中小企業・自治体に負担 マイナンバー法改定案を批判 
【議事録】2015年5月28日 参議院内閣委員会質問

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 個人識別番号、いわゆるマイナンバー制度は、赤ちゃんからお年寄りまで、住民登録をした全員に12桁の生涯変わらない番号を付けて、社会保障や税の個人情報を国や行政機関が一体的に管理できるようにするものであります。年金、医療、介護、雇用や所得、納税などの個人情報はそれぞれの制度ごとに管理されておりますが、共通の個人認識番号で一つに結ばれることになります。
 そこで、まず、来年1月からの実施が予定されておりますけれども、一人一人の国民にとってこれからどういう段取りでマイナンバー制度が適用されることになるのか、付番通知カード、個人番号カードについて簡潔に説明してください。

○向井治紀内閣官房内閣審議官 お答えいたします。
 本年10月5日現在の住民票所在地に通知カードが送られることになってございます。通知カードは家族単位で、かつ簡易書留で送る予定としてございます。それで、マイナンバーそのものにつきましては、来年の1月1日以降利用が可能というふうになってございます。
 そして、個人番号カードにつきましては、通知カードの通知に同封して申請書が送られてまいります。その申請書に写真を貼って申し込んでいただきますと、1月1日以降、できましたら市町村の方からできたという通知が参りますので、それをもって市町村で本人確認をして交付していただくというふうになろうかと思います。
 本人につきましては、税、社会保障に係ります行政手続を行う際に個人番号の提供を行うというふうになろうかと思っております。

○山下よしき 次に、マイナンバー制度には企業も深く関わらざるを得なくなります。企業がどのように制度に関わるのか、どのような対応と準備が必要か、説明してください。

○向井審議官 お答えいたします。
 企業は、国税、地方税、雇用保険、健康保険、厚生年金等の社会保険の手続を行う際に、税務署、市町村又はハローワーク、健康保険組合、年金事務所等に提出する書類に、従業員やその扶養親族、金銭等を支払った相手方など、マイナンバーを記載する必要のある書類にマイナンバーを記載していただくというふうなことになろうかと思います。
 その際には、マイナンバーを漏えいを防ぐために必要な安全管理措置を講ずることが求められるところでございます。具体的には、昨年12月に特定個人情報保護委員会が作成した事業者向けガイドラインに沿って、従業員に対する教育、監督、あるいは書類やパソコンなどの盗難防止、ウイルス対策ソフトの更新などの必要な措置を講ずる必要があると考えてございます。
 なお、中小企業者につきましては、実務への影響も配慮し、過度な負担とならないような保護措置も認められているところでございます。

○山下よしき 政府の「中小企業のみなさんへ」というお知らせを読ませていただきました。ナンバーの取扱いは従来の個人情報よりも厳格に行う必要がありますと、こう記されてありまして、漏えいしないために、取扱責任者、事務取扱担当者を特定し、それ以外の者が取り扱うことがないようにしなければならない、それから、担当者以外からのぞき見されない工夫、例えばパソコンの対策、保管場所の確保などを取ること、また、漏えいしたら罰則があることなどが書かれてあります。
 中小業者の団体、全国商工団体連合会の担当者の方に話を伺いました。なかなか中小企業の皆さんにとっては負担が大きいというのが今率直なところだと思います。例えば、責任者、担当者を置かなければならないとあるんですが、そしてその従業員と家族のナンバーも聞いて管理しなければならないということですが、2、3人の業者では大変だという声が出ております。それから、帳簿などをパソコンで管理しているんだけれども、マイナンバー対応ソフトに切り替えないといけない。零細な規模でも40万円くらい掛かる、100人ぐらいの企業の規模だと120万円ぐらい掛かると言われていると。このようなソフトは毎年の更新もあり、負担が増える、こういう声がかなり出ているということでした。
 中小企業にとって、体制上の負担、それから費用上の負担、重くのしかかります。大臣、中小企業対策、どうされますか。

○山口俊一国務大臣 基本的には番号を付していただくというふうなことで、例えば中小零細、それこそ2、3人の企業に関してもそれぞれ兼ねていただくというふうなことで、お一人お一人の事務というか、それは増えるかも分かりませんが、そこら辺はしっかり対応していただきたいというふうに考えております。

○山下よしき しっかり対応しなければならなくなったことに伴って、負担が大きいんですね。
 今日の日経新聞にもこういう広告が出ておりましたよ。2016年1月、全ての企業でマイナンバー対応が義務化、マイナンバーサービス新登場、○○奉行にお任せあれと。こういうものが、もう本当に迫られているんですね。さっき言ったように40万円とか掛かるわけです。毎年更新しなければならない。この負担が、中小企業にとってそんなにメリットがあるのかなかなか分からないところですが、負担だけは必ず来ると。
 それからもう一つ、私、中小企業から上がっている声で、ちょっと深刻な声があるので紹介します。
 ある中小企業の経営者の方ですが、こんな小さな会社でナンバーが管理できるのか、家族のナンバーを教えたくないと言われたという人がいるんですよ。これ、なかなか大変だと思いますね。やはり、マイナンバーというのはいろんな個人情報、重要な情報が管理されるものですから、大事なものですね。余り人に教えたくない、仮に配偶者の企業に対してであってもちょっと心配だという気持ちが出るんでしょう。これまだ従業員の家族だからまだそれ何とか説得することができるかもしれませんが、先ほど話があったように、支払先の業者、個人、例えば原稿料をいただく、支払う、それからデザイン料を支払う、こういうときには支払調書にその相手のナンバーを付すことが必要になりますね。そういう方の場合、いや、もうそんな小さな企業に私のナンバーを教えたくありませんということになると、これからはもう仕事を頼めなくなるという、事業にとっても非常にゆゆしき影響があるんじゃないかと、こう思うんですが、こういうことが起こったらどうしますか。

○向井審議官 法令上、そういう場合に、先生御指摘の場合にはマイナンバーを教えることになってございますので、まずその辺の周知徹底が是非必要であろうかと思っております。
 それから、いわゆる中小企業の安全管理につきましては、ガイドラインで中小企業向けのものも作ってございますが、基本的にはそういうふうなふだんの事業におきまして中小企業者の負担が過度にならないように配慮してまいりたいというふうに思っております。

○山下よしき そういうときにはナンバーを教えなければならないように周知するということですか、今おっしゃったのは。

○向井審議官 こういうのは、多分、取引の両方の方によく御理解していただくことが必要だと思っております。したがいまして、原稿とかそういう講演とかという場合は、やられる方というのはかなり範囲がある程度は特定できるのではないかと。
 それから、それ以外にも、ただ、短期のアルバイトとかそういう場合にもマイナンバーが必要になっていますもので、よくアルバイトをやられる方というと、主婦をされている方とか学生とかということになろうかと思いますが、そういう方々にもターゲットを定めて適切な広報をやっていきたいというふうに思っております。

○山下よしき ただ、もうマイナンバーに対するいろんな懸念が広がっている中で、できるだけそういうことを教えたくないという方が当然出てきているわけですね。そういうふうにもう従業員の家族から言われている経営者が出ているわけですから、これは周知徹底だけでいけるのかどうか、大変私は懸念をいたします。引き続き、この問題ウオッチしたいと思うんですが。
 次に、自治体にとってもこの制度というのは非常に大きく関わってまいります。
 もう言うまでもなく、自治体にはたくさんの個人番号が集中されることになります。年金、医療、介護、福祉、保険、税金などなどの業務、手続で番号通知カードあるいは個人番号カードも使われることになります。一つの自治体で約20の部門ぐらいでこの共通番号が使われると言われております。その分、住民のプライバシーに係る情報が集中することになるわけで、この個人番号付きの情報が持ち出されたり、別の目的で集められたり、使われたりする危険がないようにしなければならないわけですが、そこで、自治体に対して特定個人情報保護評価の実施が義務付けられておりますけれども、この評価制度について説明してください。

○其田真理特定個人情報保護委員会事務局長 お答え申し上げます。
 特定個人情報保護評価とは、番号法における保護措置の一つでございまして、国の行政機関や地方公共団体がマイナンバーの利用に当たって講ずるリスク対策などについて書面にいたしまして公表する制度でございます。

○山下よしき もう少し詳しく。
 具体的に、国民の不安を払拭するための事前の評価制度だと思うんですが、どういうことをするんですか、この評価は。

○其田局長 まず、保護評価書の中では、マイナンバーをどういう事務で使いますという事務の中身を詳しく説明をしております。それで、そのときに番号がどのようにその事務の中で取り扱われるのかということを説明いたします。番号が使われるところのリスク一つ一つ予測をいたしまして、そのリスクに対してどういう対策を講ずればいいのかということを書面で説明するといったような評価書になっております。

○山下よしき 例えば、マイナンバーを扱う職員ですね、職員の方一人一人に対して、例えば適格な人かどうか。私たちは大反対しましたけど、秘密保護法の適性評価みたいなことを、職員一人一人についてこういうことをこの評価制度の中でやるんですか。

○其田局長 職員一人一人について評価をするという制度にはなってございませんが、評価書の中では、そういう職員への教育、監督でありますとか自主点検でありますとか監査でありますとか、そういった事項について記載をしております。

○山下よしき その評価の実施状況は今どうなっていますか。

○其田局長 本年4月30日現在で、約1,200の機関から約10,000の評価書が既に公表されております。

○山下よしき 進捗率でいいますと、1,788自治体ありますけれども、プラスアルファいろんな機関がありますけれども、その中で、評価を公表している自治体、どれだけありますか。

○其田局長 評価を公表している自治体数ということで申し上げますと、1185でございます。
 それで、実施状況というお尋ねがございましたが、昨年秋に委員会で地方公共団体に照会を行いましたところ、先ほど先生からも御説明ありましたけれども、約1自治体当たり10から20の事務について評価を行うというような予測をしている自治体が多くございました。
 これは、保護評価が事務単位で行うという制度でございますので、それぞれの自治体の御判断で事務ごとに評価を行うことになっております。

○山下よしき その進捗率は幾らですか。

○其田局長 そういう意味では、昨年秋時点でのどのぐらいになりそうかという予想でございましたので、はっきりした何%というような進捗率という考え方で管理はできておりませんけれども、およそ3分の1の評価書が今のところ公表されているのではないかというような感じでございます。

○山下よしき 10月から共通番号制度がスタートされるわけですけれども、あと4か月でありますけれども、先ほどありましたように、自治体の中でこの評価が終わっているのが6割余りですね。あと4割程度はまだ評価実施がされていないと。このペースだと間に合わないのではないかと思われる面があるんですが、山口大臣、いかがですか。

○山口大臣 確かにまだまだなかなかというふうな状況はこれありでありますが、しかし、これいろいろと、例えば国とか地方公共団体の担当職員の方が情報共有を図るためのサイトとか、あるいはそこでいろんなQアンドAとか、ともかく様々な形できめ細かく対応させていただいて、それぞれの事務の施行日に向けて適切に特定個人情報保護評価、これが実施されるように私どもとしても努力をしてまいりますし、恐らく実施されるだろうというふうに現段階では認識をいたしております。

○山下よしき 情報セキュリティーが御専門の産業技術大学院大学瀬戸洋一教授は、特定個人情報保護評価制度、今議論しているこの制度について、同評価制度は情報を扱うシステムの事前評価を行うものだが、重大な問題として、一部の大規模部門を除いて評価が自主チェックにとどまり、誰からも評価を外部から受ける仕組みになっていないということを指摘されております。
 これ非常に大事だと思うんですね。自主チェックで国民、住民の不安、懸念を払拭できるんでしょうか。山口大臣。

○山口大臣 御指摘のとおりで、この地方公共団体が作成をする評価書でありますが、全項目評価書を除いて、外部の有識者による点検、いわゆる第3者点検、この手続を必要とはしておりません。これは、地方公共団体の自主性とかあるいはめり張りを付けた評価の実施、これを意図しまして特定個人情報保護委員会において制度設計をしたものでありますが、外部の点検がなくとも、評価書自体は公表されるわけでありまして、住民の皆様方に広く周知をされる、あるいは、評価書とは地方公共団体は特定個人情報の適正な取扱いについて責任を持って管理をする旨の宣言をするものでもあることから、適切な自主チェックがなされるものであろうと考えております。

○山下よしき 適切な評価がなされるであろうという希望的観測なんですが、私、近畿地方のある自治体職員、この分野の担当をしている職員から実態を聞きました。
 今、住基ネットを設備を改修しながらこれにも、マイナンバーにも利用できるようにしようとされているんでしょうけれども、いつ改修できるかよく分からないと。本来、プロジェクトチームのような体制を取って業務の洗い出しやセキュリティー評価を行うべきだが、しかし職員定数の削減で各部署の人員に余裕がない、たらい回しの末に総務課の2人が今担当しているんですと。結局、2人の体制ではシステム改修業者任せになってしまい、業務の洗い出し、セキュリティーなど本当にこれでいいのか自信がない、これで10月から動き出すのは不安だという声でした。この間ずっと人員が削減されている中で、この新しいシステムの構築、しかもこれは個人情報を扱うという極めて重要なシステムの構築がもう業者任せになっちゃっているという、事実上の、何といいますか、実態の暴露なんですけどね。
 大臣、こういう実態がある中で、もう10月あるいは1月、迫ってくればくるほど、この評価はやられるでしょうけれども、極めて形だけのものになって実態がなおざりにされるんじゃないかという心配あるんですけれども、いかがでしょうか。

○山口大臣 基本的には、このマイナンバー制度の施行に向けました地方公共団体の準備についてはおおむね順調に進んでおると認識をしております。
 ただ、御指摘のような様々な実態もあるのであろうというふうなことで、同時に、この制度の導入に当たってどうしても必要不可欠になるシステムの整備、これにつきましても、このマイナンバーの付番に必要となる既存の住民基本台帳システム、この整備についてはほぼ全ての団体で昨年度末までに改修を終了していただいております。
 予定どおり進んでおるというふうに思うわけですが、同時に、その他のシステム、社会保障関係のシステムとか税務とかあるわけでありますが、これにつきましても、平成29年の7月の情報連携の開始、これに向けまして本年中に改修を行って来年1月からテストをする、実施、にしておりますが、これも相当程度進んできておる。
 それから、さっきもちょっと申し上げましたが、やはりこの制度の導入等におきまして、これやはり地方公共団体の担当職員の皆さん方、いろいろ大変なこともおありになるだろうというふうな中で、情報共有を図るためのサイトを設けておりまして、とりわけ地方公共団体用のサイトで質問も受け付ける、あるいはQアンドAもというふうなことでやらせていただいておりますし、また同時に、47都道府県での現地説明会、これの開催も通じて、できるだけ地方公共団体の皆様に対してはきめ細かな情報提供も行わさせていただいております。
 引き続き、関係省庁とか地方公共団体と連携を図りながら、円滑な導入にはもう万全を期して取り組んでまいりたいと考えております。

○山下よしき 次に、医療情報への利用拡大について聞きます。
 今回の改定で特定健診データあるいは予防接種の履歴などについてもマイナンバーの利用を拡大するとしておりますが、具体的にはどのような検査結果が対象となるんでしょうか。

○吉田学厚労大臣官房審議官 お答えいたします。
 今回のマイナンバー法の改正により保険者の業務として拡大をいたします特定健康診査、これは生活習慣病予防などを目的といたしまして、40歳以上75歳未満の方を対象として医療保険者が行っているものでございます。
 この特定健康診査では、保健指導の対象となります生活習慣病のリスクの高い方を判定するという観点から項目を設定してございまして、具体的には、腹囲、身長、体重などの身体計測、あるいは血圧測定、血糖や脂質などの血液検査、尿検査、それから喫煙歴などを把握するための質問書などのデータを定めております。

○山下よしき ほとんど一般の健康診断と重なる部分があります。視力、聴力、エックス線などがないぐらいなんですね。
 確認ですけれども、事業主のやる一般健診のデータをこの特定健診とみなして保険者にそのデータを提出すれば事業主が補助金を受ける仕組みもありますね。

○吉田審議官 ございます。

○山下よしき 血液検査というのは、もう今どんどんどんどんいろんなものが分かるようになっておりまして……(発言する者あり)いやいや、まあいいですよ。血液検査の項目もこれから拡大されていくことになると思います。
 医療関係団体、日本医師会も含めて、大変この医療情報へのマイナンバーの利用拡大については反対をされております。そもそもマイナンバーの制度とは別建てで検討されてきたはずなのに、何でこれを利用拡大することにしたんですか。

○吉田審議官 お答えいたします。
 まず、失礼いたしました。先ほど、先生の御質問をちょっと私聞き違えまして、事業主健診に対する補助制度というふうに受け止めてしまいました。事業主健診については事業主負担において行われているところです。大変恐縮でございますが、答弁を訂正させていただきたいと思います。
 その上で、今回特定健診データをこのような形でマイナンバーにひも付けるという形にさせていただきましたことについてのお尋ねでございますけれども、私ども厚生労働省におきまして、これまで医療等番号、医療等分野の番号につきまして、その医療情報の機微性に着目をして検討を続けてまいりました。マイナンバーに限定せず、医療等分野の情報連携に用いる番号の在り方について医療関係者、保険者、有識者等の検討を行って、マイナンバーの利用事務について再度今回整理を行わせていただいたところでございます。
 その中で、今回特定健診情報をマイナンバーの利用範囲に加えさせていただきましたのは、検討会、研究会等の議論を踏まえまして、現在行っております保健事業、ヘルス事業が法律に則して行う行政事務であり明確に特定ができること、また保険者におけるシステム改修や事務の効率化に資すること、あるいは今回の措置により、特定個人情報の保護についてマイナンバー法により厳格な規制が設けられていることなどから、関係者の理解を得た上で進めることとさせていただいたところでございます。

○山下よしき もう答え要りませんけれども、私がさっき聞いたのは、事業主のやる一般健診のデータを特定健診のデータとみなして保険者に提出すれば事業主が補助を受ける制度があると。これはもう確認しておりますから、いいです、いいです、それは。いいです。
 それで、今何で切り離そうとしていたのがこうなったのかという御説明ありましたけれども、これは前回質疑の中でも山本委員から紹介あったように、楽天の3木谷さん率いる新経済連盟が、医療等分野についても機関別符号を利用することを通じてマイナンバー制度の下で運用されるべきだと、マイナンバー制度の下で医療分野も含めて扱うことで効率的なIT投資の実現ができると。やはりこういうふうに非常に、これが新たな投資先として期待されているということが財界筋、経済団体から要望されているわけですね。しかし、そういう要望でこの医療情報を扱うことにつなげちゃっていいのかということであります。
 特定健診について、保険者が違ってもこのマイナンバーによって過去のデータも、保険者の違うデータも寄せ集めることができるかどうか、それから健診結果のデータについて事業主がその結果の提供を要求することができるかどうか、お答えください。

○吉田審議官 2点について御質問をいただきました。
 まず、特定健診情報につきまして、被保険者の方が保険者を異動された場合にどのように情報が動くかという点につきましてですが、現在、高齢者の医療の確保に関する法律に基づきまして、そのようなケース、今加入されている保険者が保健指導などの実施のために加入者本人の異動前の保険者に特定健診情報等の写しを提供を求めることができるというのがまずございまして、その上で、求められた保険者は加入者本人の同意を得た上で特定健診情報等の写しを提供しなければならないことというふうになってございます。
 今回の提案させていただいております法律によりまして、マイナンバーとひも付けられた後にも、基本的にはこの手続に沿って、基本的には加入者本人の同意を得た上で保険者間において両方をやらせていただくということでございます。
 それと、事業主が労働安全衛生法に基づいて行っております事業主健診、それからまた保険者が行っております特定健診の情報の健診項目については重複してございます。その重複部分については医療保険者及び事業主がそれぞれ保有しているというのが現状でございます。

○山下よしき 事業主が健康診断のデータを既に保有しているわけですが、過去のデータも事業主が要求すれば事業主が取得することができるのかということなんですが、事業主は直にはできないというふうにも聞いております。ただし、本人が同意すれば出すわけですから、出せるわけですから、本人が要求すればですね。職場からそういう健診の経過を過去のデータも含めて出してくださいと言われたら、なかなか労働者本人は断ることが難しい立場にある方も多いと思います。それが過去のデータまでずっとまとまって入手を本人がすることができる。場合によっては事業主に提出することも求められることがあると。
 先日、膵臓機能欠損症の子どもの未来を守る実行委員会の方からお話を聞きました。1型糖尿病の子供を持つお母さんですが、子供のときからそもそもインスリンを分泌する膵臓のベータ細胞が破壊されてインスリンが分泌できなくなっているもので、これは小児慢性特定疾患に指定されておりますけれども、20歳になった途端に健常者扱いとなって公的支援がなくなって、高い医療費の負担を強いられることになります。ただ、しっかり薬等でコントロールできれば仕事も普通にできるんですが、ある娘さんは、病気のことを会社に知られてしまうと無理解や偏見もあるのではないかということで、保険証を使わずに10割負担でしばらく過ごしたそうです。自分が仕事ができるんだということをまず分かってもらうためにそうしたということなんですが。
 もちろん根本的な解決は難病指定等をしていただくことですが、私が言いたいのは、労働者にとって、仕事に支障が直接ないことであっても、病歴を持っているとかということは知られたくないと、事業主に。何らかの不利益、差別があるのではないかと非常に心配する、非常にデリケートな問題だからであります。
 そういうものをいとも簡単に集めて、過去にまで遡って、メタボ健診と合わせてデータをまとめてしまうということを一体誰が望んでいるのかと。労働者本人はこんなこと望んでいないと思うんですよ。これ、国民からこんな要望出ていないでしょう。

○吉田審議官 今御質問いただきましたように、医療情報というのは非常に機微性を持った情報でございますので、その取扱いについては本人同意というものを基に今取り扱っているということはあろうかと思います。
 また、今回、マイナンバー法の対象にさせていただきましたのは、今御指摘いただきましたものとはちょっと私どもの受け止めとしては違いまして、まさに保険者が行っております特定健診情報ということであるというふうに理解をしてございます。

○山下よしき もう時間が参りましたので、レセプトについても、これがリンクされるということも可能性としてあるというふうに聞いております。健診のデータあるいはレセプト、それぞれの病院にどのようにかかったのかという履歴、これが合わさったらもう本当に個人の健康に関わる医療のデータが丸裸にされるということになるわけですので、こういうものを軽々に、何といいますか、成長戦略などという名目で一気に拡大することには大変なリスクが伴うということを指摘して、引き続き質問したいと思います。
 ちょっと済みません、財務政務官、申し訳ない。また続いて質問したいと思います。
 終わります。

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日本共産党参議院議員。香川県善通寺市出身。県立善通寺第一高校、鳥取大学農学部農業工学科卒業。市民生協職員、民主青年同盟北河内地区委員長・大阪府副委員長。95年大阪府選挙区から参議院議員初当選。13年参議院議員選挙で比例区に立候補3期目当選。14年1月より党書記局長。2016年4月より党副委員長に就任。2019年7月参議院議員4期目に。参議院環境委員会に所属。日本共産党副委員長・筆頭(2020年1月から)、党参議院議員団長。