大量破壊兵器」が、いずれも米国政府による「ねつ造」だったことが明らかになっても、安倍政権には、これらの戦争を支持し協力してきたことを検証し反省する立場がまったくないことも、わが党の論戦によって浮き彫りとなりました。

 このような、異常なまでの対米追随の政府が、集団的自衛権の行使に踏み出すことがいかに危険か。これまでは米国から参戦要求があっても、「集団的自衛権の行使ができないから」という理由で断ることもできました。しかし、戦争法案が通ればそうはいきません。米国が無法な先制攻撃の戦争に乗り出した場合にも、無法と批判できず、米国から言われるままに集団的自衛権を発動することになることは明らかです。米国による無法な戦争への参戦--ここに集団的自衛権の一番の現実的危険があります。

 歴史逆行の安倍政権による「海外で戦争する国」づくり

 第三は、過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言えない安倍政権が、戦争法案を推進する危険です。

 志位委員長は、党首討論で、安倍首相に対して、日本が1945年8月に受諾表明した「ポツダム宣言」を引用して、「過去の日本の戦争は『間違った戦争』との認識はあるか」と質しました。首相は、頑なに「間違った戦争」と認めることを拒み続けました。くわえて、首相が「(ポツダム宣言を)つまびらかに読んでいないので論評は差し控えたい」と答弁したことが、内外に大きな衝撃を与えました

 戦後の国際秩序は、日独伊3国の戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っています。ところが、首相は、「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」とも認めません。日本自身の過去の戦争への反省のない勢力が、憲法9条を破壊して、「海外で戦争する国」への道を暴走するこれほど、アジアと世界にとって危険なことはありません。

 この間の激動的な情勢の変化を確信に

 戦争法案を阻止できるかどうかは、「戦争法案反対」の一点での壮大な国民的共同のたたかいを広げ、圧倒的多数の国民のなかに反対の世論をつくり、日本列島騒然という状況をつくることができるかどうかにかかっています。

 すでに、国民的批判と反対の大きなうねりが起こりつつあります。戦争法案をめぐる情勢は、国民のなかに平和を求める理性の声が日に日に広がる劇的変動のなかにあると感じます。国会論戦で明らかになった戦争法案の本質的危険性を広げるなら、さらに大きく、強い反対世論を形成することができるでしょう。

 大義は私たちの側にあることに確信をもって、廃案めざし奮闘しようではありませんか。

(憲法改悪阻止各界連絡会議発行「月刊憲法運動」7’15通巻442号より)

About 山下よしき 364 Articles
日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。