自治体の窓口業務などの民間委託できるようにする問題について 
2,017年6月1日 参院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 前回に続いて、自治体のいわゆる窓口業務を地方独立行政法人に委託できるようにする問題について質問します。
 法案は、委託できる窓口業務の範囲を申請等の受理、処分、処理に関する事務であって、定型的なもののうち別表に掲げるものとしております。そこで、今日は別表にある母子保健法に関わる窓口業務について具体的に聞きます。
 別表では、妊娠の届出、母子健康手帳の交付、低体重児の届出又は養育医療の給付等を独法に外部委託できる対象としております。実は、この妊娠届の受付に関する業務あるいは母子健康手帳の引渡業務等は、既に2007年度に発出された内閣府の通知によって市町村の判断に基づき民間事業者に取り扱わせることが可能である窓口業務とされてきました。
 そこで、総務省に伺いますが、現在、妊娠届や母子健康手帳の引渡業務などを民間委託している市町村は幾つありますか。

福島章(総務省行政管理局公共サービス改革推進室長) お答えいたします。
 内閣府は、平成28年1月に民間委託の実施状況について全1,741市区町村を調査いたしておりまして、77・7%に当たります1,352市区町村から回答を得たところでございます。
 調査結果によりますと、妊娠届の受付及び母子健康手帳の交付に係る事務につきましては、民間委託を実施している市区町村は32ございます。回答のあった市区町村の2%となっております。一方、民間委託を検討したが実施しなかった市区町村は112でございまして、回答のあった市区町村数に対する割合は8%となっております。

山下よしき 僅か2%しかないということなんですね。なぜかと。私は、母子保健法に基づく自治体の業務というのは窓口業務だけを切り出すことができない業務だからだと、そう思います。
 関東のある自治体で母子保健の業務を担っている職員の方に話を聞きました。この自治体では、健康推進課母子保健係の幹部職員に保健師を配置し、市庁舎と同じ敷地内にある健康センター、ここで母子保健業務を担うわけですが、この健康センターには保健師が6人、栄養士が1人、それから歯科衛生士1人、計8人の有資格者が配置されています。ここでは妊娠届の手続に来た人にその場で保健師が直接声を掛け、短時間でも面接するようにしています。面接では、子育て支援の情報を共有、提供しながら、兄弟姉妹の状況あるいは既往症などもアンケートに記述してもらうようにしています。対応者が保健師ということもありまして、安心して自分の状況を話してくれ、行政の側もそれに合わせてその人への支援をプランニングしていくことができるということであります。
 なぜこんなことをやっているのか聞きますと、赤ちゃんが自分のおなかの中で日々育っていくけれども、出産まで無事に行けるのか、生まれたらどうしたらいいのかなどなど、お母さんになっていく人たちの不安は大きい、妊娠の届出に来たときの様子や話し方などから落ち込みなど精神的状況が分かる人もいる、知られているように子供への虐待はその4割が母親によるものであることからも、妊婦さんの出産や育児への不安を解消する支援が重要となるという認識で仕事に当たっているということでした。そして、ここでは、妊婦相談会があるよとか、子ども家庭支援センターでもこんな取組をしているよとか、一人親へのホームヘルパー支援もあるよなどなど、情報を伝えて不安が解消できるようにしているということでありました。
 それから、妊娠届を保健師のいない出張所に届ける場合もあります。それから、妊婦さんではなくて家族などによる届出がされる場合もありますが、こういう場合も必ず妊婦さん本人が面接できるようにその予約を入れてもらうようにしているそうでありまして、希望があれば妊婦さんの御自宅への訪問もされているそうです。
 そして、赤ちゃんが生まれたときには戸籍係への出生届とは別に母子保健係に出生通知を出してもらうようにしておりまして、妊娠届から見てもうぼちぼち出産ではないかと思われる方なのに出生届が出されていない場合は電話するなどして、出産後の訪問など切れ目のない一人一人への支援につないでいっていると。非常に丁寧に、安心して相談から支援へとつながるようにされておりました。
 少し長くなりましたけれども、私自身聞いておりまして大変感動しましたので、全部紹介させていただきましたけれども、そこで、総務大臣、このような自治体の努力、どう評価されるでしょうか。

高市早苗総務大臣 私も今お話を聞いていて大変感動いたしました。
 窓口業務というのは、住民の皆様の状況を直接に把握すること、それからやはり自ら行政の情報を直接お伝えすること、そしてまたさらには様々な情報を得て施策につなげていくこと、そういう重要な役割を担っていると思っております。

山下よしき ありがとうございました。本当そう思うんですね。
 私は、この職場の皆さんから聞いた、妊娠届の受理はお母さんになる人と自治体の担当者の初めての出会いの場ですという言葉に大変印象を持ちました。母子一人一人に対する愛情のある、そして切れ目のない支援の出発点が窓口での妊娠届の受理です。ですから、そこを切り離して、そこだけ独法に委託してしまったらこうした支援ができなくなるんじゃないかと。具体的な話、聞けば聞くほど、この妊娠届の受理業務の切離し、独法への委託というのはそういう支援をできなくするんじゃないかなと思わざるを得ないんですが、いかがでしょうか。

高市総務相 地方独立行政法人制度でございますが、住民の生活の安定並びに地域社会及び地域経済の健全な発展に資することを目的とするものでございます。これは法律上の規定でございます。
 ですから、今委員が様々御紹介いただきましたように、やはり住民の皆様にとってより親切な対応をしていく、それからまた保健師の方や栄養士の方におつなぎをしていく、そういう工夫はそれぞれの窓口によって対応可能なものだと思っております。
 5月30日に、本委員会におかれまして参考人質疑をされたということでございますが、富山市長から、住民に身近な場所に市の職員を配置して、住民とのきめ細やかな接点を設ける取組が紹介されたことも承知しております。
 また、衆議院の方でも現地視察で板橋区に行かれたということですが、民間委託によって捻出した人的資源を投入して住民の相談窓口を充実させて、また、窓口数を増やして待ち時間を短縮されるといった効果のあった取組が紹介されたと思っております。
 いずれにしましても、民間委託の事例であっても、定型的な申請、届出というのは民間委託の対象としながらも、住民の方々の御相談については市町村職員が直接担当するという取組であったり、また、責任者レベルの定期的な協議といった工夫がされていると思っております。
 この地方独立行政法人では、定型的な業務を処理するものではあっても、法律上はこれは市町村の事務とされているけれども一部を民間委託するという場合とは異なっていて、市町村長の関与を受けながら、法律上自らの業務として窓口業務に当たるものでございますから、工夫した取組というのは期待できると思っております。
 個別の優良事例、今委員がおっしゃったようなお話もございますけれども、今後個別の優良事例についても横展開を図ってまいりたいと思っております。

山下よしき 個別の優良事例、あったら教えてほしいんです。民間委託した母子保健の窓口で、私が言ったような、委託していない、職員があるいは保健師が直接窓口で妊娠届の受理の段階からさっき言ったようなサポートをしている、そういうことを民間委託した自治体でやれているところありますか。

安田充(総務省自治行政局長) お答えいたします。
 今の事例については承知していないところでございます。調べておりません。

山下よしき 調べてもないと思いますよ、私。どうしたらそんなことができるか、あったら具体的に教えてほしいんですけど、今ないということでした。
 このさっき私が紹介した自治体では、妊婦さんが窓口に来るのを職員の皆さんが大歓迎で温かく包み込むようにして待っているというんですよ。いやいや、本当ですよ、私はそういう印象を受けたんです。私は、この人たちから命を生み出す性と新しく生まれてくる命への慈しみを感じました。そういう方が、母子保健に係る様々な専門知識と経験を持った職員がお母さんになる人と初めて接するのが妊娠届の受理の場なんですよ。
 確かに受理という業務だけを切り離してみれば定型的かもしれません。書いたペーパーを1枚受け取るだけですからね。しかし、受理のその瞬間、その場で、専門知識と経験ある職員が、母子への愛情あふれる職員が話を聞いて、不安を軽減して、必要な支援の出発点にしている、それが現場の実態なんですね。受理業務だけを定型的として切り離したら、こういう包摂的なサポートへの道が遮断されることにこれなるんじゃないかと。いかがですか。

安田局長 今回の地方独立行政法人制度の改正、窓口業務を行う法人の設立でございますが、これはあくまで新しい選択肢を用意したということでございまして、かつ、その別表に掲げた事務についても、全ての事務をこの制度を活用する場合に行わなければならないということではございません。
 幾つかの選択肢がある中で、当該市町村の工夫によって制度を活用していただく、そのための選択肢の一つとして用意したものでございまして、市町村の工夫によって適切な業務を行えることを期待しているものでございます。

山下よしき 工夫ってどんなのですかと、民間でどんな工夫しているんですかとさっき聞かれたときに、区分したスペースの利用だと、そうしないと偽装請負になるから、独法だってそうなるんだと。今さっき私が言ったような、もう愛情を持って窓口で待っている人を区分したスペースに切り離しちゃったら、もうそれ包摂できないじゃないですか。これは私、どう考えても、母子保健法が述べている「母性は、すべての児童がすこやかに生まれ、かつ、育てられる基盤であることにかんがみ、尊重され、かつ、保護されなければならない。」、そして、都道府県及び市町村はそのために必要な措置を講じなければならないということからして、この出生届の切離しはそのことから大きく後退せざるを得ないと申し上げておきたいと思います。
 それからもう一つ、衆議院の答弁で局長は、法律の別表からは非定型的な事務が除かれる、生活実態の確認が必要となる生活保護の受給申請の受理、こうしたものは市町村長の指揮監督権の下で職員が引き続き処理することが適当であるために除外していると、こう答弁されました。
 生活保護の申請の受理を非定型的な事務としているのはなぜですか。

安田局長 お答えいたします。
 生活保護の受給申請の受理に当たりましては、保護を必要とする者の確実な保護を実施できるように、収入や生活状況の把握を行い、法の趣旨や他法他施策の活用について丁寧に説明し、真に急迫状態となっていないかの把握、こうしたものが必要となることから、市町村長の指揮監督の下で職員が引き続き処理することが適切であると判断し、法律の別表から除外しているものでございます。

山下よしき 私、定型か非定型かという形のことを言っているんじゃないんですよ。要するにこれは、生活保護の申請というのは、本来、本人が住所、氏名、そして生活保護の受給が必要な理由、これを書いて出せば受け取るべきなんですよ。受け取らなければならないんですよ。水際でそれを申請させない、受理しないようにしているという問題が、この間、政府、厚労省の生活保護受給の抑制政策の中で実際に窓口で起こってきました。北九州では、おにぎりが食べたいと餓死した、そういう事件も起こりました。
 私、今回のこの法律に基づく別表の仕分は、生活保護については窓口独法に委託してこれ定型的に受理させてはならないんだということなのかと思いましたよ。ほかの申請については簡単に委託対象としつつ、ここだけはそうしない。これまでどおり、職員に水際作戦をやらせて生活保護の利用者を抑制するということが意図じゃないんですか。

安田局長 お答えいたします。
 今回の別表の規定を作成するに当たりましては、最初に御指摘もございましたように、平成27年度の内閣府の通知、民間事業者に委託することが可能な窓口業務の範囲ということを検討のベースにいたしまして、各省とも協議の上で別表案を規定させていただいたということでございます。
 内閣府通知の中にも生活保護についての規定がございませんで、新しく今回の検討の中でそれを加えるという意見もございませんでしたし、また先ほど言いましたような説明もございましたので、今回別表には入れていないということでございます。

山下よしき 今おっしゃったようなさらっとした話だとそういうふうに聞こえるんですけれども、これまでの歴史があるわけですよね。窓口で申請を受理しないというふうに抑制してきた歴史がある。しかし、生活保護の申請というのは憲法25条に基づく国民の権利ですよ。ですから、行政は申請を受理した上で調査を行い、審査を経て保護の決定をすればいいわけで、申請の受理を権力的に抑制することは憲法上許されない、窓口での申請抑制を前提にした不当極まりない私は意図的な定型、非定型の仕分も許されないと、これ見ながら強く感じました。
 ですから、私はもう今回の総務省の窓口業務の位置付けがよく分かりました、いろいろ考えてみて。一つは、定型業務の独法移行で、先ほど言った母子保健の業務のような、住民の様々なニーズを行政が窓口ですくい上げて必要なサービスへとつないでいくことを遮断してしまうと。それからもう一つは、意図的な仕分で生保を水際作戦で抑制するなどの、非定型業務を意図的に定義すると。結局、いずれにしても窓口で国民の権利保障を抑制するということにこれは客観的になっているんじゃないかと、そう言わざるを得ません。これ、やり取りしても仕方がないので次に行きたいと思いますけど。
 それで、設立される窓口業務を委託される独立行政法人は、これ効率化などが目的であることからすると、当然人件費の抑制が前提とされることになります。行政から運営費交付金の削減圧力を受ければ職員の処遇を下げることになって、職員の非正規化、流動化が起こらざるを得ないのではないかと思います。
 衆議院で安田局長は、職員の勤務条件や給与などを柔軟に設定できる、繁閑期に応じた人員配置などが期待できると答弁されています。
 そこで聞きますが、窓口独法が職員を有期労働契約として雇用することは可能か、また、民間の派遣会社から派遣労働者を受け入れることは可能か。いかがでしょうか。

安田局長 お答えいたします。
 公務員型の特定地方独立行政法人につきましては、任用に関しまして地方公務員法が適用されますので、地方自治体と同様に、正規職員のほか、臨時・非常勤職員、改正地方公務員法施行後には会計年度任用職員ということになりますが、この任用が可能でございます。
 また、非公務員型の一般地方独立行政法人につきましては、地方公務員法の適用はありませんで、民間事業者と同様、正規職員のほか、臨時職員、非常勤職員を含めて様々な雇用形態が可能だというふうに考えております。

山下よしき 短期契約労働であっても派遣労働であっても可能だということであります。そうしますと、その時々の業務量に応じて短期の契約で入れ替わるということが大いにあるということなんです、窓口独法の職員は。
 そうすると、大変な疑念が私、生じると思います。扱うのは戸籍法、障害者手帳、国保、年金、母子保健、住民基本台帳、マイナンバーなどなど、住民の個人のプライバシーに関わる申請等を外部委託するわけですから、これ、幾ら守秘義務を契約上掛けたとしても、次々と人が入れ替わるわけですから、これは、多数の様々な人が住民の個人情報に接して、それから独法から辞めていって一般の人になっちゃうと。これは個人情報保護という点で大きな漏れを生じさせるおそれはありませんか。

安田局長 お答えいたします。
 地方独立行政法人が派遣労働者を雇用したり、また有期の職員を雇用するというケースはもちろんあるというふうに思いますけれども、個人情報保護の観点から、その委託した業務に係る個人情報の保護に関する規定はきちんと整備していくということは重要なことだというふうに考えています。
 このため、総務省といたしましては、地方公共団体について、委託先においても個人情報が適切に保護されるよう必要な措置を講ずることを当該地方公共団体に義務付ける等の規定を設けることとすべきであるという助言をしておりますほか、窓口業務を含む業務の民間委託の推進に当たっても個人情報保護の配慮は重要との観点から、平成27年8月に発出した総務大臣通知におきましても、委託の実施に当たっては、個人情報の保護に十分留意し、必要な措置を講ずることとされておりまして、各地方公共団体においては、こうした通知を踏まえて、それぞれの個人情報保護条例の中で、委託でございますとか派遣労働者等についても適用になるような必要な規定の整備を行っている例があるというふうに考えているところでございます。

山下よしき 公務員の場合は厳格な守秘義務があって、これ違反したら刑事罰ですよ。ところが、民間委託であれ独法委託であれ、そんな守秘義務は課せられないんですね。
 実際、私、大阪で、前回紹介しましたけど、地方税の部署で民間委託された職員の方が辞めさせられるわけですよ、繁閑期がありますからね。そうしますと、いろんな思いがあるんでしょう。自分が得た個人情報を実際に相手へ送り付けるということまで事件としてあったんですね。
 だから、これは本当にそういうことが、幾ら手だてをしても、人ですから、個人情報を漏らすのは、一層そのリスクは高まらざるを得ないというふうに指摘しておきたいと思います。
 最後になりますが、今回、複数の自治体が連携して一つの窓口独法を設立できるということになったと理解しておりますが、具体的にどのような形になるんでしょうか。例えば、各自治体の窓口にそれぞれ独法の職員が今までどおり配置されるのか、あるいは、中心自治体に窓口職員が全部一つにまとめられて集約されることも可能なのか。いかがですか。

安田局長 この一つの地方独立行政法人を他の市町村が活用する場合の形態ということについては、法律に特に規定はございませんけれども、私ども想定しておりますのは、各市町村においても直接職員が執行しなければならない業務というのは残りますので、各市町村の窓口に、地方独立行政法人の業務というのが、職員も張り付いて業務というのが行われると、こういう形態が一般的であろうというふうに想定しているところでございます。

山下よしき 一般的であろうと想定と言うんですが、これはもう実際に法律上は規定していないんだよね。
 委託された複数の自治体から、大きな委託先の独法ができたとしますよね。しかし、地方自治体が出資するわけですから、そんなむちゃくちゃなことはやらないかもしれませんが、貧すれば鈍ですから、そういうことにならないとも限りません。一つの窓口にもう集約してしまえということが起こらないとも限らない。そうなったら、次はもう自治体の新たな合併ということになっていかざるを得ない。それを私、危惧しますし、ならなくたって、一つの独法になったら、当然職員間の入替えはあるわけですから、これまでだったら窓口で業務している方はその自治体の職員だった、入れ替わったとしてもその自治体の職員としてずっとやっていたのが、今度はもう別の自治体で働いている人が次々次々に窓口に入れ替わる可能性もあると。それでさっき言ったような住民に親切な、親身な、要求を酌み上げてニーズにつないでいく、サービスにつないでいくということができるのかというと、余計できにくくなるんじゃないかというふうに思わざるを得ません。
 時間が参りました。これは、本当に非常に大きな、自治体とは何ぞやという点に関わってくる問題を非常にはらんでいる重大な法案だと、もっと審議が必要だということを申し上げて、終わります。

住民訴訟、地方自治体の民間委託などについて 
2017年5月30日 参院総務委員会質疑

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 まず、住民訴訟に関する部分について質問します。
 憲法は、公選制の地方議会及び首長を設置しており、地方自治行政においては間接民主制が原則であります。しかし、間接民主制による自治体運営が住民の意思に反して代表者の恣意、専断、独断によって行われ、住民の利益に反する結果になる場合もあり得ます。そのような場合、地方自治法は、住民の意思を直接地方行政に反映させ、住民自治の徹底を図るために、住民によるリコール制度などの直接請求権等の直接参政制度による是正制度を設けているわけであります。その住民の直接参政による是正制度の一つが住民監査請求であり、住民訴訟であります。
 まず、高市総務大臣に、こうした住民監査請求、住民訴訟の位置付け、意義について認識をお聞きしたいと思います。

高市早苗総務大臣 住民監査請求制度及び住民訴訟制度は、住民自身が監査請求や訴訟を提起するということを通じて地方公共団体の財務の適正性を確保することを目的とする制度でございます。不適正な事務処理の抑止について一定の役割を果たしてきたと認識しております。

山下よしき 実際、これまで住民監査請求、住民訴訟は、例えば政務調査費、政務活動費の不正使用、あるいは高過ぎる随意契約、談合による自治体の損害などの財務会計上の不当・違法行為の防止、矯正に重要な役割を担ってきました。
 そこで聞きたいんですが、第31次地方制度調査会、昨年3月16日の答申では、4号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の地方議会による放棄を禁止する必要とあったわけですが、ところが、今回の改正案を見ますと訴訟係属中の放棄の禁止規定がありません。なぜでしょうか。

安田充(総務省自治行政局長) お答えいたします。
 御指摘のように、訴訟係属中の損害賠償請求の放棄につきまして、第31次地方制度調査会答申では、4号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄については、長や職員の賠償責任の有無について曖昧なまま判断されるという問題もあり、不適正な事務処理の抑止効果を維持するため禁止することが必要という指摘をしていたところでございます。
 しかしながら、その後検討を行ったわけでございますが、住民訴訟の係属中に限って権利放棄を禁止することは、むしろ住民監査請求中や住民訴訟提起前の権利放棄を誘発することになりかねないなどの課題があること、また、たとえ訴訟係属中に放棄されたとしても、平成24年の最高裁判決の枠組みに照らしてその有効性について訴訟の中で判断されることになるということから、今回の改正におきましては制度化を行わなかったものでございます。
 権利放棄の議決につきましては、今触れました平成24年の最高裁判決で枠組みが示されておりまして、これに照らして訴訟の中でその有効性が判断されるというものでございますので、まずそれがあるということ。それから、今回、地方公共団体の長や職員個人が負担する損害賠償額を限定する措置を設けることにしておりますが、これが設けられればより一層慎重な判断が求められることになるものと、このように考えている次第でございます。

山下よしき 先ほど、神戸大学名誉教授の阿部参考人は、慎重な判断が求められることになるというのは分かるけれども、悪いやつはおるんだということで、それでもこの議決が不正にやられる危険性は拭えないとおっしゃって、もう大変なこれは後退だ、大改悪だという趣旨の御発言をされておりました。
 今、局長から二つ御答弁があったんです。一つは、住民訴訟の係属中に限って権利放棄を禁止することは、むしろ監査請求中や住民訴訟の提起前に議決してしまわれることになるんじゃないかということで、これはもうとんでもない珍論だと私は思いましたよ、聞いて。だったら、住民監査請求の段階からもこんな議決はできないように禁止すればいいわけであって、後ろで禁止したら前に行くから後ろの禁止も前の禁止もしませんというのは、これは通用しない理屈ではないかと思います。
 それから、二つ目におっしゃった、平成24年の最高裁判決で枠組みが作られたから、仮に議決が不当な場合は裁判でちゃんと正せられるであろうと、その放棄がこれはもう認められないだろうということをおっしゃいましたが、私もこの三つの裁判の最高裁判決、読ませていただきました、全部一緒なんですけれども。そこで、その枠組みなるものを見たら、いろいろ書いてあるんですけれども、住民訴訟の係属の有無などなども入っておりますが、最後は諸般の事情を総合考慮して放棄が妥当かどうかを判断するとなっておりまして、結局諸般の事情の総合考慮なんですね。
 ですから、仮に係争中に議会が議決したら、係争中の議決だからちゃんと裁判で正されますねということにはなっていない、諸般の事情ですから。つまり、その訴訟を提起する住民の側にとったら、これは何の歯止めにもならないんです、裁判をやってみないと分からないということになりまして。
 そうなりますと、結局、私は、議会の議決による債権放棄が無制限に認められることに事実上なれば、これは、今日、阿部先生が一番心配されていましたけれども、間接民主制で選ばれた代表者が暴走したときに、住民自らがその是正を図るための直接参政制度である住民監査請求や住民訴訟を抑制することになるんじゃないかと、こう心配されていましたが、その心配ありませんか。

安田局長 訴訟係属中の放棄の禁止ということでございますが、理由二つ述べさせていただきましたけれども、その最高裁判決の枠組みは先ほど御指摘あったとおりでございます。
 いずれにいたしましても、こうした枠組みに沿って、その議決が裁量権の範囲の逸脱、濫用に当たると認められるときは議決は違法となり、放棄は無効となるというふうに判断されているわけでございまして、さらに、この判決の後に、例えば平成26年6月には鳴門市の関係の訴訟で放棄自体が無効とされたという、高裁段階でこの判決の枠組みに沿って無効とされたという事案も出てまいっております。これは訴訟係属中に放棄されたと。
 ということで、私どもは、先ほどの繰り返しになりますけれども、訴訟係属中の放棄を禁止しなくても、最終的にこの最高裁判決の枠組みに沿って判断がなされるものであるので、係属中の放棄の必要性はないんではないかと、このように考えた次第でございます。

山下よしき 何遍も紹介して恐縮ですけれども、阿部泰隆神戸大学名誉教授はこう言っているんですよ。現行制度では、住民訴訟には障害物が多過ぎ、これを代理するのはもうくたびれ、正義のため、法治国家のためといっても無理だと感じている。現行制度でももういろんな手続があってくたびれちゃって、もう私は代理はしませんと先ほどおっしゃっていましたよ。その上、権利放棄議決が正当化されて、せっかく勝ったはずが敗訴にされてはおよそチャンスがなくなるので、なおさらであると述べているんですね。
 豊富な住民訴訟の代理人の弁護士としての御経験がおありの阿部先生の言葉どおり、これはせっかく勝ったはずの訴訟が事実上敗訴にされちゃう、議決によってもう債権の権利放棄されたらですね。本当怒っていたんですよ。これ、単なる机上の研究者が怒っているんじゃないんですよ。住民訴訟をもう数々やってきた、代理人として頑張ってこられた先生が、こんなことをやられたらもうなり手はないですよと言って怒っておられるわけですから、これは住民訴訟制度、監査請求制度の抑制をもたらすことは明らかであるということをまず申し上げておきたいと思います。
 次に、今回の法案が認めることになる独立行政法人に窓口業務の委託化を託すことについて聞きたいと思います。
 31地制調の人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申などを受けて、今度の地方独法の業務に窓口関連業務を追加することになったわけですが、しかしながら、そもそもこの人口減少社会に的確に対応すると称して政府が現に進めている諸施策を前提にしていいのかということをまず問いたいと思います。
 これも、午前中の参考人として来ていただいた奈良女子大学の中山徹先生がこうおっしゃっておりました。過大な人口減少予測が必要以上の行政のコンパクト化、公共施設の統廃合を進め、行政力の低下を招き、市民生活の破綻、地域経済の衰退、財政状況の悪化となり、人口減少の加速化という悪循環になる、こういう指摘でありましたけれども、私は新鮮かつ共感できる指摘だなというふうに思いました。現にそういう地域が生まれていると私も思います。
 高市大臣、この指摘に対して、御認識いかがでしょうか。

高市総務相 非常に厳しい財政状況の中にはありましても、人口減少、高齢化の進行、それから行政需要の多様化といった社会経済状況の変化に適切に対応して、質の高い公共サービスを効率的、効果的に提供するという観点から地方公共団体において業務改革を進められ、そこで捻出された資源を人口減少などの諸課題に集中的に投入するということが肝要だという基本認識を総務省としては持っております。
 住民サービスの提供の在り方ということにつきましては、住民の福祉の増進に努めるということとともに、最小の経費で最大の効果を上げられるように各地方公共団体におかれまして地域の実情に応じて判断されるべきものでございます。行き過ぎた人口減少予測ということで何か悪影響が出てくるのではないかというようなことにならないように十分に配慮しながら業務改革を進められる必要があると思っております。

山下よしき 時間がないのでこの議論はしませんが、行き過ぎた人口予測を押し付けているのは政府だという指摘もあったことを紹介しておきたいと思います。
 では、法案の中身について質問したいと思います。
 地方独立行政法人法第2条では、地方独立行政法人とは、住民の生活、地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合は必ずしも実施されないおそれがあるものと云々かんぬんとなっておりますが、今回、この地方独法に委託可能な業務として、市町村の長に対する申請、届出の受理に関する事務、いわゆる窓口業務のうち定型的なものとして具体的に20の分野の業務が掲げられておりますけれども、大臣に伺いたいんですが、これらの20の業務は自治体が直接実施する必要のないものという仕分を大臣はされたということですか。

高市総務相 地方独立行政法人法第2条において、地方独立行政法人が行う業務は、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものと地方公共団体が認めるものとされておりますので、法律上、その認定の主体は地方公共団体でございます。私ではございません。

山下よしき まあ形はそうなっているんですけど、これまでは窓口関連業務は委託できるものの中に入っていなかったんです。それを今回の法改正で委託できるものの中に、地方自治体が判断すれば委託できるというふうにしたのは、そう判断したのは政府、総務省ですから。すなわち、委託してもいい、自治体が直接やらなくてもいいこともあり得るんだという判断を今回初めてされたわけですね。
 それでいいんだろうかというふうに問いたいわけですが、衆議院の委員会質疑で参考人として意見陳述された中央大学名誉教授今村都南雄さんとお読みするんでしょうか、こう言っておられます。窓口業務の現場に行ってみれば一目瞭然のことでございますけれども、来庁した住民の求めに応じてぱっぱと処理できるような単なる定型的な事務ばかりではございません、個別の申請をきっかけにして、定型的な事務処理にはなじまない住民側の様々な事情を察知して、各部署の協力を得ながら対処しなければならないことが少なくないわけでありますと、こういうふうにおっしゃっています。
 これはもう非常に大事なことなんですね。定型的なところだけ切り出すというふうに今回の説明聞いたんですが、定型的なものだけに切り分けられない様々な住民のニーズがそこに、そこからつながっていくのが窓口業務だという指摘ですが、いかがでしょうか。

安田局長 御指摘ございましたように、窓口業務に併せて住民からの相談を受けるといったようなケースがあって、従来民間委託しかできませんでしたから、一部の業務について、民間委託を行った場合にはこうしたものについて課題が生ずるのではないかという議論があるということも承知しているところでございます。
 こうしたものにつきまして、現在の民間委託の事例では、コンシェルジュを配置して来訪した住民の方々から最初に用務を聞き取って適切な部署へ誘導する取組でございますとか、住民の方々からの御相談については市町村職員が直接担当する取組を行うなど様々な工夫がなされているというふうに承知しているところでございます。
 今回、地方独立行政法人が定型的な窓口業務を行う場合でも、このような従来民間委託を行っていた際に工夫されていた事案を参考にいたしまして様々な取組を行っていただけるものというふうに考えているところでございます。

山下よしき コンシェルジュを置けばいいんだというふうに聞こえましたけれども、何でそんなものを一々置かなければならないのか。職員がちゃんと聞けばいいということですよ。
 先ほど江崎さんから紹介ありましたけれども、午前中に参考人として来られた富山市長森雅志参考人、市長が、歩いて行ける2キロ圏内に一つ窓口の出先をつくったと、計市内で79か所。フェース・ツー・フェースが大事だと、一か所4人の職員の方がおられて、定年後の再任用された方で、逆に経験豊かで窓口業務するには非常にいい仕事をされているということでありました。強力な民営化推進論者の片山虎之助さん、維新推薦の参考人の方でしたけれども、窓口業務は市の職員でやることが必要だという認識をはっきりと示されたわけであります。
 私も直接、窓口業務を担っておられる自治体の職員の方々から意見を聞きました。非常に貴重な意見を聞けたと思っています。自治体職員にとって、窓口は大事な仕事だと。窓口で住民と直接接する中で、必要な手続が何なのか、制度の勉強をしながらケース・バイ・ケースで対応できるようになっていく。窓口の業務をこなせてやっと一人前になっていく。例えば、子供が生まれたら出生届をしてもらうが、同時に住民登録や年金、健康保険の手続、児童手当の手続なども必要になる。さらに、保育や一人親支援などについても様子を見ながら声を掛けてニーズを引き出すよう、それぞれの職員は努力している。
 つまり、自治体職員は窓口の業務をこなせて一人前になっていく、さらに住民にとっても、窓口での一通の出生届から年金、健康保険、保育など様々なニーズが引き出され、それに見合うサービスが提供される入口、出発点になっている。これを切り離してしまっていいのかと。これ、住民にとっても職員にとっても大きな損失になるんじゃありませんか。

安田局長 お答えいたします。
 御指摘ございましたように、私どもといたしましても、市町村の窓口業務は出生から死亡まで、住民が行政サービスを受ける身分の証明、又は権利若しくは義務の確定、あるいは変動の基礎となる行為が含まれる重要なものでありまして、かつ、特に適切な実施が求められるものであると認識しているところでございます。
 今御指摘のような様々な、何といいますか、不安といいますか指摘があるということは承知しているわけでございまして、それにつきましては今民間委託をしている団体においても、先ほど申し上げましたような様々な工夫を行いながら対応しているという例はあるということでございます。
 今回の地方独立行政法人制度の改正というのは、あくまで選択肢を一つ提示するということでございますので、こういう地方独立行政法人を活用し、かつ、先ほど申し上げましたような様々な工夫をしながら窓口業務を運営していくのか、あるいは直営のまま今後も推移していくのか、あるいは民間委託という形で従来のものを使いながら運営していくのかということは、各地方公共団体が住民の福祉の向上という観点から適切に選択されるべきものと、このように考えている次第でございます。

山下よしき 時間が来ましたのでまとめますけれども、私は、さっきのコンシェルジュと聞いて驚いたんですよ。私が聞いた自治体で働く皆さんの声、それぞれの課でローテーションを組んでみんなで窓口対応するようにしているというんですよ。これ、数か月の新人もベテランの職員も、住民にいろいろ聞かれることで制度の矛盾、暮らしの実態が分かる、自治体に求められている課題が窓口で分かる、窓口で住民と対応する中で問題意識を持って幹部職員にもなっていくということなんですね。単なる定型的な仕事をしているんじゃない、そこでやはり自治体としてのニーズをつかみ、何が必要かを考える職員が育っていき、幹部になっていくということなんですよ。コンシェルジュにそんなことを任せていいのかということであります。
 もう時間参りましたので、次回、自治体の窓口業務を切り離して地方独法に委託することがどのような問題を生じさせるのか、具体的に質問したいと思います。
 ありがとうございました。

(注)4号訴訟:地方自治法242条の2第1項第4号に定められている住民訴訟。自治体職員などに対する損害賠償請求や不当利得返還請求をすることをその自治体の執行機関または職員に対して求める訴訟をさす。

参院総務委参考人質疑 
2017年5月30日 参院総務委員会

山下よしき 4人の参考人の先生方、ありがとうございました。
 共産党の山下芳生です。
 最初に、先ほど森参考人から、この議会の議決による債権放棄について、首長からもそれから議会からもそういう提案が出るとは思われないと、もしそんなことをすれば次の選挙で落ちるんだという御意見がありまして、なるほどそういう面はあるだろうなというふうに思ったんですが、その御発言中に阿部先生がうずうずされておりましたので、ちょっと阿部先生に聞きたいと思うんですが。
 住民訴訟の豊富な御経験をお持ちの阿部参考人からすると、先ほどの意見陳述の中で、このままでは市長側は違法行為をしても議会の多数を味方に付けている限り安心だと、そういうふうにおっしゃいました。そう断言できる背景などがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

阿部泰隆(神戸大学名誉教授) いや、背景というか、責任負わされて何とか免れたいと思えば、何か方法はないかと考える。そして、元々地方公共団体の議会による権利放棄というのは考えられていなかったんですよ。だから、正確に覚えていませんが、平成10年頃からあちこちで始まって、それは物すごい知恵者がいたんですね。自治体の債権放棄というのは原則として禁止ですから、市民には資力がないなんという場合しか免除されませんから、普通はその債権放棄は考えていなかったんだけど、知恵者がいて、あっ、地方自治法の96条1項10号に議会の議決権があると考えてやり出したら、それが広がっちゃって。ウルトラCだったんですね。
 そういうふうに法の抜け穴みたいなものを見付けてくるというのが頭のいい人のやることで、だから、今回だって権利放棄議決について直接に禁止する規定を置かなければ、大抵の場合は、森市長さんの言われるように、俺の債務免除してくれなんということは言わないだろうけれども、中に知恵者がいて、やっぱりこれは規定ないんだからやってみようと、それで仮に裁判で負けたって5年後、10年後だと、その間ずっと住民訴訟の費用は税金持ちだと、その間俺が死んじゃったら多分勘弁してくれるしというので、とにかく引き延ばすということをやると。それで、うまくいったら勝つかもしれない、負けても何の損もしないということでやるわけです。
 住民訴訟は、平成14年の改正は、被告の市長が負けても弁護士費用は全部税金負担ということにしているので、最高裁まで勝つ可能性ゼロでも頑張るわけですよ。だから、あれはとんでもない改悪だというのは僕の方の言い分なんですが、取りあえずそれを前提にすれば、権利放棄議決、普通考えたらやらないだろうけれどもと思う善意の市長さんばかりじゃなくて、たまに仲間の議員さんと一緒になって何とか乗り切ろうと。
 じゃ、選挙で落ちるかといったら、選挙の争点ってたくさんありますから、何か一つぐらいまずいことがあったって選挙の争点になりません。そんなことで選挙は落ちるわけないですから、選挙できちんとやるからいいんだなんという議論ではなくて、違法行為は司法で判断する、違法行為でなければ選挙で判断すると、こういう仕分をしなきゃいけないんで、これ、違法行為だったら、やっぱり司法で判断されたらそれは責任を負っていただくと。
 だから、今回、余計なことの論争出ないように、権利放棄議決については正当な理由がある場合を除きできないという条文をちゃんと入れれば、そこの解釈問題になるけれども、ずっと論争が減りますと。なぜこの修正案に応じていただけないんですかと。これは法律を作るイロハのイ、常道なんですよ。ということです。

山下よしき 続いて、もう一問、阿部参考人にしたいんですけれども。
 先ほどの陳述の中で、その市長側は安心だということに続けて、住民側はどうせ権利放棄されると思うと住民訴訟を提起する意欲が減退しますと、これ非常に重要な御指摘だと思っておりますが、この辺りもう少しお聞かせいただければ有り難いです。

阿部名誉教授 住民訴訟を起こすのは物すごい負担です。役所は全部資料を持っています。住民側はいろいろ集めなきゃいけない。情報公開制度でかなりできるようになりましたが、情報公開で取れないのもありますし、とにかく無資力ですから大変苦労する。
 それでやって、それで弁護士もとにかくお金もらえぬ、手弁当でやって、しかも違法、過失、損害まで証明しなきゃいけない。違法を証明したら役立つはずなんだけれども、勝ちにはならない。それで、勝ったと思ったら権利放棄議決だなんて言われて、その次に、弁護士はそれでもただ働きでじゃ事務所は潰れます。それで、弁護士報酬はその次にもう1回訴訟やってやっと取れるんだけれども、そこでも役所は抵抗します。ところが、役所側の弁護士は最初から毎回毎回もらっています。そういうことだから、弁護士も引き受ける人は余りいない。住民だって、ただでずっと苦労している。そして、長く掛かると、もう最初の住民運動の熱意が消えちゃうものですから、もうやめたと言って住民が抜けていっちゃうんですね。で、最後まで続かない。だから、こういうもの早く片付けると。
 あと、問題が、政治問題も絡んでいるし、違法行為を早くやめないといけないですから、それを5年や10年掛かっちゃ駄目です。だから、さっと片付くような制度にしなきゃいけないから、論点はなるべくなくすと。
 違法行為はやめさせるという基本の基本から出発してくださいとお願いしているわけです。

山下よしき 中山参考人に質問したいと思います。
 先ほど、過大な人口減少予測、必要以上のコンパクト化、市民生活の破壊なんかと、そういうことが悪循環になるということを指摘されておりましたけれども、非常に新鮮な問題提起として聞かせていただきました。先生が悪循環だとお感じになっている具体例がもしありましたら、もう実名を、自治体名を言う必要はないと思うんですけれども、お聞かせいただきたいことと、そういう悪循環がもうどの程度広がっているというふうに御認識なのか、お聞かせいただければと思います。

中山徹(奈良女子大学研究院教授) 残念ながら、そういう事態、かなり広がっているんじゃないかなと思います。特に典型的なのは公共施設等総合管理計画ですけれども、公共施設の今見直しが進んでいまして、元々、公共施設等総合管理計画というのはインフラ長寿命化計画の自治体版でスタートしています。政府が元々考えていたのはインフラの長寿命化をどう図るかということだったんですけれども、実際、自治体レベルで取り組んでいるのは、公共施設の残念ながら統廃合計画になっているところが大半です。
 公共施設でも、その中で特に今大きなターゲットになっているのが子供に関する施設でして、具体的には、保育所とか幼稚園の統廃合、小学校の統廃合というのはかなり起こっています。それも、人口ビジョンできちっと考えればそんなに大幅に子供が減らないところでも、社人研の予測値を使いますと大幅に人口が減ってしまうということで、保育所や幼稚園、小学校の統合を進めるという傾向が出てきています。
 ところが、そういう社人研の予測値に基づいて統廃合を進めてしまいますと、かなりの学校や幼稚園が減ってしまう。で、我々町づくりやっている者から見ると、学校や幼稚園で重要なのはまず使いやすさなんですけれども、統廃合をすることによって地域から学校や幼稚園がなくなってしまうと、今度は非常に住みにくい地域に変わっていくと思います。ですから、必要以上の統廃合を進めることでその地域から学校や幼稚園がなくなると、今度その地域には住みにくくなる、そうしたら便利なところに引っ越そうかということで悪循環が起こり出すのではないかなと思います。
 ですから、今そういう公共施設の統廃合とかコンパクトでいいますと、むしろ周辺部、そういったところで過大なそういうコンパクト化や統廃合を進めることによってむしろ住みにくい地域が広がり、ますます周辺部の衰退に加速が掛かるという、残念ながらそういうことが想定できるのではないかなと思います。

山下よしき 続いて中山参考人に伺いますが、そういうやり方に対して、先生は最後のところで、地域資源を生かした地域経済の活性化が大事であって、その際、市民、事業者、行政など様々な主体の連携が重要となりますと、その要に座るのが行政なんだというふうにおっしゃいましたけれども、なぜ要が行政なのか。それから、その行政が要に座って地域の資源を生かした活性化が実現しているような好例がもしありましたら御紹介いただけますでしょうか。

中山教授 この間、政府でも地方創生でいろいろと事例を挙げていますけれども、その中でやっぱり大きくたくさん挙げられているところは、どちらかというと平成の大合併のときに余り合併せずに頑張ろうかと考えた自治体がかなり取り上げられているかと思います。特に中山間地域で事例として取り上げられているところは、大きな市町村に合併して周辺部になったところではなくて小さな自治体を維持しているところ、そういったところが事例としてはたくさん政府でも説明されているのではないかなと思います。
 そういった事例を見ていますと、全てとは申しませんけれども、大半のところは、村役場とか町役場が中心に座ってその地域の住民や事業者と一緒になって、地域の活性化をどう進めるか、それを真剣に考えているところが、やはりこの間、政府のいろんな先進的な事例でも取り上げられているのではないかなと思います。
 やはり、行政が存在している、行政があるということは、議員さんがおられるわけだし、首長もおられるわけなんですね。そこで一定の予算が当然入ってきて、それを地域のためにどう使うかというのを非常に小さい単位で考えられる。そこにやっぱり行政があるかないかというところが非常に大きなポイントでして、この間、中山間地域で地方創生に頑張っている自治体というのは、小さいけれども頑張っている、その中心に行政が座っている。やっぱり行政が座ることで市民や事業者のいろんな連携が広がっていく。やっぱりそういうところをきっちり見ることが重要じゃないかなと、そのように考えています。

山下よしき 森参考人に伺います。
 先ほどのお話の中で、2キロ圏内に、歩いて行けるところに職員が4人いて、フェース・ツー・フェースで市民に対応されていると。非常にこれすばらしいなと思ったんですけれども、これは基本的ですけど、職員さんがそういう2キロ圏内にいるところがあるということですか。

森雅志(富山市長) 79か所ありまして、平均すると4人いるというところで、少ないところは1人のところもあれば2人のところもありますが、専ら定年になった後の職員の再雇用です。
 再雇用は、希望する再雇用は100%再雇用していますので、そういう形で経験値を生かしていくということはやっぱり市民にとっても大変プラスになりますし、安心感も生まれますし、独り暮らしの高齢者も、極端に言うと小学校の校区よりも狭いですね、2キロ圏内というのは、十分歩いて行ける距離ですので、これが安心につながっていくだろうというふうに思いますので、コンパクトシティー政策と言っていますけれども、腕力で住み方を凝集させようとしているのではなくて、これ以上の拡散を防ぐということが第一義的な目的です。
 それをしっかりやりながら、周辺部や縁周部にいる方のシビルミニマムはきちっと守っていかなきゃなりませんので、やっぱり市役所の出先、市立公民館、出先の図書館、さらに地域包括支援センター、そういったことをちゃんと配置していくことは大事だというふうに思って頑張っております。

山下よしき もう一問、森参考人に伺いますが、そのフェース・ツー・フェースというのが非常に大事だと思うんですが、先ほど中山参考人から、独立行政法人化を窓口業務でも可能にしようというのが今度の法改正の一つの趣旨なんですが、そうしますと、フェース・ツー・フェースで様々な要求が住民から寄せられる。それは単に定型的業務というふうに仕分していますけれども、それにとどまらない様々な、そこから先につなげていかなければならない要求があると思うんですね。それが遮断されるというのは非常にまずいんじゃないかと私は思うんですが、フェース・ツー・フェースが大事だという先ほどの御発言の中に、その点の御見解、いかがでしょうか。

森市長 私自身は、今申し上げたような基本的な考え方でこれからもやっていくことが大事だと思います。
 しかし、全国の、特に小さな町村の中には、現時点において既に国から要求されるデータですとかあるいは事務、どんどん増えていくことが対応できないと言っているところがたくさんあるわけです。したがって、そういうところなどにおいて、さっき言いましたように給与計算を共同でやるとか、できる業務はやっぱりあるんだろうと思いますので、その限りにおいてそういう法人に委託するということの意味はあるんだろうというふうに思います。ですから、自治体ごとに対応は異なっていくだろうと思います。
 それで、さっき言いましたが、私は、現業は一定程度民間委託や民営化ということをやっていますが、窓口は今言いましたような姿勢でこれからもやっていきたいというふうに思います。

山下よしき ありがとうございました。終わります。

マイナンバーカード顔写真、警察に提供―「共謀罪」でも 
マイナンバーカードの個人情報保護問題

photo 16日の総務委員会で、マイナンバーカードに記載されている個人情報保護の問題を取り上げました。

 質疑の中で、同カードの申し込みに使う個人情報と顔写真データが、警察の求めに応じ提供され捜査に利用されていることが明らかになりました。提供したのは、全国の自治体が同カードの発行業務・データ保存を委託している地方公共団体情報システム機構・JLIS。

 私の質問に対し同機構は、同カード交付申請書情報について「15年間保存する」、「依頼があり、被疑事実に直接関係するなど特段の事情がある場合に限り提供する」、「これまでに1件提供した」と答えました。 続きを読む

マイナンバーカード顔写真、 警察に提供 「共謀罪」でも 
2016年5月16日 参議院総務委員会質疑

【ダウンロード】議事録(PDF)

本人も知らない間に監視?

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 今日は、個人情報保護と顔認証システムについて質問をいたします。それがマイナンバー制度やJ―LISとも関わってくるというふうに認識しているからであります。

 まず、個人情報保護委員会に聞きますが、顔認証システムとはどういうものか、分かりやすく説明してくれますか。

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郵政巨額損失を追及 
民営化が背景と指摘

 11日の参院総務委員会で、日本郵政の巨額損失問題をとりあげました。

 日本郵政は、6200億円を投じて買収したオーストラリアの物流企業トール社の業績不振により、2017年度3月期決算において約4千億円に上る巨額損失を計上すると、4月に発表しました。

 私は、日本郵政の長門正貢社長に「買収を発表した当初からトール社の業績悪化が不安視されていた」と指摘し、長門社長は「結果として、見通しが甘かった」と述べました。

 買収費用は、日本郵政が保有する国民の財産です。甘い見通しによって、国民の財産を毀損(きそん)した。日本郵政の責任は重大だと質すると長門氏は「重く受け止めている」と答えました。

 日本郵便が今回の買収に乗り出した背景には郵政民営化があり、民営化によって郵便、貯金、保険の3事業一体経営をバラバラにしたために、日本郵便は独自に収入を増やして、ユニバーサル(全国一律)サービスを維持しなければならなくなったのです。私の指摘に、高市早苗総務相は「郵政民営化が原因で今回の巨額損失に至ったとは思っていない」と述べました。

日本郵政の巨大損失、責任は重大 
2017年5月11日 参院総務委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 4月25日、日本郵政は、6200億円を投じて買収したオーストラリアの物流企業トール社の業績不振によって、2017年度3月期決算において約4000億円に上る巨額損失を計上すると発表いたしました。日本郵政の責任は重大だと言わなければなりません。
 そこで、日本郵政の長門社長に伺いたいと思います。買収後僅か2年で業績不振になって巨額の損失を出した。これは余りにも見通しが甘かったのではないでしょうか。

長門正貢(日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長) お答え申し上げます。
 2017年3月期のトール社の営業利益でございますけれども、買収前と比べまして8割ダウン、2割まで悪化いたしました。
 豪州国内物流事業の業績悪化の要因の一つとしては、資源価格の下落等による豪州経済の減速が挙げられます。豪州経済、都市部と鉱山地区の二極化が進んでおり、都市部の成長はプラスでございますけれども、都市部以外の鉱山地区は直近ではマイナス成長が続いております。トール社は、都市部のほか、鉱山地区を中心とした資源関連セクターに属する顧客及びそれらにサービスや部品等を供給している顧客に対して輸送サービス等を提供することによって収益を得ておりますが、その中でも鉱山地区の景気減速の影響を大きく受けているところでございます。
 資源価格の推移を見ますと、2014年頃から下落トレンドが始まっておりましたけれども、資源価格の下落がここまで深刻なものとなり、結果としてその後の豪州経済の小包や貨物の物流がここまで減少することまで見通すことはできませんでした。今から振り返ると当初の分析が甘く、結果として大きな損失を招くことになったことに対して重く、大変重く受け止めてございます。
 今回の処理はトール社に関わる負の遺産を一掃するという大きな意味もあるものと認識しており、損益好転に向けた転機となるよう、あわせて、株主、関係者の皆様からの信頼回復を果たせるよう、業績回復に努めてまいる所存でございます。

山下よしき 先ほどから、結果として見通しが甘かったと、そういうふうに聞こえるんですが、私それは違うと思うんですよ。トール社が業績悪化する懸念は日本郵政が買収を発表したときから既に指摘されておりました。
 当時、2015年2月18日、日本郵政の西室社長が買収を発表した会見でも記者の方からトール社の経営を心配する声が出されておりました。具体的にはこういう声です。折からの資源価格の市況悪化でトール社の資源関係の物流事業が弱含んでいる、オーストラリアの本業でのてこ入れが必要なのではないかなどなどであります。
 それに対して西室当時社長はこう答えております。いろいろやっている中で、資源物流は一つの大きなトール社のメリットと言ってきたが、ここのところ資源価格の低下で打撃を受けているのは明らかに御指摘のとおりですと。要するに、単に資源価格が低下しているということだけではなくて、それによって資源物流が打撃を受けているのは明らかだということをもう認識していたと。それに続けて、西室社長はこう述べております。これについて私ども、どういう対策をやっているのかという話も含めて突っ込んで聞いた、現経営陣がそこで損が出るようなことはやらないようきちんと手は打っていますと確認もしておりますと、こう当時記者会見で述べているんですね。
 要するに、資源物流が打撃を受けていることを認識していた、その対策をトール社に突っ込んで聞いた、そうしたらトール社は損が出ないようきちんと手を打っていると言っているということを確認した、ところが2年でこんなことになっちゃった、巨額の損失を計上しなければならなくなったということですから、私、これは当時、日本郵政がそういうことを懸念しながら突っ込んで聞いて大丈夫だというふうに判断したというわけですが、言葉は悪いですけど、日本郵政の目は節穴だったのかと言わざるを得ないんですが、この点の自覚、おありですか。

長門社長 当時でございますけれども、トールの時価総額が四千百億ぐらいございまして、仮に買収するとなりますと、いわゆるプレミアムを乗っけないと買えないと。プレミアム、通常のMアンドA業界で3割5分から6割ぐらいでございます。今回はたまたま5割弱でプレミアムを乗っけて6200億円という価格が決定いたしました。私ども、一人でこの判断をもちろんしたわけではございません。いろいろプロのコンサルタントを雇いまして、フィナンシャルアドバイザーも雇って、みんなで検討をして決断をした次第でございます。
 確かに、その当時、原油価格が落ちている等々、エネルギー価格の方につきましては下落傾向一部見えましたけれども、一体どこまで落ちてどのぐらい続くのかというところについては必ずしもコンセンサスはなかったというふうに理解してございます。アドバイザーの方々についても、特にこれは相当危険であるというようなアドバイスは実は1件もいただいておりません。結果論として、非常に長く続き大きく落ちてしまったので、大変に甘かったと言われれば、今となってはそうだなと思っております。
 トールの売上げの中で資源そのものに直に関わる部分というのは2割弱でございます。あとは、それに関わるいろんな物流が多くありまして、豪州全体の貢献度が売上げベース7割ぐらいになっておりますけれども、資源価格が落ちてどの程度物流業界全体にインパクトがあるのかということについて読み誤ったというふうに感じております。当初の分析は甘かったと言われればまさにそのとおりで、大変大きい経営責任があると感じてございます。

山下よしき 私は、結果としてとは言えないですね。ちゃんとそのことを見通すべきだったと言わざるを得ないと思います。
 それから、単にトール社だけではなくて、専門家、研究者からも、国際物流市場は既に当時で、DHL、UPS、フェデックスなどのドイツやアメリカの企業によって分割されておって、今更日本郵政の出る幕はないという指摘もされておりました。そのことも指摘しておきたいと思います。
 次に、長門社長にもう一点聞きます。買収費用の6200億円の原資は何なのかと。私はこれは国民の財産ではないかと思いますが、原資、説明してください。

長門社長 お答え申し上げます。
 トール社の買収に要した資金6200億円でございますけれども、これは日本郵便の手元キャッシュを使用して行ったものでございます。

山下よしき 私の聞いた説明とちょっと違うんですね。
 2015年12月の株式上場に向けて日本郵政グループの中で資本再分配をやった、資本増強を行ったわけですね。日本郵政が100%保有するゆうちょ銀行の株式の自社買いをやったと、そこで得た1兆3000億円のうち6000億円を日本郵便の資本増強に充てたと、そこからこの6200億円が充てられたということは否めませんという私は日本郵政から説明聞いております。それ、否定するんですか。

長門社長 6000億円でございますけれども、14年9月に増資をいたしまして日本郵便に6000億入ってまいりましたけれども、この資金は、日本郵便の経営基盤を強化するとともに、郵便・物流ネットワーク再編あるいは次世代郵便情報システムの開発等の成長のための投資を実施するために日本郵政株式会社を引受先として行ったものでございまして、トール社の買収を前提としたものではございません。

山下よしき 前提としたものではなくても、お金に色は付いていませんから、それ自身が買収にも充てられたというのは日本郵政から私説明聞いたんですよ、執行役の方から。それで、いずれにしても、このゆうちょ銀行の自社株買いによって日本郵政が得た資金も増資という形で今度の買収には回されていると。つまりは、公社時代の3事業によってつくられた国民の財産によって買収を行われたということになるわけですね。
 長門社長、トール社の買収原資は国民が築き上げてきた財産だった、元々日本郵便だって国民の財産ですから。国民の財産が買収の原資だったという認識、ありますか。

長門社長 日本郵政、民営化がナショナルプロジェクトでございまして、国家のプロジェクトでございました。このままとどまっているわけにはいかず、成長していかなければいけないと。純資産15兆円強ございまして、これをいかに有効に使って成長をしていって、株主の方々、市場、国民のお客様にお返しをするのかということで、効率的な投資方法を考えてございます。
 その中の一つとして、日本郵便の方でほかの資金需要がございましたので増資をして六千億手にしたわけですけれども、たまたまそのときに、今から思えばちょっと金額が高かったかもしれません、ちょっとというか、金額が高かったかもしれませんけれども、これが将来の成長につながる一石であると経営判断をして実行した次第でございます。
 結果的に日本郵政は今度減損になりまして、大変に申し訳ないと思っておりますけれども、成長のために有効に使おうと思った経営判断であったと認識してございます。

山下よしき 買収発表当時、西室社長は、国家の基本的に私どもがお預かりした財産を毀損しない、それを元に成長していける、そういう基盤をつくるのが私どもの一番大事な部分というふうにおっしゃっていました。甘い見通しによって国民からお預かりした財産を毀損した、これ、私は一般の株式会社のM&Aの失敗とはこれは重みが違うと思います。株主の自己責任だというわけにはいかない、国民の財産が基盤だという重みがあるわけですね。
 長門社長、もう一度、日本郵政の責任は極めて重大だと思いますが、その自覚、問いたいと思います。

長門社長 私どもまだ上場して、一昨年11月4日上場いたしまして、まだ2割弱しかマーケットに株が出ておりません。お国が8割以上持っている会社でございますので、その点十分に留意して今後も経営戦略を練っていきたいと思っております。
 今般の減損でございますけれども、大変申し訳ないと思っておりますけれども、18年間、これからのれんの償却期間、毎年200億円強の償却をしていく方がいいのか、今一気に減損させていただいて、日本郵便の体を少し軽くさせていただいて、時間を買わせていただいて、これからの18年間でこの四千億をむしろ返すと、その方がトータルな経済性が良くなるというような可能性もあると思っております。今、この機会をいただいて、18年間の時間をいただいたと考えております。是非とも、本来やるべき経営戦略をきちっとやって、そのコストをお返ししたいというふうに考えてございます。

山下よしき 今の後半は、4000億円の穴を空けてしまったけれども穴をどう埋めるかという決意であって、穴を空けたこと自体の私は責任が重大だと言わなければなりません。
 今回の巨額損失計上によって、郵政で働く労働者にも負担が押し付けられるのではないかとの不安が職場で広がっております。利用者からお叱りを受けるとか、JPエクスプレスが破綻したときのようにまたボーナスがカットされるのではないかなどの声を聞きました。
 今回の巨額損失の責任はひとえに経営陣にあります。決して労働者にしわ寄せしてはならないと考えますが、社長の認識、いかがでしょうか。

長門社長 そのように考えております。
 今回の狙いは、日本のみならず、これから将来の成長を、グローバルな成長を取り込むというために一石、石を打ったというのがトール買収の目的でございました。その方向感については引き続き重要な方向感であると思っておりますし、引き続きトールを使って海外展開を進めてまいりたいと思っておりますが、最初の価格が高かったためにこのような減損になった次第です。ここについて、これはしかし、いっときで終わる措置でございまして、今後引きずるものはございません。それから、キャッシュフローが今回出ていくわけでもございません。利益剰余金、資本勘定も非常に厚くまだございます。
 したがいまして、委員おっしゃったとおり、経営、そこのジャッジメントをしたという経営責任が経営層にあるのであって、従業員の方にはないと思っておりますので、従業員の方に対してそういうような種類の負担を求めるということはしないつもりでございます。

山下よしき 次に、今回の巨額損失計上と郵政民営化の関係について問いたいと思います。
 長門社長、そもそもなぜ日本郵便会社が国際物流事業に乗り出す必要があったんでしょうか。

長門社長 日本郵便、御案内のとおり、郵便がどんどんどんどん、僅か2%程度ではありますけれども、毎年落ちていくと、インターネット等々の商界もあってですね。で、日本全体の経済も、御案内のとおり人口も落ちていくということでございますので、日本だけにとどまっていたのではあしたはない、あしたはないというか、厳しいあしたになってしまうのではないかというふうに考えまして、これから海外の成長も取り込まなければ、むしろユニバーサルサービス等の我々に課された国内での義務すらきちんとできないこともあり得ると、業務の多角化、収益の多様化、そういうものも図って成長しなければいけないと思っておりまして、海外展開を考えた次第でございます。この方向感については間違っていないと思っております。
 一つの例でございますけれども、海外の物流業界、いろいろございますけれども、一つ成功していると思われているものにドイツ・ポスト、ございます。彼ら、2000年から10年掛けて100以上のM&Aを2・5兆円掛けてやりました。その中にたまたま、委員おっしゃいましたDHLが入っていたこともあって、現状は少なくとも最もバランスのいい物流業界として業界ではリスペクトされてございます。
 私ども、言葉で言うほど簡単だとは思っておりませんけれども、日本は日本できっちりとやってまいりますけれども、海外の成長についても取り込むチャンスをフォローしていきたい、チャレンジしていきたいと思っております。

山下よしき 私、本業を忘れちゃ駄目だと思うんですよ。郵便のユニバーサルサービス、これを国民にあまねく提供するというのが日本郵便の一番の事業なんですね。別に国際的に物流に手を出してくれと国民は思っていないんですよ、それは。
 そこで、もう時間がなくなってきたので。西室社長も買収発表当時、こういうやり取りしているんですね。記者さんから、ユニバーサルサービスを続けていくためにもこういう新しい試みで収益を出していく必要があるということですか、ええ、そう思うと。
 これはちょっと先ほど長門社長がおっしゃったこととかぶるんですけれども、ユニバーサルサービスを維持していくためにも新たな試みで収益を上げる必要があるということなんですが、要するに、いろんなことをやらなければならないと、多角経営しなければならないということだと思うんですけど、しかし私、多角経営と言うんだったら、公社以前の郵便、貯金、保険、この三事業一体経営こそ最も合理的な多角経営だったのではないかと、こう思うわけですね。1円の税金の投入もなく、三事業のユニバーサルサービスを提供しておりました。職員の給与もその中から賄っておりました。黒字経営をしておりました。さらに、その上、郵政公社時代には合わせて9000億円もの国庫納付金まで納めていたわけです。
 私は、ユニークですけれども世界で最も優れたビジネスモデルだと、改正郵政民営化法のときに自見当時郵政大臣に申し上げたことがありますが、その三事業一体経営をあえてばらばらにしたために日本郵便が独自に郵便のユニバーサル事業を維持しなければならなくなった、長門社長、ここに日本郵便が全く未経験の国際物流事業など新たな試みで収益を出す必要が生じた根本要因があるのではないかと思いますが、この点、いかがでしょうか。

長門社長 企業、組織でございますので、ユニバーサルサービスはきちんとやらなければいけない、そういう義務があります。大事な大事な仕事でございますので、もちろんきちんとやらせていただきますけれども、あらゆる組織は、現状に安寧するのではなくて、機会があれば成長の機会をフォローしていく、チャレンジしていくというのは当然だと思います。
 国内だけでとどまっていて明るいあしたが保証されるのであれば、もちろんそれはそれでいいんですけれども、それも矛盾しない範囲で海外の機会を取り込むチャンスがあるのであれば果敢に目指すべきと思っております。一般論で言っても、日本だけにいればいいんだという形には経営層の意思決定としてはならないと考えてございます。

山下よしき これ、郵政公社時代までは国際物流に手を出すことはできませんでした。そういうことになっておりました、できないようにですね。それが、この郵政民営化によって国際物流に手を出すことができるようになった。また、出さなければユニバーサルサービスが維持できないという要因もあったでしょう。
 高市大臣に伺いますが、日本郵政、日本郵便が国際物流に乗り出す際の2015年度の事業計画は、これ、総務大臣が認可しております。先ほど郵政行政部長は、事業計画認可は個々の事業を取り出して認可するものではないと。私は驚きましたよ。だったら何のための認可なんだと、認可はするけど責任は持たないのかというふうに感じたんですが、もうこれ時間ないので問いません。
 私が総務大臣に聞きたいのは、三事業一体だった郵政事業をあえてばらばらにした、背景には、もう言うまでもなく、日米金融資本が300兆円に上るゆうちょ、かんぽの国民資産を明け渡せと迫ってきたということが背景にあるわけですが、この三事業一体をばらばらにしたために日本郵便が、これはユニバーサルサービスの義務付けは新しい民営化法でも日本郵便、日本郵政に義務付けられているわけですね。しかし、ゆうちょ、かんぽは切り離された。したがって、ユニバーサルサービスを維持するための選択肢がぐっと狭められた。そこに私は、国際物流にあえて、経験もないのにリスクを冒して、しかも危ないんじゃないかという指摘もあるのに乗り出していかざるを得なかった根本原因があると、こう考えるべきだと思いますが、総務大臣、いかがですか。

高市早苗総務大臣 郵政民営化法におきましては、郵政民営化は、経営の自主性、創造性及び効率性を高めるとともに公正かつ自由な競争を促進し、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上を図るということを基本理念としております。ですから、こうした理念を踏まえて、今回のトール社の買収と減損損失処理の判断についても日本郵政グループが適切に経営判断されたものだと思っております。ユニバーサルサービスの提供につきましても、現時点で日本郵政及び日本郵便からユニバーサルサービスの提供に影響はないと聞いております。
 私は、これ、郵政民営化が原因で例えば今回のトール社の減損処理という事態に至ったとは思っておりません。今回、長門社長の思い切った決断によりまして減損処理されたことによって、やはり当初の目的、トール社を買収するということを判断された当初の目的をしっかりと達成していただきたいと、徹底的な経営改革をして、また収益につなげていただきたいなと、こう希望いたしております。

山下よしき そういう認識でいいのかと率直に思いました。
 長門社長、先ほど、負のレガシーを打ち切り、攻めの経営のスタートラインに立つんだと、会見でもこう述べておられますが、率直に言いまして、そんな保証どこにあるんだろうと。
 西室社長が買収発表当時の会見で、私ども日本郵便というのは、配送については長年の経験からノウハウがあるが、サードパーティーロジスティクス、要するに物流や運送の業務請負ですね、この分野については日本市場においても知識も経験も少ないというのが現状です。ましていわんや、グローバル市場におけるサードパーティーロジスティクス、国際物流業務についてはほとんど経験もないんだと。だから、今回、トール社を買収してそのノウハウを学ぶんだと言って買収したんですよ。
 ところが、学ぶどころか、逆にこんな、2年で巨額損失を出すようになっちゃった、尻拭いしなければならなくなっちゃったわけですよ。それを、攻めの経営に転換するんだ、これから収益上げていくんだと言ったって、国際物流のノウハウはないんですから、日本郵政には。これ、どうやって乗り出すんですか。全く保証ないじゃないですか。

長門社長 何回も申し上げておりますんですが、最初の計算が大変甘かったということについては本当に深く重く受け止めてございますけれども、私ども、成長を目指すときに、例えばですけれども、車産業の車を買うとか電機産業の子会社を買うとかいうのではなくて、郵便事業、物流事業をやっておりますので、これに近いところを当然ながら目指したつもりでございます。全く関係ない産業のところに初めて行ったというような未経験なところではございません。ある自分たちのテリトリーに似たところで、たまたまぴったり自分のノウハウと一致しないからといって、経験がないからやらないと言っていたのでは新しい経営はできないと感じております。近いところで、しかもチャンスがあると思ったのであれば、是非チャレンジする可能性は経営として考えたいと思ってございます。
 何回も申し上げますけれども、当初の価格の読みが非常に甘かったことについては大変重く受け止めてございます。

山下よしき もう時間も参りましたので締めますけれども、24000の郵便局のネットワークを最も生かせる多角経営は私は貯金と保険だと思いますよ、郵便局のネットワークを生かしてね。それをばらばらにして、ユニバーサルサービスに今からチャレンジするんだ、世界に乗り出すんだといったって、失敗しているわけですからね。それよりも三事業一体でしっかりユニバーサルサービスを提供できる基盤を維持する方が大事だと、そのことを改めて見直すべきだということを申し上げて、またやりましょう。
 終わります。